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No.3ベストアンサー
- 回答日時:
心理学のカテゴリーでの御質問ですので一応教科書的な回答をしておきますと,
「想い出」は「記憶」の一形態と見ることができます。
現代において「記憶」という言葉の指し示す対象は非常に拡張されていて,
「コンピュータの記憶装置」や「形状記憶合金」のように非生物の内部的情報保存機能にまで用いられますが,
本来は生物,とくに人間の内部的な情報保存機能について用いられてきた言葉だと思います
(外部的情報保存は一般に「記録」と呼ばれます)。
人間が経験を通して獲得した情報を保存する機能である「記憶」には
性質を異にするいくつかのサブタイプがあることが知られています。
まず秒単位で次々と書き換えられていく「短期記憶」と半永久的に保持される「長期記憶」に大別され,
長期記憶はさらに,言語やイメージによる表象化が可能な「宣言的記憶(陳述記憶)」と
表象化が困難で意識にのぼりにくい「非宣言的記憶(非陳述記憶,手続き記憶)」に大別されます。
そしてさらに,それぞれにいくつかのサブタイプが想定されていますが,
質問者さんのおっしゃる「想い出」はこの「宣言的記憶」のサブタイプである
「エピソード記憶」に相当するものと考えられます(下記URLを参照してください)。
http://www.sky.sannet.ne.jp/mikeneko/psychology/ …
エピソード記憶は
「昨日の仕事帰りに駅裏の店で食べたカレーは辛くてうまかった」というような時間軸や感情を伴う主観的な体験の記憶です。
これに対し意味記憶は
「カレーの辛味成分の主体はカイエンペパーに含まれるカプサイシンである」といったような辞書的知識のことです。
学校の授業というものは基本的に意味記憶の伝達を目的としていますが,
振り返ってみると「あの英語の先生が教室に入ってくるといつも酒臭かったな」といった
エピソード記憶しか残っていないというのはよくあることです。
両者を区別することに懐疑的な立場もあるのですが,
生活史健忘(いわゆる記憶喪失)において一定期間のエピソード記憶が失われていても
多くの場合,会話に不自由せず,常識的な知識が失われたりしないことから,
この区別にそれなりの妥当性があることがわかります。
また意味記憶の保持・想起において現代のコンピュータは量的にも質的にもすでに人間を凌駕していますが,
「昨日はいっぱい計算させられてくたびれたぜ」といったエピソード記憶をコンピュータに持たせられるかどうかはこれからの課題です。
一般に経験的事実に基づく「記憶」と事実ではない単なる「想像」とは区別されますが,
記憶システムの内部的には同等であって,(事実か否かの)メタレベルの記憶に拠って区別が可能になっていると考えられます。
記憶の内容は想起のたびに再構成されて一部が失われる一方で新たな情報が付け加えられたりするものですが,
エピソード記憶はとくにこのような変容をこうむりやすいようで,
体験していないのに体験したかのような偽の想い出が作られてしまうことがあることも知られています。
これに関する参考図書をひとつ挙げておきます。
抑圧された記憶の神話
E.F.ロフタス, K.ケッチャム(著), 仲真紀子(訳)
誠信書房 ISBN:4414302900
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4414302900.h …
想い出,すなわち人生の記憶と記録を人はどのように組織化していくのかといった研究をしている心理学者もいます。
大阪市立大学 大学院創造都市研究科/村上研究室
http://www.media.osaka-cu.ac.jp/~harumi/
とても詳しく解説頂きありがとうございます。
エピソード記憶の方が改ざんされやすいなんて
とても驚きですし、参考になりました。
回答ありがとうございました!
No.2
- 回答日時:
こんばんは。
記憶と思い出の違いとは何か、というご質問だと理解しました。
記憶 :経験したことについて憶えている事柄
思い出:経験したことについて頭に思い浮かべた事柄
という辞書の定義から捉えてみますと、
記憶は頭のなかに入っているものであり、思い出はそれに基づいて再構成され、頭に浮かべられたものであるといえるのではないでしょうか。
つまり、保存されている「記憶」を取り出し、意識できる状態にしたものが、「思い出」である、と私は理解しています。
No.1
- 回答日時:
こんにちは。
「記憶」というのは生後の学習によって獲得・保持された情報の全てです。そして、「思い出」といいますのは、その情報を組み合わせることによって再現される「あなただけの体験」です。
記憶というのは、生後の体験・学習によって獲得された情報が、「想起・再現」の可能な状態で保持されたものです。本来、生後の体験というのは全て個人的なものですが、それにも「汎用的」なものと「個人的」なものがあります。
「汎用的な記憶」といいますのは、例えば代表的なものは「言語」です。言葉というのは我々が生まれたあとの学習によって獲得され、生涯に渡って使用されるだけではなく、その社会では誰にとっても「共通の記憶概念」です。これ以外にも、我々は色や形、音や味覚などを体験し、それを分類したり、言語化したりすることによって、それらをひとつの概念や状態として「理解・再現」することができるようになります。このためには、我々はそれを何という言葉で表せば良いのか、あるいは、それをどのように解釈すれば良いのかということも、ある程度は生まれた社会の慣習に従って学ばなければなりません。
ですが、どのように解釈すれば良いのかとはちょっと別に、それに対して自分がどのように感じるのかといったものは個人の個性としてまた千差万別です。更に、学校や社会で学ぶことは、内容的にはほぼ共通の知識ではありますが、飽くまで「学習」というのは全てが生後の個人体験に他なりません。まして、そのひとが独自に体験したことは、共通の概念として取り扱い、それを言葉として他人に伝えることはそれなりに可能ではありますが、それに対してどう感じたかといったことは、決して万人に共通のものではありません。
例えば、生まれ故郷違うというのであれば、当人と他人では、その風景に対する思い入れや感じ方は大部違ってきますよね。我々は、その生まれ故郷の風景を、視覚分類や言語分類によって理解するための知識を持っているだけではなく、それに対する感慨といったものも、個人的な「体験記憶」としてまた大事に持っています。それらを組み合わせることによって、我々は「生まれ故郷の記憶情報」というものを「ふるさとの思い出」として再現することができるわけです。
従いまして、「思い出」というのは学習記憶の組み合わせによって再現される「あなただけの体験」ということになると思います。
早速の回答ありがとうございます。
記憶は共通の認識ができるもので、
思い出は感情が加わり自分だけの認識となるもの、
なんですね!
記憶と思い出にはそういう違いがあったんですね。
どうもありがとうございました。
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