
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
#2です。
お礼欄、拝見しました。うーん、これは簡単に書くのがむずかしいなぁ。
哲学のなかでつねに〈ことば〉は、たとえば〈意識〉のように、中心課題ではないにしても、洞察の対象ではあったんです。
たとえば〈わたしの意識〉を確実さのよりどころとしたデカルトは、窓の外を歩いている他者がどこまで確実な存在か、疑ってみます。
帽子の下、衣服の下には「自動機械」が隠れているのではないか、と。
いや、自動機械ならば
「目の前で話されるすべてのことの意味に応じて返答するために、ことばをいろいろに配列することは、人間ならどんなに愚かな者でもできるが、機械にできるとは考えられない」(『方法序説』)
つまり、〈ことば〉は人間を人間ならしめているものだ。そして、その〈ことば〉を媒介として、人間は他者と交流している。
近代の端緒から、このような認識はあった。
そして、ヘーゲル。
人間と社会の関係を考察するときに、ヘーゲルはことばが果たす重要な役割、つまり、〈わたし〉を私的なものから、公的なものにする契機としての〈ことば〉を考えます。
けれども哲学の中心的なテーマは、ずっと〈意識〉だった。
それを動かしていったのは、ウィトゲンシュタイン、そしてすこし時代がくだって、ウィトゲンシュタインとはまったく別の流れからですが、メルロ=ポンティでしょう(とくにウィトゲンシュタインは非常におもしろい「言語ゲーム」という考え方を導入するのですが、これを書き始めると回答が終わらなくなってしまうので、省略します。もし興味がおありでしたら中山元『〈ぼく〉と世界をつなぐ哲学』ちくま新書をお読みください。これは哲学史の入門書としては、すごくわかりやすいし、おもしろいし、かなり深いです)。
一方、メルロ=ポンティ、わたしはこの人が大変好きで、もう名前を書いてるだけでうれしくなっちゃうくらい好きなんですが、メルロ=ポンティ(もう一回書いてみました)、この人は、〈意識〉の学問、現象学から登場します。
すべてを取り払った後に残る〈純粋な意識〉。
けれどもそれはどんな〈ことば〉で語るのだろうか?
〈意識〉が考えるとするなら、それはどんな〈ことば〉なのか?
「語り手は話す前に考えるのではないし、話すあいだに考えるのでもない。語り手のことばが思考そのものである」(『知覚の現象学』)
このように、メルロ=ポンティはソシュール言語学の理論を踏まえながら、現象学に新たな局面をもたらしていきます。
こうして20世紀も中盤になったごろから、哲学全般の流れは、大きく〈意識〉から〈言語〉へと転換し始めます。
ただ一般的には、いわゆる「言語論的転回」というとき、哲学全般が意識からことばに移っていった、というよりも、この用語はもうすこし限定的な用語として使われます。
「言語論的転回」という言葉で指示されるのは、言語が持つ力を分析することで、哲学の難問を解消しようとする試みのこと、ひとつはラッセルやフレーゲらの論理学、もうひとつは日常言語学派の流れ、このふたつであると思います。
ついでにここも書いておくと、ラッセルやフレーゲは、哲学の思考や概念は、日常の言語を使ったことで、誤ったものになってしまった、透明で、誤謬を含まず、論理操作できる言語を用いれば、哲学の問題は解消する、と考えます。
どんな言語か。
たとえばラッセルはこんな文章について考えます。
「現在のフランスの国王は禿頭である」
これは
(1)現在のフランス王は少なくともひとり以上存在している。
かつ(2)ひとりの人間が存在している。
かつ(3)その人は禿頭である。
という三つの連元項から成り立っている。
そうしてこれを
(∃x∧)(Fx∧(∀y)(Fy→=x)∧Bx)
と 論理記号で表記し、第一の連元項が偽であることから、全体として偽である、と証明してみせる。
こうやって記号論理学というものを切り開いていきます。
もうひとつの日常言語学派、これはオースティンの言語行為論とそれをひきついだサールの語用論をおもに指します。
オースティンは、日常で使われることばを、その内部にある意味だけではない、と考えるんです。
たとえば「コーヒーが入りました」ということばが、ある局面では、単に情報を伝えるだけであるのに対し、また別の局面では「ひとやすみしませんか」という誘いを意図している場合もある。
こうやって、日常の言語にみられることばの使い方に戻ることによって、哲学の問題も解決できる、とするのです。
詳しく言い出すとほんとうにキリがなくなるので、ここらへんでやめますが、まだわかりにくいところがあれば、どうぞ。
No.5
- 回答日時:
#4の回答、ラッセルの項で書いた論理記号がおかしいです。
すいません。正確には
(∃x)(Fx∧(∀y)(Fy→y=x)∧Bx)
でした。お詫びして訂正しておきます。
各記号の意味や読み方は
http://phaos.hp.infoseek.co.jp/preparations/symb …
がわかりやすいかと思います。
参考URL:http://phaos.hp.infoseek.co.jp/preparations/symb …
大変詳しい説明、どうもありがとうございました。哲学はやはり難しいですね。でも、なんとかこれを足がかりに授業についていけそうです。
本当にありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
言語論的転回について説明いたします。
まず、言語論的転回の先駆けとなったカントの
コペルニクス的転回というものをご存知でしょうか。
例えば、あなたの眼の前にりんごがあるとします。
一般的には、りんごがあなたの視覚を経由して脳で、
目の前の物は「りんご」と認識していると考えられ
てきました。しかし、カントはこれを180度ひっくり
返します。まず、何よりも先にあなたの頭の中に、
「りんご」という概念があり、それが、目の前の
ものをりんごとして成り立たせている、とするので
す。つまり、赤い丸い果物を「りんご」と認識する
ためには、あらかじめ「りんご」という概念を有して
いる必要があるのです。
言語論的転回もこれとよく似ています。りんごを
「りんご」と認識するためには、「りんご」という
表象が必要になります。ここまではカントとほぼ、
同じと考えてくれてかまいません。ただ、カントと
異なる所は、その「りんご」という表象が言語に
よって決定されている点です。
例えば、虹の例を用いて説明しましょう。一般的に
日本では虹は七色とされています。これは、日本語
の中では虹の色は7つに区分されているからです。
しかし、外国では虹は7色ではありません。3色で
あったり、5色であったりします。もちろん、実際
に外国の虹の色が少ないということではありません。
その外国語は虹を3つあるいは、5つに区分している
ということです。
このように、我々はまず虹を見てから、その色を
7色だと感じるのではなく、あらかじめ言語によって
決定されている色を虹の中に見るのです。言語の
このような働きを指して、言語論的転回と言います。
虹の話は僕も聞いたことがあります。言語が認識を規定するとでも言えばよろしいんでしょうかね?
参考になりました。ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
「言語論的転回」(linguistic turn)というのは、20世紀に入って、近代哲学から現代哲学へと転換していく、その動向をさすことばとしてあります。
デカルトに端を発する近代の哲学は、〈わたしの意識〉を、まず確実なよりどころとして、哲学をうち立てていこうとします。そこでもんだいになるのは、人間の認識というのは、どのようなものなのか、ということです。
人間の認識がどこからくるのか、いったいどのようになされるのか、どれほど確実なものなのか、そして、人間に認識できるのは、どこからどこまでなのか。
さまざまな哲学者たちがこのもんだいに取り組んでいきます。
けれども、〈わたしの意識〉の確実さをよりどころにしているかぎり、「わたし」の外にいる他者や、世界の問題をうまく扱うことができない。
やはり〈わたしの意識〉から出発する哲学には、方法論的な欠陥があるのではないのか。
そういうところから、20世紀に入ってから、〈ことば〉の側から、このもんだいを解決しようとする動きが出てきます。
近代の意識を中心とする哲学が、出口のない袋小路に入り込んでしまったのは、哲学でつかわれる言語が適切なものではなかったのではないか。
「哲学的問題は、言語を改良することによって、もしくはわれわれが現在使っている言語をより良く理解することによって解決(または解消)される」
言語論的転回という言葉を最初に使ったのはベルクマンですが、一般に普及したのは、アメリカの哲学者リチャード・ローティが編纂したアンソロジー、『言語論的転回』が大きな影響を与えたことによります。
上記のことばはそのローティの有名な言葉ですが、この「言語論的転回」の特徴をよくあらわす言葉としてあると思います。
そのうえで、わかりにくいところ、もっと知りたいところなどあれば、補足をお願いします。
この回答への補足
話としてはよく分かりました。ありがとうございました。
しかし、自己の意識を重視する考え方が袋小路にはまったから次に言語に注目するというのは、やや唐突な印象を受けるんですが・・哲学が意識分析から言語分析にいたる具体的なプロセスが何かあるのでしょうか?
No.1
- 回答日時:
これは自信がありません。
私も言語論的転回の意味を知りたいです。私が誤解して思っていることを書きます。言語論的転回とは、言語が背景から主題に変わったことを言うのではないでしょうか?それまでの言語は世界を記述するだけの道具だったものが、言語そのものに注目して言語についていろいろと分析するようになったことを言うのではないでしょうか?おそらく20世紀になってのことだと思います。フレーゲ、ウィトゲンシュタインなど。
哲学には存在論、認識論、意味論というものがあると哲学の授業できいたことがありますが、そのなかの意味論と関係があるような気がします。
なるほど、言語は道具とみなされ、人の意識などに重点が置かれていた考え方から、言語そのものを分析しようとする考え方へ移行したことをさすんですね?
やっぱり哲学って難しいですね。
ありがとうございました。
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