当方、大学で自然淘汰・性淘汰を勉強しているものです。
自然淘汰による進化は以下のプロセスで起こると解釈しています。
(1)ある個体群内の個体間には形質変異が存在する
(2)形質ごとに生存率や繁殖成功度が異なり、その結果として個体間の適応度に差が生まれる
(3)形質は多少とも遺伝する
(4)(1)~(3)より、世代間で個体群内の形質頻度が変化する(=進化)
これを かゆみ の進化に当てはめると、以下のようになると考えられます。
(1)ある個体群内の個体間に“かゆみを感じる”“かゆみを感じない”という変異が存在する
(2)“かゆみを感じる”個体は“感じない”個体に比べて、適応度が高い
(3)“かゆみを感じる”形質は遺伝するため、集団内で頻度を増やした
この(2)の かゆみを感じる個体のほうが適応度が高い というのは、
どのような理由によると思いますか?
(例:痛みを感じる・・・痛みを伴う事象は(生命の危機から小さな怪我まで幅はあれど)
基本的にネガティブな事柄であると期待できるので、
それをうまく避けるような形質が進化してきたのは理解できます)
お風呂上りにかゆかったりするのは、適応度上の利益を伴う形質でしょうか?
それとも、単に中立進化の結果でしょうか?
かゆみは何かネガティブな事象のシグナルとして機能しているのでしょうか?
(虫さされを放置すると生存率や繁殖成功度が下がるとか・・・???)
かゆみ の進化的意義について、一案がある方はどうぞお知恵をお貸しください。
※ 単に個人的な疑問です。
※ この話題は自然淘汰を前提としていますので、
”そもそも自然淘汰自体がナンセンス”といった回答はどうぞご遠慮くださいませ。
自然淘汰に基づき、かゆみの適応的意義を考えたいと思っています。
No.1
- 回答日時:
それでおよそ正解です。
>かゆみは何かネガティブな事象のシグナルとして機能しているのでしょうか?
>(虫さされを放置すると生存率や繁殖成功度が下がるとか・・・???)
たいていの吸血生物は病原菌を媒介しますから、それらにたかられるという状態は好ましいものではありません。
寄生虫などのもたらすかゆみが不快感であれば、それを忌避するために、虫に刺されずともたかられたら払う、とかの行動に結びつきますよね。
樹液だとか鉱物などでも、それによってもたらされる炎症が軽微なうちに振り払ったり拭ったり出来る可能性が高くなりますから、かゆみを感じることに意味があるわけです。
早速の回答ありがとうございます。
かゆみの進化も痛みと同様に、次に同じ事象に出会った場合、
それを忌避する可能性を増加させるため、適応度上有利な形質であり、
集団中に広がった、というご意見だと受け止めました。
確かに、病原菌等からの防衛反応である、という点に着目すると、
かゆみに対して忌避行動を取れる個体は適応度が高そうです。
では、質問の下側に書いた
>お風呂上りにかゆかったりするのは、適応度上の利益を伴う形質でしょうか?
については、どのようにお考えですか?
ヒト(主に当方)は体温が上昇すると、体がかゆくなることがあります。
当方はこれを結構激しく掻き毟ってしまって、逆に肌を傷つけることもあります。
(当方が愚かなだけなのですが・・・)
このような“体温上昇に伴い、体をかゆくなる”という形質は、適応度上どのように有利なのでしょうか?
回答いただきました“かゆみ”形質における単なる副産物的な要素なのでしょうか?
あるいは、まったく別のプロセスで現在も残っている形質なのでしょうか・・・?
せっかく回答いただいたのに、質問ばかりで申し訳ありません。
もしお時間がありましたら、議論ではなく、質問の延長としてご意見いただければ幸いです。
No.2
- 回答日時:
不衛生状態でも痒みを感じることがありますよね
あるいは不潔状態から発症する皮膚疾患でかゆみを伴うケースなど
これもちょっと考えてみても面白いのでは?
新しい視点からの回答をありがとうございます。
確かに、不衛生というのは、こちらが何かの事象を起こさなくとも、
自然に発生してしまうネガティブな事柄ですね。
“あなたの体はそろそろ不潔状態が高まってきましたよ”というサインとして
かゆみが現在まで残ってきている、というのは素敵な発想だと思います。
No.1 の方へのお礼の欄にも書かせていただいたのですが、
>お風呂上りにかゆかったりする
という形質に対して、適応的な観点からどのようなご意見をお持ちですか?
体の清潔を保つための行動 (入浴) の結果として、体温が上昇し、体がかゆくなる、
というのは、表皮の不衛生状態からくる“表皮から体内へ”のシグナルと思います。
一方で、体温上昇に伴うかゆみは“体内から表皮へ”のシグナルだと思えるのです。
体温上昇にともなうかゆみ形質の優位性について、何か思うところがありましたら、
議論ではなく、質問の延長としてご意見いただければ幸いです。
No.3
- 回答日時:
風呂あがりに痒くなる機序を私は知らないのですがどんなものなのですか?お調べになられたら教えてください。
副産物です。しかし副産物という識別はステレオタイプです。実際は、ある固有の感覚器官が良好に役立った条件と不良に働いた条件があるだけです。料理計で体重を量った人間が進化のロマンに想いを馳せています。
私が機会論的に統合すれば、風呂は皮膚の熱量を増やす有害な刺激なのです。風呂文化=健康の原理主義にならなければ、以上です。
風呂刺激が痒みを誘発するまでの風呂刺激の蓄積に時間がかかるからタイムラグによって感覚的に認めにくいのです。極論すれば沸騰するヤカンの湯気に手をかざせば痒みを通り越して痛みそして熱傷になります。風呂の温度を最適化せずにタケシ軍団熱湯風呂にすれば悟られます。人間文化の暗黙の前提を忘れた、自作自演の人工的な問題です。
適度な経過の後に気が付いて皮膚近隣から排除した方が得です。布団を蹴飛ばすのと似たようなものです。
お礼が遅くなり、申し訳ありません。
>風呂あがりに痒くなる機序を私は知らないのですがどんなものなのですか?お調べになられたら教えてください。
自分で調べもせず、お知恵を拝借しようなどと失礼いたしました。
ざっと調べたところ、当方の症状は“温熱じんましん”と呼ばれるもののようです。
参考 http://www.jinmasin.com/mt/archives/2006/03/post …
>実際は、ある固有の感覚器官が良好に役立った条件と不良に働いた条件があるだけです。料理計で体重を量った人間が進化のロマンに想いを馳せています。
この2文について、前半はとてもよくわかるのですが、
後半は比喩についてうまく理解できませんでした・・・
つまり、どのようなことを説明する文章なのでしょうか?
>私が機会論的に統合すれば、風呂は皮膚の熱量を増やす有害な刺激なのです。
これ以降の説明は、目からうろこといいますか、考え付かなかった発想でとても参考になりました。
参考URLを拝見して驚いたのですが、温熱じんましんが発症する際には、
皮膚の温度が50度近くなることもあるようです。
確かに、平熱から考えれば安全な温度とは言えないかと思います。
>適度な経過の後に気が付いて皮膚近隣から排除した方が得です。
こう考えますと、“皮膚をかく”=“熱を皮膚から払おうとする動作”、と解釈できそうです。
危険な熱を排除しようと表皮をかいた結果、別の不快感(さらなるかゆみ)がもたらされるとは・・・
まさに、感覚器官が不良に働くという好例ですね。
違った視点からのご意見で、とても楽しく拝読しました。
ありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
ご自身で当方が愚かなだけですがとお掻きになられていますが当方もです。
洒落になりません。料理計の話は大した比喩ではなく、料理の道具で(ダイエット文化に錯乱したホモサピエンスが)体重を量るのは無謀で不自然ですね。火と湯船を使う風呂はかなり不自然なのに自然淘汰に整合性を求めるのはおかしくありませんか。
熱をかきとる動作という視点もまた作為的ですよね。皮膚は比喩以外では考えませんから熱もメントールもないですよね。氷を触って熱いとか。冷たい辛子をなめて熱いとか。皮膚は風呂を知らないし知っていたとしても見れないでしょう。極論すると命を助ける注射だから痛くないという事はないわけで。
精神的にもじんましんが出るじゃないですか。嫌いな物事を○○アレルギーという文学表現しますよね。でもそれ科学的だよね。実際にじんましんが出ますしね。全く事実です。その事実とは、皮膚内で痒くなる化学的要件が満たされたのですよね。そしたら痒くなる、痒くなれば「そこを」かいてしまう。それだけですよね。淘汰を受ける前に淘汰を受ける機能(生化学反応)があるのですから個々の機能(デバイス)が先ですよね。その機能を組み合わせて動作になります。
中立進化というよりも要素還元主義的に個々の機能をバラバラに評価する自然淘汰はありませんよね。いずれにしても個体単位の運命共同体ですし。
駅員が何もない線路に向かって指差し確認するのはキチガイに見えますけどその機能は捨てない方が致命的な事態を防げますよね。
痒くなってかきむしるのは駅員の指差し確認です。予期せぬ事態かもしれないのです。寝ている貴方が痒い時、貴方が風呂につけられたのか、はたまた、体中に毒虫がはっているのか、分からないでしょ。貴方の体は貴方の意識が目を覚ますのを待たないのです。一生涯風呂が皮膚に良いとか死ぬまで寝惚けていても入浴の度に皮膚は客観的に反応します。
熱に関しては鍋や電子レンジで肉を調理するのと風呂を別次元に区別してしまうのは文化的錯覚でしょ。
迷わずかきむしれは生物が機械論そのものであるのを象徴していませんかね。
てきとーな事を書き連ねましたが、痒みの機序もそうですが、もっともっと物質的・機械的な知識を集めた後で、種の話に移られた方が楽しいと思います。
皮膚の組織学から痒み物質まで。軸索反射とか。
敵(対象)を知らないと、かきむしりになります。
大学で進化を研究されているのですか。生命工学?
今回もお礼が遅くなり、申し訳ありません。
>火と湯船を使う風呂はかなり不自然なのに自然淘汰に整合性を求めるのはおかしくありませんか。
このご意見から感じたことは、当方が時間スケールをきちんと考慮していないという点です。
おそらく、動物の感覚器官が (その機構も含めて) 淘汰されてきた時間スケールに比べて、
風呂を含むヒトの文化浸透スケール (とでも表現しましょうか) は非常に短いものだと考えられます。
ここで重要なのは、風呂が自然か不自然か、という部分ではなく、
風呂上がりのかゆみに基づく自然淘汰は何かしら起こっているかもしれませんが、
それが目に見える形で表れているか否か、という議論にのせるにはまだまだ淘汰が進んでいない、ということです。
>熱に関しては鍋や電子レンジで肉を調理するのと風呂を別次元に区別してしまうのは文化的錯覚でしょ。迷わずかきむしれは生物が機械論そのものであるのを象徴していませんかね。
これはつまり、風呂も“たんぱく質は加熱され続ければ変性する”という事象を含む行為であり、
そのネガティブな事象を避けるために、個々の内的生理学的機能が防衛反応を起こす、
といった解釈でよろしいでしょうか?
>てきとーな事を書き連ねましたが、痒みの機序もそうですが、もっともっと物質的・機械的な知識を集めた後で、種の話に移られた方が楽しいと思います。
おっしゃることはもっともなのですが、当方の興味の方向が“行動そのもの”に強く偏っており、
それがどのような生理学的機構によって生まれているのか、という部分にあまり向かないのが問題です。
例えば、質問にも書きましたが、
>(例:痛みを感じる・・・痛みを伴う事象は(生命の危機から小さな怪我まで幅はあれど)
> 基本的にネガティブな事柄であると期待できるので、
> それをうまく避けるような形質が進化してきたのは理解できます)
という“痛み-行動連鎖”を引き起こす淘汰機構には強い関心がありますが、
生理学的機構 (痛覚による信号の伝達、脊髄反射等) にはさして触手が伸びないのです・・・
ただの食わず嫌いかもしれませんが。
せっかく素敵なご提案をいただいたのに、すみません。
>大学で進化を研究されているのですか。生命工学?
専攻は行動生態学・進化生態学と呼ばれる分野です。
参考 http://www.amazon.co.jp/dp/4486011317
長くなってしまいましたが、回答ありがとうございました。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
ご丁寧で誠実なお礼ありがとうございます。
進化系や人類学系や環境系には誠実な人材が増えるべきだと願っております。自然不自然のご指摘はおっしゃるとおりです。私が言うのもおこがましいですがその風呂でさえ言わば自然として扱うのは他でもない生体・個体ですね。しかし風呂水の40℃オーバーにかゆみを覚えるのを疑問視する理系科学者の心理の中に風呂水を自然環境と見なしていない先入観があるのではないかという私の所感でした。
組織学や生理学には興味をそそられないという告白は誠実な人柄がうかがわれる面白いお話でした。しかしですね、このご質問の前提になる科学だと思います。良いのか悪いのかを決める試みに際して、結局、正義の裁判官である淘汰圧が及ぶ時間が短すぎた、というお決まりの論法に落ち着こうとしていますよね。全部、それで済みますよね。すると、何の情報も最初から要らなかったという研究になりませんか。
熱変性については大丈夫と思いますが単純な話、化学変化は高温ほど活発になりがちで、いわば暴走化します。因果を逆転したらいけませんが炎症の特徴の一つは発熱です。熱は炎症の化学反応の抑制にはならないという大まかな連想です。かゆみに関しては難解でそれがどの程度難解なのかを判明しているかゆみの生理を学ぶ事で把握して議論自体を議論してからに思うのです。非特異的に異常な条件で痒みが誘発された方がそれこそ有利とも言えます。しかし私はそういう解釈主義は何も誠実に発見していないと思うのです。とりあえず自然的に(=生理的に)その現象が機械的反応の必然であればそれまでの事として命題そのものの価値を再検討できます。何億年風呂上がりに痒みを覚えても薬の開発以外に変化を生じないのではありませんかね。まともな科学を身につけていれば痒くならないように入浴を改め直すでしょうね。
有利不利を結果で決められないとは思いませんか。中立進化ではなく虫垂の進化です。虫垂(盲腸)なんか要らないわけですがあります。極論すれば、それを引っこ抜いたら発生上ヒトにならないかもしれないのです。
質問者さんは痒みを全面的に盲腸扱いしているわけでもないので、それならば痒みの有利さを放棄する事になってもいいのですかと風呂上がりの自然は教えているのではありませんか。
この回答への補足
勝手ながら、ここで回答を締め切らせていただきます。
ベストアンサーは当方に最後までお付き合いくださいました、thegenus様に。
当方の疑問にお付き合いくださった他2名の回答者様にも、この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
いつもながら、お礼が遅くなり大変申し訳ありません。
>組織学や生理学には興味をそそられないという告白は誠実な人柄がうかがわれる面白いお話でした。しかしですね、このご質問の前提になる科学だと思います。
>かゆみに関しては難解でそれがどの程度難解なのかを判明しているかゆみの生理を学ぶ事で把握して議論自体を議論してからに思うのです
興味云々に関しては、お恥ずかしい限りです。
ご指摘のとおり、かゆみの発生における生理的メカニズムを理解することは、
当方の疑問の発端を理解するために必要不可欠ですね。
疑問の背景を把握できなければ、せっかくの議論がずれていく可能性も強くなりますし、
質問してから無知・無学を嘆くのではなく、きちんと己で学んでから考えるべきでした。
>有利不利を結果で決められないとは思いませんか。中立進化ではなく虫垂の進化です。
当方も、虫垂について有利ではないが不利でもない形質、と捉えています。
虫垂が機能的にまったく不要なものであっても (有利な点がなくても)、
それを維持するコストが限りなくゼロに近いのであれば、保持し続けることは明確な不利とはいえず、
虫垂の有無に対して淘汰が働かなければ残り続ける可能性を考えています。
あまり詳しく知らないので、的外れな意見である可能性もありますが・・・
>質問者さんは痒みを全面的に盲腸扱いしているわけでもないので、それならば痒みの有利さを放棄する事になってもいいのですかと風呂上がりの自然は教えているのではありませんか。
これは、とてもよくわかります。
虫垂のところで、有利でも不利でもない、と書きましたが、
それに比べて、かゆみ (現象・メカニズム含めて) は保持することで有利な点が多そうです。
いつも興味深いご意見をありがとうございます。
楽しく拝読し、また、新しい視点も得ることができました。
本当にありがとうございました。
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