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No.1
- 回答日時:
こんにちは。
我々の身体の「個人的特徴」といいますのは、
「遺伝的体質:先天的要因」と
「生後の環境:後天的要因」
この二つによって決定されます。
遺伝的体質といいますのは生まれながらにして決まっていることですから、これは「先天的な要因」であり、作り変えるということは基本的にできません。例えば、我々の体質を決める遺伝子には、
「背の高い遺伝子」
「癖毛の遺伝子」
「お酒に強い遺伝子」
「神経質な遺伝子」
「短距離向きの筋肉」
「長距離向きの筋肉」
といった様々なものがあり、
また近年では「アルツファイマー」や「パーキンソン病」などといった病気の因子となる遺伝子も発見されています。
我々の「遺伝的体質」といいますのは両親からこのような遺伝子を受け継ぐことによって決定されます。
「お酒に強い遺伝子」といいますのは「一遺伝子多型」といい、ひとつの遺伝子の違いによってお酒に強いか弱いかが決まってしまいます。同様に、「神経質な遺伝子」には正反対のものがひとつあり、このどちらかによって「おおらかな性格」や「肌理の細かい性格」といった性質の違いが現れます。
これに対しまして、「背の高い遺伝子」というのは複数の因子が集まることによって発現するものであり、こちらは「多因子遺伝」といいます。父親の背が高く、それをみんな受継げば背は高くなりますが、何れかが母親の遺伝子と入れ替わっていれば背の高い体質ということにはなりません。逆に、たまたま両親からもらったものの中で全部が揃ってしまいますと子供だけ背が高いといったことにもなります。
多因子ではなく、お酒などのような多型遺伝子はどちらを持っているかによって決まるのですが、両親から異なる遺伝子を受け継いだ場合は「優性」の方の性質が働きます。
このような「遺伝的体質」といいますのは両親の遺伝子を受継ぐことによって決まるものですから、これは自分の力ではどうすることもできません。マラソン選手の子供がマラソン選手として成功するのは長距離に適した筋肉の遺伝子を親からもらえたからです。
ですが、体質といいますのは生まれながらに決められているものですが、その能力といいますのは生後の努力や環境で変わるわけですから、それがそのひとの全てというわけではありません。
例えば、元々背の伸びる体質というのはあるわけですが、子供時代の成長期にご飯をたくさん食べてどんどん運動をすれば背は伸びますし、筋肉も鍛えられます。また、短距離向き、長距離向きという体質はずいぶんと昔から調べられていますが、オリンピック選手くらいになれば必要かも知れませんが、小学校の運動会で勝った負けたなどというのは、これは本人の運と努力しだいですから遺伝的な体質とはほとんど関係ありません。
もちろん、成長期を過ぎますともう背の高いひとを追い抜くことはできません。ですが、学生時代にきちんと努力をするならばインターハイにだって出られますし、音楽や芸術を身に付けることもできるわけですよね。
このように、個人にはそれぞれに「持って生まれた体質の違い」というものはありますが、そこには「生後環境における後天的な要因」というものが大きく働いています。
>それと自分という存在はどのようにして生まれたのでしょうか?
これまでご説明致しました通り、そのひとの「人格・能力」といいますのは、
「遺伝的体質」+「生後環境」
によって決定されます。
遺伝的体質といいますのは両親からそれぞれに受継いだ因子によって作られる「その子供だけの組み合わせ」であり、そこにはありとあらゆる生後体験が長年によって積み重ねられています。ですから、果たして質問者さんと同じ性質・人格というものはこの世にふたつとは存在しません。
では、この全てが
「遺伝体質:先天的要因」
「生後環境:外的要因」
このふたつによって決定されてしまうならば、生物学的には「個人の存在価値」というものは何処にもありません。
ですが、人間としてこの世に生まれた以上、そこには必ずや「自分の意志」という「後天的内的要因」が働きます。従いまして、それを決めるのはそのひとに与えられた先天的外的な要因ではなく、「自分の存在」というものを決定するのは飽くまで自分自身ということになります。
自分と同じ人格といいますのはこの世にひとつしかありません。ですから、そこには様々な利点や欠点があり、それがそのひとの個性となります。
では、成功したひとといいますのは優秀な資質を与えられたひとではありません。成功したひとといいますのは自分に与えられたものをきちんと活かしたひとです。
どんなに優れた体質や環境を与えられたとしましても、それを活かすことが出来なければ何の意味もないですよね。ならば、自分の能力を決定するのは両親や環境から与えられたものではなく、抜本的にはそれが「自分の意志」であり、そして成功とは、果たして後天的内的要因に基づく飽くまで「結果」でしかありません。
このように、「自分の存在」といいますのは生物学的に論ずるものではありません。
我々が自分に与えられたものを活かすというのは、それは長所を伸ばし欠点を克服するということです。では、このためには自分というものがどんな人間であるかをきちんと理解する必要があります。
自分を決定しているのは外的要因ではありません。それは自分には何が与えられているのかを知ることであり、自分の存在を決定するのは飽くまで自分自身が行うことです。
但し、質問者さんが「本当の自分」というものに巡り会うのはまだ二十年も三十年も先のことになりますので、今から焦る必用は全くないです。
この回答へのお礼
お礼日時:2008/05/21 13:41
お答えいただきありがとうございます。
非常にわかりやすかったです、本当にありがとうございました。
非常に奥が深くて感動しました、やっぱり人間という存在はすごい複雑ですね。人間に限定せず、ほかのありとあらゆる生物も人間同様すごい複雑なんだろうなーって思いました、ありがとうございました。
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