No.1ベストアンサー
- 回答日時:
マクベスは戦場で魔女に「あなたはやがて王になる人だ」と吹き込まれ、自分の主人である王を殺そうと野心を抱きます。
マクベス自身は王を殺すことをだんだん躊躇し始めるのですが、夫人は逆で「さっさと王を殺せ」といわんばかりなのです。彼女のセリフで「乳房に吸い付く赤ん坊がどんなにかわいいか知っています。でも私の顔を見て笑っている赤ん坊でも、私はその柔らかい歯茎から乳首を引きちぎって脳みそをたたき出して見せるわ」というのがあります。怖すぎます。
また、マクベスが王を殺して呆然となって凶器を手に持って帰ってきてしまったときにも、
「この意気地なし!短剣をおよこしなさい!寝込んでいる護衛に血を塗りたくって罪を着せてきなさい!」
みたいなことを言います。
最終的には夢遊病になって死んでしまいます。
と、こんな女性でした。夫をそそのかして主君を殺させる―夫は王に、自分は王妃になるという野心を持っていたと思います。
私の意見では完全に「悪女」だと思います。
「マクベス」は非常に短い作品なので、読むのに1日もかかりませんよ。もし興味があったら読んでみられたらいかがでしょう?
あと、「マクベス夫人」に関しては、ロシアのニコライ・レスコフと言う人の「ムニンツェク郡のマクベス夫人」という作品もあります。ストーリーや登場人物は全く違うけれど、夫人の側面をよく表していると思います
No.3
- 回答日時:
マクベス夫人が悪女であるかどうか、というのは、なかなかひとことでは片付けられない問題だと思います。
というのは、確かに「悪女」といっていい側面はあるのですが、単純にそう決めつけてしまうと『マクベス』そのものが底の浅い、薄っぺらいものになってしまうのではないかと思うからです。
イギリスの作家にE.M.フォースターという人がいます。『ハワーズ・エンド』とか『モーリス』とか、映画化された作品も数多くあるので、質問者さんもご存じかもしれません。
この人が『小説の諸相』という評論の中で、小説の登場人物を円球人物(round character)と扁平人物(flat character)に分けています。
たとえば『坊っちゃん』に「赤シャツ」「野だいこ」「うらなり」「山嵐」といったニックネームを持つ人物たちが登場しますが、この人たちは、このニックネームが表すとおり、一語で要約できる人物です。「赤シャツ」だったら、赤いシャツを着た気取り屋で、策を弄して同僚の婚約者を奪うイヤな人物、「野だいこ」はおべっか使い、というように。こうした人物が「扁平人物」です。
それに対して主人公の「坊っちゃん」をひと言で要約できるか、というとちょっと無理です。
坊っちゃんには、たとえば「一本気」という言葉だけでは要約しきれない、さまざまな側面がストーリーの進展につれてあきらかになってくる。
このような人物が円球人物です。
「円球人物であるかどうかの規準は、それがわれわれを納得させながら、驚かせることができるかどうかです。もしそれが少しも驚かさないなら、扁平です。納得させないなら、扁平のくせに丸いふりをしているのです。円球人物は人生――小説中の人生ですが――の測りがたさを身辺に漂わせています」(『小説の諸相』 フォースター著作集8 みすず書房)
円球人物は内側にさまざまな要素、言い換えると葛藤を抱えています。
再度フォースターの別の部分から引きましょう。
「登場人物の性格から事件が生じ、事件が人物の性格を変える」(引用同)
円球人物の抱える葛藤が、事件を引き起こし、事件の進展にともなって、円球人物は私たちのそれまで知らなかった側面を見せ、私たちを驚かせる、ということなのです。
こうしてフォースターに倣って言うと、よくできた小説は、円球人物と扁平人物がバランス良く配置されたもので、円球人物である主人公が抱える葛藤がストーリーを動かしていく、ということになります。
さて、ここからやっと『マクベス』です(長い回答になって申し訳ありません。頭が悪いので簡潔に表現できないんですT_T)。
マクベスは、野心的でありながら、同時に気の弱さを抱えている。
フォースターの定義通り、このマクベスの性格の葛藤が王殺しという事件を引き起こしてしまう。
マクベスは間違いなく円球人物です。
ではマクベス夫人はどうか。
マクベス夫人は、ダンカン(王)を殺すお膳立てをします。
土壇場で尻込みをするマクベスを「勇気をしぼりだすのです」(福田恆存訳 新潮文庫)と叱咤する。
ところが夫の前ではあくまで強気でも、独白では「あのときの寝顔が死んだ父に似てさえいなかったら、自分でやってしまったのだけれど」(引用同)と意外な一面を見せる。
王殺しが達成されても、彼女もマクベス同様、王座(お后の座)を決して楽しむことはないのです。
彼女自身は殺害現場を見てはいないのだけれど、血に濡れたマクベスの手を見て以来、洗っても洗っても、決して手がきれいにはならない、という妄想を抱くようになります。
マクベス夫人が手を洗うこのシーンは、罪を犯した人間の心がどのように変化していくかを劇的にあらわしたもので、非常に印象的な場面です。
こうしたことを考えると、マクベス夫人もマクベス同様円球人物で、「悪女」と簡単に要約できない存在なのではないでしょうか。
マクベスの性格が事件を引き起こしたように、マクベス夫人の性格は、この『マクベス』という劇に奥行きを与えるものであると私には思えます。
それゆえに、単純に「悪女」と見なしてはならないように思います。
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