圏論の初学者です.
とりあえず,基本的事項(射,域,余域,恒等射,モノイド)などについて学びました.
そこで,疑問があります.
[1]恒等射について
恒等射ですが,シンプルに「域と余域が等しい射」で必要十分な説明になりませんか?
域と余域が等しい射であれば,任意の射と合成したときに必ずその対象自身(域であり余域である対象)に戻ってくるので,恒等射の定義を満たしていると思いました.
[2]モノイドにおける恒等射について
まず,モノイドは対象が一つの圏ですよね.モノイドにおける射というのは,すべて一つの対象自身から出てその対象自身に戻るような射です.教科書には,その中には恒等射も含む,とありました.
しかし,前述した[1]の考えに従えば,モノイドにおける射はすべて域と余域が等しい(=一つの対象しかない)です.つまり,モノイドにおける射はすべて恒等射になってしまいませんか?
[3]モノイドの例について
教科書にモノイドの例として「対象として自然数全体,射として自然数同士の対応を考える.このとき,1を加える,2を加えるといった射はすべて自然数に戻ってくる.恒等射は単位元に相当する」とありました.
恒等射は単位元に相当するとはつまり,「0を加える」ことを指しているのだと思いますが,だとすると,いつのまにか対象のスケールがずれていませんか?つまり,もともと「対象=自然数全体」としていたのに,射を考えるときには対象がその要素である個々の自然数になっています.これに納得できず,教科書を読み進める手が止まってしまいました.腑に落ちる解説をいただけないでしょうか?
初心者ゆえピントがずれた質問になっていたら申し訳ありません.
ご教示願います.よろしくおねがいします.
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
すべての集合を対象とし,それらの間のすべての写像を射とする圏
を集合の圏という
集合
X={1,2}
に
対して
XからXへの写像fを
f:X→X
f(1)=2
f(2)=1
とすると
射fの域はX,
射fの余域もX
だけれども
射fは恒等射ではない
XからXへの写像gを
g:X→X
g(1)=1
g(2)=2
とすると
g〇f=f
f〇g=f
だから
射gは恒等射である
No.8
- 回答日時:
集合
X,Y
に対して
XとYの直積集合
X×Y
の部分集合
f⊂X×Y
で
任意のx∈X
に対して
(x,y)∈f
となるようなy∈Y
が唯1つ存在する時
fをXからYへの写像(射)といい
f:X→Y
と表し
Xをfの域,Yをfの余域といい
任意のx∈X
に対して
(x,y)∈f
となるようなy∈Y
を
y=f(x)
と表す
X,Y,Z
を集合
fをXからYへの写像(射)
f:X→Y
gをYからZへの写像(射)
g:Y→Z
とするとき
fとgの合成写像(射)を
g〇f={(x,z)∈X×Z|(x,y)∈f,(y,z)∈gとなるy∈Yがある}
と
定義する
対象として
N=(全自然数の集合)
射として
f={(x,x+1)|x∈N}
g={(x,x+2)|x∈N}
h={(x,x)|x∈N}
とすると
f,g,hの(域)=(余域)=N
h〇f=f=f〇h
h〇g=g=g〇h
だから
hは恒等射
だけれども
f,g
はいずれも恒等射でない
No.7
- 回答日時:
私も圏論の初学者です。
『[3]モノイドの例について』ですが、集合の考えと圏論の考えの
関連付では集合の元について考えるけど、圏論では集合の元について
考えないということではないでしょうか。
「nを加える」を#nのように表すと、これらは関数であり
#3(2)=5、 #2(1)=3、#1(0)=1のようになるので自然数全体の集合の元に
ついて考えることになりますが、圏論では #3.#2=#4.#1=#1.#4=#5 のように
関数とその合成についてだけ考え、元は扱わないのでしょう。
集合の圏でも、関連付けの段階では集合の元について考えるとしても
関連付けが済んだ後では元は扱わないのでしょう。
T={1,2,3}としたとき圏論では元が1つだけの集合 S={a}を考え
定義域がS、値域がTの全値関数を SからTへの射とするようです。
Sは元が1つだけであることが重要なので、元が実際に何であるかは
重要ではないようです。
このような関数は$1(a)=1、$2(a)=2、$3(a)=3のように3つあります。
Tの元とSからTへの射(全値関数)が対応しているので、Tの元 1,2,3を扱う代わりに
SからTへの射 $1,$2,$3を扱うのが集合の圏での集合の扱い方のようです。
集合をそのように扱えることが分かれば他の集合でも同じことで
元を扱わずにSからの射だけを扱えばいいわけで
集合自体を対象とし、集合の元は扱わない
というのが今の私の理解です。
No.6
- 回答日時:
単位元を持つすべての半群(モノイド)を対象とし,
それらの間の準同型で単位元を単位元に写すものを射とする圏
をモノイドの圏という
N=(全自然数の集合)
とすると
Nは積に関してモノイドとなる
NからNへの対応fを
f:N→N
x∈Nに対してxの素因数分解が
x=(2^m)(3^n)a…
(2,3,a…は互いに素,n,mは非負整数)
の場合
f(x)=(2^n)(3^m)a…
と
すると
f(1)=1
fは単位元を単位元に写す準同型だから射となる
けれども
fは恒等射ではない
No.4
- 回答日時:
> モノイドは対象がただ一つの圏ですよね?
> てことは域も余域も,そのただ一つの対象になるのかと思ったのですが・・・
そのとおりですよ。
モノイドを圏ととらえた場合、対象はただひとつなので、
恒等射も、それ以外の射も、域と余域はそのただ一つの対象です。
恒等射以外も、域と余域がそのただ一つの対象であることに気をつけましょう。
そのことが、[3]に対する回答になります。
射が恒等射であれば、その射の域と余域は一致していますが、
域と余域が一致しさえすれば恒等射であるわけではありません。
No.3 に例を挙げたように。
No.3
- 回答日時:
> 同一の対象が域と余域になっている射で,
> その対象における恒等射になっていない射はどのようなものがありますか?
モノイドの例を挙げていましたね?
モノイドで単位元以外の元は、どれも
そのような例になります。
集合の圏では、射は一般の写像ですが、
定義域と終域が同じ集合であるような写像は
いくらでもありますね。
環の圏では、射は環準同型ですが、
複素数体の共役写像などは
域と余域が一致する恒等射でない射の例です。
No.2
- 回答日時:
[3] については、たいそう混乱していることは伝わってきますが、
何を勘違いしているのかは、その文章ではよく判りません。
「0を加える」は、その言い方では不用意に省略しすぎている
ように思います。 そのモノイドの恒等射は、
域にも余域にも、対象としての自然数全体からなる集合 N をとり、
N から N への恒等写像であるような射 です。
恒等射に限らず、その圏(この場合はモノイド)の射が
対象である N の各元をどう写像するかは、圏論では言及しません。
射の写像としての性質にはタッチせず、それが合成に関してどう振る舞うか
だけを扱うのが圏論ですから。
No.1
- 回答日時:
恒等射 id は、合成が定義される範囲で任意の射 f, g に対して
id○f = f, g○id = g となるものでしたね。
射 i の域と余域が等しいだけでは、
i○f と i○g が定義されることまでしか言えてません。
i○f = f, g○i = g が成り立つかどうかは、
その圏がどんな圏で、i がその中のどんな射かで決まります。
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回答ありがとうございました.
[1]に関する回答についてですが,では逆に,同一の対象が域と余域になっている射で,その対象における恒等射になっていない射はどのようなものがありますか?
[3]の勘違いについてですが,まずは[1]の勘違いを解消しないといけないようですね.
今の僕の理解では,域と余域が等しいような射(ある対象から出て,同じ対象に戻る射)を恒等射だと思ってしまっているので・・・
回答ありがとうございます.
モノイドにおける単位元(恒等射)を考えるときなのですが,対象としての域と余域は何になりますか?
モノイドは対象がただ一つの圏ですよね?てことは域も余域も,そのただ一つの対象になるのかと思ったのですが・・・
きっととんでもない勘違いを私はしているのだと思うのですが,定義を追っていくとどうしてもこの袋小路にハマってしまいます.私の思い違いを正していただきたく,解説を願います.