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この前の質問でピアノには簡単で、ハープでは演奏不可なフレーズについてがよく分りましたが、
その逆、つまりハープでは演奏出来て、ピアノでは演奏不可なフレーズについて教えて下さいませんか?
出来れば実例についても教えて下さい。

A 回答 (1件)

基本的に、ハープ特有の奏法がそれほど追求されていない古典の曲なら、


ピアノでそのまま弾けないパッセージのある曲というのはほとんどないでしょう。

ハープで最も華やかな奏法はグリッサンドです。
ピアノにもグリッサンド奏法はありますが、白鍵だけか黒鍵だけに限ります。
片方の手で白鍵、もう片方の手で黒鍵というのも現代の曲にはありますが、
これはほとんど音響的、騒音的効果で、和音のアルペッジョや音階ではありません。

以前の回答で書いたように、ハープは1オクターブ内に7本の弦しかありません。
そのため、半音階が演奏できないという弱点はありますが、
逆に、ペダルで音高を変えられることから、
いろいろな調の音階に調律することができます。
グリッサンドは指1本でできるので、
変ホ長調の音階であろうと、嬰ト短調の音階であろうと、
ペダルでその音階に調律してしまえば、
指1本で最低音域から最高音域まで猛スピードでグリッサンドができます。
ピアノだと、ハ長調以外の音階のグリッサンドは不可能なので、
全部指で弾かなければならず、たとえ高度なテクニックを持っていたとしても、
ハープの最速のグリッサンドには追いつきません。

ひとつの例ですが、ベンジャミン・ブリテンという現代イギリスの作曲家に、
『キャロルの祭典』という合唱曲があります。
オリジナルはハープ伴奏ですが、ピアノで弾く場合の注意書きが入っています。
ハープが弾く各種音階のグリッサンドは、ピアノでは、
白鍵のみか黒鍵のみのグリッサンドで代用することになっています。
また、音階の速いグリッサンドは、音階ではなくアルペッジョで代用するようになっています。
Youtubeには、ピアノ伴奏のよい音源がないので比較しにくいのですが、
下の二つの動画で、変えてある箇所を一応挙げておきます。

ハープ伴奏版(28分18秒の個所から、ニ長調のグリッサンド)


ピアノ伴奏版(4分2秒の個所から、白鍵、つまりハ長調のグリッサンドで代用、
曲の終わりは、グリッサンドの代わりにアルペッジョ)
https://www.youtube.com/watch?v=4cHHlSWYkU0

ハープのグリッサンドは、和音のアルペッジョとしてもよく使います。
ペダルの操作で隣同士の弦を同じ高さに調律することができるので、
1オクターブ内の音の種類を4つまで減らすことができ、
4音から成る和音のアルペッジョを高速でグリッサンドとして演奏できます。
こういう個所は、ピアノでもアルペッジョとして弾くことができるので、
ほぼハープの原曲通りに弾けるケースは多いですが、やはり音域とスピードには限界があります。
両手で上下にかき混ぜるようなハープのグリッサンドの効果は、ピアノでは再現不可能です。

添付画像に、もういくつかの例を楽譜で示します。
①~③は、現代アルゼンチンの作曲家、アルベルト・ヒナステラの有名な『ハープ協奏曲』から。
④は、ラヴェルの『序奏とアレグロ』。
⑤は、武満徹の『レイン・スペル』という曲のハープのパート。

①は、ハ長調以外の音階のグリッサンドである上に、広い音域で早く弾かれ、
さらに、右手と左手が途中で交差するので、ピアノでは演奏不可能です。
②は、ペダル・グリッサンドといって、弦をはじいた後にペダルを踏んで音を半音ずり上げる奏法。
③は、スペースの都合で切り取ってありますが、上段も下段もト音記号で、
つまりこれも、右手と左手が同じ音の塊を逆方向に瞬間的にグリッサンドしています。
工夫次第では、ピアノでも似た効果で弾くことは出来ますが、同じというわけにはいきません。
④は、一度に4つの音をグリッサンドしています。ピアノで弾くとしたら2音に減らさざるを得ず、
さらに音を少し抜いてアルペッジョのように書き換えないとピアノに適した音型になりません。
この曲には、ラヴェル自身による2台ピアノ用編曲がありますが、
このグリッサンドは1音だけです。もっとも、ピアノは音量があるので、
特に聞きおとりがするというわけではありません。
⑤はすでに特殊な例で、5本の弦を半音より狭い四分の一音高く、または低く調律しています。
ピアノでは、四分の一音変える調律はそう簡単ではありませんが、
ハープの場合は、奏者が自分ですぐに変えられます。
十二平均律とは違う音階になるので、非常に不思議な音響になります。

ヒナステラ ハープ協奏曲
https://www.youtube.com/watch?v=PLSj_MW8itA

ラヴェル 序奏とアレグロ(原曲)
https://www.youtube.com/watch?v=bBm1w8J63mg
ラヴェル 序奏とアレグロ(2台ピアノ)
https://www.youtube.com/watch?v=x4mXMkSlg-o

武満徹 レイン・スペル
https://www.youtube.com/watch?v=F_E2rKxg3NE

あとは、近代以降になって開発された特殊奏法がいろいろあります。
ハーモニックス奏法は、弦の長さの二分の一の場所に軽く触れながら弾くと
1オクターブ上の音が鳴るというもので、音色が変わります。
ピアノでも、ソフトペダルを使ってある程度音色に変化はつけられますが、
こういう効果にはなりません。
また、弦の中央ではなく、楽器本体に近いところで弦をはじくと、
金属的な固い音がでますし、指ではなく爪で弾く奏法もあれば、
撥のような固いものではじくこともできます。
楽器の銅を叩く打楽器的な効果を狙った奏法もあります。
ピアノでは、手の届く場所を叩いてもあまりいい音がしません。

下の曲は、ジャズ・ハープ奏者のデボラ・ヘンソン-コナント作曲の『バロック・フラメンコ』です。
爪を使ってはじくような奏法や、胴体に近いところで弾くことで、
ギターのような硬質な音を出しています。こういう音色の変化はピアノでは無理ですし、
和音をグリッサンドで急速に連打するのも無理です。
胴を叩く奏法も使われています。

https://www.youtube.com/watch?v=h1IPeddPJUk&list …

その他にも特殊な奏法があり、弦に固いものを当てておいて、
はじいた後にそれを動かして音高を変えることもできますし、
弦全体を手のひらで叩くこともできます。
現代の作曲家ほど、ハープの特性を最大限に生かした曲を書くので、
ピアノへの編曲は不可能に近くなります。

ハープの特殊奏法
https://www.youtube.com/watch?v=qM4JLalMDro

https://www.youtube.com/watch?v=tdjGheaEtqc
「ハープでは演奏出来て、ピアノでは演奏不可」の回答画像1
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この回答へのお礼

やはり、近代以降にそう言った演奏法が生まれたのですね。
どの曲もピアノでは出せない独特な響きがしていて凄かったです。

お礼日時:2017/03/28 06:58

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