

No.2ベストアンサー
- 回答日時:
#1です。
ずいぶんお褒めにあずかりまして恐縮しています。それにしても、はたして正解がお答えできるものやら。その前に、美禰子という名前の読み方ですが、昭和2年に春陽堂から発行された明治大正文学全集の夏目漱石編の中に掲載された「三四郎」では「みねこ」とルビが振られています。漱石は中国四国地方にことに親しみを持っていたといいますから、山口県の美禰市からその美しい文字と響きがヒロインにふさわしいものとのイメージを抱いたのではないでしょうか。
さて本論.....ですが、最後に読んだのはもうずいぶん前のことですので表現が正しいか、あるいは考え方や理解の仕方がそれでいいのか、ちょっと自信がありません。でも、わりによく覚えている方だと思っていますので、わたくしなりの解釈で答えさせていただきます。できればどなたか、正しいご解説をいただけたらなあと思います。
物慣れているというのではない、しかし、古くからの知人のように自然.......、それが三四郎が初めて野々宮の妹よし子の病室で出会ったときの美禰子の印象でした。そして、廣田が借りた新居での掃除のシーン、美禰子はウブな三四郎にさも意味ありげに振舞います。こうして、三四郎は廣田の住まいの「訪問理由の第三は大分矛盾している、自分は美禰子に苦しんでいる、美禰子のそばに野々宮さんを置くとなお苦しんでくる」と思い始めます。そんな三四郎が、ある日美禰子にお金を借りに行きます。女は知らぬ顔をして、向こうへ回って鏡を背に、三四郎の正面に腰を下ろして言います、「とうとう入らしった」。こうして三四郎は美禰子が張り巡らせた蜘蛛の巣に見事に絡め取られてしまいます。
美禰子は会堂(チャーチ)の中に居ます。かつて美禰子と一緒に秋の空を見たことがあった。ところは廣田先生の二階であった。田端の小川の縁に座ったこともあった。その時も一人ではなかった。迷羊(ストレイシープ)、迷羊(ストレイシープ)、雲が羊の形をしている........、三四郎は賛美歌の合唱の中に美禰子の声を認めます。
突然会堂の戸が開いた。寒いと見えて、背をすくめて、両手を前で重ねて、できるだけ外界との交渉を少なくしている。この光景はまさにその時の美禰子の心象そのもの......なのでしょう、己が罪の重さ。
女はハンカチを三四郎の前で振ります。以前、三四郎がなにも知らぬまま適当に手にして美禰子に勧め、「それにしましょう」とすぐ美禰子がきめたヘリオトロープの香り。「結婚なさるそうですね」、女はややしばらく三四郎をながめたあと、聞き兼ねるほどのため息をかすかに漏らしてから、聞き取れないぐらいの声で言います、「われは我が咎を知る。わが罪は常に我が前にあり」。
終始三四郎の心をもてあそんだ美禰子だったのか、それとも美禰子は本当に三四郎を愛していたのでしょうか。野々宮の存在、フィアンセの存在、結婚がきまっていて、それでもなお、若い男の前で思わせ振りにハンカチを振る女、いえそうじゃない、あれは彼女なりの決別の振舞いだったのかも.......、答えはどこにも書いてありません。でも、美禰子自身よく分っていたようです。それはまさに「われは我が咎を知る。わが罪は常に我が前にあり」。
前にも書いたように、明治という時代にあって、当時は当然のこととされていた、女性は一歩控えて男性に従属する....などという習慣にはこだわらず、知的な男性たちと互角に渡り合って、伸び伸びと自由奔放に生きる美禰子。
それなのに、「ここ鍵を置いて行きます、あとのことは女中が心得ていますわ」(ヨーロッパでは主婦の鍵という習慣があって、夫から渡された鍵を持っているかぎり、妻は夫と同等の権利を保証されていたのです、それすらも放棄して)と家庭を後にして自分に忠実な人生を選んだ「人形の家」のノラのようなところまでは到底踏み出すことが出来ない旧弊な明治時代に生きる女美禰子。結果的にすべて「かりそめの恋」程度に終始してしまって、自分でも自身の心や行動に満足していない。こんなに、どんな面にでも優れた自分なのに、そんなはずはない.....と思う、だからこそ美禰子はストレイシープ。
彼女のことですから、ストレイシープという言葉や、その意味や出典は早くから知っていたことでしょう。廣田から教えられたことかも知れず、会堂(チャーチ)での説話に出てきたのかもしれない。
また、ご質問にお書きのようにクリスチャンであるフィアンセからということもたしかに考えられます。でも、三四郎と美禰子のはかない恋のキーワードが一貫してこのストレイシープという言葉。漱石はこのストレイシープという言葉を先に思いついていて、美禰子のラヴプレイのキーワードにしたのではないでしょうか。そう考えると、美禰子が将来の夫の影響を受けていたというのはすこし矛盾するように思いますが。
そして、美禰子がふと漏らすストレイシープという言葉、自分の心の苦しさをふと漏らしてなのか、それとも、まだまだ三四郎に思わせ振りにと.....、これも分りません、受け止め方はどちらでも成り立ちますから。それでもなお、美禰子がストレイシープであったことだけは彼女自身も知っていたのです。
ドキッとさせられるのは、原口の絵「森の女」が展示された展覧会に、美禰子は、なんと.....夫に連れられて....やって来ます。そんな美禰子が結局は、もう迷うことのない、一番安定した美禰子.....だったのでしょうか。
残念ながらこれ以上は分りません。この「三四郎」、「草枕」などもそうですが、子供の頃から何度も読んで、その度に違ったものを読み取ってきたものでした。今度もう一度読み直したら、もっとはっきり理解できるかもしれませんけれど。

No.1
- 回答日時:
ミエコではなくて美禰子のことでしょう。
それと、stray sheep という言葉の語源は聖書だということはご存知ですね。少し前に同じ「三四郎」についてご回答していますので、そちらをご覧になっていただけますか。
先ほどそれを拝見しました。すばらしいご回答でした。
janvier さんはモガですね(モボですか?)。
マタイ伝から、イエスは99頭の迷わぬ羊より、1頭の迷える羊を大切に思う、ということでしょう。これは放蕩息子の譬えと言わんとすることは同じでしょう。
問題は、ミヤコがどうしてその言葉を引用したか、なのです。三四郎が終わりのほうで、ミヤコが教会に通うことは聞いたことがない、旨思います。ということは、ミヤコがはじめてその言葉を口走った時、既にクリスチャンである許婚と会っていた、ということを意味するのでしょうか?もしそうなら、ミヤコは将来の夫の影響を受けていたということになります。その言葉は彼女自身の比ゆなんですか?迷える羊がミヤコ自身ということ?佐々木が彼女のことをイプセンのノラ、と言っていたように、彼女の精神面でのモガぶり、つまり自我を尊ぶ西洋的側面、それが「迷える」の意味するところなのでしょうか?
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