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- 回答日時:
レーザーの仕組みの解説はweb上にたくさんあります。
質問者さんの知識がどの程度のレベルか知らないのですが…
私は少なくとも原理的なことは知っているので試しにやってみます(前に人に聞かれたときちゃんと答えなかったなぁ、という反省もこめて)。
確認のため、レーザーの語源は
Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
の頭文字です。LASER.
その意味は
輻射(radiation)の誘導放出(stimulated emission)による光(light)増幅(amplification)
ですね。(なお輻射は放射とも訳されます。誘導放出は誘導放射とも訳されます。)
つまり光の増幅に誘導放出を使っている、ということです。
だからレーザーを知るには誘導放出を知らなければいけません。
もっと基本的に光るとはどういう現象か知っている必要があります。
ものが光る=発光するのは、言い方を変えると物質が光を放出するということです。
物質が光を放出するためには、その準備がいります。
光る準備ができている状態のことを励起状態(excited state)といいます。励起状態にあれば必ず光るわけではないですが、光る準備ができている状態は全て励起状態です。
物質が光を放出すると励起状態ではなくなります。
これが光るという現象です。(ちゃんと理解するにはいろいろ注釈が必要です。)
光を放出するとき放出する仕方があって、すべて自然放出(spontaneous emission)と誘導放出の二つに分けられます。
蛍光灯やホタルの光のように、冷たくても光るのはほとんど自然放出です。
白熱電球や太陽の光のように、熱くなって光るのは両方含まれていると考えてよいと思います。
(蛍光灯が冷たいと言うと変に思うかもしれませんが、熱いから光っているわけではなく蛍光管の表面が結果的に熱くなっているだけです。また白熱電球が熱いから光っているというのは電球表面が熱いというレベルどころではなく中身はもっと熱い。)
自然放出は、励起状態にある物質が、勝手に(自然に)光る現象のことです。
誘導放出は、励起状態にある物質が、外から来た光につられて(誘導されて)光る現象のことです。
これで「励起状態」と「誘導放出」の意味はOKでしょうか。
さて励起状態に準備した物質に光を当てます。
上手く誘導放出を起こさせると、誘導放出光が誘導した光に加算されるので、その物質を通った光は強くなって出てきます。それが増幅作用です。
そういう増幅作用を起こさせるには、励起状態のなかでも特別な状態(反転分布という)にしなければダメなんです。光る物質を励起状態にしておけば何でもいいわけではない。光る物質は光を吸収することもできるので、誘導放出する光より吸収する光の方が強ければ増幅しないからです。
増幅できる状態(反転分布)を作れる物質をgain medium(=利得媒質)といいます。利得媒質は固有名詞ではなく一般名詞です。その媒質を通った光が「利得を稼いで」増幅される、という意味が込められています。レーザー装置の中に必ず入っていて、利得媒質の名前でそのレーザーの名前が決まります。これが答えのひとつ。
質問者さんの扱うレーザーの利得媒質は何でしょうか。
気体レーザーなら、利得媒質は気体です。たとえばArレーザーなら、Ar気体が利得媒質です。He-Cdレーザーなら、HeとCdの混合蒸気が利得媒質です。
液体レーザーの例は、色素レーザーがあります。液体にローダミンやクマリンなどの色素を溶かしたものが利得媒質です。
固体レーザーの例はYAGレーザーがあります。YAGという固体が利得媒質です(厳密にはYAGに添加した物質で、たとえばNd:YAGならNdが利得媒質です)。
半導体レーザーは、そういえば、あまり利得媒質で呼ばない気がします。たとえばAlGaAsやInGaNなどがあります。赤いレーザーポインタに使われる利得媒質はAlGaInPのようです。
例外として利得媒質の名前ではないレーザーにエキシマレーザーがありました。希ガスや希ガス-ハロゲン混合物の利得媒質が、エキシマ(エキシプレックス)という状態をつくることから付けられた名前です。
利得媒質にはいろいろな種類があります。
レーザーの基本構造は、向かい合う鏡の中に利得媒質を置いたものです。
向かい合った鏡を往復する光が利得媒質を何度も通ることで、誘導放出を何度も起こすように仕組まれています。それが上手くいってレーザーとして動作すると、レーザー光(指向性が高くコヒーレントな光)が取り出せます。
レーザーとして動作することをレーザー発振するといいます。それを理解するには、たとえば「レーザー発振の閾値」というキーワードを調べると役に立つと思います。
lasingというのはlaseの現在分詞形で、laseが「レーザー発振する」にあたります。これがもう一つの答えです。
たとえば
If it doesn't lase, ...
は、レーザー発振しないとき...と訳せます。
LASERという言葉はあまりに有名になってしまって頻繁に使われるため、小文字でlaserと書いても良くなったようです。しかもlaserという名詞から、laseという動詞が生まれています。
それを念頭に、文脈によって判断すべきでしょう。
もっとちゃんと理解するには量子力学(基底状態、励起状態、遷移など)、レーザー物理(EinsteinのA係数B係数、レート方程式など)、量子光学などの範囲の知識が必要です。
この回答へのお礼
お礼日時:2009/05/06 21:52
gain medium=利得媒質に光が当たって反転分布が起こるんですね。
今までの私の断片的な知識がywkcさんの説明でつながった気がします。
また、lasingについても納得です。
レーザーについてのとてもわかりやすく詳しい回答、本当にどうもありがとうございました。助かりました。
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