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当方、数学についてはシロウトですが、お許しください。
集合論関係の本を読んでいてどうしてもわからないことがありまして。

ラッセルのパラドックスというのがありますよね。
このパラドックス自体は飲み込めたつもりですし、そういった類のパラドックスを避けるために公理系を整備するという発想も、まあ判る気がします。

が、例えばZF公理系ならば、どうしてラッセルのパラドックスが回避可能なのかがよくわからないのです。外延性公理から正則性公理まで眺めてみても、なぜこの公理系を採用すればパラドックスが起きないのかピンときません。

どなたかお詳しい方、解説をお願いできませんでしょうか。

A 回答 (7件)

(1) 内包・外延の概念


モノの範疇を性質で指定するのが内包、要素の集まりとして指定するのが外延ちうこってす。よく用いられる例として
『「明けの明星」と「宵の明星」は内包としては異なるが、外延としては(どっちも金星のことだから)同じ』
『「4面体」と「三角錐」は内包としては異なるが、外延としては同じ』
などがありますね。

(2) {x | φ(x)} と書けても、それが集合かどうかは別問題。
∀x(x∈y ⇔ φ(x)) となるyのことを{x | φ(x)} と書くのは構わんのですが、でも、こう書いた物を無条件に集合だと認めてしまうとラッセルのパラドックスが出ます。ですから、{x | φ(x)} と書いてあっても、これが集合とは限らない、という立場を取る。ところで、それがもしも集合であるなら、(外延の公理により)それは一意的です。
 つまり、勝手なもの{x | φ(x)}を持って来て「これは集合か否か」と尋ねてみても、ZF公理系は単に「もしそれが集合なら、それは一意的です。」とだけ述べていて、集合かどうかの判定法など提供してくれやしません。(丁度、屏風の虎を追い出してくれたら捕まえてやる、と言ってるようなもんです。)これじゃ手も足も出ないような気がしますが、実はそうでもない。
 
(3) 数学で使う集合は、素性が分かっている。
 確かに集合になってると分かっているものを素材にして組み立てた集合は、こりゃ確かに集合だと言えます。では、最も基本的な素材となる「集合になってることが確かなもの」って何か。ひとつしか思い当たりません。それは空集合です。
 空集合{}を素材にして、対の集合(例えば{{},{{}}})、既に存在する集合の部分集合と合併集合、べき集合という手段で組み立てて行けば、有限集合が作り出せます。さらに無限公理を入れてようやく自然数の集合が作れる。こうして作られる素性の分かったモノ(対象)だけを、数学では扱う。

(4) となると、「あらゆる集合は空集合を素材にして作れるのか(そんなはずないよ!)」、すなわち「空集合を素材にしたのでは作ることのできない集合があるかどうか(あるに違いない!)」ということが気になるかもしれません。
 ところが、空集合を素材にして作ることのできないモノは、(それが集合であるか否かに関わらず)数学の中に顔を出す機会がない。数学に出て来ない『屏風の虎』があるかないかなんて、数学にとってはどうでも良い事です。だから、ZF公理系はそんなものについては(あるともないとも言わずに)単に放置プレイしてあるんです。
 
 かくて、ラッセルの{x| not(x∈x)}というモノも(素材から作れるモノではないから)数学の中に入り込めないまま放置プレイされる。

という仕組みです。

 以上をまとめて別の言い方をすると:
 公理論的数学は「集合」の概念を、『現実に存在するものを要素と考えたときの「集合」の概念(素朴な「集合」の概念)』よりもずっと狭い別の概念として定義する(つまり空集合から作り出されるものだけを「集合」とする)ことによって、ラッセルのパラドックスをハジキ出した。
 また、このことは、『現実の存在(実存)を指して言う「存在」と、数学でいう「存在」は、全く異なる意味を持つ』ということをあからさまに示しているとも言えましょう。

この回答への補足

ありがとうございます。
私のツボを突いていただいているように思います。

 例えば、Φを空集合として、1を{Φ}、2を{Φ,{Φ}}……、そして無限公理を導入、さすれば自然数の集合がつくれる、と。そして、ZFに基づいてそんな構成の仕方ができない「集まり」は、数学的に「集合」であるかどうかは知ったこっちゃない。そうすれば、{x|not(x∈x)}のようなものはハジキ出せる――そういう仕組みなのですね。

 かなり理解に近づいた気がします。
 確認ですが、例えば中学だか高校だかの数学の授業で集合を習う際、例として「犬の集合」とか「人の集合」({x|xは犬である}とか{y|yは人間である}と書いていいのかなぁ)を考えさせられた覚えがあります。
 そういう例え話は、あくまで集合論の概略を学ぶ上での「イメージ作り」であり、公理的集合論においてはそんなものが集合であるかどうかは知ったこっちゃなく、少なくとも数学的な対象として扱うことはない――そういう理解でいいのでしょうか。

補足日時:2007/08/28 10:45
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 No.5へのコメントについてです。


 まさしく仰る通り、「犬の集合」を考えるのは「イメージ作り」のために行う、素朴集合論以前の、いわばたとえ話でしょう。だって、未来に生まれる犬、どこかの異星に生まれた犬まで全部考えなくちゃいけない。「今この囲いの中にいる犬の集合」というのですら、何が犬で何がそうでないかどうやって判定するのか。(ってことは、「集合」以前に、そもそも「命題」という概念が、自然言語による論述という文脈においてと、数学という文脈においてでは喰い違っているわけです。→ http://oshiete1.goo.ne.jp/qa717536.html 逆にこのあたりの区別を曖昧にしていると、数学をフェミニズムや精神分析のアナロジーに使うような馬鹿げた論法(いわゆるポストモダン批評)がまかり通ってしまう。http://oshiete1.goo.ne.jp/qa41618.html はジャック・ラカンが言った「断層以上にコンパクトなものはない」なるナンセンスを巡る、まじめな学生さんの悩みのお話です。)

 No.6でご指摘の巨大基数の理論ちうのは、ZF公理系に「(いろんな形の)巨大基数公理」を付け加えたらどうなるか、という話です。ZF公理系が放置プレイしてるモノにまで数学の対象を広げようということです。ZF公理系は「空集合から作れるものだけが集合だ」なんて言ってはいないのだから、広げる余地は確かにあります。ですが、当然、ラッセルのパラドックスみたいな矛盾が入り込んで来る恐れもある。で、「ZF公理系+巨大基数公理」という公理系の無矛盾性について考えるのは、数学じゃなくて超数学の問題でしょう。
 もちろん、風呂敷を広げれば広げるほど、無矛盾性は危うくなって行きます。なので、「ZF公理系+巨大基数公理」から出発して突き進むうちに矛盾が現れて、積み上げた成果物は全部無に帰し「ゆえにZF公理系+巨大基数公理は矛盾であると証明できました」という話になるかも知れない。そうなったとすると結局これは、超数学の話。そうはならずに面白い成果が出て来たら、やっぱり元に戻って「じゃあ、ZF公理系+巨大基数公理ってそもそも無矛盾なんだろうか」を考える必要がある。

 一方、「公理論的数学」の範囲内で(つまりそういう心配をしなくていいように)やる普通のやり方は、既に数学にある材料を使って作れる新しい集合の存在を証明する(従って、ZF公理系が無矛盾なら、以降の話も無矛盾だと分かっている)というところから出発します。たとえば超準解析学はその典型でしょう。

この回答への補足

ありがとうございます。
 ほぼ理解したように思います。今考えれば、公理系の話なのに、それを読んでいる私自身の発想が、いつの間にか自然言語に影響されてしまっているところに問題があったように思います。それをきちんと自覚できるかどうかがポイントだったようです。
 巨大基数云々も、お話としてはわかります。確かにZFでは「空集合が存在する」といっているだけですから、広げる余地もあるのでしょう。それが普通の意味での数学ではなく、無矛盾性や完全性を問うような話につながるというのも、内容はともかく話としてはわかります。もちろん私の手には余りますが。

 リンクも拝見しました。私は生粋の文系なのですが、そういえば、かつてカル・スタだのポストモダンだのといったフカシに苦しめられた経験があり、それが集合論への関心につながっています。あの手の変な流行はもう廃れつつあるようですが。

補足日時:2007/08/28 14:36
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なるほど。

。巨大基数の理論などは数学じゃないってことですかね^^ まぁ、わたしはよくわかってないんですけど(笑)
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ありがとうございます。



> ∀x[x∈a⇒∀y∀z(P(a,y)∧P(x,y)⇒y=z)]⇒∃b∀u[u∈b⇔∃x(x∈a∧P(x,y))]

∀x∀y∀z(P(x,y)∧P(x,z)⇒y=z)]⇒∀a∃b∀u[u∈b⇔∃x(x∈a∧P(x,u))]

かな??スコーレムが整備したものなのかな。。

やはり、わたしは、素朴集合論の楽園にいたほうがよさそうだ^^;
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ANo.1への補足の質問について。


どれというより外延性公理と正則性公理を除く、集合の存在を示している公理は全て内包公理で書けてしまうのでは?
内包公理は論理式Φ(x)に対して
∃y∀x(x∈y⇔Φ(x))
ですね。外延性公理でこの集合yは一意に定まるので、これを{x|Φ(x)}と書くことにしましょう。
たとえば空集合は{x|x≠x}で良いですね。a,bの対は{x|x=a or x=b}、Aの合併は{x|∃y∈A(x∈y)}など。その他も同様に書けるでしょう。

ANo.2さんへ。
置換公理は、論理式Pについて
∀x[x∈a⇒∀y∀z(P(a,y)∧P(x,y)⇒y=z)]⇒∃b∀u[u∈b⇔∃x(x∈a∧P(x,y))]
です。この公理の前半は論理式Pが(広義の)関数であることを要求しています。従って、この公理は集合aを関数Pで移した値域が集合であるということを示すだけで、内包公理のように論理式を満たす集合全体が集合になることを示しているわけではありません。
分出公理も置換公理に含まれますから同様です。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。
私にとっては理解がちょっと難しいのですが…。

 つまり、{x|Φ(x)}というのは、「性質Φであるようなxからなる集合」という感じですよね。やはり、「自分自身を含まない」という性質をΦとした集合を考えてもいいような気がします。そんな集合の対や合併を考えてもいいような…。まあ、そうなるとあまりにもアナーキーな集合になってしまう気もしますが。

 当方、述語論理式には慣れていないこともあり、「うーん…」です。

お礼日時:2007/08/28 10:13

「ZF公理系ならラッセルのパラドックスが回避できる」というのは、どこで得た知識なんですか?



分出公理や置換公理は、ある条件を満たすφ(x,...)について、{x:φ(x,...)}という形で導入できる集合の存在を保証してますが、たとえば、φ(x)としてx=xを考えると、{x:x=x}はすべての集合からなる集合となってしまいます。これでは、ラッセルのパラドクスに陥る。。

「ラッセルのパラドックスが回避・・」は、型理論などの方面のお話ですか?

この回答への補足

色々とありがとうございます。
皆さんから頂いた回答にコメントさせていただきます。

私が参照しているのは主に
(1)上江州忠弘2004『集合論・入門』遊星社
(2)松村英之1966(復刊版2004)『集合論入門』朝倉書店
です。

 例えば文献(2)において、「許される操作によって新しい集合をつくりだすことを有限回繰り返して得られるものだけを集合と呼んでおけば、矛盾は起こらない(少なくともこれまでの数学者の経験では起こらなかった)」(p.115)とあります。ここで「矛盾」とあるのは、直接的にはラッセルのパラドックスを指しています。
 その上で、そんな「許される操作によって」集合を構成する原理を、もっとも厳密に公理の形で述べたものが例えばZF公理系であるとし、ZFの紹介に入っているという論調です。
 ですからラッセルの型理論の話ではありません(型理論は私にはちょっと敷居が高すぎて…)。

 mikaemiさんが書かれている「たとえば、φ(x)としてx=xを考えると、{x:x=x}はすべての集合からなる集合となってしまいます。これでは、ラッセルのパラドクスに陥る」というのが、たぶん私の疑問の根本のような気がします。「すべての集合からなる集合」なのかどうかはピンと来ませんが、ものすごく大きな「集合の集合」を、ZFで扱ってもいいじゃないかという気がするのです。
 mikaemiさんのように式で考えられるわけではありませんが、ZFで扱われる集合としてラッセル集合を考えてはいけない(考えられない?)理由が、よくわからないのです。

補足日時:2007/08/28 09:32
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ZF公理系ではラッセルのパラドックスで使う集合が構成できないからです。



ラッセルのパラドックスで使われている「自身を要素として含まない集合の集合」というものは図式で書けば
{x|not(x∈x)}
とでも書けるでしょう。このような集合の構成法は内包公理と呼ばれる強い公理です。
ZFではこのような構成はできません。
もともとZFは、内包公理が強すぎて矛盾を導くことから、これを矛盾を作り出せない弱めた公理に置き換えたものです。

この回答への補足

ご回答ありがとうございます。

すみません、よろしければもう少しお教えいただきたいのですが、
内包公理というのは、要するに「ある共通の性質を満たすものの集まりは集合である」というニュアンスですよね?(理解不足があればご指摘ください)

この「強すぎる公理」を弱めた部分は、ZFでいえばどのあたりになるのでしょうか。それとも、もしかしたら、この「どのあたり?」という私の疑問そのものがおかしいのでしょうか……。

補足日時:2007/08/27 18:16
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