
No.6ベストアンサー
- 回答日時:
#4です。
>「の」について改めて古語辞典に当たると、「同格」からの派生で、…
「全訳読解古語辞典」(三省堂)には、ご指摘の件が載っていますが、その同じ「更級・かどで」について、「全訳古語例解辞典」(小学館)では「「…であって」のような意味で、下に続ける。接続助詞「ものの」はこの用法からできた。…で、…であるけれでも。」の例文に扱われています。
この文は、その語順を連続へと繰り上げ、「の」に省略された体言「それ(門出したる所)」を加えれば、「門出したる所は、かりそめの茅屋の(それであって)、めぐりなどもなくて、蔀などもなし」と意味が繋がり、同格の構造が明らかになります。
これを戻さずそのまま読めば、同格よりは連体法での所属や属性・実質意味を表す「…は~の」構文で、「門出したる所はかりそめの茅屋の(それであって)」と、「東京は神田の(生まれ)」的な入れ子構文とも見做せるでしょう。
そして、この見方をこの短歌に適用すると「(今この場は)、「死に近き母に添寝の」(今この場)であって、」といった構造が想定され、これは結局、後続の体言が省略された「この場この際(きわ)にあって」という、準体助詞的な連体法の用例につながるのではないでしょうか。
また、詠み手の思い=<(母を慕う)私の心>を主語と捉えれば、つぎのような感じ方もあり得ます。
「死に近き母に添寝の(<私>には、)しんしんと遠田のかはづ(の声が)天に聞ゆる」
「死に近き母に添寝の(この<私の心>は、)しんしんと(積もるがごとく愛しさ募るばかりで、)遠田のかはづ(の声は遠くに籠もり響いて、まるで)天(からの雨のよう)に(<私の心>にしんしんと降るように伝わり)聞ゆる」
このような意味の多義性は、韻文においての情報量の絶対的乏しさが原因であって、短詩形文の文法解釈の振幅・ブレとして曖昧性は免れないものと思われます。
最も短い俳句「陽を病む」(大橋裸木)などは、解釈という域を越脱してもはやタイトル化しています。
とまれ、「しんしんと」が「夜ふけ」と「蛙の声」の掛詞だという定説は今更ながら活性に乏しくなっており、今や平仮名で書かれたこの言葉から、もっと自由にして多くの意味を汲み取りうる、そんな活性の漲りもまた求められていると思われます。
何度も丁寧なご回答をいただきありがとうございます。「が」は接続詞的なニュアンスに感じ取ることが私には一番自然に今は感じられます。発想においても言葉においても、省略、転換こそ韻文の韻文たるところとはわかっているつもりでしたが、なかなか難しいものですね。「が」とすることの積極的な良さが感じ取れるように、いつかはなりたいものだと思います。
No.5
- 回答日時:
#4です。
>繰り返しになりますが、こんなに有名な歌なので既に権威ある(?)評釈書(「の」にこだわった)があるのではないかと思うのですが、どなたか…
以前にも、この作品同様に著名な短歌で、「の」の機能に触れたことがあります。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/6720261.html
また「権威ある(?)」国語学者の意味合いについては、次の応答など。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3197946.html
この作品自体のアプローチ例です。
小学5年 学習指導案
http://www.tcp-ip.or.jp/~syaraku/mokiti.htm
http://homepage2.nifty.com/t_yamakawa/ty/bunseki …
中学2年 「わからないの掘り下げ」18番
http://diep.u-gakugei.ac.jp/output/001006003/mai …
この歌は、連作「死にたまふ母」の其の一から其の四まで59首の内の16首目にあたり、その流れ添って歌趣は繰り広げられています。
http://www.geocities.jp/sybrma/90syakkou.araragi …
『死にたまふ母』はいかにつくられているか
http://wasetan.fc2web.com/30/hyouron.html
松岡正剛の千夜千冊『赤光』
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0259.html
桐島絢子WebSite「斎藤茂吉17」
http://www.geocities.jp/nuekrsm/essayzbnsm180.html
「短詩形文学を支える背景共通認識」というHPの以下の記述には大いに共鳴させられます。
「省略系で最もすばらしいのは、脳の仕組みに肉薄する作品だ。次には普遍文法に依存するもので、この範囲のものは翻訳さえ可能である。」
http://blog.livedoor.jp/smapg/archives/50220239. …
換言すれば、短歌において、その表象された意味を解いたり、それを裏付ける文法を説いたりすることは、そのきわめて少ない表象的情報量からは如何にも困難であり、その選択の多義性・想定の曖昧性において、個々人が蓄積した言語感覚やこれまでの文章体験などでのスピンや偏差を免れないのみならず、そもそも散文とは全く次元の異なる、「脳の仕組みに肉薄する作品」としての扱いの側面もまた前提とさるべきでではないかと思われます。
事例を、ありがとうございます。その多くは愚昧の私には高度過ぎ、回りくどくてなかなかついていけない感じですが、勉強させていただきます。「短歌において、その表象された意味を解いたり、それを裏付ける文法を説いたりすることは、そのきわめて少ない表象的情報量からは如何にも困難であり・・」はわかります。「が」の問題も基本的にはそういうことかと思いますが(特に茂吉というオーラを感じてしまえば)、しかし「が」に私の場合には依然としてひっかかりを感じてしまうということです。
No.4
- 回答日時:
死の近い母親に添い寝したこの場この際(きわ)にあって、沈沈(しんしん)と夜が更けて行き、かくて5月とはいえ東北の地の未明はまた深深(しんしん)と冷え込んで来ている。
遠くからの蛙の鳴き声がまるで、天からの雨が止まず涔涔(さんずいに岑)(しんしん)と降るかのように聞こえてしまうのは、私の心の中なる涙もまた津津(しんしん)と溢れ零れてしまっている、そのせいなのだろうか。
「~添寝<の>」の用法は、連体格を示す格助詞で、本来は「添寝」を受けて下の体言に懸かる連体法ですが、懸かるべき下の体言が、この場合は省略されているので、体言性を持つ形式名詞「もの」「こと」や形式語「から」「ごと」「まにまに」などと意が含まれている見做して、このばいは「添寝<の>場所と際」を補填しました。
また「しんしんと」がこの歌においては幾層もの掛詞・重ね言葉をなしているのが肝心で、今際(いまわ)は沈沈(しんしん/ちんちん)と更け、処は深深と冷え込む。またカエルの鳴き声は天から降る雨の如く涔涔(さんずいに岑)と降るようで、それにつけ詠み手の心中の涙もまた津津と流れ落ちるばかりだと。
ありがとうございます。「まにまに」などの形式名詞の省略ということ、またそこから「場所 際」とのご見解、大変参考になりました。種々の「しんしんと」も参考になりました(雨音や冷えを連想することには賛成しかねますが)。
「の」について改めて古語辞典に当たると、「同格」からの派生で、断定の助動詞「なり」の連用形、または接続助詞のように用いられる場合があるとして、「門出したる所は、めぐりなどもなくて、かりそめの茅屋の、蔀などもなし」(更級日記)の「茅屋の」を引いてあり、これかな、とも思ったのですが、どうでしょうか。
繰り返しになりますが、こんなに有名な歌なので既に権威ある(?)評釈書(「の」にこだわった)があるのではないかと思うのですが、どなたかご教示願えればと思います。
No.3
- 回答日時:
ポピュラーな「所有の用法」になってしまいますが、
添寝の(夜は)しんしんと(更けていき)
のような省略という解釈はどうでしょうか。
「しんしんと」だけで「夜」も「更ける」も表現できる上に、蛙の声との対比を際立たせる効果も生んでいるような気がします。
ちょっと思いついただけなのですが。
ありがとうございます。「の」の後に省略された言葉は種々考えられるわけですね。「しんしんと」は重い意味を持っていると思いますが、末尾の「聞ゆる」にも懸かっていると思います。
余談ですが、詩歌を語法的にあれこれ穿鑿することは無意味なような考えも一般的にはありますが、やはり語法的な解釈がなされた上での「鑑賞」であるべきと思っています。この歌の「の」の解釈を含めた定番的解釈をご存知の方、また同じような用法の例をご存知の方、更にご教示ください。
No.2
- 回答日時:
「死に近き母に添寝の」 までで前半がぷっつりと切れていますが、それは意図的なものだと思います。
省略は当然あるでしょう。「わたしは母に添寝した状態でいる。そうしていると、遠田のかはづの声がしきりと耳につく」 ということで、「の」 を状態の表示と見ました。「隠居の身」 なんて言い方がありますが、その場合の 「の」 が、「隠居であるという状態」 を表しているようなものだと思います。あるいは 「時」 をも表していると見ることもできるかもしれません。「の」が状態を指示し、且つその状態である主体を示す言葉が省略されているというお考え、結局そうとしか考えられないような気が私もしました。ぷっつり切れた省略の仕方が自然なのかどうかという疑問はあるのですが・・。
No.1
- 回答日時:
「その状況にあるという限定」 (『広辞苑』 第4版参照) ではないでしょうか。
だから 「母に添寝の」 は 「母に添寝していると」 というふうに解釈されます。ありがとうございます。「母に添寝していると」と訳せばこの歌の意味としては自然ですね。ただ「その状況にあるという限定」ということがはっきりわかりませんが、連体修飾格または連用修飾格の「の」ということなら「添寝の」を受ける体言または用言がありません。やはり「時」などが省略された省略の用法なのでしょうか。もう一つ釈然としませんが、ご教示ください。
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