No.5ベストアンサー
- 回答日時:
ちょっと話がそれてしまったのですが、No4さんの回答に補足します。
(話が込み入るのですが。)軽水炉はウラン235の核分裂で飛び出す高速中性子を軽水で減速させ、周囲の温度に近い熱中性子にしてウラン238に飛び込めないようにするのですがNo4さんの言われるようにHは中性子を吸収もするので、天然ウランだと中性子の数が足りなくなって連鎖反応が継続できません。(ここでHはnを散乱させるだけでなく吸収もしてしまうという話がでて来ることになります。)そこでウラン235を同位体濃縮した濃縮ウランをつかって、中性子が減少しても連鎖反応が継続するようにします。重水(D2O)を使えばDの中性子吸収率はHの中性子吸収率の1/300程度でずっと効率がよくなり、ウランは濃縮しなくて天然ウランで済みます。濃縮ウランを作らないので核兵器開発に結びつかずよいのですが、その代わりD2Oを濃縮しなければなりません。海水中に重水は150 ppmくらい含まれるので重水資源は量的には無尽蔵といってよいです。
重水炉は日本ではふげん(新型転換炉)が独自技術で開発されたのですが、計画は中止になってしまいました。
カナダは重水炉としてDANDU炉が作られました。カナダは重水濃縮のためのプラントも作りました。このプラントでは硫化水素をCarrier Gasとする二重温度交換法という方法で濃縮しております。(H2SとH2Oの間のD分布の平衡定数が温度によって異なることを利用)その後、このプラントにトラブルがあったようにも聞いておりますが、詳細は存じません。日本では水素をCarrier Gasとする二重温度交換法が検討されました。この場合は水と水素の間の同位体分布を速やかに平衡化するための触媒が必要で、Ptを活性成分とする触媒が検討されました。しかしプラント建設には到っておりません。
回答ありがとうございます。
水よりも重水の方が減速材として優秀で、また濃縮せずに済むという点で重水炉の方が良いような気がします。
ただ世界的には軽水炉の方が普及していますね。
重水の扱いが難しいのでしょうか。
No.6
- 回答日時:
>最初の核分裂に必要な中性子源は、ウラン238の自発核分裂による高速中性子だそうで
>すね。その高速中性子が減速材によって減速され、
高速中性子は減速しないと周りにたくさんいるウラン238に飛び込んでしまいますから、
まず飛び込めないようにする必要があります。
>熱中性子になり、その熱中性子をウラン235が捕獲して核分裂するというような流れ
>でしょうか。
ウラン235に衝突して核分裂を引き起こすのです。そしてそこからまた高速中性子が飛び出します。これを減速して定常的な連鎖反応が進行するように制御するわけです。
>水よりも重水の方が減速材として優秀で、また濃縮せずに済むという点で重水炉の方が
>良いような気がします。ただ世界的には軽水炉の方が普及していますね。
>重水の扱いが難しいのでしょうか。
残念ながら原子炉設計の詳細、炉の操作性は存じません。いろいろな技術上の差が要因になると思いますが、軽水炉が先発で、実績があるのが大きいのではないでしょうか。
重水の扱いだけの話ですとDは放射性でありませんのでそれほど難しくはないと思いますが、D2Oを大規模に濃縮するためにプラントを作るのも結構大変です。
No.4
- 回答日時:
原子炉において、吸収材と減速材は別のものです。
通常の原子炉というのは、遅い中性子を反応に使います。核反応で出てくる速い中性子を遅くするために使うのが減速材。核反応を停止させたり、暴走しないように中性子を間引くために使うのが吸収剤です。商用の原子炉の減速材としてよく使われるのが水です。水が減速材として適しているのは、水素の質量が中性子のそれとほぼ同じだから。そのため、効率的に運動量を受け取れるというのは他の回答者さんの言う通りです。しかし、通常の中性子を持たない水素(1H)は、中性子を比較的よく吸収します。そのため、核分裂に寄与する同位体235Uの比率の少ない天然ウランの場合、通常の水(軽水)を減速材として原子炉を稼働させる事はできません。天然ウランで原子炉を稼働させるには、中性子の吸収の少ない元素、核種を用いる必要があります。この条件を満たすのが、重水(中性子1個を含む水素原子核からなる水)と、炭素です。重水よりも入手が容易であったため、世界初の原子炉は後者で実現されました。(ちなみに、世界唯一の商用重水工場を接収していたドイツは、重水による原子炉実現を目指しました。なお、ドイツの炭素は純度が低く、中性子の吸収断面積が極端に大きいホウ素を含んでいたため、こちらでの実現は不可能でした)
現在の商用原子炉は、235Uの割合を高めることで、通常の軽水での稼働を可能にしています。
回答ありがとうございます。
吸収材と減速材とを混同していました。
水は、高速中性子を効率よく減速させるための減速材。
ホウ酸は、緊急冷却などの出力を落とす場合に用いる熱or速中性子を間引くための吸収材。
このような認識でよろしいでしょうか。
No.2
- 回答日時:
たとえばウランの場合、ウラン235の自発核分裂により高速中性子が飛び出してきても、高速のままで運動エネルギーが高いと周囲に沢山あるウラン238に飛び込んでしまって消滅し、次のウラン235にぶつかって核分裂の連鎖反応が行かなくなってしまうのです。
そこでHなどにぶつかって運動エネルギーを失なわせるようにし、運動エネルギーの低いいわゆる熱中性子にすると、中性子はウラン238からは弾かれ、あちこちぶつかって最終的にウラン235にぶつかってこれを分裂させることが出来るようになります。これで次の核分裂がおこり、連鎖反応が継続します。このためには減速材が必要で、No1さんの言われるように中性子に質量が近い原子核が、効率的に中性子の運動エネルギーを吸収し減速するのです。
詳しい説明ありがとうございます。
最初の核分裂に必要な中性子源は、ウラン238の自発核分裂による高速中性子だそうですね。
その高速中性子が減速材によって減速され、熱中性子になり、その熱中性子をウラン235が捕獲して核分裂するというような流れでしょうか。
No.1
- 回答日時:
重さがほとんど同じだからです。
水素は中性子が無い、すなわち陽子と電子だけです。
陽子の質量は中性子とほとんど同じで、電子の質量は無視できます。
あとは物理の問題です。
2つの物体が衝突したとき運動エネルギーがもっとも効率的に受け渡されるのは、2物体が同じ重さの時です。
大物体を動かして静止した小物体にぶつけると、小物体を弾き飛ばして大物体の運動はあまり変わりません。
小物体を動かして静止した大物体にぶつけると、小物体は跳ね返ってしまうのでこれも方向が変わるだけで速さはあまり変わりません。
確かに壁にピンポン玉をぶつけても、あまりスピードが落ちずに
跳ね返ってくるだけでうまく減速できていないような感じでしょうか。
同じ質量のものが一番効率的に減速できるのは知りませんでした。
ありがとうございました。
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