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長い間、疑問に思っていたのですが・・・・。
Beethoven や Mozart などのフルオーケストラの曲を作曲するときって、彼らはどうしたのでしょうか。 あれだけの、さまざまな楽器があるわけで、現在のように トラックに分けて演奏を保存し、音を重ねていくことは 昔はできなかったはずです。

作曲家の頭の中で 数十にわたる 楽器の音がどのように響くのか作曲するときにイメージできたのでしょうか?
そうだとしたら、もはや 天才ですよね?

A 回答 (5件)

こんにちは。

クラシックの作曲家です。オーケストラの曲も書いています。

一般の方は、こういう疑問をよく持たれるようですね。それを一番痛感したのは、例の佐村河内氏の事件です。音を一切聞かず、ピアノも使わないで作曲することが、すごいことのように思われるようです。

しかし、プロの作曲家を目指す人は、すべてそういうことができるように訓練します。そもそも、音楽大学の作曲科の入学試験で作曲をするときは、数十人の受験生が一つの部屋へ押し込まれて、ピアノも使わず、歌うことも許されず、すべて頭のなかだけで創作しなければなりません。オーケストラの曲を書く場合も同様です。まさか、作曲するたびにオーケストラを雇って試演するわけにはいきません。頭のなかだけでイメージできるようになるようにちゃんと学習するので、天才とはほとんど関係がないのです。

オーケストラの作曲をするためには、まず、管弦楽法という科目を勉強することになります。各楽器が演奏できる音域や、それぞれの音域の特性、例えば、この音域では大きな音が出せるが、別の音域の音は弱いので、ほかにたくさんの楽器が鳴っているときは聞こえなくなる、などのことを学んだり、指使いによる演奏の可、不可、また、どの楽器とどの楽器を重ね合わせるとどういう響きになるか、ということを、過去の作曲家の作品から例を取りながら学習したりしていくことになります。それと同時に、過去の優れたオーケストラ作品の録音を聴き、オーケストラのスコアを隅から隅まで読み込み、どう書いたらこういう音が出るのかを経験的に蓄積していきます。ですから、ヴァイオリンとフルートがユニゾンで同じ旋律を演奏したときにどんな音色になるか、あるいは、フルート、オーボエ、クラリネットが3本ずつ、計9本で同じ旋律を演奏したらどう響くか、金管楽器の和音に弦楽器のピチカートを加えるとどのような効果が出るか、というようなことは、完全に響きとして記憶されています。その引き出しを開けながら書いていくわけですが、いくら蓄積があっても、引出しの中に見当たらないような自信のないケースもありますし、今まで人がやったことのない音色を作ってみたいと思うことも当然あります。そういう場合も、一応それまでの蓄積を応用して、自分で考え出すしかありません。あとは、実際に演奏されたとき、自分の計算通りの音になったかどうかを確認して、ダメだった場合は原因を考え、修正します。そういう経験を積んでいくと、自ら新しく考えたオーケストレーションも成功する確率が大きくなります。ただ、これは一生の勉強です。熟練した作曲家でも、一度書いたオーケストラの曲を何度も改訂しなければならないケースは多いです。

モーツァルトやベートーヴェンの時代は、今のように録音がありませんでした。しかし、当時は作曲しかやらないという人はまれで、普段からオーケストラと一緒に仕事をしていたわけです。ですから、生の音を毎日のように聞く機会もありましたし、楽器の奏法についてわからないことがあれば、直接奏者に聞くことができます。それに、自分の曲が演奏される機会も今よりは多かったと思います。今日でも、ヨーロッパの作曲家のなかには、オーケストラで楽器を弾いている人もかなりおりますので、毎日古典の作曲家の曲を演奏することで、オーケストラの書き方や響きを毎日習得できる理想的な環境にいるわけです。また、録音のない時代の作曲家たちは、とにかくたくさんのオーケストラの楽譜を常に貪欲に読み、研究していました。私事で恐縮ですが、私が通った高校には幸いオーケストラ部がありました。最初はチェロを弾き、すぐ指揮者になりました。学校の催し物などの折、映画音楽などを自分の手でオーケストラに編曲し、自らの指揮で演奏させました、それ以前に、古典的なオーケストレーションは独習済みでしたので、大体予想した通りの音になり、修正はほとんど必要ありませんでした。しかし私は天才ではありませんので、勉強すればだれでもできると考えます。

なお、大編成のオーケストラ作品を書く場合、最初からオーケストラのスコアを書くことはできないので、まず、ピアノ譜のような2段の五線や、曲の複雑さに応じてもう少し多く、6段、8段といった五線紙上で、まず音楽そのものを作曲します。これをスケッチと呼びます。このスケッチを作成している段階で、今書いている音を最終的に何の楽器で演奏させるかというイメージを明確に持っていなければなりません。そして、スケッチの中に、使用する予定の楽器の名前をメモしていきます。スケッチで音楽の作曲が終了したのち、初めてオーケストラ用の段数の多い五線紙を出してきて、曲の冒頭から改めて書き直していくという作業になります。

なお、最近はパソコンを使った作曲も行われていますが、私たちクラシックの作曲家は、楽譜制作ソフトのプレイバックや、DTMにはあまり頼れません。私は今Finaleを使用しており、ヒューマンプレイバックという、実際の楽器にかなり近い音が再現できますが、これまでの経験から、このような音になるはずはない、と考えるケースが多いので、あくまでも参考程度にとどめ、基本的には自分の体験蓄積により判断します。

以上、御参考になれば幸いです。
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この回答へのお礼

詳しく 説明してくださってありがとうございます。 そうですか、頭の中でイメージできるように訓練されているんですね。 でも、それができるということにおどろきです。 回答者さんはClassical Music の作曲をなさるんですね。 すごいです!! 想像もつきません。 私は還暦をすぎた女性ですが、先週から 大学でPiano を習っています。(海外在住です)子供のころに習っていましたが、生きている間に弾けるようになりたい曲がたくさんあって。 あと、何年弾けるかわかりませんが、がんばります。

お礼日時:2014/08/31 08:26

No.3です。

質問の趣旨から少し離れてきているようなので、追加回答をするべきか迷ったのですが、具体的な作曲家名が出てきたので、少し補足します。

オーケストレーションの技術には、大まかに言って3つの流れがあります。1つは、ベルリオーズに始まり、ドビュッシー、ラヴェルに至る、フランスの管弦楽法のスタイルです。もう1つは、リムスキー・コルサコフに始まる、ロシアのオーケストレーションの伝統で、ストラヴィンスキーはこの流れをくみます。3つ目は、ベートーヴェン、ワーグナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウスを経て、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルンという新ウィーン楽派につながっていく、ドイツ・オーストリアの流れで、これは、20世紀以降の現代音楽の作曲家に多大な影響を与えました。日本では昔から、ドビュッシーやラヴェル、ストラヴィンスキーに興味が偏りがちで、私が日本の大学で学んだ時にもそういう雰囲気を感じました。しかし、上にあげた各流派はいずれも優れたものであり、現代の作曲家に一様に影響を与え続けています。映画音楽でも、初期に活躍し、その後の映画音楽の作曲家に影響を与えたのは、ハンガリー出身のミクロシュ・ロージャや、オーストリア出身のエーリヒ・コルンゴルトなど、ドイツ・ロマン主義の流れをくむ作曲家たちでした。
私個人は、オーケストレーションにおける色彩と名人芸の極致は、リヒャルト・シュトラウスではないかと思うことがあります。そして、シュトラウスのオーケストレーションの技術は、彼が歌劇場の指揮者であったことと大きなかかわりがあります。私の経験から言っても、オーケストラの曲を書く勉強に一番理想的なのは、オーケストラの指揮であると言えます。
なお、私たち作曲家は、過去の作曲家の確立した技法をパターンとして使用するだけではなく、できうるかぎり、自分の独自のオーケストレーションのスタイルを確立する努力をします。それができたかできなかったかで、作曲家としての評価が大きく変わるからです。

以上、御参考になれば幸いです。
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この回答へのお礼

とても詳しくていらっしゃって、驚きです。 音大で作曲を専攻なさっていたんですね。 機会があれば、回答者さんの作曲なさった曲を聴いてみたいです。

お礼日時:2014/09/13 00:26

前の方も少し触れられていますが、モーツァルトやベートーベンの時代の古典的なオーケストレーションは、編成も大変シンプルでかなりパターン化している為、素人でもオーケストレーションを少しかじっただけで完成形がイメージ出来るタイプの音楽ということはあります。



素人どころか実際作曲で食ってるようなプロでもなかなか誰でもは習得出来ないのが、ラヴェルやストラヴィンスキーといった近代以降の管弦楽法だと思います。
ラヴェルは「オーケストレーションの魔術師」と呼ばれることからもわかりますが、「このアイデアは一体どこから来るのか」といった多彩で個性的な管弦楽法を多く用いています。各楽器の特性を知ることは勿論、どの音をどう置けばどう聞こえるのかといった「経験に基づく想像力」が無いとやはりなかなか達成出来ないと思います。(ラヴェルは食通で大のスパイス好きだったらしく、楽器のブレンドに香辛料のブレンドが引き合いに出されることがよくありますね。)
ただ、作曲家のガーシュウィンはラヴェルのオーケストレーションを学ぼうと弟子入りを志願したという経緯もあり(体良く断られましたが)、近代以降の複雑な管弦楽法でも、ある程度のところまでは人伝や経験で学べるということは伺えます。

また、「春の祭典」におけるストラヴィンスキー、「聖セバスチャンの殉教」において期限が迫っていたドビュッシーが、楽団とのリハーサルをしつつ改変・加筆する・・・といった話を読んだことありますので、彼ら程の音楽の偉人でもやはり「新しい音」を作るには「一発完成」ではなくそれなりの試行錯誤を要するものだということは伺えます。

現代の管弦楽(映画音楽や現代音楽)の枠組みは、やはりドビュッシーやラヴェル等の色彩的なフランス音楽の時代に完成していたと思います。
ですから現代の作曲家は、ラヴェルのように「最初に生み出した」人とは異なり、ある程度までは「パターン」として(わざわざシミュレーション等しなくても)近代の管弦楽法を用いることは出来るはずですね。


音楽は、勿論音楽経験と、それから「幼少から育まれてきたセンス(音楽のみならず)」、音楽に対する強い情熱と費やしてきた時間・・あってこその、「作品」という結果なのだと思います。クラシック作曲家を語る人にありがちですが、あまり「天才」という簡単な言葉で片付けると、物事の本質が見えなくなるかもしれません。
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この回答へのお礼

色々とおもしろいお話をありがとうございました。 ガージュインがラヴェルに弟子入りを希望していた、なんておもしろいですね。
私はそんなに Classical Music に詳しいわけではないのですが、地元のオーケストラの演奏会はよく行きます。 Mozart やBeethoven、ヘンデル、バッハ などがすきですが、アメリカですのでときどき コップランドが演奏されます。 正直いって、あまり好きじゃないですね。 この間の演奏会では 演奏された曲を作曲したおじいさんが会場にきていらっしゃいました。 フルオーケストラの曲を作曲なさるなんて、すごい、の一言でした。
ご回答、ありがとうございました。

お礼日時:2014/08/31 08:37

彼らは共にクラヴィーア(ピアノ)の演奏の名手であり、管弦楽曲を作曲する際は各楽器の音やハーモニーをイメージしながら実際に鍵盤で音を出しながら少しづつ筆を進めていったと思われます。

勿論、頭の中でも音が鳴っていたでしょうし、スラスラとスムーズに筆が進んでいった箇所も沢山あるでしょう。

音楽において、音が重なる場合、「和声と対位法」という二大要素があります。勿論、彼らもこのことの基礎をしっかり学んでおり、その上で作曲の創作活動をおこなっているわけです。また、当時の弦楽器や管楽器の名手達から楽器の特徴や性能を十分伺っており(Mozartは自身ヴァイオリンの名手でもあった)、それも曲作りに影響しています。

ただ、その作品が常人の枠を遥かに超えており、Mozartはあたかも神が人間の手を借りて書かせた・・・。Beethovenでは人間の精神・魂の限界まで音楽が到達した・・・。やはり、この二人は人類の音楽史上最大の「天才」と「楽聖」には違いありません。
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この回答へのお礼

ご回答、ありがとうございます。
昔は今のように 裏技(?)をつかうことができなっただろうに、どうやって作曲したのかな~、と思っていました。 私は昔、放送局の現場で働いていた関係で、SONY のレコーディング スタジオとかに入れていただいたことがあります。 POPS の歌手のRecording だったのですが、バックの演奏の楽器のいいところを切り貼りするように作っているのを見て、びっくりしました。 録音テープは3~4センチもある幅ひろいものでした。 (Tape だなんて、年がばれますね)
Mozart は加筆、訂正がほとんどなかった、と聞いたことがあります。やはり、天才! と思います。

お礼日時:2014/09/13 00:23

いや、プロなら普通にイメージできると思いますが。


当方音楽の専門教育は受けていないアマチュアですが、フルスコアを見れば(漠然とですけど)どんな音が鳴るのかはわかりますよ。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
それが、プロというものなんですね。

お礼日時:2014/09/13 00:24

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