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使用済み核燃料は何年・何十年と言った単位で冷却しますが、あれはなぜなのでしょうか?熱を発しているということは、何かのエネルギーが熱エネルギーに変化しているはずですが、それはなんなのでしょうか?

無知な人間なりに単純に考えると、E = mc^2 で核分裂の際に質量の減少分が熱エネルギーになったのではないかと思います。しかし、それは核分裂時に発生するはずなので、年単位で冷やさなければならない理由がわかりません。

質問は以下です。
・なぜ年十年も冷却しなければならないのでしょうか?
・熱エネルギーの発生のきっかけは、あくまでも原子炉運転中の核分裂時のエネルギーだけであり、単純に「ものすごく熱い」という話なのでしょうか?
・それとも「使用済み」でも核分裂をし続け、熱を発し続けているのでしょうか?
・熱伝導率が極端に低いということなのでしょうか?(そんなわけないか…)
・それ以外の理由なのでしょうか?

この辺のことについて教えてください。
よろしくお願いします。

A 回答 (9件)

順番が前後しますが。



>・熱エネルギーの発生のきっかけは、あくまでも原子炉運転中の核分裂時のエネルギーだけであり、単純に「ものすごく熱い」という話なのでしょうか?
原子力における熱の発生は、おもに「核分裂反応による発生エネルギー」+「生成した放射性物質(核分裂生成物など)の放射性崩壊による発熱(崩壊熱)」です。
使用済み核燃料の場合は、核分裂反応による発生エネルギーはごくわずか(理由は後述)で、主なのは生成した放射性物質の崩壊による発熱です。
なお、崩壊熱とは、放射性崩壊により発生した放射線がほかの物体(原子とか)に当たってエネルギーを受け、それが熱エネルギーに変換されるために発生します。

>・それとも「使用済み」でも核分裂をし続け、熱を発し続けているのでしょうか?
ここでいう「核分裂をし続け」とは何を指すのでしょうか。
もしこれが「核分裂の連鎖反応が維持されている(=臨界状態である)」という意味ならば、発生していません。

たしかに、放射性物質のなかには「自発核分裂」という崩壊モードをもった核種が存在します。
(文字通り、なにもせずとも自然に核分裂するという放射性崩壊の一種です。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%99%BA% …
ただし、他の放射性崩壊と比較して、自発核分裂が発生する確率は低くのです。
また、燃料棒の存在のみで臨界を維持できるような設計はなされません。
(成型したとたんに臨界して吹っ飛ぶような燃料棒なんて作るわけありません。)

>・熱伝導率が極端に低いということなのでしょうか?(そんなわけないか…)
「物体の温度が上がる」という事象は、「熱がたまる」ということです。
つまり、冷める速度(放熱速度)よりも熱する速度(発熱速度)が早ければ、物体に熱はたまっていき、温度は上がることになります。
使用済み燃料棒を冷却しなけれなならない理由は、結局のことこれで、発熱速度(この場合崩壊熱)が放熱速度よりも早い状態であるため、熱がたまり続けてしまい、最後には熱によって破壊されることになります。
これを防ぐために(空冷か水冷かにかかわらず)冷却が必要になるのです。

>・なぜ年十年も冷却しなければならないのでしょうか?
なぜ冷却するのか、というと「放射能が落ちるのを安全に待つため」です。
上にも書きましたが、発熱するのは崩壊により発生する放射線のためです。
崩壊が進めば、それだけ放射性同位体が安定同位体(放射線を出さないもの)になるわけですから、放射能が減り、放射線も減ります。
放射線(と崩壊熱)が減れば、放射線防護の点でも、工学的な点でも取り扱いやすくなるわけです。

この回答への補足

>放射性崩壊により発生した放射線がほかの物体(原子とか)に
>当たってエネルギーを受け

ここがわかりませんでした。他の物質に当たる前にそもそも放射線を飛ばすためのエネルギーがどこからか発生しているはずなのですが、それが何なのか。

核分裂と同じで質量がエネルギーに変化しているのでしょうか。別の原因でエネルギーが発生しているのでしょうか。

この点についてもしご存知なら教えてください。
よろしくお願いします。

補足日時:2013/12/17 00:14
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この回答へのお礼

ありがとうございました

お礼日時:2013/12/30 15:07

No.5です。

「補足」に書かれたことについて:

>・アルファ線やベータ線の運動エネルギー
>・ガンマ線の電磁波のエネルギー

>はどこから発生するのでしょうか。

 核分裂生成物は、単にウラン原子核が割れただけですので、原子核の状態としては、原子核を構成する「陽子+中性子」のバランスが悪い不安定です。物理用語でいうと「エネルギー準位の高い状態にある」ということです。例えて言えば、「内部温度が高い」とか「内部で陽子や中性子がゴロゴロ動き回っている」という感じでしょうか。
 核分裂静生成物のエネルギーは、正確に言えば「重心の速度による運動エネルギー」とこの「内部エネルギー」の和です。

 内部エネルギーは、その中のアルファ粒子(ヘリウム原子核と同じ、陽子2個+中性子2個)を放出したり(アルファ崩壊)、中性子が「陽子+電子」に分かれて電子を放出したり(ベータ崩壊)、余分なエネルギーを場の振動エネルギー(=電磁波、量子力学的には「光子」の放出)として放出したり(ガンマ崩壊)して、より安定な(エネルギー順位の低い状態)原子核に移行します。(注:ベータ線は、原子核内から出ますので、周囲を回っている軌道電子が外に出る「電離」とは異なります。「中性子→陽子+電子」という核反応ですので、陽子が1個増える=原子番号が1つ増える=別な元素になります)

 「どこから発生するか」というのは、モノの状態としては上に書いたようなものですが、「エネルギーを質量は等価」ということからすれば、「質量欠損」に相当するエネルギーが元になっている、ということです。
 ご自分で確認したければ、各々の原子核の質量、陽子、中性子、電子の質量を調べて、原子核反応前後の質量欠損を計算してみてください。計算式はご存じのE = mc^2です。相当な有効数字を確保しないと計算できませんが、精密に計算すれば放出エネルギーが計算できます。
 例えば、こちらを参考に↓
http://www11.ocn.ne.jp/~plasma/atomic.html
http://rokamoto.sakura.ne.jp/education/nuclearpo …

 これは、エネルギーと質量は等価なので計算すれば等しくなる、というだけのことで、別にエネルギーがウランという特別な物質の質量から「生み出されている」ということではありませんので、念のため。1個の電子でも、光速近くまで加速すれば、運動エネルギーで質量が大きくなる、というのと同じです。
 また、「物が燃える」といった化学反応でも、厳密に測定すれば反応前後で質量が変わっています(当然、空気中からの酸素や、放出された二酸化炭素などの全ての質量を考慮しないといけません)。エネルギーの量が小さいので、核分裂ほど質量欠損が目立たない、というだけです。
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この回答へのお礼

>「重心の速度による運動エネルギー」とこの「内部エネルギー」の和

うーん。むづかしいですね。


>「質量欠損」に相当するエネルギーが元になっている

え、というか結局、単純に質量欠損分がエネルギーに変化しているだけなのですか…?

ご提示いただいたURLはどちらも、単純な「ウランの核分裂」の話で、この範囲は高校でも習ったので私も把握しているのですが…。結局はこれと同じという事ですか?


>「物が燃える」といった化学反応でも、厳密に測定すれば反応前後で質量が変わっています

え?そうなんですか!そんな話はじめて聞きました。
…そうなんですか。

ありがとうございました

お礼日時:2013/12/28 18:03

No6です



>>放射性崩壊により発生した放射線がほかの物体(原子とか)に
>>当たってエネルギーを受け
>
>ここがわかりませんでした。他の物質に当たる前にそもそも放射線を飛ばすためのエネルギーがどこからか発生しているはずなのですが、それが何なのか。
>
放射線のエネルギーの大元はなにか、ということですか?
「原子核がもともと抱えていたストレス」とでもいえばいいのかな。

放射性を持った核種というのは、安定した核種と比較して、原子核が不安定な状態にあるのです。

原子核は、陽子と中性子の塊です。

通常これらは引力(核力)が働いて塊を形成しているのですが、陽子は正の電荷が帯びているため、陽子同士は電磁気的に反発してしまいます。
(磁石のNとNを合わせると反発する力がかかるのと同じ)
そのため、陽子と中性子の数によっては、塊を保つのが大変になってしまう(不安定)状態になるのです。

放射性崩壊は、不安定な原子核が不安定さを解消して落ち着く(安定になる)現象であり、
放射線はその不安定さを解消するために原子核が捨て去った「いらなくなったもの」です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84% …
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この回答へのお礼

…なるほど。イメージとしては磁石をNとNをくっつけてヒモでしばっておいた状態だったのが、そのヒモが切れて磁石のひとつが飛んでいったような感じなのですかね。何となくイメージできました。

参考になりました。ありがとうございました。

お礼日時:2013/12/28 17:53

 使用前の核燃料の出す放射線は1トン当たり1キュリー(数十億ベクレル程度)で、人間が近くで作業することができるレベルです。

この燃料を密集させ、軽水炉では水を用いて核分裂の連鎖反応を維持するのが原子力になります。

 使用済み核燃料は、直後で1トン当たり数億キュリーに跳ね上がります。ウランやプルトニウムの核分裂で、副次的なさまざまな生成物ができるのですが、その中には非常に放射線レベルの高いものがあります。元の燃料には含まれていなかった核分裂反応が継続するわけです。その反応による熱(崩壊熱)があるため、冷却を維持する必要があるのです。

 福島第一原子力発電所の過酷事故では、原子炉は制御棒を全て差し入れて、燃料の核分裂は停止させています。しかし燃料に対する冷却を維持できなくなり、崩壊熱によって燃料のメルトダウンが発生しました。

 直後で1トン当たり数億キュリー、これを1年間冷却しつつ保管すると、約1/10の数千万キュリーまで下がります。これでもまだ危険です。10年間冷却保管しても1トン当たり数百万キュリーあります。このレベルでもまだ危険です。

 使用済み核燃料が、最終処分前に数十年間の冷却保管が必要なのは、そうした理由があります。そのため、使用済み燃料に溜まる高レベルの放射性物質の核種転換が行うための研究も、最終処分の検討と並行して行われています(まだ思うような成果は出ていない)。
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この回答へのお礼

ありがとうございました

お礼日時:2013/12/16 23:58

 「核分裂が続いている」というのは完全な間違いです。



 核分裂は当然止まっています。福島でも、地震で原子炉が停止して時点で核分裂は止まっています。

 使用済燃料から熱が発生するのは、核分裂によってできたいろいろな物質 (まとめて「核分裂生成物」といいます。ウラン235が2~3個に分裂してできる元素。ヨウ素131とかセシウム137とかストロンチウム90というのは核分裂生成物です)が、不安定な原子核が安定な状態に落着くために「放射性崩壊」を起こして放射線を出すことによる熱です。放射線とは、要するに余分なエネルギーの放出ですので、その放射線のエネルギーが熱となります。(アルファ線やベータ線の運動エネルギー、ガンマ線の電磁波のエネルギーが熱になる)

放射性崩壊↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84% …

 「核分裂」と「原子核の放射性崩壊」とは全く違うものですので、要注意です。

 核分裂生成物には、その元素に応じた「半減期」があり、それに従って放射線を出して減衰して行きます。出す放射線が弱くなる=発熱が少なくなるということです。元素によっては、数年、数十年の半減期を持つものもありますので、年十年も冷却しなければならないのです。
 たとえば、セシウム137は30年、コバルト60は約5年、ストロンチム90は29年など。

半減期↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%B8%9B% …

この回答への補足

>アルファ線やベータ線の運動エネルギー、
>ガンマ線の電磁波のエネルギーが熱になる

・アルファ線やベータ線の運動エネルギー
・ガンマ線の電磁波のエネルギー

はどこから発生するのでしょうか。

例えばベータ崩壊の場合はぐるぐる回っていた電子の運動エネルギーが、離れて飛んでいったという感じでハンマー投げみたいな感じなのかなと想像できます(あってますかね?)。でも他は想像できません。そもそも「余分なエネルギー」という表現がわかりません。

この点について、もしご存知でしたら教えてください。
よろしくお願いします。

補足日時:2013/12/17 00:43
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この回答へのお礼

なるほど。核分裂ではなく放射性崩壊なのですね。
参考になりました。ありがとうございました。

お礼日時:2013/12/17 00:26

相対性原理によって・・(^^)すべての熱は、他のエネルギーないし質量の減少を伴います。


そもそも原子炉とは、制御された核分裂によって発生するエネルギーを利用するシステムです。
 A→B+C+D・・・
と様々なものに分裂しますが、その前後の質量を比較すると右側が少ない。
・)ここで生成物として出来た、B,C,D自体にも不安定な物がある。
・)生じた光速の中性子などが他の原子に捕獲されて、2次3次的に不安定なX,Y,Z・・もできる。
 これらも不安定な物は様々な崩壊
・α崩壊  ヘリウム原子核
・β崩壊  中性子
・γ崩壊  電磁波
 で崩壊していき、どんどん減っていきます。半分に減る量を半減期と言う
 ★より安定な状態に崩壊すると言う事は、質量が減りエネルギーが出るということ!!!

 この半減期の短い物は、それだけ熱もたくさん発生し、放射線も多いですね。

 半減期の短い物(=危険な物)は、放っておけばどんどん減っていくのですから、貯蔵しておけば、そのうち危険でないレベルに下がる。
 まあ、熱を発しているうちは危険と言う事ですね。
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この回答へのお礼

あ、なるほど。ウラン235やプルトニウム239の燃料部分ではなく、分裂時の副産物が分裂しているということですね。それはしょうがないですね。

参考になりました。ありがとうございました。

お礼日時:2013/12/15 19:57

放射性崩壊は核分裂の一種とも考えられますが、崩壊熱はご質問のような質量欠損によって発生するのではなく、放射線エネルギーが周囲を加熱することで発生します。

この回答への補足

>崩壊熱はご質問のような質量欠損によって発生するのではなく、
>放射線エネルギーが周囲を加熱することで発生します。

…。ということなら、その「放射線エネルギー」はどこから発生するのでしょうか。質量欠損によって発生しているのだと思うのですが違いますでしょうか?

補足日時:2013/12/15 17:26
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この回答へのお礼

『質量欠損が直接熱エネルギーになるわけではない。質量欠損によって放射線エネルギーになり、それが熱エネルギーになる』という過程の説明をしていただいたということなのでしょうかね。

ありがとうございました

お礼日時:2013/12/15 17:28

あくまでも「効率的に利用できない」レベルになっただけで核分裂反応は続いています。


だから、濃縮行程を加えて再利用が可能になっています。

この再濃縮を繰り返す事により、原料の有効的な利用が可能になり、長期間の利用が可能「だった」筈です。
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この回答へのお礼

なるほど。核分裂は続いているのですね。
参考になりました。ありがとうございました。

ちなみにプルサーマルは実際やっていましたから可能ですよね。思ったより金がかかったという点ではありましたが。

お礼日時:2013/12/15 17:22

>それとも「使用済み」でも核分裂をし続け、熱を発し続けているのでしょうか


これが正解です。
発電できるくらいの熱は出なくなりましたが、まだかなり大量の熱を発生するのです。
石油や石炭のように、全部燃えたら終わりという物ではないのがやっかいです。
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この回答へのお礼

なるほど。核分裂をし続けているのですか…。
(一番可能性が高いとは思っていましたが)

「使用済み」といっても、ゆるやかにではあったとしても分裂中ならやっぱり怖いですね。

参考になりました。ありがとうございました。

お礼日時:2013/12/15 16:30

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