濃硫酸を水で希釈するときは、
・濃硫酸に水を注ぐ。
のは危険なので絶対してはいけなく、
・水に濃硫酸を注ぐ。
ようにしなさい、と高校のときに習いました。しかし、今まで実験室でやってみた経験では、10 mLくらいの濃硫酸に100 mLくらいの蒸留水を一気にそそいで見たところ、発熱はしましたが、高校で「飛び散るぞ」と言われたようなことはなく、少量なら私は「濃硫酸に水を注ぐ」方法でやってきました。
しかし、大量になると、やはり危険なのだろうと思います。量を限定して、たとえば
「150 gの濃硫酸を1 Lに希釈する。」
ときに、理想的な(お手本となるような)方法を、逐一詳しく、教えてください。自分が聞かれたときに答えられるようになっておきたいですので。今まで、「濃硫酸→水と注ぐ方法はだめだ」と言うのはいろんなところで聞きましたが、「それではどうすればいいのか」を最後まできっちり教えてくれた人がいません。なお、「水を1 L加える」のではなく、「最終的な溶液全体の体積が1 Lとなるように」希釈するやり方です。正確なモル濃度の溶液を調製する方法を知りたいのです。「最終的に溶液の体積を合わせる」ためには、最初は「水に濃硫酸を注ぐ」のでいいかもしれませんが、最後は水を注いで目的の体積にまで希釈しなければいけないと思います。マニュアル化されたような、「これでばっちりだ」というような上記の希釈法(濃硫酸150 g→希硫酸1 L)をご教示いただきたく、お願いいたします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
質問者さんが試された方法は生活の知恵的方法です。
これでやれるには条件がありますので、一般化すると非常に危険な事になります。
ぱっと見て判る条件は、
●濃硫酸層の周囲に十分な水層が確保されるので、水蒸気が発生しても冷却吸収される。
●稀釈比が大きいので、すぐに混和してしまえば発熱が分散し、局所過熱が発生しにくい。
●水や硫酸の表面張力に比較して十分大口径の容器で行っていると思われるので、攪拌が起こりやすい。
などが考えられます。
なので仮に試験管などでやったら中身が飛び出す事態が予想されます。
体積濃度の希硫酸を作る方法ですが、計算量の9割程度の水で濃硫酸を稀釈してしまい、希硫酸となって、熱も冷ましてから残りの水で標線にあわせればいいですが、発熱があるようでしたら、少し加えて攪拌しては冷まし・・・を繰り返す必要があります。
面倒くさかったら温度補正を行い、計算量の水で最終稀釈を行う、という方法もあります。
それでは困る程精度を要求される場合には、出来上がった硫酸液を評定する必要がありますので、厳重に標線にあわせる必要はありません。
早々のご回答誠にありがとうございます。
明快なご回答で、目からうろこが落ちる思いでした。大変参考になります。
二、三質問があります。まず、
>発熱があるようでしたら、少し加えて攪拌しては冷まし・・・を繰り返す必要があります。
このことについてですが、実際に実験室などでこの作業を行う場合には、撹拌はどうやって行えばよいのでしょうか。メスフラスコの中にマグネチックスターラーの回転子でも放り込んで撹拌すればよいのでしょうか。しかしそうすると、最後に標線に合わせる前に回転子を取り出さなければなりませんし、そのときに回転子の表面に微量に付着する希硫酸に含まれる溶質の硫酸の量は無視できるのか、疑問が残ります。器具を使わないで撹拌する、となると、ひたすらメスフラスコを逆さまにしたり戻したりすることを繰り返すくらいしか撹拌の方法が思いつかないのですが、実際はどうすればよいのでしょうか。それでは撹拌効率が非常に悪いと思いますが。
「温度補正」うんぬんについては、まったく分かりません。「計算量の水」とは、どういうことでしょうか。それで正確な量になるのでしょうか。
大雑把な実験ばかりしてきましたので、あまりきっちりとこういうことを教えてくれる人もいませんでした。もしよろしければ、ご教示いただければ幸いに存じます。
No.5
- 回答日時:
またお呼びですね。
超音波による体積変化ですが、いくつかの原因が考えられます。
1、気泡の発生によるみかけの変化。
2、温度上昇による液体自体の膨張
#超音波を当てると液体内部に非常に微細な気泡が発生しては潰れ、という現象が起きます。この作用により溶解速度が上がったり汚れが落ちたりするのですが、それにより温度が上昇します。
1は当然気泡が落ち着くまでダメですし、2も温度が元に戻るまで待たないといけません。
つまり超音波(加熱して溶かす場合も同じ)などの手段を使った場合、元の状態に落ち着くまでの放置の時間は必ず必要になるので、溶かすのにかかる手間と、冷ましてる間に他の作業をその間にやるなど、作業上の便利な点がないとやらない方がいいことになります。
超音波による気泡は微細な物も出来るので、体積変化による誤差よりもその次の作業が比色作業だったりすると、与える影響が非常に大きくなる事が予想されますので、なおさら静置か、もしくはろ過してしまう必要などがあるでしょう。
以上より、今回のご指摘の点はその通りだと思います。
こういう部分は化学実験をある程度専門にやってた人かどうかという力量が問われるでしょうね。
但し、分析においては、決められた方法から逸脱するのはタブーです。
定式化されてる方法には全ての手順にそれなりの意味がありますから。
再三の丁寧なご回答、誠にありがとうございます。
今回の事例のような場合、超音波をかけるのはよく考えてしなければいけないということですね。実験をする上で、「試料が溶けない」というのは非常に厄介なので、ついつい超音波に頼ってしまいがちですが。もうその実験をすることは、おそらくないと思いますが、大変参考になりました。どうも何度も何度もご親切に、本当にありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
また失礼します。
m(__)m面白いお礼を頂いたので一言感想を述べに来ました。
>ほかの人が、超音波洗浄器にメスフラスコを浸して溶かしていたのです。ちょっとやってみれば分かりますが、超音波洗浄器にかけると、フラスコの底から泡がぶくぶく出てきて、液面が標線よりかなり上まで上がってしまうのです。
化学実験の経験が殆どない人ですね。やってる順番が違います。
標線より少し下まで溶媒を入れておいて溶かしてから溶媒を追加し調整するのが普通です。
超音波で破壊してしまうような物質でなければ、全く影響ないですよ。
泡が収まる時間は必要でしょうけど。
たびたびのご回答誠にありがとうございます。
>標線より少し下まで溶媒を入れておいて溶かしてから溶媒を追加し調整するのが普通です。
ここでまた質問なのですが、超音波にかけるのは構わないのでしょうか。私はそれが体積変化を伴うのでいけないと思ってやめたのですが。上の方法は、超音波振動によって体積が増加したことを良しとするものと思います。そもそも、超音波振動によって液体の体積が増加する現象って、どういう意味なのでしょうか。そして、正確な体積の溶液を調製するということは、超音波振動前の液体の状態で統一して体積を測らないといけないのではないでしょうか。
(超音波洗浄器にかけて体積が増加したら、そのまま長時間放置して体積が超音波にかける前と同じになるまで待たないといけないような気がしますが、どうでしょうか)
体積を正確にする操作では、超音波振動を行うことはタブーと思って私はやめたのですが、超音波をかけることは構わないのでしょうか、いけないのでしょうか。分からなくなってきました。おっしゃる手順だと、超音波振動によって増加した体積で標線に合わせているようですので、間違いだと思うのですが。手順を順序だてて、良いのかいけないのかの理由をつけてもう一度ご教授いただけないでしょうか。
No.3
- 回答日時:
お呼びでしょうか。
攪拌の方法ですが、スターラーを使ったらおっしゃるとおりの状況が予想されます。
熱膨張による誤差よりスターラーの体積の方がすごいでしょうからね。
対策として、スターラーの体積をあらかじめ測っておく、というのが簡単でしょう。
次にスターラーを使わないで振って攪拌する方法です。
温度補正とは、求める希硫酸の各温度での密度(比重)を物性表などで調べ、その時の温度を与えれば、20度の時の体積はいくらになるか、とか判りますよね。
この差の分の水を加えるって事ですが、そこまで精密にやりたければ評定して正確な濃度を出して使用した方がはるかに実用的です。
私も硫酸を使って分析していた経験がありますけど、No2 さんが重要なポイントを書いてくれましたが、メスフラスコの評線も参考程度で、実際には評定を行って濃度を精密に測定して使ってました。
最初のやつは、大体その位の濃度を作る、って感じです。
なので、スターラーの体積を測っておくような方法でも十分実用になります。
再度のご回答ありがとうございました。
回転子の体積を測るのですか。でも、それだと、標線が一つしかないメスフラスコだと不可能ですよね。マグネチックスターラーで撹拌する、と言い出したのは、振って撹拌する方法の撹拌効率がよくなさそうだと思ったので言い出しただけで、私もその方法を行ったことはありません。振って撹拌するのが現実的だと思います。
実用的には、標定して正確な濃度を求めてその値を使用する、ということですね。納得しました。
それから、メスフラスコの標線も参考程度だった、というのは知りませんでした。今まであの線を半ば絶対的なもののように信じて操作をしてきましたので、これも目からうろこです。
またまた話は変わりますが、以前に染料の合成をやっていたことがあり、できた染料の純度の指標として、その溶液のモル吸光係数を求める、ということをしていました。そのときに、まずメスフラスコに合成した染料の試料を電子天秤で量り取り、標線まで溶媒を入れて、後は試料を完全に溶かすのですが、なかなか溶けない場合に、ほかの人が、超音波洗浄器にメスフラスコを浸して溶かしていたのです。ちょっとやってみれば分かりますが、超音波洗浄器にかけると、フラスコの底から泡がぶくぶく出てきて、液面が標線よりかなり上まで上がってしまうのです。私はその体積変化がよくないと思ってその方法をやめたのですが、気にせずにその方法でやり続けていた人もいました。さすがにメスフラスコを熱で乾燥させることはしなかったようですが。その人の出した純度の値がどこまで信用できるのか、私は疑問視していました。その人の研究報告書には、モル吸光係数の値として、有効数字3桁くらい書いてあったと思いますが、そんなに信頼性あったのだろうか…。
余談が長くなりました。いろいろ勉強になりました。誠にありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
どちらにどちらを注ぐかはNo.1さんの回答にありますので調整法です。
濃硫酸には吸湿性があるらしいので、正確な濃度はまず求められません。
(飽和溶液を作った直後なら可能かもしれませんが)
よってある程度は「適当」でいいと思います。
もともとの濃硫酸の濃度が正確でないので、できあがった希硫酸の濃度も正確になりません。
自分の場合、濃硫酸100cm3→希硫酸1000cm3 のときは、
容器に水900cm3を入れ、そこに濃硫酸を加えてしまいます。
もし正確な濃度の溶液が必要なら作るのはまず無理なので、pH計や中和滴定をして濃度を求めます。
ご回答ありがとうございます。
「濃硫酸には吸湿性がある」というのが、頭にありませんでした。「濃硫酸を正確に量り取る」というのは、原理的に無理なんですね。おっしゃるとおり、飽和溶液を作った直後でも、これから大量の水で希釈しようとしているのですから、吸湿しやすい条件で作業をするわけですよね。一つ勉強になりました。
>自分の場合、濃硫酸100cm3→希硫酸1000cm3 のときは、
>容器に水900cm3を入れ、そこに濃硫酸を加えてしまいます。
これだと、硫酸と水との混合による体積変化が考慮されませんが、どっちみち目的のモル濃度の溶液を正確に作ることは無理なので、適当に作った溶液の濃度を後で測ればいい、というお考えと理解してよろしいでしょうか。そう理解いたしました。濃硫酸の量も、体積で測ろうが質量で図ろうが、密度の文献値を用いればおおよその量に換算することは可能なので、どちらでも構わないですよね。
上の方法でよいのならば、非常に簡便ですね。何だかすごく気が楽になりました。私もこれからそれでいこうと思います。ありがとうございました。
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