数学基礎論の林晋先生の「ゲーデルの謎を解く」という本を読んで疑問に感じていることがあります。
この本の最初に「ホーキングの疑問」と銘打って天才物理学者の下記の疑問をゲーデルの不完全性定理になぞらえています。
「本当に完全な統一理論があるならばそれは人類の行動をも決定するだろう。ということは、統一理論自体が、人類の統一理論探求の行方を決定することになる! だとしたら、どうして、人類が正しい結論にたどり着ける、と決まっているだろう?」
もし、統一理論がニュートン力学と初歩的な電磁気学で構成されていたとしたら、そのような世界では、ニュートン力学を理解できるような知性は生まれえないということでしょうか。
自然科学は暫定的な仮説の総体と言っても良いはず。無矛盾を前提に証明された不完全性定理を自然科学に適用するにはもっと慎重であるべきではないかと思います。
統一理論(というより宇宙)の自己言及性という問題があるとすれば、次のような状況ではないかと考えます。宇宙の全要素の状態を超巨大コンピューターに入力できて、宇宙のすべての状態を把握できるようになる。そうするとコンピューター自身も宇宙の一部ですから、そのデータも自分自身に入れなくてはなりません。
つまり人間の能力は余りにも小さいので、自然科学分野では不完全性定理が障害となるような事態はあり得ないと考えています。
以上のような私の考えに対してサゼスチョンがあれば聞かせていただきたいと思います。
勝手ながら、回答は数学科か哲学科の方か同等の知識のある方にお願いいたします。
A 回答 (24件中21~24件)
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No.4
- 回答日時:
これは回答ではありませんが、私自身の参考にしたいので、
>最近、高名な物理学者の方が不完全性定理を引用して自然科学の限界について言及しているのをインターネットで見かけた
に関して、何処のインターネットで見かけたのか教えて下さいませんか。
私は物理学の研究で飯を食って来た者ですが、私の拙い認識では、カント以降の分析的真偽と総合的真偽の違いの発見によって、数学と自然科学は本質的にその対象も興味も違う物だと理解しております。この違いの現象論的な表出としては、数学者は常に論理の一般化にその主眼をおいておりますが、自然科学者はその論理の特殊化に全神経をそそいてでおり、その興味の方向が正反対な方向に向かうと言う振る舞いの違いとして現れております。私は、「物理学者の興味と数学者の興味は直交している」と、仲間内でよく冗談を言っております。自然科学が対象とする真偽とは一切無関係な分析的真偽を論じている数学が、それにも拘らず、どれだけ自然科学の真偽の判断に関して意味のあることが言えるのかに、私は個人的に大変興味を持っています。参考にしたいので、是非教えて下さい。
また、この質問に関して、哲学に強い方にお聞きしたいのですが、もし数学が自然科学の真偽に関して判断を下せるとするなら、カントは間違っていたと言うことなのでしょうか。それとも、カント以降の哲学の発展により、数学と自然科学の間のカントによる分類を弁証論的に昇華した私の知らない新しい発見でも成されたと言うことなのでしょうか。その辺りも教えて頂けると、物理学で私自身が何を研究しているのかに関して、現在持っている私の認識に果たして修正がいるのかどうかが分かるかもしれませんので、その辺りも教えて頂けると、有り難いです
この回答への補足
先般大阪市立大学を退官されました菅野礼司先生の「自然と科学 市民社会における科学の役割」というブログです。本人へのことわりもなくお名前をここにあげましたが、菅野先生は立派な見識をお持ちの優れた科学者であることは間違いないと思います。私の呈した疑念に対してもブログ上でこの上ない真摯さでお答えしていただいていることを強調しておきたいと思います。
私は最近哲学を勉強し始めたばかりでカントについての知識もありませんので、cyototuさんのご質問にはお答えしかねますが、この方面に明るい方がいれば、このスレッドを利用していただいて差し支えありません。私も興味があります。
物理学と数学の関係については、自然現象をうまく説明するための数学モデルを構築するのが物理学の役割であると考えています。
No.3
- 回答日時:
>>>No.2 補足欄
ゲーデル数は不完全性定理を証明するための道具立てですよね。リンゴをゲーデル数化してどうしようというのでしょうか。
私の提示した問題は、ゲーデルが証明した不完全性定理を引用して、自然科学の限界を云々することが妥当かどうかということです。
<<<
。。。
(認識としての)自然科学という「知的概念構成」をゲーデル数化する(すなわちコード化する)ということです。そのための例として「リンゴ」を出しています。
「リンゴが落ちる」、「リンゴが腐る」、「リンゴに2種類の金属を差し込んで電池とする」などという現象をゲーデル数化できれば、不完全性定理がどのように関与してくるか?を「知的・幻想的に捉えうる」ということです。
そのためには、リンゴを構成している原子や分子に番号を割り振り、化学的な結合関係にも記号を割り振ってやり、構成分子同士の織りなす変化(受粉から果実への変化の過程や、甘く熟していく過程)をも述語論理としてゲーデル数化することが可能です。無論、「リンゴ」の実体が構成されているわけではなく「知的・幻想的な」作業でしかないのですが、「科学的理論の正当性」というレベルでは、「確かに、リンゴを、その高さから落とせば、そういった潰れ方をするよね」といった記述を表現することも可能なコード体系なわけです。
そうして、そのような「自然科学的な現象」をゲーデル数化することが可能だということは、そのまま、プログラムとしてコンピュータ上に関係を構築可能だということです。
コンピュータ内部で扱うのは、まさに「コード」であり、諸手続を行う関数にも、それぞれ「コード」が割り振られて「区別」されます。内部でのデータ処理は、最終的に一連の論理演算へと変換可能なため、コンピュータがたとえ並列処理をおこなったとしても「チューリングマシンを越えるコンピュータは現行存在しない」と言われています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A5% …
LISP処理系は、自己参照系の記述が可能で、さらに、「コード化された関数」を関数の要素として扱うことが可能な言語であり、ゲーデルの不完全性定理を「実行する」ことが可能だとされています。(たしか、林氏の本にも記述があったはずです)
したがって、コンピュータでシミュレーション可能だという範疇での自然科学の(知的関連性に限定した)概念の「論理的・無矛盾・自己参照系の記述」は可能なわけで、そういったレベルでは不完全性定理からは逃れられないと思われます。
また、No.1でも触れられていますが、認識と存在の狭間には、ハードプロブレム、量子相関など、さまざまな問題が横たわっていることも事実であり、科学的記述のみ(すなわち認識側からの自然科学的な世界の記述のみ)で、全てを尽くし切ることは不可能だと思われます。
もし、そういったことが「論理的・無矛盾」に説明可能になったとしても、ゲーデルの不完全性定理という呪縛から逃れられないとわかっているわけです。
このことは、
>>>
もし、統一理論がニュートン力学と初歩的な電磁気学で構成されていたとしたら、そのような世界では、ニュートン力学を理解できるような知性は生まれえないということでしょうか。
<<<
の回答にもなっています。
すなわち、上述のようにはならず、
===
もし、統一理論がニュートン力学と初歩的な電磁気学で構成されていたとしたら、そのような世界では、電磁気学はもとより、ニュートン力学や、統一理論を理解する知性が生まれるでしょうが、「その知性の内部には、それら理論によって、証明も反証もできない命題が存在する」(第1不完全性定理)でしょうし、「その理論自身が自身の無矛盾性を証明できない」(第2不完全性定理)
===
となるでしょう。
(自然科学的な)理論は、認識論としての「一つの説明可能性」であって、(知性の存在をも含めて)「存在」そのものには言及できないということです。したがって、上述のような「知性」の存在の有無には言及不可能だということです。
このことは、ゲーデルが試みようとした「神の存在証明」にも如実に表れていると思われます。
この回答への補足
<<‥‥などという現象をゲーデル数化できれば、不完全性定理がどのように関与してくるか?を「知的・幻想的に捉えうる」ということです。>>
なぜゲーデル数化すれば、不完全性定理がどのように関与してくるかを見ることができるのでしょうか? おそらく「知的・幻想的に」捉えることは不可能だと私は思います。
「(認識としての)自然科学という『知的概念構成』をゲーデル数化」の具体的イメージを描きながら述べられていますか?。
自然現象をどのようにゲーデル数化するというのでしょうか、ごく簡単な例で方向性だけでも示していただきたいと思います。
ゲーデルは対角線論法による自己言及命題を示すために、ゲーデル数を発案したのだということを思い起こしていただきたいと存じます。
<<LISP処理系は、自己参照系の記述が‥‥、ゲーデルの不完全性定理を「実行する」ことが可能だとされています。>>
不完全性定理を「実行」などできないですよね。「証明」の実行という意味ですか?
No.2
- 回答日時:
理論と物質との対応関係、すなわち、哲学で言うところの、「認識と存在」の対応について、考えるべきでしょう。
ゲーデルの不完全性定理の前提条件を、ざっくりととらえるなら、「記述可能な(認識可能な)あらゆるものを、(認識可能な)ゲーデル数に対応させる」ということになります。
すなわち、「りんご」なら「りんごを構成しているであろう」原子・分子の「理論的な記述」や、その構成要素間の「関係」の記述などなど・・・そういったものを、コード化することに対応するでしょう。「認識しうる限りのあらゆるもの」です。認識の範疇に「無限分割可能なりんご」という概念が含まれているならば、「無限分割」という概念も「コード化する」わけです。たとえ、存在としての「りんご」が「無限分割不可能」であったとしてもです。
すなわち、存在と認識の間のギャップについては、認識側からの「想像・空想・想定・知的優位性」にて、軽々と越えうるという錯覚を、前提にしています。
そういった「コード化可能かつ無矛盾かつ論理的、かつ自己参照的な」概念を扱うというときに出てくる問題がゲーデルの不完全性定理でしょう。
コンピュータ科学では、「自分自身を自分自身で記述可能な」LISP処理系が開発された当初から、ゲーデルの不完全性定理を内部にて実現する試みがなされています。
http://www.unfindable.net/~yabuki/article/unknow …
もし、「統一理論」なるものが「人間の知」にて扱われることになっても、それは、「理論的・論理的な説明可能性の選択肢の一つ」であり、「認識」を越えるものではないでしょう。
「存在」は、そういった「幻想的な認識」と深い関連性を保ちながらも、「なぜ?」といった疑問を越えて、「存在」しつづけることでしょう。。。
この回答への補足
ゲーデル数は不完全性定理を証明するための道具立てですよね。リンゴをゲーデル数化してどうしようというのでしょうか。
私の提示した問題は、ゲーデルが証明した不完全性定理を引用して、自然科学の限界を云々することが妥当かどうかということです。
回答有難うございます。
>「自分自身を自分自身で記述可能な」LISP処理系‥‥
面白いですね。時間があれば勉強してみたいと思います。自分自身を記述したら無限循環に陥らないのでしょうか。
No.1
- 回答日時:
量子力学によると、位置と運動量は同時に正確に測定できません。
よって、そのコンピューターに正確なデータを入力できないので、宇宙のすべての状態を把握できるようにはならないということになります。これは不確定性原理というよりは、カオス理論の範疇だと思います。「初期値鋭敏性ゆえに、ある時点における無限の精度の情報が必要であるうえ、数値解析の過程で出る誤差によっても、得られる値と真の値とのずれが次第に大きくなっていく。そのため予測が事実上不可能」
>つまり人間の能力は余りにも小さいので、自然科学分野では不完全性定理が障害となるような事態はあり得ないと考えています。
物理学などの分野では、非ユークリッド幾何学が使われることもありますが、その際、(不完全性定理がでてくるような?)数学は手段として有用かどうかで取捨選択されるのであり、ちょっと雰囲気が違うと思います。
参考URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%AA% …
この回答への補足
申し訳ありませんが、質問の趣旨は論理学上のものであり、それ故回答者を数学科か哲学科の方に限定させていただきました。
ホーキング博士の疑問の中でも「本当に完全な統一理論があるならば‥」とあるように、統一理論の自己言及性について説明するために仮定の話をしています。
最近、高名な物理学者の方が不完全性定理を引用して自然科学の限界について言及しているのをインターネットで見かけたので、問題提起のつもりで投稿したような次第です。
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