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非定常熱伝導では、微小領域に出入りする量として以下の4個を考えます。
(1) 入ってくる熱量 Qin
(2) 出て行く熱量 Qout
(3) 内部で発生する熱量 Qgen
(4) 内部に蓄えられる熱量 Qstr
まず簡単な1次元の熱伝導(細長い棒の伝熱)を考えます。
図1のように、幅 Δx の領域(□)の左側の位置を x [m] として、左側から入ってくる熱量を x の関数とみなして Qin = Q(x) [J/s=W] とします。そして、右側の位置 x + Δx から出て行く熱量を Qout = Q(x+Δx) [W] とします。関数 Q(x) の具体的な形は現時点では分かりませんが、Δx が非常に小さい場合、 Qout = Q(x+Δx) ≒ Q(x) + dQ/dx*Δx と近似できます。これで (1) と (2) が出ました。
Q(x) Q(x+Δx)
→□ →
Δx
【図1】
さて次に、領域(□)の内部に熱源があるとします。その熱源の単位体積あたりの熱量(熱密度)を x の関数として q(x) [W/m^3] とします。すると、領域(□)の内部での発熱量 Qgen [W] は Qgen = A*q(x)*Δx となります。A は熱が通る断面積 [m^2] です(今は1次元なので断面積はないのですが、一定で微小な断面積があるとします)。これで(3) が出ました。
最後の内部に蓄えられる熱量 Qstr ですが、ここに非定常熱伝導特有の現象(熱は急には伝わらない)が入ってきます。
ある体積 V [m^3] の物質に熱エネルギー E [J] (熱量でなくエネルギー)を与えたとき、その物質が何℃になるかというのは、その物質の比重(密度) ρ[kg/m^3] と比熱 cp [J/kg/K] を使って、E = ρ*cp*ΔT*V で表されます(ΔTは温度変化)。ところが、こうなるのは充分な時間 t が経過したときで、瞬間的には dE/dt = ρ*cp*∂T/∂t*V に従って変化します(これを t = 0~∞で積分したのが上の定常状態の式です)。ここで dE/dt というのはエネルギーの時間変化 [J/s] ですが、これは熱量 Q [J/s=W] に他なりません。したがって、領域(□)の内部に蓄えられる熱量 Qstr は、微小領域の体積を V = A*Δx でおきかえれば Qstr = ρ*cp*∂T/∂t*A*Δx となります。これで(1)から(4)までの量が出ました。
(1)から(4)までの熱量のバランスは、入ってくる熱量と内部で発生する熱量から外に出て行く熱量を差し引いたのが、内部に蓄えられる熱量ですから、 Qin + Qgen - Qout = Qstr です。したがって、 Qin = Q(x)、Qout = Q(x) + dQ/dx*Δx、Qgen = A*q(x)*Δx、Qstr = ρ*cp*∂T/∂t*A*Δx ですから
Q(x) + A*q(x)*Δx - { Q(x) + dQ/dx*Δx } = ρ*cp*∂T/∂t*A*Δx → -dQ/dx*Δx + A*q(x)*Δx = ρ*cp*∂T/∂t*A*Δx --- [1]
最後に、熱伝導に関するフーリエの法則を利用します。温度勾配があるとき、そこを流れる熱量は温度勾配に比例するという法則で、Q = -A*λ*dT/dx という式で表されます。Tは温度 [K] ですが、場所 x の関数なので一定ではありません。A は熱が通る断面積 [m^2] です(上でも説明しましたが、今は1次元なので断面積はないのですが、一定で微小な断面積があるとします)。λは物質の熱伝導率 [W/m/K] で、この値が大きいほど、小さい温度勾配でたくさんの熱が移動します。-符号がついているのは、例えば温度勾配 dT/dx が+のとき(x が増えるほど高温度)、熱は反対方向に移動するからです。Q > 0 というのはx軸方向に流れる熱量、Q < 0 は反対方向に流れる熱量です。多くの熱を移動(加熱や冷却)させるには、熱伝導率が大きな物質を使い、伝熱面積は大きく、温度勾配(温度差)を大きくすればいいわけです。このフーリエの法則を使うと、dQ/dx = -d(A*λ*d^2T/dx)/dx ですから、式 [1] は -d(A*λ*d^2T/dx)/dx *Δx + A*q(x)*Δx = ρ*cp*∂T/∂t*A*Δx となりますが、Aはxによらず一定と仮定しているので偏微分の外に出せます。すると各項に共通してA*Δx が出てくるので、これを消すと
d(λ*dT/dx)/dx + q(x) = ρ*cp*∂T/∂t --- [2]
となります。これが非定常の1次元熱伝導方程式です。熱伝導率 λ を定数(場所依存なし)として、偏微分の外に出して整理すれば
d^2T/dx^2 + q(x)/λ = α*∂T/∂t --- [2']
となります。α( = ρ*cp/λ ) は温度伝導率で、これが大きいほど熱の伝わりが遅くなります。内部に熱源がない場合は、 q(x) = 0 なので
d^2T/dx^2 = α*∂T/∂t --- [3]
となります。さらに定常状態では、∂T/∂t = 0 なので、式(3)は
d^2T/dx^2 = 0 --- [4]
というラプラス方程式になります。
なお、3次元でも考えは同じで、断面積 A を Δy*Δx として、x方向以外に、y方向とz方向で Qin と Qout を考えれば良いわけです( Qgen と Qstr は方向がないので同じ値を使います)。その3次元の非定常熱電動方程式は以下のとおりです。
d(λ*dT/dx)/dx + d(λ*dT/dy)/dy + d(λ*dT/dz)/dz + q(x) = ρ*cp*∂T/∂t
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