映画「アンストッパブル」のモデルになった、2001年のオハイオ州で起きた貨物列車暴走事故についての疑問です。
幸い、大事故にならずに済んでよかったですが、そもそもなぜあんな事が起きてしまったのでしょうか?
ご存知でない方は一度以下のURLをご確認下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/CSX8888%E5%8F%B7%E6 …
これをふまえ、勿論直接の原因は、機関士が正規の手順を守らない運転をした事が原因なのですが、自分は保安装置や操縦装置その物の方にも重大な欠陥があると感じます。
少なくとも日本ではまずあり得ない話だと思います。
以下欠陥だと思う所です。
・なぜ、Alerterは「ブレーキが掛かっている」と作動しないのか?
仮にこういう誤操作を行わなかったとしても、機関士が操縦中に意識不明になり、倒れ込んだときにブレーキハンドルにぶつかって僅かに制動が掛かったまま、マスコンが「力行」状態のままになってしまう事が考えられます。
これでは所謂デッドマン装置としての役割を全く果たしません。
なぜ、マスコンから手を離すと即座に力行解除になり制動が掛かる(所謂日本で言う狭義のデッドマン装置)、あるいはブレーキの状態に関係なく無操作・無確認のまま一定時間が経つとアラームが鳴って、力行解除になって制動が掛かる(所謂日本で言うEB装置)様になっていないのでしょうか?
・地上子側から機関車の保安装置を作動させることは出来ないのか?
所謂、ATS(列車自動停止装置)の事です。
地上子から停止信号を機関車側に送信し、車上子がそれを受信すると、力行が強制的に解除され、非常ブレーキがかかる物です。
日本では極当たり前の保安装置、いわば保安装置の基礎の基礎ですが、アメリカでは採用されていないのでしょうか?
それがあれば、地上側の信号を「赤」に切り替えることで、機関車を停止させる事が出来たのだと思います。
・なぜ、マスコンを「力行」にしたまま席を離れられる構造なのか
昔の列車はいざ知らず、今の日本の列車だと原則マスコンから手を離すと、スプリングによって自動的に惰行位置にマスコンが復位する様に出来ています。
そうなって居ない物は、前述のデッドマン装置が搭載されていて、手を離すと即座に強制的に力行解除+非常制動になるように出来ている筈です。
これでは明らかに誤操作や機関士の意識喪失が起きると、そのまま無人暴走する事が目に見えています。
・発電ブレーキの操作を、なぜ「マスコン」にて行う仕様になっているのか?
日本の列車にも発電ブレーキという物は存在します。
しかし、マスコン操作ではなく、ブレーキ操作を行うとその時の状況に応じて、空気ブレーキと一緒になって作動します。
マスコン側に発電ブレーキの操作を、しかも「力行」と一部の操作が同じ方法にて委ねてしまうのは、どう考えても操作ミスを誘発する事が容易に想像できます。
どうしてこんな危険な操作手順を採用しているのでしょうか?
アメリカ人だってバカではないのだから、ちょっと考えれば安全か、危険か分かりそうな話だと思います。
しかも何十年も前の話ならいざ知らず、たかだか10年前の事故です。
とてもではないですが、最近になってこんな粗末な事故が起きた事が不思議でしょうがありません。
また、この事故を踏まえて以後製造される機関車・電車は前述のものは改善されたのでしょうか?
それとも放置しっぱなしなのでしょうか?
この事故に対しては、あまりにも人為ミスが多すぎる事と、安全の為のバックアップ装置があまりにも粗末に出来ている事が不思議でしょうがないです。
なぜこんな事故になったのでしょうか?
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
この事故を詳しく調べてみました。
Alerterですが、通常は40秒間無操作で動作しますが、空気ブレーキが20psi(約138kPa)以上かかっていると無効になるとのことです。おそらく、ブレーキを込めるという動作自体がリセットのトリガになっているのでしょう。力行と制動が両方入っていた場合は・・・おそらく想定されていなかったのではと思います。(ATSもブレーキ込めないと確認できませんが、その後で加速できますしね)
SD-40-2は警報までの時間は40秒ですが、15秒の車種もあり、結構な負担になるそうです。
ATSについては、他の方のおっしゃる通り、整備されていないと見るのが自然でしょう。
発電ブレーキですが、停止させるためのものではなく、どちらかというとディーゼルカーの排気ブレーキ、電車の抑速ブレーキのようなもので、微妙な速度を制御するのに使われます。そもそも停止するために使わないので、停止させるためのブレーキとは別の操作、という考え方です。
実はJRの機関車も同じ構造のものがあり、ノッチを発電(回生)に入れて、マスコンハンドルを引くとブレーキがかかります。ただし、速度が落ちると発電量も落ちるため、20km/h以下では使いません。(8888号の機関士が入れ換え中に発電ブレーキを使ったのもミスの一つと言われています)
マスコンが戻らない点ですが、一つは長距離運転の負担軽減、そしてスプリングがついていると微妙な速度調整が難しい、といった理由と考えられます。以前の電気機関車は一段ずつ進段していたため、ノッチがついていて戻らないようになっていました。が、ご指摘の通り入りっぱなしになるという欠点もあり、例えばノッチを切ったつもりが1ノッチ入ったままで、そのまま気付かずに機関士が降りてしまい、機器が全焼したという例もあります。完璧な設計って無いもんですね。
ありがとうございます。
Alerterに関しては、力行と制動が誤って同時に入る事を念頭に入れてなかったのが原因なんですね...。
後、ATSに関しては、確かに確認後加速はできますが、その後絶対停止に当たった場合や速度照査に当たった場合、いわゆる停止信号を冒進した場合や速度制限を超えた場合には確認の有無を言わさず掛かるのではないでしょうか?
で、そのAlerterのリセット操作ですが、日本の列車みたいにリセット棒を押したり、汽笛を鳴らしたりでは解除できないんですね。
考え方が根本的に違うんだなと思いました。
ただ、まあ少々面倒な方法でないと、居眠り運転などの原因にもなるので、面倒臭さと安全性はトレードオフの関係ですね。
また、ATSってやはりないと、一旦列車が暴走し始めたら、外から停止させる手段が全くなくなるので、危険ですね。
日本ではこれが保安装置の基礎の基礎と看做されているのも納得が行きます。
日本の列車が世界的に見てもたぐいまれな安全な列車なんだと思いました。
発電ブレーキは停止させる為のブレーキではないんですね。
自分が知る限りは、発電ブレーキはマスコン側ではなく、ブレーキ側に付いていて、掛け始めると高速域では空気ブレーキは殆ど作動せず発電ブレーキのみがかかり、速度がある程度落ちると空気ブレーキが強まり、停止寸前でほぼ空気ブレーキのみになって停車するようなブレーキを想像していました。
それが何らかの事情でマスコン側についているのかと想定していました。
だとしたらこの機関士はとんでもない誤用をしたことになりますね。
でも、切り替え操作に時間がかかる物の上に、マスコンを「正方向」に回すと作動するブレーキであるのは、やはり危険ですね。
操作方法を全く変える、あるいは軸方向を逆にする方が無難だと自分はそう感じます。
結局、完璧な設計はないですが、何らかの欠点があったとしても、それが「安全側」に働くような物であって欲しいなと思います。
No.3
- 回答日時:
デッドマン装置に関しては、アメリカでも鉄道会社によっていろいろな発想のものかぜ使われています。
日本のワンハンドルマスコンのように握っていないと作動するもの。ペダル式で踏んでいないと作動するものなどです。
黒澤明原案、アンドレイ・コンチャロフスキーの「暴走機関車」では、機関士がデッドマンペダルの上に道具箱を置いてキャンセルするシーンが出てきます(で、発作を起こして転落、暴走する)から、グリップ式の場合でもクリップなどで挟んでキャンセルする職員が出てくる可能性があります。
実際、暴走や逸走事象(事故まで至らないケース)というのは結構発生していると聞きます。この事故は事象の積み重ねが大事故につながるという、ハインリッヒの法則を実証するような事故なのだと思います。実際は、職場の荒廃による規律の低下があったと思われます。
アメリカのこういった現場(工鉱業や運輸、建設)の事故率は日本と比べると一桁以上高いことが多いんですよね。
ATSは旅客線でも無い場合が多いようです(あっても打子式)。
ただ、この事故の場合は、機関車にしかブレーキが存在しない状況ですから、ATSがあってもある程度加速が付いたら止まらないですね。
アーサー・ヒラーの「大陸横断超特急」では、最後、シカゴの駅に突っ込みますが、シカゴの駅にもATSが無いという設定です(映画上だけの話かも知れませんが)。また、フレンチ・コネクションでも、ニューヨークの地下鉄(高架でしたが)で運転士が気絶した後、暴走して電車に突っ込みますよね。
なお、日本でも、深刻な事故が起きています。名松線の無人列車逸走事故(あろう事か同じ場所で2度も!!)はかなり憂慮すべき深刻な事故です。この事故の場合、空気ダメの圧力がない状態ですから、ATSが作動したとしてもブレーキがかからない状況です。偶々大事故につながらなかったと言うだけで、止める術の無い車両が暴走していたという点ではより憂慮すべきでしょう。このような事態に対しての本当に有効な対策は行われていません。
http://www.labornetjp.org/news/2009/124024076244 …
ありがとうございます。
日本でも類似する事例はあるのですね。
やはり勾配があるところは危険度がやや高いようですね。
この場合は完全に席を外しているので、直通予備ブレーキ、保安ブレーキなどの別系統のものを併用しなかったミスも大きいと思います。
名松線では2回も起きているのであれば、対策は急務だと思います。
また運転士不在のまま走行した時には、そういった系統の非常ブレーキも作用させるなどの、有効対策は必要ですね。
アメリカではATSがない事が一般的なのですね。
なんだかんだ言って日本よりもそこは少し遅れているように思います。
勿論以下で回答されていらっしゃいます方の言う通り「車両の剛体を利用して保護する」という考え方が一義ではあると思います。
しかし、その場合は列車自体が走る凶器と化してしまった時に対応ができません。
また逆に、かの福知山線の事故みたいに、事故を起こしたら列車が大破してしまう事も考えられるので、アクティブセーフティもパッシブセーフティも重要であると感じました。
安全の為のシステム、またそれを利用する人のモラル。
どちらもがもっと強化されるべきだと、日本の事例もアメリカの事例も思いました。
No.2
- 回答日時:
はじめましてHN:houjutucho(正しくは砲術長ですが……… 詳しくは、プロフをお読み下さい)と申します。
今質問を読んで、思うところがありましてので
少しばかりですが小生の意見を、述べさせていただきます。
我が日本国と、彼のアメリカ合衆国の
安全思想に違いがあるから、一概に論ずる事は出来ませんが
確かに我が国では、起こり得ない事故でしょう
彼の国では、列車事故が起きた時に
そのボディ-(車体)の剛性を頼りにして
乗客・乗員の安全を、護るとの思想で
設計&製造していますので、それをサポートする
安全装置は、申し訳程度の物であったのでは無いでしょうか?
つまり彼の国では、事故は起きるものであるが
事故が起きたとしても、被害を最小限に抑える事が第一であるのに対し
我が国では、事故を起こさぬ様
安全装置を、コレでもか!
というくらい、車体&軌道等に設置して
被害を未然に防ぐ事が、優先されるのです。
(尤も某JR○日本では、安全よりも早さが優先されていましたが………)
因みにTVの受け売りですが
JR(だったかな?)の技術者が、彼の国で講演(新幹線に関して)をした時に
『新幹線に、シートベルトはありますか?』と問われ
『新幹線に、シートベルトは無い』と答えると
質問者は
座席に特殊素材でも使って、衝撃を吸収するのか?
と思ったそうです。
実際そんな事は、無いですがね^^
この事件(CSX8888号暴走)は、そういった安全思想を
理解しないと、トンチンカンな思考に
陥ってしまう危険が、ありますね。
乱文ですが、この辺でお暇させていただきます。
ありがとうございます。
元々の安全に対する考え方が違うんですね。
でも、乗員乗客はいいとして、列車自体が「走る凶器」と化してしまうことは考えていなかったのかな?という疑問が少し残ります。
実際、「走る凶器」になってしまった訳ですが。
新幹線のシートベルト...確かに思う人はいるでしょうね。
正直なところ、自分もそれはあってもいいかと思います。
列車同士の衝突などであれば新幹線ですとATCが殆どの事故を防いでくれることだと思います。
しかし、何らかの理由で高速運転中に脱線することはありますし、土砂崩れや地震で突如線路が破壊された場合(非常ブレーキは掛かるでしょうが目の前で起きると間に合わない)、置き石やテロリズムによる人為的な破壊工作が行われた場合、等を考えると、何があるかは分かりませんので、新幹線にシートベルトを付けるのは一理あると思います。
勿論立ち席の客や、短距離の客でするのが煩雑なのでしない、という人もいるでしょうが、ある程度の効力があれば良いアイディアかも知れません。
No.1
- 回答日時:
多分そのうち本職の運転士さんが来てくれると思うんですが・・・。
まず、発電ブレーキですが、これは「停止ブレーキ」ではなく「抑速ブレーキ」で停止するためのものではありません。停止用でないブレーキは、日本でもマスコンを逆回しにすることで掛るようになっていますし、古い直接制御の電車でもマスコンで発電ブレーキを掛けるシステムになっていたものがありますので、システム自体はごく普通のシステムです。
もっとも、SD40系機関車が、マスコンを正方向に回すことでブレーキが掛る設計になっていたとすれば、一種の欠陥だとは思いますが。
SD40系のデッドマンシステムについては詳細を知りませんので論評を避けますが、古いシステムの場合「ノッチにかかる力が緩むことによって、バネによるノッチ戻しが効く」事が前提のシステムなので、何らかの理由により「バネによるノッチ戻し」が効かない場合で、かつ、既に常用制動でブレーキシューが「焼けて」しまっている場合、ほぼ確実に非常制動でもブレーキは効かないと思います。
更に言えば、大重量の貨車に勢いが付いた場合、少しでも下り勾配があったとするならば、機関車だけのブレーキではなかなか止まらない、という点にも留意した方が良いかもしれません。
あと、アメリカの貨物線にはATSシステムは無いのが普通です。つか、ATSシステムがどんなローカル線にもある日本の鉄道は、安全性という意味ではかなり高い方に属します。
回答ありがとうございます。
ただ、自分が一つだけ気になったのは、安全装置によって「力行解除」が行われない点が一番気になりました。
もし、即座にデッドマン装置が作動してくれれば、力行解除になることでブレーキシューが全部無くなる前にブレーキが作動した可能性は考えられるし、ブレーキがかからなくとも惰行になった事自体で速度が徐々には緩む事は予想できると思ったからです。
それに、そういう時こそ、「発電ブレーキ」に切り替わってくれれば、失効する所まで速度を落とす事は可能であったと思えるから、少なくともなぜ力行が解除されなかったのか気になっています。
それに、この事故自体がそんなに大昔に起きた事故でもないので、そういう安全は考えられていなかったのか気になる所です。
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