No.3ベストアンサー
- 回答日時:
前期の形式言語の意味論から、後期の日常言語の意味論に移行したということですよね?
「哲学探究」の冒頭でアウグスティヌスの言語論、言語の直示的定義の批判から始めているということはひじょうに示唆的で、言語というものを世界の「写像」と考え、語と事態との対応説をとっていたのが、「探究」では、全体論に移行し、「ゲーム」の中の役割という点から考えるようになりました。
つまり、言葉単独ではなく、「コンテクスト」重視に転換したということ。
批判的というより、言葉をもっと大きな文脈(コンテクスト)の中で考えるようになったということだと思います。
言語学者のソシュールとひじょうによく似ています。
ソシュールも言語というのは個々の言葉の集合体ではなく、全体としてのシステムとの差異によって語が成り立つといっていた人ですから、全体論(ホーリズム)という観点からは共通点があります。
分野が違っても、同時代というものは同じような思想を唱えるものなんですね?
20世紀の哲学は「言語論的転回」と言われますが、ウィトゲンシュタインとソシュールによってそれが成し遂げられたんですね?
言語学をやっているとソシュールがそれ以前のどのような言語の考え方を批判したのかを知っておくことが必要ですが、ウィトゲンシュタインの場合もどのようにして後期の「哲学探究」の全体論に至ったかを知るためにも、やはり「論考」の知識は必要なのではないでしょうか?
No.4
- 回答日時:
「論理哲学論考」はアスペルガー症候群の世界を見事に映し出しているんじゃなかろうか、というのが感想でした。
すなわち、この症候群における、言葉を字義通りに解釈する(文脈に依存する意味の違い、特に皮肉や冗談や儀礼表現や反語表現がまるで分からない)という傾向は、「言語と世界とが正確に対応している。言語は、そのような単純な構造を持っている」という(誤った)信念に起因している。それを(その信念自体に従って)明示的に整理しようと試みたのが、論理哲学論考ではないか。しかし、その信念は考え出したものじゃなくて、もっと生来的なものである。そしてそれは明らかに誤った信念である。(だから、「論理哲学論考」を逐一研究しても、さしたる意味は無いと思います。)どう誤っているかというと、要するに「同じ言葉はいつ誰が発しても同じ意味」という訳ではない、ってことが最も重要でしょう。ご当人がその事に気付いた後は、言語と世界の関係をもっと動的で複雑なものとして考え直す必要が生じた。ま、フツーのヒトならそんな事は「自然に」ナントナク身に付いていて言語を使っている訳ですが、それを「自然に」は分からない人だからこそ、言語と世界の関係の構造を外部から見て分析することができたのだし、整理しきれない部分がどうしても生じるということも分かった。
もちろん、そんな作業はフツーのヒトには無用である。でも、認識論など信念の形成に関する哲学はもとより、数学や形式論理における「超理論」(数学や論理などの体系自体を形式言語として捉えて、外からその性質を調べる理論)や高階論理、そしてもちろん、人工知能の初期からのテーマである「言語理解」においては本質的なポイントです。
非言語的なコミュニケーションにまで視野を広げても、アスペルガー症候群と人工知能はとても似た所がある。すなわち、人の様子や口調や態度を観察して、その人が言いたい(であろう)事を察するのが大変に難しく、そのため「こういう態度を取られたら、こういう意味だと解釈しなさい」というルールをいちいち明文化して大量に暗記することによって対処しなくてはなりません。非言語的表現を一旦記号として捉えた上で、言語化して意識する必要がある訳です。
ところで、この症候群でしばしば見られる、動物・嬰児の心に深く共感する能力に関してはヴィトゲンシュタインは何もやってないような気がします。もしかするとそれは記号化を通した共感の応用に過ぎないなのかも知れない(ならば人工知能にも可能)し、いや、全く別の(言語を持ってしまうと発揮できなくなる、動物と共有される原初的な)チャネルを介したコミュニケーションなのかもしれない。
No.2
- 回答日時:
>後期ウィトゲンシュタインは論理哲学論考を批判的に捉えるようになったんですよね?
○語らなくなったということでしょう。語らないということは批判的なという意味ではありません。彼の論文、考えを理解する学者がいないということに気づいたことに落胆していたことと、天才は次のことを考えていた。ということですね。
凡人には天才を理解できないという良い例ですね。「論理哲学論考の命題 5.101 はゲーデル数の特殊な場合であることが後に判明した。」とあるように後のゲーデルの論理数学の方がわかりやすいとはいえそれでも凡人にはむつかしいですね。
天才は語らなくなるのですね。理解できる学者が1人でもいれば状況は変わったでしょうね。
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