【お題】NEW演歌

哲学、現代思想における『ポストモダン』とはいったいどのような思想なのでしょうか?ポスト構造主義とどのように違うのでしょうか?この思想内容を知るためにはどのような本を読めばいいのでしょうか。
雑誌「現代思想」増刊の、これに関する書籍紹介を呼んでもいまいち何から手をつければいいかわかりません。理解するためにはどんな本に手をつければいいのか知りたいので、色々あげていただけると嬉しいです。
色々な意味を含む概念なので難しいことは承知していますがよろしくお願いします。

A 回答 (4件)

ポスト・モダニズムの領域であると一般的に言われるのは、建築・文学・思想の三領域です。



やはり「文化」に足場を置く概念の用語ですので、狭義の「ポスト・モダニズム」が「テクノロジー」を扱うことはないと思います。

たとえばリオタールは、市場のポストモダニズム、消費文化やマス・メディアのなかに現れる、理論抜きの、単なる様式としての「折衷主義」が存在することは認めているのですが、本来的に、「リアリズムに対して挑戦する文学と芸術の様式」(キャサリン・ベルジー)がポスト・モダン性、ということになります。

ただ、未来永劫ないか、というと、そうもいえなくて、近代にアンチを唱え、「文化」という視座からテクノロジーを読み込んでいく解釈がありうるとしたら(具体的にはどんなものか想像もつかない、単に「可能性」としての話ですが)、ポスト・モダニズム的テクノロジー理論というのも登場するかと思います。

文学の領域では、リオタールがあげるのは、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』、そのほかに、現代のポスト・モダニズムの系列に属する作家として通常あげられるのが、ホルへ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサル、マリオ・バルガス・リョサなどの南米の作家や、トマス・ピンチョン、ジョン・バース、ドン・デリーロ、リチャード・パワーズ、ポール・オースターらのアメリカの作家でしょう。

あるいは文学には、創作の他に文学理論という領域もあって、ここでポスト・モダニズムはカルチュラル・スタディーズという形をとって発展していきます(うーん、ここらへんはかなり入り組んでいるので、だいたいそんなもん、くらいに受け取ってください)。

さて、思想面からポスト・モダニズムを見ていくとなると、ほぼポスト構造主義と同一になるかと思います。

ポスト構造主義の入門書など読んでいくと、絶対に、「差異」、「テクスト」、「ディスクール」といった、ポスト・モダニズムの鍵概念が出てくるので。
とくに、フーコー、デリダ、クリステヴァあたりは重要かと思います。

http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=856717

ここで間テクスト性についての回答をしているんですが、間テクスト性というのはまさにポスト・モダニズムの方法でもあるんですね(うーん、回答が少し文学寄りすぎる感じはしますが)。あらゆるものが「テクスト」である、という考え方は、重要かと。

そのほか、ポスト・モダニズムを考えていくとき、非常に重要になってくるのが、ニーチェの思想です。ポスト・モダニズムとは、19世紀の「ニーチェの哲学の長たらしい脚注」(テリー・イーグルトン)にすぎない、という見解もあります。

ヨーロッパの近世から近代に至るまでの哲学は、数学を理想とし、「自我」や「理性」という原理から、演繹的に導かれた知の体系を築いていこうとした。こうしたありかたに、いちはやく批判を投げかけたのがニーチェであったわけです。これこそポスト・モダニズムのエッセンスとなるような考え方ではないか、というわけです。

日本はなんでも古くなるのがおっそろしく早い不思議な国で、「ポスト・モダニズムはもう古い」みたいな見方もあるんですが、そんなこともないと思います。

確かにフランス現代思想家のおもだったところがみんな鬼籍に入ったということもあって、これからの現代思想がどうなっていくのか見えにくくはなっているとは思いますが。

実はわたしは文学のほうの人間なので(すいません、いまごろになって言い出して)あげるとしたら文学理論の人ばっかりになっちゃうのですが、日本人の思想家で言うと、たとえば蓮実重彦や柄谷行人、浅田彰、東浩紀ということになるかと思います。
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この回答へのお礼

再度長文ありがとうございます。調べてみたらテクノロジーとの関連で語られているので、広域ではそれも含めることができるかもしれません。

お礼日時:2005/05/21 22:41

あまり確信は持てないのですが…政治学の先生に昔聞いたところ、ポスト・インダストリアル・ソサイエティ、脱工業化社会と関係があるというような説明をされました。

ダニエル・ベルですね。現実の社会における脱工業化社会、消費社会に生きる人々がポストモダン的、ということですかね?
僕は政治学が専門で、あまり哲学的なことはわからないのですが、見田宗介の『現代社会の理論』なんかも面白いかもしれません。
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私は学部のゼミが社会思想・社会理論だった者です。


現在は街の法律家です。

何だか元気のない日本社会・閉塞感みたいなものは、「大きな物語」のなさによるのかなと、大学で勉強していた頃のこと思いました。
一人一人が小さな物語を紡ぎあげて行く、苦しい作業。しかし、そこに個人一人一人が生きがいを見出せたなら、素晴らしい。

構造主義の方法さえも、近代までの形而上学的伝統(はじめに物語ありき)から自由でない!と批判するのがポスト構造主義のようです。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。やはりポスト構造主義もポストモダンと深い関係があるようですね。

お礼日時:2005/05/20 22:13

ポスト・モダニズムというのは、まず、第一義的に、モダニズム、近代性を批判的にとらえ、脱近代化を推し進めようとする理論の総称、ということになると思います。



ポスト構造主義というのは、学問的方法、あるいは思考方法を指す言葉ですから、属する人は重なり合いつつも、その用語が対象とする領域が異なるわけです。

ポスト・モダニズムを考えるとき、それが批判しようとしている「近代」、あるいはモダニズムがどのようなものなのか、どのようにとらえるのか、ということがもんだいになっていきます。

ポスト・モダニズムについて書かれた文献では、かならず引用されるのが、リオタールの定義です。

リオタールは『ポスト・モダンの条件―知・社会・言語ゲーム』(水声社)のなかで、近代とは、

「愛による原罪からの解放というキリスト教の物語、認識による無知や隷属からの解放という啓蒙の物語、労働の社会化による搾取と阻害からの解放というマルクス主義の物語、産業の発展による貧困からの解放といいう資本主義の物語」

という「大きな物語」が信じられた時代、といいます。ポスト・モダンの状況とは、その物語が信じられなくなったような状況である、と。

こうした「大きな物語」が信じられなくなった状況において、複数の小さな物語を生み出すこと。そうしてその複数の物語を異種混合させ、差異を増殖させ、未だ知られざるものを探求し続けることによって、回答を出すのではなく、新たな問題を浮かび上がらせていく。

こうした核になる部分は非常に有名なのですが、リオタールの思想というのは、まさにポスト・モダニズムの目指したものである反体系主義的かつ多元的思考を体現したものですから、追っていくのがなかなか大変でもあります。

まず入門書として、
・キャサリン・ベルジー『ポスト構造主義』(岩波書
店)
わたしも最近読んだんですが、この本は大変おもしろく読むことができました。リオタールに触れているのは最後のあたりなのですが、やはり通しで読んでください。これを読んでおくと、リオタールの前掲書、あるいは
・『こどもたちに語るポストモダン』(ちくま学芸文庫)
もかなり読めるようになります。

そのほかに便利なのが
・久米博『現代フランス哲学』(新曜社)
この本を用いて思想の系譜をたどっていくことも可能です。

むしろ、ポスト・モダニズムの世界観に対応した文化形式であるとして、芸術の分野におけるポスト・モダニストの作品を実際に見ていったほうがわかりやすいかもしれません。

特に、建築の分野。そもそもポスト・モダニズムという言葉が登場したのは、まず建築学の分野、「機能主義」を追及したル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエらのモダニズム建築のアンチテーゼ、歴史的様式の遊戯的な引用と自由な折衷とを主張するものとして登場したわけです。

この「遊戯的な引用と自由な折衷」というのが、やはり思想におけるポスト・モダニズムの特徴とも言えるわけで、見ておいて損はない、と思います。

こうした本としてわたしがおもしろいと思ったのは
・鈴木博之『現代建築の見方』(王国社)

それからサイトですが、この“New York建築案内”
http://www1.vecceed.ne.jp/~y-satoh/newyork/index …
これは大変良くまとまったサイトで、「建物の様式と歴史的流れから検索する」というところから見ていくと、ニューヨークのモダニズム建築、ポストモダニズム建築が一目でわかるようになっています。

とりあえず、このあたりから初めてみては、いかがでしょうか。

もう少しリオタールの思想、あるいはリオタール以外の、ポスト・モダニズムに位置付けられる人にについて具体的に知りたいというのであれば、補足ください。
できるかどうかわかりませんが、可能な範囲で答えます。

この回答への補足

長文をありがとうございます。大変興味深く読ませていただきまして、とても参考になりました。

70年代のアメリカ建築で「ポストモダン」という用語が使われたことは知っていましたが、実際に建築という分野に触れたことはなかったのでさっそくチェックしてみます。

建築以外の分野でもポストモダンと関連づけて語られる分野はあるのでしょうか?(たとえばテクノロジーとか。)また、ポストモダンという思想は本当に字義どおり現在も発展している思想なのでしょうか?

やはり自分の興味としては哲学(も現代哲学という用語は使わないようですが)や思想なので、ぜひリオタールやポストモダニズムに位置づけられる人々(日本の思想家もいるのでしょうか)を紹介してほしいです。


よろしくお願いします。

補足日時:2005/05/19 18:47
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