

ガロア理論で体の拡大といえば,通常既知の数,例えば,2のベキ根を添加して拡大すると本に書かれています.
しかし,一方では,方程式が解けるということについて,次のようなことも書かれています.
"いくつかのベキ根の有理式でf(x)の根が表せるということは,これらの根がすべて,いくつかのベキ根を含む体に含まれることにほかなりません"
この記述は一応もっともだと思うのですが,"いくつかのベキ根を含む体"というとき,この拡大体を作るには,ベキ根の中に入る数(前の例でいえば,2)のように予めわかっていなければ,拡大できないのではないかとおもわれますがどうでしょうか.また,一歩譲って,ベキ根の中に入る数を未知数のままで体の拡大を行ったとしても根を求めるために必要ベキ根の値がぴったりと存在するかどうかはどのように保証されるのでしょうか.未知数による拡大しようとすれば,不可算無限のベキ根で拡大すれば,できそうですが,上の記述の"いくつかのベキ根"とは整合が取れません.この辺はどのように考えているのでしょうか.
それと,3次方程式の根の公式を見ると,2乗根と3乗根が入れ子になっていますが,このような上の"..."の中に入っているのでしょうか.論理的には入っていないように見えるのですが.
お願いします.
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
ここでは話をややこしくしないよう、体といえば有理数体を含む体(標数0と同義)に限ることにします。
また、有理数体をQと表記することにします。
以下、長文ですがご参考までに。
体の拡大には、代数拡大と超越拡大というかなり性質の違う拡大があり、多くの場合これらは分けて論じないといけません。
不定元は基礎体(拡大前の体)を係数に持ついかなる代数方程式もみたしません。よって、不定元を添加した体は基礎体上のベクトル空間として無限次元になります。(しかし、逆:「基礎体上無限次元の体なら超越拡大」は成り立ちません。例えば1のあらゆるベキ根を有理数体に添加して出来る体Kは超越拡大体ではありません。なぜなら、Kのあらゆる元はQ係数の多項式の根になるからです。)
しかし、最初から不定元を持つ体を拡大するなら話は別です。
例えば、Q上の一変数有理関数体Q(x)に√(x+2)を付け加えて出来る体Q(x, √(x+2))=Q(√(x+2))は、Q上は超越拡大ですが、Q(x)上では
√(x+2)が T^2 -(x+2) というQ(x)係数の多項式の根になるので、2次の代数拡大になります。
超越拡大については、「本質的に不定元を何個付け加えたか」を表す超越次元という概念があります。例えばQ上、Q(x)やQ(x, √(x+2))は超越次元が1であり、Q(x)上Q(x, √(x+2))は超越次元が0です。またQ(x, √(x+y))はQ(x)上やQ(y)上では超越次元が1であり、Q上では超越次元が2となります。
本の””の記述については、おそらく入れ子になったベキ根を許しての話ではないでしょうか。実際、一般の3次、4次方程式はベキ根を入れ子にすれば解が書けますが、整数のベキ根の有理式に書けるかといえば一般には書けません。例えばα=√(2+√2)という二重根号で表される数を有理数体Qに付け加えて出来る拡大体Lは、共役元(=αの満たすQ上の最小多項式 T^4-4T^2+2 の他の根たち)β=-√(2+√2), γ=√(2-√2), δ=-√(2-√2) がどれもαの多項式で表せるので(β=-α, γ=α^3-3α, δ=-α^3+3α)Qの4次ガロア拡大になります。しかしこの体には
α→α^3-3α
という4回やって初めてもとにもどる自己同型があるので、Gal(L/Q)=Z/4Z (4次の巡回群)となり、有理数の平方根を2つ付け加える方法(ガロア群は(Z/2Z)^2になる)では作ることの出来ない体です。また、有理数の4乗根を付け加えても作れないこともそれほどむずかしくなく分かります。(この場合4次「ガロア」拡大になるのは有理数が-(4乗数)の形である場合に限られ、この場合拡大のガロア群は位数4の元を持たない(Z/2Z)^2になります)
有理数のベキ根を付け加えて4次の体を作る方法はこれらしかないので、結局有理数のベキ根を複数個付け加えるだけではLを作ることは出来ないことが分かります。
一般にベキ根を入れ子にして、Qに有理数のベキ根を付け加えた体、にさらにその体の数のベキ根を付け加えた体、にさらに・・、、ということを有限回繰り返して作られる体Fをベキ根拡大体といいます。拡大がベキ根拡大であるという性質は、体F(の共役元を全て含むガロア閉包F')の自己同型の様子に現れていて、Gal(F'/Q)が可解群(可換群による拡大を繰り返して出来る比較的簡単な群)であるということに同値になります。
n次方程式の根をn個とも全て含むような体(共役元を全て含むのでガロア拡大体になります)は、最も複雑な場合、拡大のガロア群がn次の対称群(位数n!の大きな群)になりますが、4次以下の対称群は可解群になることが分かっているので、4次までの方程式にはベキ根を入れ子にした解の表示があるのです。一方、5次以上の対称群は可解でないことも分かっているので、ベキ根を組み合わせた解の表示は一般にはできません。
この回答への補足
sunflower-sanさん:
質問者が回答について各欄がないようなので,この欄を使って書きます.
非常にわかりやすい丁寧な説明有り難うございました.わからない部分がありますので質問させてください.
sunflower-sanの書かれた内容が長文なので頭で引用します.
第1パラグラフ"体の拡大には~
不定元の添加が超越拡大,無限次元の件は了解です.
第2パラグラフ"しかし,最初から不定元を持つ体を拡大~"
了解です
第3パラグラフ"超越拡大については~"
了解です
第4パラグラフ"本の""の記述~"
理解が足りなかったところがありました.ベキ根の体の拡大の定義に入れ子が条件として入っていることを確認しました.
第5パラグラフ"一般にベキ根を入れ子にして~"
ベキ根拡大と自己同型群の可解群の部分は仕組みとしては,理解していると思っています.
疑問の思っていますのは,
1)ベキ根拡大を行っていく場合,ベキ根の中の数をどのようにして決めるのでしょうか.これを不定元にしてベキ根拡大するのは,第一パラグラフで超越拡大になるので不可です.
2)ベキ根拡大した体のガロア群が可解の性質をもつというのはわかりますが,ガロア群が可解の性質をもつとき対応する体の側の拡大はどのような拡大になっているのでしょうか.いい方を変えて,ガロア群が可解でないときの対応する体の拡大はどのようになっているのでしょうか.
この部分が今一つよく判らないので,全体がはっきりしないと思っています.
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