
西行法師の有名な歌ですが、この季節になると思い出します。
しかし、それと同時に疑問が湧きます。
「花」は、ほんとに桜なのか?
桜というのが定説のようですが、「旧暦2月15日に桜は咲くのか?梅ではないのか?」という疑問です。
桜が3月中に咲き、卒業の花、別れの花になったのは、ここ十数年くらい、21世紀になってからこと。
20世紀の日本では、桜は4月新学期の花。「桜咲いたら1年生~」でした。
旧暦2月15日は、今年2016年でいえば、3月23日。
暖冬の今年で、やっと開花したかしないか、です。
平安時代は3月下旬に桜が当たり前、ってほどに暖冬だったのか?
しかも、現代日本の開花宣言はソメイヨシノ、江戸時代の花。
西行の頃の桜は山桜。山桜は暖冬でも3月にはほとんど咲きません。
咲くとしたら、河津桜くらいです。平安時代の桜は、河津桜系だったのでしょうか?
西行法師は、願いとおり、如月の望月の頃に亡くなったそうですが、
その日桜は咲いたのか? とても気になるのです。
彼の願いは、花咲く木の下で死ぬこと。
その花が梅ならば、西行の願いは叶い、満開の花の下、梅の香りに抱かれ、かすかな笑みを浮かべて永遠の旅路に旅立った。その上に、花びらがひらりひらりと舞い落ちる。
でも、もし、桜ならば、葉一枚花ひとつない寒々とした冬木立の下にひっそりと横たわり、その上を肌寒い風が吹き抜ける。ひゅ~るるるう~~
そう思うと、西行が可哀想で涙がでそうになります。
だから、ぜひとも、花は梅であって欲しいのです。
どうして桜が定説になったのか知りませんが、「花は桜木、男は武士よ」とか「朝日に匂うやまさくら花」とかの江戸時代の「花=桜=潔い男」のイメージに結び付けられてできた定説ではないかと、邪推してしまいます。
私は、「西行が潔かった」とも思いませんので、つい邪推してしまうのです。
如月望月の頃の花は、梅ではないんでしょうか?
梅だと思う方はいらっしゃいませんか?
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
まあ私はろくな教育も受けてないのに、知ったかぶりで回答するのですが。
「望月の如月」とは、釈迦の入滅(にゅうめつ)の時を指している。西行はお坊さんだから、「お釈迦様と同じ時季に死にたい」と夢見た。
入滅のエピソードは有名で、釈迦は死期を悟り、沙羅双樹の木のたもとに横たわった。そのとき、沙羅双樹は急に季節外れの満開の花をつけ、花びらが釈迦に降り注いだという。釈迦の死とともに急に枯れた。
しかし、日本で沙羅双樹はそこらへんに生えているようなものではないので、西行は桜に代えたのだろう(彼の時代の桜は山桜)。西行は釈迦のように奇跡を起こせないから、たとえ願っても、季節外れの花は咲かない。その切なさ、叶わぬ夢が、この歌の妙趣である。
しかも、旧暦2月15日は今で言ったら3月下旬、山桜は(種類にもよるが)ギリギリで開花直前くらいと思う。その「ギリギリで叶わない」ところが、切なさを弥増(いやま)すのである。
そもそも西行は旅僧であって、「行き倒れ」の無惨な死も覚悟していたはずだ。だからこそ、その対極の美しい臨終を歌に描いた。釈迦と自分がかけ離れていることも、当然意識していた。
ところが、ご質問者は対極ではなく中間で合理化してしまうというか、梅の花と解釈すればいいとおっしゃる。残念ながら、それはこの歌の妙趣を台無しにしてしまう。
回答が長くなるが、付け加えると、季節が移り変わる最大の原因は太陽高度である。その太陽高度の精密な測定に基づくのが太陽暦で、現在の暦(グレゴリオ暦)もそれである。ちなみに、元号を日本独自の暦と威張ってる人もいると思うが、現在では年の数え方が西暦と異なるだけで、中身はグレゴリオ暦である。明治の初めにさっさと旧暦から西洋のまねに乗り換えたのだ。
旧暦とは太陰太陽暦で、純粋な太陰暦ではなく、季節のずれが積もり積もると「閏月(うるうづき)」というのを挿入して修正していた。1年が13カ月になるのだ。つまり、前述のように「旧暦2月15日は今で言ったら3月下旬」とは決まってなくて、年によって変動する。それはご質問者もご存知と見える。ということで、その不安定さも、この歌の切なさを弥増すものであったろう。今のように「3月下旬なら平均の暖かさはこれぐらい」とは言えなかった。
しかも、西行の時代の日本は、暦を作成する能力がまだ不足していた。太陰太陽暦は、月や星座や太陽の精密な観測に基づき、複雑な計算を経て作られる。それが日本でもできるようになったのは江戸時代だった(幕府に天文方という部署があった)。
それまでの日本は中国のまねをして暦を作っていた(百%パクリではなかったけど)。中国は始皇帝以来「皇帝は時を支配する」という伝統があって、天文観測や暦の確定に熱心だった。例えば渾天儀が有名である。というわけで、日本の暦はますます日本の実際の季節とずれていて、何年も先の何月何日の寒暖など予測するのは無理だった。それなのに歌に詠み込んだという切なさが……くどいからもう終わります。
素晴らしい回答をありがとうございます。
毎年、梅桜の季節になると、西行は満開の花の下で「善きかな善きかな」と微笑みながら死んだのでなければ、可哀想すぎる! と毎年思っていた私が浅はかでした。
回答いただいて、西行の切ない願いがひしひしと胸に迫りました。
そして、春とはいえまだ肌寒い風の吹く如月望月の頃、蕾がほのかに色づいた桜の木の下に身を横たえるのは、西行の本望であったのだ、と思うことができました。
釈迦と同じように死にたい。
しかし、不徳の身には叶わぬ願いである、と知りつつ、それでも願う。
なんという切なさ!
「願わくば」の歌がこれまでより、深く深く胸に響くようになりました。
ありがとうございます。
No.2
- 回答日時:
【修正】
前回回答の「沙羅双樹は急に季節外れの満開の花をつけ」から「季節外れの」を削り、「沙羅双樹は急に満開の花をつけ」に修正します。以上。
前回回答後、気になって調べたところ、釈迦の入滅は古代インド暦の第2の月に起きたという。それを、中国仏教において中国旧暦2月15日と言い習わしたようだ。
そこで、古代インド暦と中国旧暦との間にズレはないかを調べると、両者とも太陰太陽暦で、たぶん半月くらいしか違わないらしい。次に、日本旧暦はもともと中国旧暦のまねだから、おおむね違わなかっただろう。
結局、釈迦の入滅は現行のグレゴリオ暦でいうと3月後半から4月の頭くらいではなかったか。なお、釈迦については伝説・伝承がたくさん混じっているとしても、実在の人物ではあったと言われている。
そして、釈迦が入滅したインドのクシナガラの気候であるが、3月から4月なら沙羅双樹が開花するのは季節外れではないかもしれない。もちろん私は行ったこともないし、分からないのだが。
要するに、件(くだん)のエピソードは、「急に満開になり、たちまち散って枯れた」ということであり、「入滅と木の花とがジャストタイミングで連動した」話であろう。一方、西行はそのようにジャストタイミングで自分の死と桜の花とを連動させられない。運が良ければタイミングが掠(かす)ることも、という切ない願望だったのだろう。そのような対比が、この歌の含意(がんい)だと思う。
再度の回答ありがとうございます。
西行が亡くなった年が今年のように暖冬で、せめて一輪二輪、桜が咲いていたらいいな、と思ってしまいました。
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