「入門!論理学」~野矢茂樹著・中央公論新社 で論理学を
勉強しております。
推論の真偽を問う問題の解説として下記のように記載されて
おりましたが、残念ながら理解できませんでした。
ここから引用>>
手形は有価証券である。
小切手は手形ではない。
だから、小切手は有価証券ではない。
前提を認めて、その上で結論を否定してみてください。
手形は有価証券で、小切手は手形ではなくて、でも
小切手も有価証券である、そう書き並べて、これは
矛盾しているでしょうか。
手形も小切手も有価証券だけれども、手形と小切手は
違う。これは別に矛盾ではありません。有価証券にも
いろいろあるんだなというだけのことです。ということは、
この前提を認めても結論を否定する余地があるという
ことですから、この導出は絶対ではない。つまり、
演繹としては正しくない。そうなります。
逆に、前提を認めて結論を否定したときに矛盾になる
場合には、その導出は演繹としてた正しいと言えます。
演繹の正しさをチェックするやり方として、この「前提を
認めて結論を否定し矛盾になるかどうか調べる」という
チェック法はかなり有効ですから、覚えておいてもよい
でしょう。
<<引用ここまで
理解できないのは、「前提を認めて否定する余地がある」
ということから、「この導出は絶対ではない」と言える理由が
解りません。
後述されていますが、どうやら
「前提を認めて結論を否定し矛盾になるかどうか調べる」
ということは重要なテクニックのようですが、既述の通り、
導出された文が絶対か否かの判断ができません。
お知恵を拝借くださいませ。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
No3さん、なるほど。
内容だけをかいつまんだつもりですが、文字の置き方自体、僕は少し乱暴でした。No3さんのようにやらないとなりませんね。やり直してみます。>手形は有価証券である。小切手は手形ではない。だから、小切手は有価証券ではない。
前提:A=B
前提:C≠A
結論:C≠B
CはAでもBでもないんだな、というわけです。
これを対偶にすると、本来は次のようになるでしょう。ご存じのように、対偶命題とは、「原命題のその帰結部分の否定を前提とし、前提部分の否定を帰結」とするものだからです。
前提:C=B
結論:A≠B
結論:C=A
C=Bが前提で、しかもC=Aとなるのだったら、A=B=Cとならないと本当はならないのにA≠Bとなるのは変だ。このように対偶命題は成立しないので、原命題は成立しないということになるでしょう(原命題と対偶命題の真偽は一致)。さて問題は野矢氏の記述です。
>手形は有価証券で、小切手は手形ではなくて、でも小切手も有価証券である、そう書き並べて、これは矛盾しているでしょうか((1))。
前提:A=B
前提:C≠A
結論:C=B
単に帰結部を否定に変えただけです。厳密には対偶命題をやっていると、いえそうにないわけです。では、野矢氏は何をやっているのか。続きの箇所を見ます。
>手形も小切手も有価証券だけれども、手形と小切手は違う。
A,C=B A≠C
要するに、(1)の式を全部並べて、検討しているのです。その結果、Bというのは、AとCを含む広い概念になる。式だけおえば、これは矛盾です。しかるに、野矢氏は別段間違っていないと判断したのです(「有価証券にもいろいろあるんだなというだけのことです」)。そして帰結を否定したのに、全体が成立してしまうのはおかしいので、背理法的にも、原命題は間違いであったと結論しています。
ここで話がついて行けなくなるのは、A,C=Bをどうやって野矢氏が認めたかです。僕には、そもそも野矢氏がB、つまり有価証券の性質を、辞書など、別で調べて理解していたからだと思えたのです。どうでしょうか。
再び、ありがとうございます。
私も、著者が対偶律を使っているとは思えません。
>手形も小切手も有価証券だけれども、手形と小切手は違う。
>A,C=B A≠C
>要するに、(1)の式を全部並べて、検討しているのです。
>その結果、Bというのは、AとCを含む広い概念になる。
>式だけおえば、これは矛盾です。
・・・すみません。この式は矛盾しているんですか?
私には、矛盾していないように思えるのですが。
文字通り、
「手形も小切手も有価証券だけれども、手形と小切手は違う」
というだけで、二つの主張が両立可能である以上、矛盾とは
言えないと考えております。
>ここで話がついて行けなくなるのは、A,C=Bをどうやって
>野矢氏が認めたかです。
やはり、この点については、先にご回答して頂いたように、
客観的事実を認めていると想像する他はないかと思います。
何と言うか、私が無知ゆえに自由な発言が許されるとすれば、
「本の記述が誤っている」
と申しましょうか。推論のみで、文の真偽を問う場面で
客観的事実(つまり有価証券の性質)という、個体の内面を
引き合いに出している点で、「論理的」ではないと思えて
しまいます。・・・論理学の入門書なのに、と納得がいかない
気持ちもありますが、皆さんのアドバイスを元に考えると
記述が正確であるとは、残念ながら思えない次第です。
改めて御礼申し上げます。
No.6
- 回答日時:
>「式だけおえば、これは矛盾です。
」・・・すみません。この式は矛盾しているんですか?僕の説明が悪かったのだと思います。全体としては、賛成してくださっているようですから。言いたかったのは、つまり――A,C=Bとは、すなわちA=B, C=Bなのだから、(二次関数でもない限り)A=B=Cということになる。しかし、野矢氏はA≠Cが同時に成立すると認めている。この二つが同時に成立すると述べるのは、式だけ見ると、変だと言わざるを得ない、ということでした。もちろんB(有価証券)の性質をあらかじめ知っていると、何の問題も無く認められはしますが。
>推論のみで、文の真偽を問う場面で客観的事実(つまり有価証券の性質)という、個体の内面を引き合いに出している点で、「論理的」ではないと思えてしまいます。・・・論理学の入門書なのに、と納得がいかない
まったく同感です。ずっと昔に、僕は同じ個所を読んで、実は三日くらい考えました……あまり本質的ではないところで躓いて腹が立ったのですが、きっと野矢氏にとって論理学の本を書くのは物凄く大変で、ネタを探すのに困っているのだろうなと思えたものです。
何度もありがとうございます。
矛盾の件については、了解いたしました。
A=Cが成り立つと言いつつ、A≠Cも同時に主張可能と
している点が矛盾しているということですね。
…本を書くことって、当たり前ですが、読書するよりも
数倍のエネルギーがいるのでしょうね。
今回、質問させて頂いて、色々なことが解りました。
・レビュー評価が高い本に誤りがないという幻想。
・論理学の書籍は論理的であるという幻想。
・稚拙な質問にも、丁寧に教えて下さる方がいるという現実。
等々。
これまで抱いていた「幻想」は、私の中で勝手に作り上げた
「神話」だったのかもしれません。個人的な考えなので、
それが崩壊することも、「偽」ではない。勉強になりました。
また、無学な私に、色々な観点から温かくアドバイスをして
下さった方々には敬服するのみです。kusa-muraさんに至っては
三度も丁寧に助言を頂き、ひたすら頭が下がるばかりです。
「ネットの情報は信憑性が低い」といった風説は、必ずしも
正しくはない。この点も、大変勉強になりました。
心より感謝申し上げます。
No.4
- 回答日時:
背理法は命題Qを否定してみて既知の命題Pと矛盾することで命題Pを証明します
このときP→Qを証明しているわけではなくて(P→Qは正しいですが)
その論理体系上の真理としてのPとの矛盾からQもその論理体系上の真理であることを証明します
この文章の中の
命題Qを否定してみて矛盾が出てきたら演繹が成功している
は命題の組み立て方の論理性が正しいかどうかを検証しているだけで
命題自体の正しさに言及しているわけではないです
概念としては多少違いますが、論証方法は同じ対偶律に基づいていると思います
ご回答ありがとうございます。
論証方法が対偶律に基づいている、のですか・・・。
すぐに理解できないため、再考してみます。
ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
>理解できないのは、「前提を認めて否定する余地がある」ということから、「この導出は絶対ではない」と言える理由が解りません。
この件については,対偶律を理解されているのでしたら,話は簡単です。著者は正しい演繹を,
「この導出は絶対である」ならば「前提を認めて(結論を)否定する余地がない」
と,捉えていることが論理的に解釈できます。これが理由です。
ただ,例示してある演繹例の易しさの裏で,説明文では暗黙裡に論理が(常識であるかのように)駆使されているのですから入門書としてどうなのかと思うところはあります。「前提を認めて(結論を)否定する余地がない」が入門者(私)には分かりにくいのにその説明がありません。そうなると事実の真偽と照らし合わせて演繹の正邪を判断するという本末転倒が生じます。
野矢氏が小切手とかで説明する部分は,事実の真偽と照らし合わせることを主張しているかに見えますが,それならそうと言えばすむはずです。でもそうしなかった。「有価証券にもいろいろあるんだな」というところで,小切手が有価証券である事実を知らない人にも,この命題の組が矛盾なく受け入れられることを言いたかったのだと感じられます。
[例1]
前提:AはBである。
したがって,
結論:AはBである。
結論の否定:AはBでない。
これは,前提に矛盾する。
よって,結論は否定できない。すなわち正しい演繹である。
[例2]
前提:AはBである。
したがって,
結論:AはCである。
結論の否定:AはCでない。
これは,前提に矛盾しない。AがBでありかつCでないことはあり得る。
よって,結論は否定可能である。すなわち正しい演繹ではない。
[例3] 野矢氏の小切手の例
前提1:AはBである。
前提2:CはAではない。
したがって,
結論:CはBではない。
結論の否定:CはBである。
これは,前提に矛盾しない。異なるAとCがどちらもBであるというのはあり得ることである。
よって,結論は否定可能である。すなわち,正しい演繹ではない。
[例4] kusa-muraさんのソクラテスの例
前提1:AはBである。
前提2:BはCである。
したがって,
結論:AはCである。
結論の否定:AはCでない。
これは,前提に矛盾する。CであるところのBであるところのAがCでないなどということはない。すなわち,正しい演繹である。
ご回答ありがとうございます。
>著者は正しい演繹を,「この導出は絶対である」ならば「前提を認めて
>(結論を)否定する余地がない」と,捉えていることが論理的に解釈
>できます。これが理由です。
この一文は、目から鱗が落ちました。
なぜ、著述されている内容が正しいのか悩んでいましたが、
対偶律により、著者が主張する「正しい演繹」を導出することで
疑問は氷解しました。
その後、簡潔な具体例を4つも示して頂き感謝しております。
単に、推論の正誤のみならず、理由を付して頂いた点が
なお更、ありがたいです。
いささか由々しいのは、[例3]ですね・・・。
記載されている例文が誤った推論であるとは、軽いショックを
受けました。Amazon等での読者コメントで絶賛が多い中、
誰も疑問を抱かなかったこと自体が理解に苦しみます。
が、この疑問は今回の質問とは別問題なので、頭の片隅に
追いやっておきます。誤った記述を一つ取って、本全体を
否定するつもりはありませんので。
ご丁寧にありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
>手形は有価証券である。
小切手は手形ではない。だから、小切手は有価証券ではない。これを記号に置き換えると、A=B、B≠C、ゆえにA≠Cです。しかしここで、議論が正しいかをチェックするために、結論に対して逆の仮定をして、A=Cが成立するかどうかを考えてみようというのが、野矢氏の手法です。まぁ背理法の一種と言ってもよいかもしれません。
さて、そこで結論を逆転させて「小切手は有価証券である」かどうか。野矢氏の論述では分かりにくいのですが、どうも野矢氏にとって、小切手が有価証券の一種であるということは、解説不要と思うほどに自明だったようですね。敢えて言えば、これは論理とは別の方法によってチェックせよということです。つまり辞書など引いて事実確認せよということです。
客観的事実と、演繹法で導き出された結論を照らし合わせると、それは合致しない。すると、間違った結論が出てきた以上、この演繹の仕方は、どこかで問題があるんだろうな――となるわけです。論理だけに頼って変な結論を導かないように、常識的な観点からチェックを怠らないようにと野矢氏は言っていると思えます。
しかし、これは結論の正誤が、客観的事実として確認できる場合の話です。もしこれが「ソクラテスは偉人である、偉人は神である、ゆえにソクラテスは神である」というようなものだったら、このチェック機能は働かないでしょう。なぜなら「ソクラテスは神ではない」といっても、「ソクラテスは神である」といっても、どちらの結論もそこだけ見て、「人それぞれ」といって、成立するように思われるからです。結論が客観的事実として確認できるのではなく、主観的な意見の表明である場合、このチェック機能は働かないと考えられるのです。それにこれをやり過ぎると、常識の枠に縛られて、新しい見地が開けなくなります。野矢氏の手法は、正しい答えは最初から決まり切っていると考えている側面もあるのです。というわけで、僕は野矢氏のいう有効性にちょっと留保をつけたいところではあります。
ご参考までに。
ご回答ありがとうございます。
>野矢氏にとって、小切手が有価証券の一種であるということは、
>解説不要と思うほどに自明だったようですね。
この点には、全く気付きませんでした。というよりは、私の読解力が
不足していた、というのが正しいかもしれません。
ご説明の通り、論理以外の方法による事実確認により、推論の
正誤を検討する、ということは著書の文脈から汲み取るのは少し
難易度が高かったです。というのも、推論の力を試す主旨で出題
されていましたので。
とは言え、kusa-muraさんが補足して頂いた内容を理解すれば、
著者の主張も解らないことはないかと思いました。
ありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
演繹なのでいくつかの例から三段論法を組み立ててみて
その組み合わせ命題が正しいのか検証することで
演繹がうまくできたかどうかが確かめられる
と言いたいのだと思います
前提が(P1、P2、P3、…PN)で
導出命題がQなら
対偶からNotQ→Not(P1、P2、P3、…PN)
ですので導出命題が正しくないなら、少なくとも前提の一つPiでPi and NotPiで矛盾になるはずです
これは簡単な例なのだろうと思いますけど、
もっと複雑な命題と組み合わせの演繹だとチェックするときに
どうすればいいのか迷うため
テクニックを提示することで演繹の妥当性を論証できる手段を教示しているのでしょう
ご回答ありがとうございます。
私が無学のため誤っているのかもしれませんが、
引用の箇所で筆者は、対偶律ではなく背理法的な
考えを紹介しようと意図していたと思われるのです。
違いますかねぇ…。
私の疑問点が、対偶に関する内容であれば、
汗顔の至りでございます。
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