非弾性衝突で運動量はどうして保存されるのでしょうか?
物体A(質量m1,速度v1)と物体B(質量m2,速度v2)が非弾性衝突をする時、(v1とv2は同じ向き、外力無視)
運動量は保存されるのに、運動エネルギーが保存されないのは何故だろうと思って調べてみると、
「運動エネルギーは、衝突による音や熱や変形などで消費されるので、保存則が成立しない」
という説明があり、すごく納得できました。2年前の話です。
そのことを今日思い出し、ふと思ったのですが、逆に、
運動エネルギーが保存されないのに、どうして運動量は保存されるのでしょうか?
音や熱や変形などによって確実に「何か」が消費されたのですから、
運動エネルギーだけでなく運動量も減る気がするのですが………。
別の訊き方もしてみます。
AとBの重心の速度をVとすると、
V=(m1v1+m2v2)/M (M=m1+m2)
AとBの運動量の和Pは
P=p1+p2=m1v1+m2v2=MV となり、
AとBの運動量の和は、速度Vで運動する質量Mの仮想物体Cの運動量に等しいということになりますが、
AとBの運動量が保存されるということは、Cの速度が一定ということですよね。
どうして一定になるのでしょうか?
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
>AとBの運動量が保存されるということは
それは近似あるいは理想化です。関係する系の全運動量は衝突の前後で保存されますが、AとBの運動量の和は厳密には保存されません。
>音や熱や変形などによって確実に「何か」が消費されたのですから、運動エネルギーだけでなく運動量も減る気がするのですが………。
例えば、衝突の際に運動エネルギーの一部がA、Bの内部で熱になったとします。熱せられたA、Bは、得た熱のエネルギーを赤外線として放射して元の温度に戻りますが、一般にその赤外線放射は空間に対して完全に等方的(どの方向にも同じ)ではないでしょう。よって、その赤外線は運動量の一部を持ち去り、AとBの運動量の和は保存されません。ただ、マクロの問題では、多くの場合、そのような効果は無視できるほど小さいので、AとBの運動量の和は保存される、といって構わないのです。
ミクロな粒子の非弾性衝突では、衝突によって生じる光子も含めて運動量の保存則を適用する必要が出てきます。
すると問題は、運動エネルギーが有意に減少するマクロの非弾性衝突において、衝突物体A、Bの運動量の和の変化はどうして無視できるほど小さいのか、ということになります。それには二つ理由があるように思います。
(1)エネルギーはスカラー量であるが、運動量はベクトル量であり方向ももつ。
(2)いまの場合、音や熱の生成は散逸過程であり、方向性を持ちにくい。
例えば運動エネルギーの一部が衝突によって熱になる場合、物体全体としての、ある方向性をもった運動が、物体内部の、方向性を持たない熱運動に散逸するわけです。その際、エネルギーはスカラー量ですから、前者から後者への変換に特に問題はありません。しかし、熱運動の方向はふつうランダムですから、熱運動全体としては方向性をほとんど持たず、その運動量はほぼ零ベクトルです。よって、熱運動は衝突前の物体A、Bの運動量をほとんど受け継ぐことができず、A、Bのマクロな運動に伴う運動量はほぼそのまま保存されることにならざるをえません。
音や変形に伴う運動エネルギーの散逸についても、同様に考えることができるのではないでしょうか。
No.4
- 回答日時:
運動エネルギーを,重心運動エネルギーKGと相対運動エネルギーKRに分けるとわかりやすいです.
換算質量μ=m[1]m[2]/(m[1]+m[2])、重心速度VGとして,
KG=(1/2)(m[1]+m[2])VG^2
KR=(1/2)μ(v[1]-v[2])^2
と定義することにします.物体Aの運動エネルギーをK1、物体Bの運動エネルギーをK2とすれば,
K1+K2=KR+KG
が成り立ちます.(実際に計算してみれば本当に成り立っているのがわかります)
非弾性衝突なので跳ね返り係数e(0≦e<1)を
e(v[1]-v[2])=v’[2]-v’[1]
と定義することにします.(衝突後の速度をv’としています)
すると,衝突後の運動エネルギーK’は,先のKRとKGを用いると,
K’=KG+(e^2)KR
となります.
結論として,衝突に対して重心運動エネルギーは不変であり,相対運動エネルギーは減少します.
全体の運動エネルギーの減少分=相対運動エネルギーの減少分,というわけです.
重心運動エネルギーが不変ということから,衝突前後での運動量が保存されるのもわかります.
No.3
- 回答日時:
運動の「いきおい」を速さに比例するもの(運動量)と考えるか,速さ2乗に比例するもの(運動エネルギー)と考えるか,…というのは,実は力学の発展の歴史の一幕をなす重要問題でした。
で,結論はどうかといえば,どちらも重要な物理量であり,それぞれに異なる意味合いで運動の「いきおい」を表す量である,というのが現在の物理学がとっている立場です。さらに,相対論によれば運動量と運動エネルギーとは,時空のベクトルの空間成分と時間成分という形で,あらためて統一的に理解されていることは,上のような歴史的な経過からすると興味深い到達点といえます。さて,概論はともかくとして,運動量保存は実質的な外力を受けずに相互に力を及ぼしあっている物体系において,運動の法則と作用反作用の法則によって導かれる帰結です。
簡単のため直線運動のみを考えます。
AがBから受ける力Fとすると,BがAから受ける力は-F
AとBが作用反作用の力を時間tだけ及ぼしあって,運動量が変化したとして
m1v1' - m1v1 = Ft
m2v2' - m2v2 = -Ft
この運動量変化=受けた力積という関係は運動方程式 ma = F の形を変えたもの(両辺を時間で積分したもの)に他なりません。
2式を加えると,
m1v1 + m2v2 = m1v1' + m2v2'
これが運動量保存ですね? ですから,運動量保存は作用反作用の法則に運動の法則(運動方程式)を適用したものに他ならないのです。また,Lilia-F さんがおっしゃるように,
「系の重心は,実質的な外力がゼロならば等速直線運動をする」
という結論は,まさに運動量保存の異なる表現なのです。重心の座標を得る公式をそのまま微分すると,その分子は系の運動量になりますね?
X_G = (m1x1 + m2x2)/(m1 + m2)
V_G = dX_G/dt = (m1dx1/dt + m2dx2/dt)/(m1 + m2)
= (m1v1 + m2v2)/(m1 + m2)
この考え方は,系の運動に対してとても柔軟で意義のある考え方を与えてくれます。すなわち,複数の物体が互いに力を及ぼしあって,系の内部でごちゃごちゃ運動量を交換しても,系の全体を代表する重心は,等速直線運動を続ける。これは,系全体として実質的な外力を受けていないために,慣性の法則から当然の帰結として得られる結論といってもいいのです。
作用反作用の法則と運動の法則という基本法則は,力学的エネルギーが目減りする非弾性衝突においても間違いなく成立しますから,力学的エネルギー保存の成立・不成立にかかわらず,外力が無視できる系においては必ず成り立つのです。
No.2
- 回答日時:
質量m1[kg]の物体が最初速度v0で運動している。
この物体にF[N]の力を?t[s]間加えた。
すると、物体の速度はv[m/s]になった。
この文章を式で表すと、運動量と力積の関係より、
mv - mv0 = F・?t
となります。
なにが言いたいかというと、運動量の変化というのは、
「物体が受ける力F×力をうける時間?t」
で表されるということです。
あなたが質問されている状況ように、2つの物体が衝突する場合を考えます。
それぞれ物体A、物体Bとすると、それぞれ運動量と力積の関係の式をつくります。
物体Aの質量をm[kg]、初速度v1[m/s]、衝突後の速度v2[m/s]、
物体Bの質量をM[kg]、初速度v3[m/s]、衝突後の速度v4[m/s]、とすると、
A: mv2 - mv1 = F・?t ―(1)
B: Mv4 - Mv3 = F・?t ―(2)
物体AとBが及ぼしあう力は、作用・反作用により、絶対F[N]です。
力を及ぼしあう時間(物体が接触している時間)?tも同じです。
なので、(1)式と(2)式の右辺はともに同じ大きさです。
つまり、
mv2 - mv1 = Mv4 - Mv3
衝突前を左辺、衝突後を右辺に移動して整理すると、
mv1 + Mv3 = mv2 + Mv4
となり、運動量保存の式が導かれます。
この式がなぜなりたつかというと、
「物体AとBが及ぼしあう力は、作用・反作用により、絶対F[N]です。
力を及ぼしあう時間(物体が接触している時間)?tも同じです。」
この文章が大事です。
弾性衝突であろうとなかろうと、この文章は成り立ちます。
だから運動量はいかなる場合でも成り立ちます。
なんかまとまりない文章になってしまいましたが少しは参考になったでしょうか?
ところで運動量[kg・m/s]とエネルギー[J]は単位をみてわかるように全く別物です。
No.1
- 回答日時:
運動量も運動エネルギーも同じエネルギーです。
エネルギー保存の法則が成り立ちます。AとBの運動量が保存されるということは、Cの速度が一定ということで、エネルギー保存の法則で、一定になるのです。逆方向に衝突したら、運動エネルギーは、衝突による音や熱や変形などで消費されるので、ゼロになるでしょう。
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