
考古学の藤尾慎一郎が、春日秀爾の話を次のように紹介しています。
<「いわゆる環境決定論は、唯物史観が華やかなりし戦後の考古学においては否定的に捉えられていたこと。歴史を動かすのは環境の影響でなく、人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたから」という主旨であった。>
質問は、唯物史観によると、歴史を動かすのは環境の影響でなく、人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたから、ということですか。
(私は、唯物史観では今まで逆だと思ていましたが)
No.7ベストアンサー
- 回答日時:
> {唯物史観がいう”歴史を動かすのは環境の影響でなく、人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたから」”}が、そごしますね。
A 神話・伝説・信念体系による正統化を排除して、大づかみに生産と経済という側面をみて、労働を重視してしまったのが唯物史観
B 歴史を動かすのは環境の影響でない、人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたから歴史も動く
AとBならば、齟齬・食い違っているとは言いきれないです。
AもBも、人間の労働や活動が歴史を作るというようにみていると思います。
確認ができないのですが、世界4大文明の説明は自然環境とセットで長らく説明されていたでしょう。 中央アジアの牧畜民・騎馬民族がこのような生活スタイルであったので農耕民族を打ち負かしたというような説明も長らくされていたのではないでしょうか。 たぶん、唯物史觀が日本の戦後で幅をきかせていた時代でも、そのような説明は受け入れていて、「そんなことはない」などと否定はしていないでしょう。 日本の歴史でも海運・港の便が大きかったことが都市の発展の基にあったことは納得されていたでしょう。 地理・地形・海・川・気温や農耕適地のことを一切無視して社会や歴史を人間の側だけに起因するような説明などやっていないと思います。
考古学や地学の研究が高度な科学技術を駆使して進めれ結果として大量に新たなことが判明するようになった後の時代と、それ以前の時代では、歴史研究や歴史理解も大きく変わるでしょう。 どのような時代の論であるかは大事なことだと思います。

再度のご回答ありがとうございます。
新しい「論」が成立するためには(成立させるためには)、ある程度対立する論を(誇張しますが)でっち上げ、それを批判しなければならない、と思います。その批判対象の役割を唯物史観に持たせた、のかなとも思っています。
No.6
- 回答日時:
> 唯物史観は、環境決定論を否定し、環境可能論にくみしていた、ということですね。
たぶんそのような傾向が明確に出ているようなことはなかったでしょう。
日本の敗戦前の唯物史観論者でも、1945~1970年頃の唯物史観論者でも、環境可能論に与して環境決定論を否定していたということはないように見受けられます。
地理学関係者でも、敗戦後においては環境決定論のような立場での発表はないのですから、あえて否定するほどのことはないです。
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j …
この安田さんの回顧をみてください。一部を画像にして貼り付けますが小さくて読めないとおもうので、PDFをダウンロードして読んでください。
単純化すれば、科学的実証研究もデータも存在しない時代に、地理的景観と想像力でこしらえた素朴な環境論と人種の優劣論は、ドイツの敗戦やイギリス・アメリカの思想展開で、「自滅・自壊」してしまっていたのです。

早速のご回答ありがとうございました。
<たぶんそのような傾向が明確に出ているようなことはなかったでしょう。>ですね。
とは言え、考古学において環境決定論を否定された人たちは(唯物史観の人たちは環境決定論も人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたとも明確にしていない、といっても)唯物史観を敵視したくなった、と私は思います。
No.5
- 回答日時:
簡単に答えると(私自身、簡単な知識しかないが)、ご質問の「唯物史観」とは史的唯物論(唯物弁証法)です。
これを「ただものろん」と解してはなりません。弁証法なのです。「ただ、ものだけがある」という考え方は機械的唯物論と言います。
一方、マルクスの「唯物弁証法」は、物質と精神のダイナミックな相互作用を強調します。極端な話、物質が精神に転化し、精神が物質に転化する感じ。弁証法的なんです。
たとえば物神崇拝。一般に、拝むことは動物と異なる人間ならではの精神活動と称えられる。しかし、実は物を神のように拝んでいるのだとマルクスは言う。人間の精神が、錯覚により、物に支配されているわけだ。
また、たとえば上部構造・下部構造。
下部構造とは物である。(人間が大自然に働きかけて)物を作り出す生産活動であり、生産の様式である。その一種が資本主義的生産様式でもある。
他方、上部構造とは精神である。精神の様式、すなわち制度・文物などを含む。
マルクスは、下部構造が土台で、上部構造はその上に乗っかっている、「下部構造が上部構造を規定する」と言った。
そしてここからが大事なんだけど、上部構造は乗っかってるだけじゃなくて、下部構造に強く働きかけて変化させもする。これが、ご質問文の「人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきた」に相当するだろう。
以上、ひとまず回答終り。
〔付け足し〕
マルクスとエンゲルス共著の『共産党宣言』の結びの言葉、「彼ら(共産主義者)の獲得するものは全世界である。万国の労働者、団結せよ!」を思い出してください。全世界、すなわち物質も精神も掌握すると、決意したわけですよ。
いわば、マルクスの唯物弁証法は総合論なんです。物質も精神もです(どっちが優位かといえば物質)。「物質 → 精神」、「環境(下部構造)→ 歴史制度文物(上部構造)」の一方通行じゃありません。
その前に、すでにヘーゲルが総合論的でした。マルクスが哲学を学び始める以前、ドイツの大学ではヘーゲルの令名(名声)が轟いていました。
ヘーゲルは観念論です。「世界精神」という独特の概念を唱えました。その世界精神が、弁証法を駆使して物質も精神も立ち上げて発展させていくと、彼は論じました。
そのヘーゲル哲学を逆立ちさせたのがマルクス哲学です。マルクスはヘーゲル左派のフォイエルバッハの影響を受けていて、いわばヘーゲルの孫弟子なのですが、師を逆立ちさせやがったのです。精神重視の総合論から、物質重視の総合論への逆立ちでした。
さて、私ごときが考古学界の事情など知る由もありませんが、ご質問の引用部分は藤尾慎一郎のポジショントークじゃないの? 調べてみたところ、春成秀爾の後輩です(両者とも国立歴史民俗博物館研究部教授。その前に九州大学の助手あるいは院生だったことも共通)。
「環境決定論は」「戦後の考古学においては否定的に捉えられていた」というよりも、すでに戦前から「環境可能論」というのに圧されて、劣勢だったようです。別に唯物史観論者じゃなくても、環境可能論のほうを支持していました。
ほかの回答者さんがおっしゃるように、「気候に関してなんとなく理解する想像するというのではなくて、検討の対象にできるようになるのが、20世紀後半です」こそ、正しいと思います。その結果、(気候という)自然環境が、縄文時代・弥生時代の移り変わりにかなり決定的に影響したという研究が、20世紀後半になって出てきました。
もちろん藤尾もそれは分かった上で、大先輩の春成(共産党系の教授に遺恨でもあった?)に気を使って、雑談的に引用したのでは。
環境決定論とは、人間の生活様式が自然環境によって必然的に決定されるという考え方です。
環境可能論とは、自然環境は人間に可能性を与える存在であり、人間が環境に対して積極的に働きかけることができるとする地理学の概念です。
早速のご回答ありがとうございます。
引用文には出てませんが、「環境可能論」があり、唯物史観は、環境決定論を否定し、環境可能論にくみしていた、ということですね。
No.4
- 回答日時:
「唯物史観」の日本語は、wikiによれば、
「唯物論的歴史観」の略であり、史的唯物論( Historischer Materialismus)と同義である。
概要 19世紀にカール・マルクスの唱えた歴史観である。その内容は「人間社会にも自然と同様に客観的な法則が存在しており、無階級社会から階級社会へ、階級社会から無階級社会へと、生産力の発展に照応して生産関係が移行していく」とする発展史観である。
とあります。
放射性炭素年代測定ができたのは1960年代、古気候に関して年輪気候学が始まったのは1970年代、縄文海進についての研究も1970年代からです。
気候に関してなんとなく理解する想像するというのではなくて、検討の対象にできるようになるのが、20世紀後半です。一般に認識になるのはせいぜい1980年以降です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chitoka/87/ …
日本に唯物史観が紹介されたのは1930年代ですが、ブームのようになったのは敗戦後です。この時点では、過去の気候に関する知識は文書に残された風水害噴火不作飢饉など17世紀以降のものばかりです。6世紀以前については情報そのものがなく、検討材料に入りません。疾病に関する情報も、交易や考古的資料さえも実に乏しいのです。 もちろん遺伝子分析で人類史をみることもできません。
環境を主要因や副次要因、第3要因のようにして人類史をみる見方ができるようになるのは、科学技術の進歩を待たないとならないのです。
ですから、日本でも1960年代であれば、人間社会の歴史を見る見方は、神話・伝説・考古・文献しかやりようがないのです。 その中で、神話・伝説・信念体系による正統化を排除して、大づかみに生産と経済という側面をみて、労働を重視してしまったのが唯物史観です。社会の分化分断の有様を見て、労働と生産と成果の帰属をポイントにして階級という概念を打ち立てたのです。そして、階級闘争による革命で社会状況を一変させることに向かうのが歴史の必然であると主張したのです。
この主張部分を欠くと唯物史観の歴史的意味を把握し損ねることになります。
> (私は、唯物史観では今まで逆だと思ていましたが)
意味が読み取れません。
「逆」=「(歴史が動くのは、環境が人類に押しつけることによる)というのが唯物史観」と思っていたのでしょうか。
> 考古学の藤尾慎一郎が、春日秀爾の話を次のように紹介しています。
誤記誤植でしょう。 春日秀爾 ⇒ 春成秀爾の
「藤尾慎一郎が、春成秀爾の話を、"吉川弘文館:歴史文化ライブラリー:
弥生人はどこから来たのか"の中で、次のように紹介しています」
そのように本の記載はありますが、「話」の実態はこの本の中しか確認でしません。誤記・記憶間違いもあるのかも知れません。
この本だけでも。この記述がある前後を読めば、1970年代、80年代が、ようやく古気候を遡上にできる状況になったことがわかります。環境要因を社会史の大きなファクターに研究したり論じたりできるのはそれ以降になります。環境決定論が出てくるのは、さらに後になります。
春成秀爾が藤尾慎一郎にいつ頃にどのような会話の中で、環境決定論について話す気になったのかもわかりませんが、たぶんの想像ですが、【戦後の唯物史観が華やかなりしころの(考古学研究者)や(考古学研究もしない論者)(歴史好き)(歴史研究者)にも、(環境考古学も古気候環境学も環境決定論も)そもそも知りようもなかった】ことを春成秀爾は知っていたと思います。
早速のご回答ありがとうございます。
まず、逆について。私は、唯物史観は、歴史を動かすのは環境の影響である、と思っていました。唯物史観は、人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたから、ではない、と思っていました。
御説は<その中で、神話・伝説・信念体系による正統化を排除して、大づかみに生産と経済という側面をみて、労働を重視してしまったのが唯物史観です。>ですね。
この点から、引用文において、{唯物史観がいう”歴史を動かすのは環境の影響でなく、人類が環境に対して自発的な働きかけをおこなってきたから」”}がそごしますね。
No.2
- 回答日時:
No1です。
「存在は意識を規定する」というマルクスの言葉もありますしね。おっしゃるとおり環境が重要というのは唯物史観の特徴だと思います。もっともそれがルイセンコ学説のような疑似科学を生み出してしまった原因でもあります。
ただ繰り返しになりますが「環境に対して自発的な働きかけをおこなってきた」から動物から進化して人間となったとは聞いたような気がしますね。
再度のご回答ありがとうございます。
私の管見では
<環境に対して自発的な働きかけをおこなってきた」よりも
<「存在は意識を規定する」>の方を重要視したいのですが?
No.1
- 回答日時:
どうなんでしょうね。
唯物史観って「物質的な生産力や生産関係の変化が、歴史を動かす原動力となる」という考え方ですよね。これはヘーゲルが「絶対精神が自由の実現に向けて歴史を動かす」と考えたのとは正反対の考えです。
もっとも有史以前でいえば「歴史を動かすのは人類が環境に……」と主張しているのかもしれませんが。
早速のご回答ありがとうございました。
<唯物史観って「物質的な生産力や生産関係の変化が、歴史を動かす原動力となる」という考え方ですよね。>
したがって唯物史観では、環境(ヘーゲルのいう精神でなく)が大きな力を持っている、と私は安直に考えましたが。
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