No.6ベストアンサー
- 回答日時:
>プルーストの時間概念(円環的時間)ベース
とおっしゃると、ジョルジュ・プーレとか、アンリ・ベルグソンの時間概念とか、「失われた時を求めて」の最後の美学論とかを、どのように理解するかが問題になると思いますので、超難問ですね。
(なお、プーレは「人間的時間の研究」Etudes sur le temps humainの3巻<おそらく邦訳はありませんが、英訳はあるはず>でホイットマンに、また「円環の変貌」Metamorphoses du cercleでT.S.エリオットに言及していたと思います。)
というわけで
>特に円環的時間にはこだわらず、時間が非線形の作品
の方で思いつく(と勝手に思っている)ものを・・・。
トマス・ピンチョン「V」
http://ja.wikipedia.org/wiki/V.
現在の物語と、順不同で書き表される過去の物語(陰謀?)が絡み合う。
ジョン・バース「フローティング・オペラ」
自殺をすべきだと論理的思考の果てに決意した男の一日。20年後の男の物語がちょこちょこ混じる。
バースは「やぎ少年ジャイルズ」や「レターズ」が円環的時間を描いているということになっているそうですが、技巧として時間を使っていることが分かりやすいのは、この処女作では?
ウィリアム・バロウズ「裸のランチ」
時間がどうのこうのというより、何編もの物語のコラージュなんですが、この作品からバロウズは文体のコラージュへと向かうわけで、そういう意味では時間の操作への第一歩かもしれません。
レナード・コーエン「嘆きの壁」Beautiful loosers
17世紀の聖処女の物語と現代カナダの物語がかぶる。
Robertson Davies: Murther & walking spirits
http://www.amk.ca/davies/
妻の愛人に殺された男が幽霊になり(!)、トロント映画祭に行ったところ(!)ご先祖様方の生き方を見ることに(!!)。こう書くととんでもない物語ですが、カナダ人のアイデンティティが主題らしい・・・。ちなみに作者は高名な文学者のようです。
夢野久作「ドグラ・マグラ」
いわずとしれた奇書ですが、時間軸に関しても、読み手の解釈次第、という不思議な本。個人的には無限に繰り返される悪夢だと思っています(怖いっ!!)。
中井英夫「悪夢の骨牌」
一筋縄ではいかないタイム・トラベラーのお話。
赤川次郎「ふたり」
姉が事故死。妹は死んだ姉(幽霊?妄想?)と共に生きるが、しばらくして姉は決定的に去ってしまう。妹は姉のことを書き留めることを決意する。題は「ふたり」。おおっ!!この結末はプルーストの影響かな?!
時間が非線形、の意味を取り違えていたらごめんなさい。
追記:「フィネガンズ・ウェイク」は本当に難しい本ですね。死ぬまで読み終えない自信があります!
具体的なあらすじも載せていただいて、ありがとうございます!日本語のも助かります。
本当はいろいろな言語の、非線形(非時系列)構成の方略を調べたいのですが、スケジュールと自分の言語能力の限界もあり、日英でまずは調べてみたいと思います。
Wash your hands before eating. 食べる前に手を洗いなさい。
などの比較から、物語の大きな構成まで、時間のベクトルに逆らうものを分類してみたく思っています。
今回こちらで質問してみて、あらためて回答者の方々の造詣の深さに触れた思いです。
ありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
ご質問が興味深かったので、まだちょっと考えてたら、
こういうのありました。
サルトルが「フォークナーの時間性」というタイトルの論文を出ていました。内容はまだ読んでないのでどんなものかわからないのですが。
『サルトル全集 第11巻』の中にあるようです。
http://opac.ndl.go.jp/Process?MODE_10100001=ON&S …
「物語論」というのがあるのですね。
何学(なにがく)のサブカテゴリーになるんですか?初めて聞く言葉なので、興味があります。
心理療法のほうでも今、ナラティブ・セラピーとかやってるんです。
面白そうです、物語論。
「フォークナーの時間性」…これは面白そうですね!
図書館で借りてきます!
「物語論Narratology」は文学論に位置づけされてきているのですが、認知物語論(認知心理学)もありますし、物語構造・文法(応用言語学)、物語習得(談話分析)などとも関わっていくと思います。
私は談話分析、談話習得の理論から、見て行きたいと思っています!
ありがとうございました!
No.4
- 回答日時:
> マルケス、イヨネスコは、原語はそれぞれ、西語、仏語でしょうか。
そうです。
すいません、サンプルを集めておいでだったんですね。
わたしはプーレの『人間的時間の研究』が頭にあったので
(http://oshiete1.goo.ne.jp/qa2370758.htmlで回答しています)
なんかそういう性格のものばかり頭にありました。
それだと、SFを探したほうが手っ取り早い。
SFが「時間」を扱うと、ほぼ確実に時間は円環してしまいます。というのも、冒頭である出来事が起こる。時間をさかのぼってその原因を見つけ出し、もういちどそれをやり直そうとする。
そういうパターンを取るために、結末というのは、必ず、起点に戻っているのです。
だからきっとものすごくあると思う。
わたしはSFはあまり読んでないので、たいして知ってはいないのですが、そのわたしでも思いつくのがいくつかあります。
たとえばケン・グリムウッド『リプレイ』、これだと時間の環のなかにはまりこんだ男が、同じことを何度も体験するというものです。グリムウッドはアメリカ人。
ほぼ同一のアイデアで日本でもそれをやったのが北村薫『リセット』。
ぐるぐる繰りかえすわけではないですがフィリップ・K・ディックの『ペイチェック』は映画にもなりました。『時間飛行士へのささやかな贈物』もアイデアは一緒。ともに過去に戻って原因を探すもの。ディックもアメリカ人。
あとはそうだな、星新一のショートショート「おーい、でてこい」も、きっと円環する時間を暗示しているんだろうな。
SFにターゲットをしぼると、きっともういやになるくらいサンプルは見つかるはずです。
読書のカテゴリで新しく質問を立ててみてはいかがでしょうか。
『百年の孤独』はほんと、おもしろい。
ただ、これは系図を自分で作りながら読んだ方がいい。最近の翻訳には家系図がついているらしいのですが、これは自分で作った方がずっと楽しめると思うんだけどなあ。
ボルヘスもおもしろい。これは繰りかえし読むと、そのたびにちがった味わいがあります。
おっと、これは余談でした。
サンプル収集がんばってね。
SF!盲点でした。アシモフとか大好きなのに。
>SFにターゲットをしぼると、きっともういやになるくらいサンプルは見つかるはずです。
確かにそうです。Finnyなど時間テーマのファンタジーもありますし。
ボルヘス、ガルシア=マルケス、読んでみたいです。
コエーヨ以来日本でも南米文学ちょっとブームですね。カルヴィーノも南米文学でしたっけ?あれ?生まれがキューバなだけでした…
Enlighteningなご意見ありがとうございました!
No.3
- 回答日時:
「円環的時間」というと、もちろんかのプルーストをのぞくと、以下に上げる作品があげられるかと思います。
英米文学という枠から外れるのですが。まず、ジョイスは『ユリシーズ』ではなく、『フィネガンズ・ウェイク』のほうです。
ジョイスはこの作品で歴史の循環というものをフィクションの中に具体的に描こうとしています、というか、一応、そういうことになっています。わたしは途中で置いたままになって最後までまだ読む機会に恵まれていませんが。
『ユリシーズ』は1904年10月6日一日に起こった出来事です。念のため。
戯曲ですがウージェーヌ・イヨネスコの『禿の女歌手』。これは劇の最後が最初に戻っていく構造になっています。
ガルシア・マルケス『百年の孤独』
これはマコンドという町を舞台にした一世紀にわたるブエンディーア一族の消長ですが、町がなかったところに町ができ、一族の最後のひとりが死ぬと忽然と町も消えちゃうんですから、円環的構造といっていいでしょう。
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』
『伝奇集』全体がそうですが、とくに「バベルの図書館」。
ほかにも、円環的な構造とまではいかないんですが、非線形に流れる時間は南米文学に共通するものとしてあるように思います。たとえばオクタビオ・パスの『孤独の迷宮』であるとか、フアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』とか。
英米文学で時間軸を解体させた作家というと、やはりジョイスをのぞいてはフォークナーでしょう。
どの作品においても出来事は時間軸をいったん解体されてバラバラになった状態で語られますが、とくに三人の語りで構成された『響きと怒り』、トマス・サトペンをめぐる過去のさまざまな出来事が入り乱れて浮かびあがる『アブサロム・アブサロム』などが代表的ではないでしょうか。
彼が描くのは、円環的時間ではないのですが、過去とはひとりの人間からもうひとりの人間へと受け継がれ、意識のうちにおいて復活する。つまり、その意味において、終わらない時間を描いている、とも言える。
最近の作品では、これも円環的時間ではありませんが、リチャード・パワーズの『舞踏会へ向かう三人の農夫』が、重層的な時間が一枚の写真の内に、それを見ている「わたし」のなかで収斂していく、という点で、線形的時間の語りを壊そうとした試みであるように思います(これはわたしの個人的な感想ですが)。
ざっと思いつくのはこれぐらいなんですが、何らかの参考になれば幸いです。
この回答への補足
詳細なご回答ありがとうございました。
私の勉強不足のため、教えていただきたいのですが、マルケス、イヨネスコは、原語はそれぞれ、西語、仏語でしょうか。ボルヘスはFicciones―タイトルからすると西語でしょうか。英語を言語としてかかれたものとなると、ジョイス、フォークナー、パワーズでよいでしょうか。すみません、Googleとかでさらっと調べたのですが、原語がなにかって、きっとあまりにも常識的なのでしょう、なかなか載っていませんでした。
非線形的時間を表す談話方略をできるだけたくさん集めたいと思っています(まずは日英語の2言語で)。
でもそれを離れて、マルケスとか、ボルヘスの伝奇集とか読みたくなってきました。
No.1
- 回答日時:
言語学を専攻されている方でしょうか。
文学論 哲学の時間論 などの分野での専門書などに、ご質問のような、時間概念が論じられている物があるのですが、そちらを調べてみられるのはどうでしょうか。
ちなみに哲学から見ると、ご存知かもしれませんが、直線的時間概念は、キリスト教的な概念で、終末論と密接な関係があり、一つの方向に向かって、カタルシスに向かってのベクトルを持つ、というイデオロギー的な概念ともいわれています。
円環的時間は、その思想を持たない、ソクラテス以前の思想家、ヘラクレイトス、などのものとも言われていて、それを復活させたがったのがニーチェだとも言われています。
ですので、なかなか、キリスト教の影響を強く受けている英米文学の中に、そのような文例を探すのは困難かとも思います。自信はありませんが。もしかしたら、直接そのようなことを論じている本もあるかもしれません。
あとは、キリスト教に反対するそういうたぐいの文学作品からは、円環的時間も見いだせるのかもしれませんが、私はここくらいまでしかわかりません。
ただ、私自身も、ご質問をお読みして、プルーストが円環的時間を描いていることをしり、納得するもありました。確か、プルーストもかなりの、アンチクライストだったんですよね?
ちょっと、直接的でない、よけいな情報だったかもしれませんが、参考までに。
また、掲載したURLは、あくまで今、さっと見てみた中でしたので、内容はわかりません。あしからず。
http://www.amazon.co.jp/%E7%89%A9%E8%AA%9E%E8%A1 …
早速のご回答ありがとうございました。物語論(Narratology)では、Time and Narrative (Ricour)が一番どんぴしゃで、そこでも失われた時を求めてを題材に、物語論を展開しています。両方とも言語がフランス語なのと、私の仏語がつたないので、言語で読んでも分析にまでいたらないでしょうし、英語の翻訳だとどんな妙訳でも、英語という言語が仏語の大きな影響を受けてしまうと思い、今回質問いたしました。
直線的時間概念に関するご教示ありがとうございました。
知らなかったので、とても勉強になりました。哲学のほうももう少し勉強してみます!
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