No.1ベストアンサー
- 回答日時:
釈迢空とは、国文学者・民俗学者・思想家として高名な「折口信夫」(1887-1953)のうたを詠む時の雅号です。従って、これは、折口信夫のうたなのです。
この歌が何時詠まれたかで解釈が違ってくるのですが、歌っていることは非常に明白です。明白すぎて、何か分からない状況が隠されているのではないかと疑います。大きな解釈として、「たたかひ」を現実の「戦い」つまり太平洋戦争と見るか、または、何か象徴的な心などの「戦い」と見るかで意味が少し違って来ます。
「たたかひに果てにし子」という「子」の使い方がよく分からないのですが、折口には、子はいなかったと記憶しています。では誰のことかというと、想定では、折口の愛弟子か何かの青年を指している可能性があります。折口は、色々な事情があるのですが、「少年愛(というより青年愛)」の高名な学者として有名でした。弟子が同時に、同性愛の愛の対象であったので、折口は、愛弟子と起居を共にし、「この道は、実に奥が深く、余人には知り難いのである」などと言っていたと聞いています。
自分が愛した弟子が、まさに「子」で、その弟子が、学徒出陣か何かで戦争に出、戦死し、それを悼む、痛切な哀歌・挽歌とでも読めば、あまりに意味が明白です。「桜散る」というのは、大学受験に失敗した時の言葉ですが、日本男児が兵士として戦場に赴き戦死した場合も「桜の散る」という比喩をします。
>(不条理な)戦いに散って逝った我が愛しき「子」よ、おまえの果てし身のありようを省みるにつけ、我が身のごとく、桜の花が、今年、哀れにも散って行くことか……戦いに散ったお前は、何故、去って行ったのか、わたしを置き去りにして……
これは、愛弟子が、戦争で戦死した場合は、まさにこういう直裁な意味なのですが、「たたかひに果てし」が、何か精神的な象徴的なことかも知れません。また「たたかひ」とは、「病との戦い」であったのかも知れません。若くして病死した愛弟子を哀悼した歌かも知れません。学問において「身を果てた弟子」かも知れません。しかし、いずれにしても、これは、哀歌・挽歌に見えます。死んだものを哀悼した歌としか読めないです。
折口については、わたしは無知で、魔術的文章だと言われる彼の著作もほとんど読んでいませんので、折口にはあるいは、「子」がいたのかも知れません。どういう場面で詠まれたうたかで、解釈が違って来ますが、上の「解釈訳」のほぼ内容で、「心情・心象の模様」は把握されていると思います。
詳しく回答してくれて本当にどうもありがとうございました。
starfloraさんにはこないだも教えていただいて・・・・
とても為になりました。
へんてこな質問ですみません。
本当にありがとうございました☆
No.2
- 回答日時:
御質問の短歌は釈迢空(折口信夫)の歌集『倭(やまと)をぐな』(昭和30年刊)に載っているもので、「竟(つひ)に還(かへ)らず」と題された連作中の一首です。
「子」は、「愛弟子と起居を共にし」と、No.1のstarflolaさんが書いていらっしゃる藤井春洋(はるみ)のことです。彼は陸軍将校として硫黄島に赴き、昭和20日本軍が玉砕(全滅)したときに亡くなりました。春洋の出征にあたって迢空は彼と養子縁組をしましたので、戸籍上も「子」ということになります。
昭和20年の敗戦の、翌々年になる昭和22年の春に詠まれた歌のようで、「戦いで死んでしまった我が子のせいで、今まで以上に痛切に身にしみて今年の桜の花がしみじみと散っていく」と詠んでいます。言うまでもなく我が子となった春洋の死を嘆き悼んだ歌です。
桜の花の散るのが人生の無常を感じさせるのは、starflolaさんがおっしゃっているとおり日本文学の伝統ですね。
『倭をぐな』には、他にも、
洋(わた)なかの島に立つ子を ま愛(がな)しみ 我は撫でたり。大きかしらを
たゝかひに果てし我が子を かへせとぞ 言ふべきときと なりやしぬらむ
愚痴蒙昧の民として 我を哭(な)かしめよ。あまりに惨(むご)く 死にしわが子ぞ
などの歌が多くあります。
丁寧に回答してくれてどうもありがとうございました。
この歌は作者が戦死した子について詠った一首なんですね。
わかりやすかったです。本当にどうもありがとうございました。
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