「ある男たちは、月の満ち欠けにおうじて狼に姿を変えます。......ある夜、過度の恐怖の一撃で精神に変調をきたし、かれは狼に変身したのです。」
(ティルベリのゲルウァシウス『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』120章 池上俊一訳 講談社学術文庫kindle版 位置番号2448,2452)

*** *** *** *** ***

月に関連して人が狼に変身するといふ、最も古い文献は何ですか。上記は13世紀のはじめごろとされるものです。単に狼になるだけなら、以下のものなど数多くありますが、月と連動した話がみつかりません。

「ネウロイ人はみな年に一度だけ数日にわたって狼に身を変じ、それからまた元の姿に還るという。」
(ヘロドトス『歴史』第4巻105 松平千秋訳 岩波文庫 中63ページ)

「リュカオンだけは、驚いて逃げ出し、ひっそりとした田園までやって来たが、しゃべろうとしても人語は出ず、けもののように吼えるだけであった。......衣服はもじゃもじゃの毛に、腕は脚に、変わった。要するに、狼に変身したわけだ」
(オウィディウス『変身物語』第1巻237 中村善也訳 岩波文庫 上21,22ページ)

質問者からの補足コメント

  • うれしい

    ひとつの大きな可能性としてペトロニウス『サテュリコン』を挙げていただいた回答番号1をベストアンサーといたします。666protectさんからも多くの参考文献を教へていただき、ありがたうございました。

      補足日時:2015/10/25 19:06

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A 回答 (11件中1~10件)

今日は、午前中に用事で出かけ、これからまた外出するので、とりあえずわかっていることだけを書きます。

またあとで補足します。
月との関連で一番古い文献は、1世紀の風刺家、ペトロニウスの「サテュリコン」の中の「トリマルキオの饗宴」のようです。同時代のプリニウスにも、狼として生き、人間に戻る男のことが出てくるらしいのですが、こちらの方は月が出てくるかどうか確認できていません。月に関係なく、狼になるという話は、御指摘のようにオウィディウスにもありますが、起源ははるかに古く、ギルガメシュ叙事詩やアイスランドの「エギルのサガ」にもあるようですし、洞窟の壁画などにもそれらしいものがあると書いてあるところがあります。狼に限らず、人が獣になるという獣人のテーマは、世界中の宗教と神話に分布しているので、相当古いのでしょう。日本語ウィキペディアの記述については、信用できる内容かどうか検証していませんが、とりあえず下の二つの項目になります。

狼男
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%BC%E7%94%B7

獣人
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%A3%E4%BA%BA

「サテュリコン」の当該部分はIII, 61-63で、ドイツ語訳が二種類あったのですが、内容が少し違い、ラテン語を翻訳にかけたものと比較して、近い方を訳します。

たまたま私のあるじがものを売りにカプアへ出かけた。私はこの機会を利用して、五つ目の里程標まで私とともに来てくれるよう客人を説得した。この男は勇敢な兵士で、冥府さえものともしなかった。われわれは夜明け前に出発した。月が輝いて真昼のようだった。われわれは、いくつかの墓の前へ来た。すると、その男は星を呼び出し始めた(墓を数え始めた?)。私は座り、それを数え、歌った。同行者の方を見ると、来ているものをすべて脱ぎ、道に置いた。私は、心臓が口から飛び出るようで、死人のように立っていた。男は衣服のまわりに小便をし(?)、突然狼に変身した。

Forte dominus Capuae exierat ad scruta scita expedienda. Nactus ego occasionem persuadeo hospitem nostrum, ut mecum ad quintum miliarium veniat. Erat autem miles, fortis tanquam Orcus. Apoculamus nos circa gallicinia; luna lucebat tanquam meridie. Venimus inter monimenta: homo meus coepit ad stelas facere; sedeo ego cantabundus et stelas numero. Deinde ut respexi ad comitem, ille exuit se et omnia vestimenta secundum viam posuit. Mihi anima in naso esse; stabam tanquam mortuus. At ille circumminxit vestimenta sua, et subito lupus factus est.

(Zufällig war mein Herr in Capua ausgegangen um sein schickes Gerümpel durchzubringen. Ich bekam eine Gelegenheit und überredete unseren Gast, dass er mit mir zu fünften Meilenstein kam. Das war aber ein Soldat, tapfer wie der Pluto. Wir machten uns im Morgengrauen auf; der Mond schien wie am Mittag. Wir kamen an einigen Gedenkstätten vorbei: mein Mann trieb sich bei den Grabsäulen herum; ich saß singend dabei und zählte die Grabsäulen. Als ich dann zu meinem Kollegen zurückblickte, hatte der sich ausgezogen und hatte all seine Kleider auf den Weg gelegt. Mir rutschte das Herz in die Hose; ich stand da wie tot. Aber jener pinkelte um seine Kleidung herum, und plötzlich wurde er zu einem Wolf.)

(Von ohngefehr war mein Herr nach Capua gereist, um etwas zu verkaufen. Ich ließ diese Gelegenheit nicht entwischen und überredete unsern Wirth, daß er mich ein Paar Meilen begleitete. Dieser war ein starker Soldat und machte sich aus dem ganzen Orkus nichts. Wir machten uns gegen Mitternacht, wann die Hüner schreyen, auf den Weg; der Mond schien so helle, als wenn es Mittag wäre. Wir giengen endlich nun über die Gräber. Da fieng auch mein Kerl an, die Sterne zu beschwören; ich aber zählte die Sterne und sang vor lauter Angst darauf. Wie ich mich nach meinem Begleiter umsahe, so zieht er sich faselnackend aus und legt alle seine Kleider an den Weg. Es schwindelte mir vor den Augen und meine Seele wollte aus der Nase fahren. – Er aber pißte einen Kreis um seine Kleider und plötzlich stand er, als ein Wolf da.)

http://www.lateinlehrer.net/autoren/satyricon

出かけますので、とりあえずここまでにします。少し前にOKWaveに出ていた、ベラスケスの絵についてもお話ししておきたいことがあります。
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この回答へのお礼

いつも詳細な情報をありがたうございます。先日電子書籍で『西洋中世奇譚集成』を買つて読んでゐましたら、月と狼の話があり、有名な題材なのに意外と古い文献がないものだ、と思つて質問を立てました。

『サテュリコン』は読んではゐるのですが、浮かんできませんでした。ドイツ語の対訳サイトまであるのですね。Tastenkastenさんのわかりやすい訳とラテン語文は助かります。私はアホなのですぐに本棚から日本語訳を取り出します。国原吉之助訳の岩波文庫108ページですね。月が出てゐるときに、狼に変身したのは確かですが、月の影響によるものかどうかは微妙です。少なくとも、月と狼が両方登場する文献としては最古なのでせう。中世の伝説もこれを参考にしたのかもしれません。

>ギルガメシュ叙事詩やアイスランドの「エギルのサガ」にもあるようです

後者はまつたくわかりません。ギルガメシュは今見直すとたしかにありました。

「だがお前は彼を打ちたたき、狼にかえてしまった。」
(『ギルガメシュ叙事詩』第6の書板 矢島文夫訳 山本書店72ページ)

>ベラスケスの絵について

ぜひお願ひいたします。Tastenkastenさんの回答がほしかつたところです。私ではあれ以上はわかりません。回答番号1の方へのお礼がなかつたので、「ヴェ」ラスケスについての指摘をしておきました。どちらでもいいとは思ひますけれど。質問者は気分を害したのではないでせうか。

お礼日時:2015/10/21 15:27

狼男と月についての回答ネタはもう尽きました(月以外の話ならいくらでもあります)が、締切りになっていないので、ズルズルと反応します。



>記憶にありません。以前の質問もいくらか見てみたのですがわかりませんでした。

記憶違い、人違いでした。エラスムスのスレッドで、フランスの別の女流作家を紹介しています。

>「顔なし」が決定版なのですか。

スレッドの内容に関係なく言いたいことを書き散らかしていくので、パラジート(Parasit)がよいと思ったのですが、同じような呼び方をされている人がほかにいるようです。

>私はいろんな言葉をどんどん使つてもらひたいと思ひます。全体的に表現がわかりやすいのが助かります。

今はあまり深入りしませんが、言葉を問題にしたのではなく、あくまでも内容です。固い表現や難解な言い回しについてはもとより好ましいことではありませんが、わかりやすければよいということでもないと思います。
難解な文章を書く人は、無意識的に自分を実際の中身よりも大きく見せたいという「背伸び」、あるいは、熟していない自分の思想への自己陶酔からやっていることが多く、要するに羊頭狗肉っていうやつです。それをありがたがる人は、自分の知識や教養が十分でないという自覚が裏目に出て、今自分が理解できないような難しいことを書いている人は、頭のよいすごい人なのだと勘違いします。Q&Aの哲学カテに特有のことではなく、どこにでも見られる現象です。
また、わからないことをわからないと言うのが憚られると考える傾向も人にはありますね。このあいだ、経済学者の名言の質問が出て、引用されている文章は明らかに意味不明でしたが、国語の文法に強い人が、その国語力に任せて無理やり解釈しようとしていました。私などは、一度読んだだけでこんな文章はあり得ないと思ったので、最初から誤訳を疑い、案の定その通りでした。尋常でない難解さは、何かしらの欠陥があることが多いと思います。
しかし、あまり通俗的なわかりやすさ(べらんめえ調とか)も、内容が伴っていなければ、いたずらに人を籠絡する危険がありますね。そういう語り口で人気を博す人もこの世にはたくさんいます。見当違いの意見でも、わかりやすく面白く話せば、ウケてしまいます。難しく見えることは最初から避けようという傾向の人も、この罠にはまります。
私が重視するのは、真の内容と文全体の論理的構成です。ただ、一度通読しただけで頭に入るような文章を書こうとすると、頭の回転が鈍い私には大変な苦労と時間が要ります。Q&Aサイトは結局のところおしゃべりサイトですから、そこまでやる人はよほどの物好きと見られるかもしれません。私が本当に感心する回答者はごく数人で(plapotiさんは一応その中に入っていますよ)、たいていの人は殴り書きです。最近は、そこまで期待する方が間違っているのだろう思うようになりました。以前から比べると回答数も減っていますし、質問のタイトルだけ見て中を読まないことも多くなりました。ねこさんのようにブログに移行することも何度か考えたのですが、毎日更新するような時間もネタもありませんので、このまま、気が向いた時だけぼちぼち回答を続けます。
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この回答へのお礼

御回答ありがたうございます。私はおしやべりが好きなので、かういふ投稿は大歓迎です。今日はこちらのコメントを先にします。次はアンケートカテゴリに行きます。

>パラジート(Parasit)がよいと思ったのですが、同じような呼び方をされている人がほかにいるようです。

独和辞典を開いてみたのですが、調べるまでもありませんでした。さういふ意味ですね。

>難解な文章を書く人は、無意識的に自分を実際の中身よりも大きく見せたいという「背伸び」、...... それをありがたがる人は、......

このあたりでおつしやることは、まさに私の感じてゐることです。

>経済学者の名言の質問が出て、......

これは拝見しました。good数が複数あれば、私の閲覧済みとみなしていただいていいと思ひます。1回だけのときもありますけれど。

>通俗的なわかりやすさ(べらんめえ調とか)も...

これはただの持ち味程度に受け止めてゐます。ねこひこさんの「ケロ」「ニャー」、こぶたんさんの「ブゥ」と同類です。

>Q&Aサイトは結局のところおしゃべりサイトですから

私もさう思つてゐます。小学生相手の文通と同じつもりで投稿してゐます。またよろしくお願ひいたします。明日の晩に締切ります。

お礼日時:2015/10/24 19:25

>ずいぶん調査していただいたやうですがお仕事は大丈夫ですか。



どちらのサイトにも興味を引く質問がほとんど皆無になり、あまり時間は割いていません。それと、このところ別の事情で、仕事に集中できない日が続きました。

マリー・ド・フランスの名前が出るのは初めてでしょうか。書いていて、前に一度出たような気がするのですが、記憶違いでしょうか。エラスムスと関係があったような気がするのですが。
マリー・ド・フランスは、結局ゲルウァシウスより古い文献ではないと思います。月は関係がないようです。
英語の百科事典サイトなどに書いてあるのですが、狼男と月の結びつきはもともとあまりなく、近、現代のフィクション作家によって取り上げられたアイデアのようです。そこには、先の回答で書いたような、満月が人を変えるという現代の都市伝説のようなものがやはり影響しているようです。
というわけで、はっきり書かれている最古のものは今のところゲルウァシウス、先駆的な作品として可能性があるのが「サテュリコン」ということになるでしょう。ただ、両者の間には大きな時間が空いています。狼男の諸伝説には、月以外のモティーフが付随しているものが非常に多く、月による変身はかなりのちになって付け加えられたものとみる方が妥当なようです。

>今日は哲学カテゴリから先にコメントを書きました。

今、あちらは見ていません。先ほどちょっと見ました。残念ながら、私はやはり顔なし氏には共感しません。一番感心しないのは、毛唐という戦時中の言葉を使って日本人の優位を解いていること。あまりに単純すぎて、何かコンプレックスがあるに違いないという気がします(いまだに「論理」の意味にこだわっているので)。すでに書きましたが、私も若いとき、そういう考えに走った時期が少しだけありました。しかし、なんだかんだ言っても、ヨーロッパ文明は巨大です。そういう見方で対しても、ヨーロッパは相手にしてくれません。長くヨーロッパにいればわかるはずなのですが、アメリカではだめなんでしょう。どちらの方が優れているか、というような議論は時代遅れです。絶対的な悪と絶対的な善というのも単純すぎます。世界の見方が浅すぎると思いますよ。
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この回答へのお礼

>マリー・ド・フランスの名前が出るのは初めてでしょうか。

記憶にありません。以前の質問もいくらか見てみたのですがわかりませんでした。歳をとると(とる前から)覚えられません。岩波文庫で再版されたら買つておきます。

>はっきり書かれている最古のものは今のところゲルウァシウス、先駆的な作品として可能性があるのが「サテュリコン」ということになるでしょう。

そのやうです。ありがたうございました。もつと古い文献があるのかと思つてゐました。意外でした。

>私はやはり顔なし氏には共感しません。

「顔なし」が決定版なのですか。私は「ごろつき」案に賛成です。

>毛唐

以前ねこひこさんの「馬鹿」の質問でもありましたが、私はいろんな言葉をどんどん使つてもらひたいと思ひます。全体的に表現がわかりやすいのが助かります。「縮退」もかみくだいて解説してもらつてゐます。このあたりは哲学カテゴリの多くの人に見習つてほしいものです。たいていの人は、肝心なところで固い表現になります。結果として趣旨が伝はりません。重要なところこそ理解しやすくすべきなのですけれど。難解な言ひ回しや高度な内容は冗談のなかで使ふくらゐが妥当です。サイト内の物理学などを宗教的無条件にありがたがる風潮を打破してくれるとよいのですけれど。

お礼日時:2015/10/24 00:22

残念ながら、『中世の夜』の記述が検証できません。

マリー・ド・フランスの『狼男』の英訳があったのですが、ほかの情報と突き合わせてみても、男が姿を消すのは「毎週」で、「新月」という記述が見当たりません。日本語訳は、以前岩波文庫から出ていたそうです。

あらすじ
http://altrolato.blog25.fc2.com/blog-entry-590.h …

十二の恋の物語―マリー・ド・フランスのレー
http://www.amazon.co.jp/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E3%81 …
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この回答へのお礼

御回答ありがたうございます。

>日本語訳は、以前岩波文庫から出ていたそうです。

現在品切れで、地元の図書館にも蔵書がありません。確認できさうにありません。ずいぶん調査していただいたやうですがお仕事は大丈夫ですか。

お礼日時:2015/10/23 22:50

終わりにするつもりだったのですが、Google booksやインターネット・アーカイヴに、狼男に関する専門的な文献がかなりあり、書ききれなかったことがたくさん残っています。

先ほどそのうちの一冊を見直していたのですが、これだけは落とせないという情報がありました。
ゲルウァシウスは13世紀ですよね。12世紀に月との関連が書かれているものがあるようです。マリー・ド・フランスという、12世紀後半にイングランドで活動したフランス生まれの女流詩人です。
Bisclavret(狼男)は妻を深く愛していましたが、決まった晩に姿を消し、行方がわかりませんでした。妻は、男が新月の夜に狼に姿を変えると聞き、隣人の騎士と密かに謀り、狼男が脱ぎ捨てた服を隠して正体を暴くという話です。原作が確認できないのですが、Tzotcho Boiadjiev著の『中世の夜』(原著はブルガリア語)という書物にそのように紹介されています。この通りの内容だとすると、新月の夜と特定されているので、ゲルウァシウスより古い文献ということになりますがどうでしょうか。もしかすると、もっと古いものがどこかに隠れているかもしれません。
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この回答へのお礼

いろいろあるものですね。

>マリー・ド・フランスという、12世紀後半にイングランドで活動したフランス生まれの女流詩人です。

はじめて聞く名前です。専門の研究者であつてもすべての文献にあたることは不可能ですから、出てくるかもしれません。

お礼日時:2015/10/23 22:48

ファエトンではなくパエトンでしたね。

ドイツ語のサイトなので、ついドイツ語読みをしてしまいました。
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この回答へのお礼

人によつては「ファ」にします。どちらでもかまはないと思ひます。私は「パ」にしていただいたほうがよくわかります。

ご丁寧にありがたうございます。

お礼日時:2015/10/23 22:43

追加回答を用意している間にコメントをいただきました。

以下は、それを読む前に書き終えていたものです。

****************************

たびたびすみません。もう一回だけ補足です。

アポロンとヘリオスの同一視が紀元前5世紀からという記述をもう一度探すつもりで検索を始めようとしたところ、こういうときによく検索にかかるドイツのQ&Aサイト、gutefrageのスレッドがいきなり出ました。アポロンとヘリオスの区別がよくわからないという質問なのですが、かなり専門的な詳しい回答をしている人がいました。
まず、二人の回答者が書いているのですが、アポロンはもともと太陽の神でも光の神でもなかったにもかかわらず、ヘリオスを祀る儀礼がアポロンのそれよりもずっと少なかったため、それがヘリオス神の役割をアポロンに移譲させる原因になったということです。特に詳しい方の回答者は、そのとき、アポロンが弓矢の神であったことから、その矢が太陽の光として解釈されたという考証を紹介しています。ヘリオスが次第に忘れられていく一方、若者の姿で描かれたアポロンの方には、あらゆる宗教的な意味が集められていきました。アポロンの力、美、純粋が、明るく輝く理想の姿として示され、それが光や太陽のイメージと重なっていったようです(もちろん、秩序を乱す者は容赦なく破壊するという暗い面もあります)。
また、アポロンの異名、Αἰγλήτης(Aigletes; 輝く者)、Φοῖβος(Phoibos; 輝く者、光る者)も、天界の光を反映していることを示しています。オルフェウス教の神学的思弁や自然哲学、たとえばパルメニデスやエムペードクレス、ストア派の哲学や神学がアポロンとヘリオスの同一視に寄与し、特に新プラトン主義の哲学と神学(プルタルコス)は、両者の同一視に当たって、アポロンの異名Phoibosを根拠としたということです。
同一視の最古の例として挙げられるのは、アイスキュロスの『救いを求める女たち』です。ほかに、エウリピデスの失われた作品『ファエトン』の断片にもあるという話です。

『救いを求める女たち』212~214

コロスの長 私どもをお救いの、太陽(おおひ)の光を、お呼びいたします。
ダナオス それに尊いアポロンのみことも、かつては天を追われなさった御神だぞ。
(『ギリシア悲劇全集』第1巻、人文書院、337ページ)

以上の説明の出典:gutefrage
http://www.gutefrage.net/frage/apollon-oder-helios
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この回答へのお礼

今日は哲学カテゴリから先にコメントを書きました。昨日、本日と、投稿削除があり、ひさびさです。OKWaveのやうにサポート担当さんと話ができないのでおもしろくありません。運営質問でもまつたくコメントがなく、対話の姿勢が見られないのは寂しく感じます。OKWaveの社長は、簡単ではあつてもお礼をなさいますし、ほとんどの質問でベストアンサーを決めていらつしやいます。

何度も調べていただいてありがたうございます。「ポイボス」につきましては、しばしば言はれることで、アポロンと太陽の関係で取り上げられます。アイスキュロスにもあるのですね。

御回答ありがたうございました。

お礼日時:2015/10/23 22:41

下記の書物の著者が、ペトロニウスがゲルウァシウスの出典であることに疑いはないと記していました。



Smith, Kirby Flower: An Historical Study of the Werwolf in Literature (1894)

In the following medieval story related by Gervase of Tilbury, we see undoubted traces of the methods of Petronius.
https://archive.org/stream/jstor-456336/456336#p …

「月が真昼のように明るかった」という描写は結構強烈なので、ここから連想が強まったのかもしれません。

古い狼男の伝説が月と関係がないという指摘があることは書きましたが、ウィーン大学のある哲学博士の論文でも、月以外の話がたくさん上げられています。昨日までの調査でも時々目にしたのですが、出生が原因とされる考え方があり、ルーマニアなどがそうです。近親相姦(父-娘、母-息子)によって生まれた子は、しばしば狂気に陥り、3回とんぼ返りをする間に狼に変身するとあります。あるいは、狼の呼び声を聞くと後を追わなければならなくなるので、自分を木に縛りつけてほしいという農夫の話(やはりルーマニア)、あるいは、自らの魔術的行為で変身するという例。ほかにも、悪魔のベルト、魔法の指輪、狼の手袋で変身する話もあります。あとは、狼に限らず、動物の毛皮を着ることによってその動物に変身するというモティーフです。
ゲルマン地方の一番古い狼男に関する文献は、ボニファティウス(672または675~754年)のVölsunga sagaと、ヴォルムスの司教Burchard(965~1025)による著作だということですが、なんでも、アウグスティヌスの告白論にも狼男の話はあるそうです。アウグスティヌスはそれを単なる狼にすぎないとしているのに対して、それを信じるボニファティウスが反論している形のようです。両者が問題にしているのは、ローマ時代からの悪魔的存在、versipellis(動物の皮を着た男、もしくは人間)です。
フランスの神話では、狼男伝説はLoup-garouといって、一番古い文献は11世紀とのことです。
この論文は、狼男だけではなく、いろいろ挙がってはいるのですが、月による変身についてはほとんど書かれていません。むしろ、水の精のところで、満月や新月との関係が出てきます。そこで気になってくるのは、狼男とは別に、満月が人間を狂わせるという信仰の存在です。これも、アッシリアやバビロニアなど超古代からあります。月齢サイクル効果(英語でLunar effect)といい、生命の誕生(女性の生理)との関係などが古いようですが、犯罪や精神疾患、災害、出生率、そして狼男など、異常現象に関連づける信仰がかなり根強くあります。これは現代にいたるまでそうで、いまだに研究されています。最近の動向としては、大方が否定説になっていますが、たとえばオーストラリアでの研究では、病院の入院患者が、満月の夜に看護婦などのスタッフに噛みつくなどの報告があります。このような報告を見ると笑ってしまうのですが、それほど根強い信仰が残っているということです。

月齢サイクル効果?
http://scienceminestrone.blog.fc2.com/blog-entry …

http://anomalylabo.jimdo.com/%E5%85%88%E8%A1%8C% …

http://ggsoku.com/tech/lunar-effect-is-not-real/

http://www.genpaku.org/skepticj/fullmoon.html

中世以降から現代にいたる狼男の伝説やドラマにおける月との関連は、獣人伝説全般と月齢サイクル効果が次第に結びついた結果とも考えられます。吸血鬼などもそうなのでしょう。

***********************
ベラスケスに関して。

>ただ読んでみても、太陽神と書いてあるだけで、アポロンと同一視してゐるやうな記載がみあたりません。

問題は、オウィディウスそのものの中に同一視している記載があるかどうかではなくて、後世の読み手が区別できていないということなのでしょう。

>博識なオウィディウスがそんな誤りをするとも思へません。田中秀央・前田敬作訳『転身物語』kindle版では、「太陽神ソル」と訳し、「ローマの太陽神で、ギリシアのヘリオス神にあたり」といふ註をつけてゐます。

私の知識では手に余るのですが、オウィディウスの原文を見ると、アポロンとヘリオスの固有名詞はほとんど書いておらず、たいていはdeusとだけあります。御指摘のダプネの話の箇所、第1巻441行は、岩波文庫では「弓矢の神アポロン」と訳してありますが、原文は「弓矢の神(deus arquitenens)」としか書いてありません。少しあとになって、473行一か所だけはApollineasと書いてあります。
http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Per …

第4巻の方も、「太陽(solem)」としか書いてないですね。われわれが手にする現代の翻訳は、文献研究が進んで何の神かが特定され、注が付いているのでヘリオスと知ることができますが、昔の訳は直訳ですので、太陽神=アポロンという概念が広まってしまっていれば、ヘリオスと読み解くのは難しかったのではないでしょうか。ドイツ語訳でも、単に「太陽神(Sonnengott)」としか訳していないものがありますし、スペイン語の訳を見ても、Solとしか書いてありません。Solは、スペイン語で単に「太陽」という意味で、神の名前ではないので、読んでいる側は、それだけではアポロンとヘリオスの区別ができません。ソル=太陽神=ヘリオスという知識がいきわたっていれば別ですが、太陽神=アポロンという概念の方が広まってしまっていたので、ソル=アポロンと読まれてしまったのでしょう。
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この回答へのお礼

御多忙のなか、御回答いただき、ありがたうございます。

>下記の書物の著者が、ペトロニウスがゲルウァシウスの出典であることに疑いはないと記していました。

可能性は大いにありますね。「疑いはない」といふのは筆の勢ひでせうか。もしペトロニウスが月とは無関係と考へてゐたなら、ゲルウァシウスの想像力のたまものです。

>古い狼男の伝説が月と関係がないという指摘があることは書きましたが.....

いろいろおもしろい話をありがたうございます。

>アウグスティヌスの告白論にも狼男の話はあるそうです。

この本は捨てました。

>後世の読み手が区別できていないということなのでしょう。

結局はさういふことなのでせう。ギリシャ文化は一般にはローマ文化を経由して解釈されることが多いので、ホメロスなどを熟知してゐるオウィディウスはこの物語ではヘリオスのつもりで書いてゐても、後世の西洋人はホメロス抜きに読んでしまふのかもしれません。

あとで田中秀央訳を調べてみたのですが、物語によつてはアポロンとヘリオスを同一視したものもあるやうです。第2巻340行あたりの「ヘリアデスの転身」の註に「太陽神ヘリオス(この物語ではポエブス・アポロと同一視されている)」なんて書いてあります。オウィディウスもそれなりに臨機応変なところがあるやうです。元ネタがさうなつてゐたとすれば、それに従ふしかないでせうし。

Tastenkastenさんのおつしやるのが正解のやうです。

>オウィディウスの原文を見ると、アポロンとヘリオスの固有名詞はほとんど書いておらず

これは言はれて初めて気づきました。ふつうは「弓矢の神(アポロン)」と括弧に入れるものだと思ひます。読みやすさを考慮したのでせうか。ご指摘ありがたうございました。

お礼日時:2015/10/22 22:31

>巻数とだいたいの行数がわかれば、参照できるのですが、すぐにはどんな話なのかわかりません。

単に「太陽神には隠し事はできない」といふ言葉を勝手に解釈したといふことはないのでせうか。

スペイン語の解説にかなりはっきり書いてあります。「変身物語」の第4巻、171~176です。ウェヌスとマルスの関係がわかるところ、神はすべてを最初に見る、鉄を打って鎖を作る、という場面です。この「神」、ヘリオスをアポロンとして描いたらしく、ベラスケスのすぐ後の世代のスペインの画家、ポロミーノが、スペインの画家の伝記を書いており、この作品についてもアポロンを描いたものとして詳しい記録が残っているようです。

>しかしホメロスもルキアノスも、アポロンとヘリオスを別別の登場人物として明確に区別してゐます。

それよりも後の時代ですね。紀元前5世紀ごろからアポロンはヘリオスと混同されて太陽神とされ、ローマ時代にはすっかり太陽神になった、と、呉吾一の「ギリシャ神話」に書いてあるそうですが、書物を持っていないので確認できません。英語の解説でも、ヘレニズム時代から同一視が始まったとありますが、一方、ラテン語の文献などでは、少なくとも紀元後3世紀ぐらいまでは区別して書かれていて、混同は見いだせないとする学者もいるようです。一番古い混同例がギリシャ悲劇だということをどこかで読んだのですが、その時に集めて保存しておいたリンクの中にはありませんでした。貼り忘れたようです。
岩波文庫の「サテュリコン」も現在品切れ中で、入手できません。
狼男については、先ほど少し詳しい文献がありましたが、月の話はやはりあまりありません。起源はかなり複雑なようで、一番長く伝わっているのはゲルマン文化だそうですが、インドの方にもあるようです。また、魔女狩り同様、狼男裁判のようなものもあったようです。あと、月の関係でヴァンパイアが一緒に出てくるのですが、狼男と吸血鬼にどのくらい密接な関係があるかがわかりません。吸血鬼が関係してくるなら、満月というのもわかるのですが、もう少し見てみます。
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この回答へのお礼

ベラスケスの絵画についての御回答、ありがたうございます。ずつと気になつてゐました。閲覧者で内容がわからない方がいらつしるかもしれませんので、もとの質問ページを挙げておきます。
http://okwave.jp/qa/q9040862.html

>「変身物語」の第4巻、171~176です。

中村善也訳(岩波文庫)上145ページでした。御指摘のとほりウルカヌスのあの話があります。私の不勉強です。『変身物語』は神話事典的な性格もあつて、たいていの有名な話は記述されてゐるのですが、わかりませんでした。

ただ読んでみても、太陽神と書いてあるだけで、アポロンと同一視してゐるやうな記載がみあたりません。博識なオウィディウスがそんな誤りをするとも思へません。田中秀央・前田敬作訳『転身物語』kindle版では、「太陽神ソル」と訳し、「ローマの太陽神で、ギリシアのヘリオス神にあたり」といふ註をつけてゐます。それが普通の読み方に思へます。ウルカヌスの話の中にアポロンは登場してきませんが、たとへば第1巻450行あたりのダプネの話には「アポロン」として出てきます。オウィディウスはアポロンとヘリオス(ソル)の区別をしてゐます。

>月の話はやはりあまりありません。

いろいろな文献を紹介していただきました。ティルベリのゲルウァシウスが最古の資料だと判定する人もゐるやうです。このあたりは微妙ですけれど。わからないからこそ気になりますし、魅力があるのかもしれません。

お礼日時:2015/10/22 07:52

Allan Morey "Werewolves" (6ページ)や、Barb Karg "The Girl's Guide to Werewolves" (5ページ)によれば、


「狼男と月を結びつけた最初の記述は、ゲルウァシウス(Gervase)による」
とされています(「Googleブックス」を参照しました)。この説が正しいとすれば、『西洋中世奇譚集成』こそ、この情報の初見ということでいいのでしょう。

ただ、狼男(これをはじめとする獣人伝説)と月は、より古い時代から関連づけられていた節もあります。たとえば『星の文化史事典』(253ページ)によれば、シベリアには
「月は昼の間は犬に変身し、夜になると毛皮を焼き捨てて、月に戻る」
という伝説があるそうです(大林太良『北方の民族と文化』から引用されています)。狼ではなく犬ですが、毛皮を使った変身は、狼男伝説によくあるモチーフです。
また、インド神話の半獣神・ガンダルヴァも、月と結びついているようです(『インド神話伝説辞典』130ページ)。

なお狼男と月については、
篠田知和基『人狼変身譚』(322~323ページ)
同『世界動物神話』(161ページ)
グールド『人狼伝説』(103ページなど)
でも言及されておりますので、ご参照ください。
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この回答へのお礼

多くの資料を提示していただき、まことに感謝してをります。なほ、私の質問ページ内では、日本語訳のない外国語の投稿は禁止されてをります。今後もよろしくお願ひいたします。

>『西洋中世奇譚集成』こそ、この情報の初見ということでいいのでしょう。

どうやら明確に断定できるものはそのやうです。ペトロニウスは解釈次第です。

>大林太良『北方の民族と文化』から引用されています

出典や孫引きについて、きちんと記載してくださるのは、とても助かります。Q&Aは論文ではありませんから詳細な書誌情報までは不要ですが、何も書いてゐない投稿が多すぎます。狼と犬は近縁種でせうから、シベリアの伝説も関連がありさうです。

>インド神話の半獣神・ガンダルヴァも、月と結びついているようです

インド神話はギリシャ神話以上にわかりにくく感じます。のちほど調べてみます。

お示しくださいました書物は、図書館に行つたときに見てみます。有名なモチーフだけあつて、いろいろと本が出てゐるのですね。御回答ありがたうございました。

お礼日時:2015/10/22 07:18

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