ランベルトベールの法則では試料の全体の透過率をT, 試料入射前の光強度をIin, 試料透過後の光強度をIout, aを試料の吸収係数, lを試料の厚さとした場合,
T=Iout/Iin,
=exp(-al), ----(1)
という法則が成り立つ, とよく説明がされています.
また, 吸収係数aと消衰係数k*は次の関係にあります.
a=4πk*/λ.
従って,
k* =aλ/4π
=a(c/f)/4π f:周波数, c:光速
=ac/2w, ---- (2) w:角周波数
となります.
ここで疑問なのですが, 以下のように光が試料を透過する現象を式で表すと, 上述したランベルトベールの法則と若干の矛盾が生じます.
入射光の複素電界を<Ein>, 試料を透過した光の複素電界を<Eout>とすると( <>は複素数を表す),
<Ein>=E'exp(-iwt+ikr),
<Eout>=E'<t0t1>exp{-iw(t+t')+ik(r+<n>l)}=E'<t0t1>exp(-n''kl)exp{-iw(t+t')+ik(r+n'l)},
と書けると思います. なお, E':入射光の振幅, w:角周波数, t,t':時刻, k:波数, r:位置, <t0>と<t1>:試料の界面による複素振幅反射率(今回は試料の前面及び後面のみの反射率を考え, 多重反射については無視), <n>:試料の複素屈折率で<n>=n'-in''.
このとき, 上述した試料の全体の透過率をTとすると,
T=(|<Eout>|/|<Ein>|)^2,
=|<t0t1>|^2exp(-2n''kl), ----(3)
ここで, 屈折率の虚部とは消衰係数のことですので(n''=k*), (2)式を考慮すれば,
T=|<t0t1>|^2exp(-al), ※kは波数ですのでk=w/cとしました. kとk*の混同に注意, わかりづらくてすみません...
となります.
(1)式と(3)式を比べると, ランベルトベールの法則では試料界面の振幅透過率については考慮されていないように見えますが, ランベルトベールの法則とは界面の反射率は無視しているのでしょうか. また, 私が何か誤解しているのでしょうか.
アドバイスいただけたら嬉しいです.
宜しくお願いします.
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
正直、電場で議論した式はフォローできていません。
図で書いていただかないと、私には難しいです。
ただし、最初のランベルトベール則のところに、間違い発見。
実際、透過率Tをどう定義するか、多少、式が変わりますが、
Iout/Iin =exp(-al)
を成立させたいのであれば、Iinは「試料入射前の光強度」ではなく、
「試料入射直後の光強度」としなければなりません。
試料に入射する直前の光強度をIoとします。
試料入射で少なからず反射が起こります。
そのため、試料に入射できる光の量IinはIoではなく、
反射の分を差し引いたIin=RIoになるように思います。
ご回答ありがとうございました.
なるほど, ランベルトベールの法則では試料入射直後の光強度をIinとしているのですね. ご指摘ありがとうございました!
つまり(以下私の勝手な推測ですが), ランベルトベールの法則では試料の界面での透過率や反射率を考慮しないように各種パラメータを設定しているのでしょうか.
この仮定が正しいとしますと, 私の疑問は解決します.
例えば試料に入射しようとする光強度をIin, 試料を透過した後の光強度をIout=T0T1exp(-al)Iinとすれば,
T=Iout/Iin=T0T1exp(-al)------(4)
となり, (4)式と(3)式は対応がとれます. ここでT0は試料の入射側界面の強度反射率を示し|<t0>|^2に等しいものです. T1に関しても同様です.
ということは, フーリエ分光法を利用した計測装置(FT-IR, FT-NIRなど)では, 実際には試料界面での透過率が影響してくるので, そういった誤差を含んでいるということでしょうか. (もちろんそれ以外にも散乱等の誤算は含まれると思いますが,,,)
反射率の大きい試料をFT-IR等で測定すると誤差が大きそうですね.
長くなってしまいましたが, ご回答本当にありがとうございました.
No.2
- 回答日時:
> フーリエ分光法を利用した計測装置(FT-IR, FT-NIRなど)では, 実際には試料界面での透過率が影響してくるので, そういった誤差を含んでいるということでしょうか
溶液系の試料の場合、まずは測定容器に溶媒(純水とか)のみを入れて、Reference試料を測定し、
その次に測定容器に溶液(溶質が溶けている)を入れて測定します。
溶媒のみの反射率と溶液の場合の反射率が等しい場合、Reference試料を測定することにより、
反射率の影響は完全に相殺することができます。
実際には、溶媒のみの反射率と溶液の場合の反射率は完全には等しくないのですが、
Reference測定することにより、反射率の影響はある程度、相殺することができます。
> T=Iout/Iin=T0T1exp(-al)------(4)
まあ、近似としてこの式は合っていますが、実際の試料で、吸収があまり強くない場合、
試料裏面で反射された光(1-T1)が試料を逆向きに通過しさらにexp(-al)で吸収され、
さらに試料入射面で反射され(1-T0)、さらに試料を順向きに通過し吸収されexp(-al)、
試料裏面を通過T1して、光検出器に届くなどの寄与もあります。
結局、無限級数の寄与がある式になったと思います。
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