電子書籍の厳選無料作品が豊富!

寺田寅彦の作品に興味を持ち、岩波文庫の「寺田寅彦随筆集」を買いました。とても繊細な視点で世界を切なく美しく描写しておりはまっております。
で、ある本でその寺田寅彦の随筆にふれており、随筆から一節を引用していたのですが、その引用では、かなは正かなつかい、漢字は正字体でした。僕の読んだ岩波文庫では、現代かなつかい、漢字は略字体にされていました。こういった変更(改竄)は現在の出版界では当たり前のように横行していて覚悟の上だったのですが、よく読み比べるとそればかりではなく、「団栗(本当は正字)」という随筆は、岩波文庫では「どんぐり」とひらかなになっていたり、「云う」が「言う」になっていたりもしました。
かなつかいの変更や、正字を略字への変更は分かりますが(読む気をなくすけど)、漢字で書かれていた名詞をひらかなにしたり、「云う」を「言う」のような全くちがう字にする事ってあるのでしょうか。
引用した本の著者は、初版か何かの版を引用し、文庫は初版出版後寺田寅彦が手を加えて書き直したものを底本としているのかな、とも考えましたがそうではないのでしょうか。

A 回答 (1件)

よいところに気づかれました。


結論のみ書きます。
原作者の表記を出版社が「勝手に」書きかえている例は枚挙にいとまがありません。

同随筆集全五巻では、第一巻に二行ほど付記があるだけで、確かにどう書きかえたかの明記がありません。
そこで、他の岩波文庫のいわゆる緑帯、近代日本文学に相当するものをお持ちなら、奥付の前のページを見てください。[編集付記]などとして使用した底本のことや表記の方針などいろいろ書いてあるはずです。

「近代日本文学の鑑賞が若い読者にとって少しでも容易となるよう」「原文の趣きをできるだけ損なうことがないように配慮しながら」五つの「方針にのっとって表記がえをおこなった」と。

こうして皮肉にも、原文の趣きとまるで異なるものが、われわれ読者に提供されているわけです。

この"好意"はただに岩波文庫に限ったことではありません。他の出版社の大部分も似たようなものなのです。
しかも書きかえの"方針"はまちまち、明記してない本もたくさんあります。

萩野貞樹氏の『旧かなづかひで書く日本語』幻冬舎新書2007年刊もしくは
同氏著『旧かなを楽しむ』リヨン社2003年刊(内容はほとんど同じ)を一度手にとってみてください。
たとえば谷崎潤一郎『盲目物語』がいかに作者の意図を根底から無視し、恣意的に書きかえられているか、実感をもっておわかりになるでしょう。

単なる、旧かなと新かなの書きかえの問題、ではありません。
たとえ旧かなの知識が自在にあっても、ここから原文の復元は不可能です。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

ご回答ありがとうございました。
全くひどいものですね。「近代日本文学の鑑賞が若い読者にとって少しでも容易となるよう」なんて、なんで媚びを売る必要があるのでしょう。
まさに改竄ですよね。
ご紹介の本、是非読んでみようと思います。

お礼日時:2007/12/04 06:27

お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!

関連するカテゴリからQ&Aを探す