
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
銅が濃硫酸に溶ける反応を考えてみます。
Cu+2H2SO4⇒CuSO4+SO2+2H2O (式1)
この式自体は酸化数とは関係なく出てくるものです。
この反応でのCuの変化は
Cu+(1/2)O2⇒CuO (式2)
でのCuの変化と同じです。
酸化銅の出来る変化を酸化としていますから硫酸銅の出来る変化もやはり酸化と考えることができるでしょう。
銅に起こった変化を抜き出してみます。
Cu ⇒ Cu^2+ + 2e^-
電子が放出されるような変化が酸化であるということになります。
還元は酸化の逆であると考えると電子を受け入れるような変化であるということになります。
単原子イオンは電子の移動が荷数の変化から直ぐに分かります。(単原子イオンだけしか考えていないのであれば「酸化数」という量は必要ありません。「単原子イオンの価数が酸化数から決まる」と考えて立ち往生してしまったという生徒が多いですがこの点に関しての誤解が原因です。・・・・つい最近もこれについての質問が出ていました。)
(式1)、(式2)でCuの変化を抜き出した残りを考えてみます。
2H2SO4 + 2e^- ⇒ SO4^2-+SO2+2H2O (式1’)
(1/2)O2 + 2e^- ⇒ O^2- (式2’)
(式2’)ではO2が還元されています。
(式1’)はH2SO4が還元されていることを表しています。
H2SO4が全体として酸化剤として働いたということしか分かりません。
CuやO2のように元素のイオン状態が変化したという見方がH2SO4に対しては出来ないのです。
原子と分子では結合が異なるのだから同じようになっていなくてもかまわないと言ってもいいのですがちょっと不満ですよね。(式1’)の右辺には3つの物質が顔を出しています。銅を酸化したことによって硫酸が変化したのです。この中のどの物質が酸化という働きに一番関係が深いのでしょう。そのためにはどの原子が一番中心的な働きをしたのかを知ることができればいいということになります。でも分子や多原子イオンの内部の結合は共有結合です。イオンの集合体ではありません。そこで、分子や多原子イオンが「単原子イオンの集合体」であるとみなすとどうなるかということを考えます。これは無理やりです。共有されている電子を片方の原子にしょいこませるのです。その時に電気陰性度の違いを判断材料にします。
H2OはH-O-Hの共有結合でできた分子です。H-Oの結合では電子対が共有されています。その電子対を陰性度の高い酸素に所属させてしまうとイオンの集まりの表現になります。
H:O:Hを(H)(:O:)(H)としてしまうのです。これは元の電子配置と比べると(H^+)(O^2-)(H^+)であるとしていることになります。ここに出てきた電荷は実際の分子の中でのものではありません。共有されている電子対を片方に所属させてしまったので「イオン」が存在しているように見えるだけです。無理やり単原子イオンの集合体として見た時に現れる電荷ですから本当の電荷と区別するために「形式電荷」という言葉を使います。
同じことをH2SO4、SO4^2-、SO2に対してやります。(式1’)に出てきている他原子イオン、分子がすべて「単原子イオンの集合体」で表されます。単原子イオンの電荷の変化は電子の出入りとただちに結びつけることができますから「形式電荷」の変化は酸化・還元の判断に使うことができるだろうと考えるのです。単原子イオンの電荷(実電荷)と多原子イオン、分子の中の原子の「形式電荷」を同じように扱います。そこで実電荷、形式電荷という区別をしなくてもいいように「酸化数」という言葉を用いているのです。
無理やり「単原子イオンの集合体だとしたら」と考えるのですから決定の規則が必要になります。
「単原子イオンの酸化数はイオンの価数に等しいとする」というのが一番の基本です。
「単体の酸化数は0とする」という規則は、分子を無理やりイオンの集合体として考えるのですからそれに当てはまらない場合ということで必要になるのです。同じ元素の原子は性質が同じですからイオンの集合体とはすることが出来ないのです。
もう一つの形式電荷
H-O-Hの分子は直線でなくて曲がっているというのは教科書に出てきていると思います。
これはH,O,Hが共有結合で出来ているということからくるものです。
Oの周りには共有電子対が2つ、非共有電子対が2つあります。
単原子イオンの集合体だと考えるとこのような分子の形は出てきません。
分子の形を考える時には「共有」に重点を置いた考え方をする必要があるのです。
その場合、共有電子対の電子は対等に共有されているとします。実際の分子の中では「共有」と言って対等ではなくていくらかの偏りがあるのですが「共有」に重点をおいて考えるので共有は対等だとするのです。この考えで各原子に電子を所属させます。
具体的な手続き
成分原子の最外殻電子を全部集めて、それぞれの原子の電子配置が希ガスと同じになるように配分します。共有電子対、非共有電子対が決まります。共有電子対に所属する電子をそれぞれの原子に対等に配分して結合状態での電子配置とします。この電子配置が元々の電子配置と異なるという場合が起これば電荷が存在するということになります。この電荷が分子の構造、多原子イオンの構造を考える時に出てくる「形式電荷」です。この形式電荷は電気陰性度の大小とは関係がありません。
分子の形は電子対は互いに反発するという考えで決める事ができます。
簡単な分子の場合、このように考えても電荷が生じるということは起こらない場合が多いです。元の原子の場合とと同じ数の電子が所属するというだけです。
オキソニウムイオンH3O^+を考えます。Oの周りにオクテットを作ると共有電子対が3つ非共有電子対が1つ、合計4つです。4つの電子対は正4面体の頂点の方向に向いています。共有電子対の電子をそれぞれ均等に両側の原子に所属させるとOの周りの電子の数が5つになります。初めは6つあったはずですからOは1+になっています。H3O^+の+の電荷は電気陰性度の大きいOの上にあるという結果になります。これが分子の形、多原子イオンの形を考える時の「形式電荷」です。
硫酸イオンSO4^2-で考えます。最外殻の電子は6×5+2=32です。これで5つの原子がオクテットを作ると考えると共有電子対が4つできます。4つのOは正四面体の頂点の方向にあります。硫酸イオンの形は正四面体です。4つの共有電子対の電子を均等に両側の原子に所属させます。Oの周りの電子は7、Sの周りの電子は4になります。Oの形式電荷は1-、Sの形式電荷は2+です。(酸化数を考える時の形式電荷はOは2-、Sは6+です。符号は同じですが値が異なります。)
2つの「形式電荷」は共有電子対の電子をどう扱って考えるかの違いになっています。
(A)電気陰性度の大きい方の原子に全部所属させてしまう
・・・酸化数を考える時に出てくる「形式電荷」
(B)結合している両側の原子に対等に所属させる
・・・ルイス構造を考える時に出てくる「形式電荷」
No.2
- 回答日時:
#1で「単体の酸化数は0とする」という規則の意味に触れました。
同じ性質のものの組み合わせですから正負のイオンに分けようがないということからくるものです。
イオンに分けることが出来ないので形式電荷としても0しか出てこないのです。
これに関係してH2O2の中のOの酸化数の規則についても書いておきます。
通常、化合物の中でのOの酸化数は-2とするのですが「H2O2の中のOの酸化数は-1とする」という規則です。これを単に例外としているものが多いです。Hの酸化数を+1として全体が0とするとOの酸化数が-1になるので「H=+1を優先させる」と書いてあるものもあります。でもこれらは酸化数の元々の意味からではなくて規則からだけ判断しようという形式的な考えです。H2O2の構造はH-O-O-Hです。この構造の中にある共有結合の電子対を結合の両側にある原子のどちらかに所属させて生じるイオンを考えると形式電荷が分かります。従って酸化数も分かります。H-O-Hではそのようにして酸化数を求めます。でもH-O-O-HではO-Oの結合が単体と同じ性質のものになっています。同じ性質の原子であれば形式電荷を考えることが出来ないのです。
「単体の酸化数は0とする」という規則に当てはまる構造が出てきているということになります。イオンとして考えるのであればH-[O-O]-Hであるとする方がいいでしょう。形式電荷は[O-O]^2-になります。O1つあたりでの形式電荷で考えると酸化数がー1になります。
このような事情は分子の中に同じ元素の原子同士の結合が存在している時はいつも生じることです。
アンモニアNH3の中のNの酸化数は-3ですがヒドラジンNH2-NH2の中のNの酸化数は-2です。NH2という分子が存在するとした時の酸化数と同じになっています。N-Nの部分の結合が単体の場合と同じ扱いになるからです。
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