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保守思想を学びたくて、福田恒存を読みたいのですが、ぶっちゃけ福田恒存は難解ですか?
文芸評論家の浜崎洋介氏は福田恒存は小林秀雄と違い理論を細かに詰めてくれるので初心者でもわかりやすいと仰っていたのですがどうなのでしょうか?

A 回答 (1件)

福田恆存は意外とがらっぱちだと思います。


東大の英文科を出てシェイクスピアの翻訳で名高く、新劇の大劇団の作・演出も行いましたから、高尚なインテリと思われがちです。しかしその実、品の悪い保守の嚆矢でした。

戦後の保守派にも品の良いのと悪いのがいます。具体的な人名を挙げると、安倍能成(学習院院長)や猪木正道(防衛大学校校長)は品の良いほうでしょう。皇族や自衛隊幹部を教育する立場の人が、偏狭な愛国主義者だったら差し障りがあるわけです。戦前戦中の過ちの再来になってしまいます。
かと言って「米帝と独占資本は人民の敵」などと共産主義を教えられても困るでしょう。バランスの取れた穏健な保守派が適任です。彼らは理想主義者だった面影も残しつつ、現実的な能吏でもありました。

しかし、それでは満足しない人たちがいます。もっとエゲツナイ論陣を張る、品の悪い保守です。今や書店でもネットでもよく売れて大きな顔をしている連中の、走りの一人が福田恆存でした。
たぶん高校の国語教科書か何かで、福田による格調高いシェイクスピアの訳文を読んだ覚えがあります。その何年か後に雑誌で彼の時事評論を目にしましたが、格調の低さに驚きました。かなり前なので記憶が不確かですが、「日照権」を批判していて、江戸の昔から町屋の一部は方角的に日当たりが悪いのが常だった、近ごろ日照権とやら権利主張が喧しいという論法だったと思います。
しかしその論法は間違ってるわけですよ。戦後は高層ビルが林立して一日中日が差さない家まで出てきて、裁判にもなっているのに。福田は長屋の熊さん・八っつぁんのようではないですか。東大出のインテリの論法とは思えません。

まあ私は福田の本をちょっとかじっただけです。彼の著作の中には、時事というより保守思想を知的に論じた本もあるのでしょう。読まずに回答する私も何ですが、それでも「意外とがらっぱち」という印象は消えません。
そもそもシェイクスピアほど解説書が多い作家はいないくらいです。それらを参照すれば、さほど学殖のない人でも訳せてしまうそうです。
また、高校生の時シェイクスピアを原文で読まされたのですが(そういうハイブローな授業があった)、昔の劇とは言え、持って回った表現ばかりではなく、割りとズバズバ物を言ってるんですね。むしろ同時代の日本の古文より解ると思っちゃいました。
シェイクスピアは大学に行ってません(16世紀末から17世紀初めに活躍した人だが、すでにオックスフォード大学やケンブリッジ大学は存在した)。それでも中等教育までは受けていて、ラテン語ができました。結果的にそれが良かったらしく、高雅な美しさと程よい俗っぽさをそなえていると言われます。

福田恆存も、ガチの学者ではなかったからシェイクスピアを上手く訳せたんじゃないでしょうか。保守思想に関しても、福田は思想家というほどの思想家ではないと思うのですが。
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