
私は大学院生をしており,微生物の遺伝子について研究を行っています.
しかし,最近は実験をしても,期待するような成果が得られず実験が滞っています.
その実験というのは「グラム陽性菌からのプラスミド抽出」です.
院生でありながらこのような質問をするのは非常に恥ずかしい事だとは分かっているのですが,最近は全然うまくいかず,非常に困っています.
このグラム陽性菌が有する約120 kbのプラスミドを抽出したいのですが,アルカリ法で抽出した後にアガロースゲル電気泳動を行ってもバンドを確認することができません.
また,この菌は複数のプラスミドを有しており,比較的サイズの小さなプラスミド(約20 kb以下)までは頻繁に確認することができます.
以下に実験手順を記入しますので,このような大きなプラスミドでも抽出できるようにするためのアドバイスをしていただきたいです.
1.前培養:植菌して12~20時間振とう培養 30℃ LB液体培地
2.本培養:前培養液から50 μLを5 mLのLB液体培地が入った試験管に添加,6~8時間30℃で培養
3.本培養液全量を15 mL容チューブに移し,遠心分離.
4.培養液を捨て,沈殿にSolI 9mLを加えて激しく撹拌
5.この溶液を遠心分離し,溶液を捨てる
6.沈殿に1 mLのSolIを加え,激しく撹拌
7.16 mg/mLの濃度でリゾチームを溶かしたSolIを1 mL加えて穏やかに混合
8.37℃で2時間30分~4時間反応させる.(30分を目安に穏やかに混合)
9.SolII 4 mLを加え,穏やかに混合,5分間室温で放置
10.SolIII 3mLを加え,穏やかに混合,20~30分間氷上で放置
11.この溶液を冷却遠心分離,沈殿は廃棄し,溶液のみを新たな15 mL容チューブに回収
12.イソプロ 7 mLを加え,混合.室温で1時間放置
13.冷却遠心分離を行い,沈殿を800 μLのTE溶液に溶かす
14.この溶液を1.5 mL容チューブに移し,フェノールクロロホルム溶液600 μLを加えて5分間混合
15.遠心分離を行い,上層の溶液を新たなチューブに回収(タンパク質の層を回収しないように注意)
16.14~15の操作をもう一度行う.
17.回収した溶液にイソアミルアルコール/クロロホルム溶液600 μLを加え混合
18.遠心分離をおこない,上層の溶液を新たな1.5 mLチューブに回収
19.この溶液に3M 酢酸ナトリウム溶液を添加(回収した溶液の1/10量の酢酸ナトリウム溶液)
20.この溶液と等量のイソプロを加え,室温で2時間放置
21.遠心分離を行い,溶液を捨て,沈殿に70%エタノールを加え遠心分離
22.溶液を捨て,5分程この沈殿物を乾燥させる
23.沈殿をTEに溶解させ,サンプル完成 (この時RNAも除去しています)
このような実験手順なのですが,何かアドバイス,不備な点などがあったら教えてください.宜しくお願いします(キットを使うというのは無しで・・・).
PS.この大きなプラスミドは今まで抽出できたことがないわけではなく,この一年ほどで回収できる頻度が著しく低下しているという状況です.作り置きしておいた試薬を作りなおしているのですが,なかなかうまくいきません.失敗したときのアガロース電気泳動写真も添付しておきます.

No.2ベストアンサー
- 回答日時:
昔ながらの手法で、キットは使わずに精製されているのですね。
昔はできていたのに、最近とれなくなったということから、いくつかの可能性が考えられます。1)培地の抗生物質
抗生物質の活性は落ちていませんか?活性が落ちていると,培養中にプラスミドが抜け落ちてしまいます。本培養を止める1~2時間前に、抗生物質を培地に追加し、培養を続けることで、プラスミドが落ちるのを避けることができます。
2)SolIの温度
SolIは常時4度保存、使用時に氷冷していますか?中に酵素(RNase)が入っています。酵素が弱っている可能性はないですか?撹拌も、培養液の4度を保ったまま行ってください。
3)SolIでの撹拌
debrisは残っていませんか? cell debris が完全になくなるまでボルテックスで、もしくはピペッティングでよく撹拌してください。ここが一番収量にきいてきます。
4)イソプロ処理
イソプロ処理で、DNAを失っていませんか?
DNAをロスしそうなイソプロ処理(12のステップ)を省略し、容量の大きいまま、フェノクロ処理、イソアミルアルコール/クロロ処理をします。もしどうしても、体積を減らす必要があるなら、イソプロ処理をします。
5)エタノール沈殿
エタノールの濃度が70%より低くなっていませんか?
容量が大きいままでも良いなら、イソアミルアルコール/クロロ処理の後は、塩(3M NaoAc)を入れて、そのままエタ沈の操作にうつりましょう。リンス用の70%エタノールは毎回、要時調整し、作り置きしないこと。
6)DNAの溶解
完全にDNAは溶液に溶けていますか?
得られたDNAのペレットは完全に乾かしてしまうと、溶かすのに大変苦労します。
乾いたか乾いていないかのぎりぎりの状態まで乾かし,TEもしくは蒸留水で溶かすと、くるくるとペレットが回るように溶けます。
思いつくのは以上です。たっぷりととれるといいですね。
がんばってくださいね。
No.1
- 回答日時:
グラム陽性菌の種類によっては溶菌されにくいというのが一般的な話でしょうから、まずはその点はきちんとクリアできているのかを検証したらどうかと思います。
まあ、リゾチームが失活していないのかとかでしょうか?以前までうまくいっていて(全く同じ方法で)、急にできなくなったなら基本的なプロトコールに問題があるはずはないですよね?プロトコールが怪しいというなら同種の菌でのDNAの回収方法を文献等で確認して再構築するしかないでしょう。正直与えられたプロトコールはごく普通のアルカリ抽出法だとおもうので、それでダメかと聞かれても難しいでしょうね。あえて言うなら、電気泳動が汚い。スメアってるのはDNAが分解?してるのかなあとかそういう点も踏まえてトラブルシュートするしかないでしょう。つまり、
(1)できるだけ各ポイントでDNAを回収してどこに目的のプラスミドがいってるのか、あるいはどの点からおかしくなっているのかを検証する。(場合によっては小スケールで)
(2)そもそも元の菌(何なのかわかりませんが)がおかしくなっていないかどうか(他の菌のコンタミ等)。
(3)回収出来る頻度という表現がよくわかりませんが、以前から安定しないのか?ラボのほかの人とかでうまくいってるのか?
(4)プロトコールが微妙というなら思い切って文献を調べて1から方法を最適化したらどうかとも思いますけどね。
DNAがスメアになってるのでsolIIの組成が変とか何かにヌクレアーゼが大量にはいってるとかないかなあ、、、?とも思いますけどわかりませんね。低分子量のものは取れるならsolII液ぐらいまでの何処かが問題なきもしますけどね。
よって、トラブルシュートを頑張ってするしかありません。それができない、もしくは必要な純度を楽に手にれたいというならキットを使うしかありませんね。
返答ありがとうございます.
(1)について...
確かにどの段階で大型プラスミドをロスしているのかは考えなければいけないと思います.私はアル沈の工程が怪しいのではないかと考えています.大型かつ低コピーのプラスミドなので,沈殿に分離されていないのかも知れないと考えています.
(2)について...
扱っている菌は,Bacillus thuringiensisです.コンタミについては可能性は薄いと考えています.小型のプラスミドに関してはバンドが確認されているからです.
小型プラスミドが見えているからと言ってコンタミしていないとは言えないでしょうか?
どちらにしても,単コロニーの培養からはじめてみようと思います.
(3)について...
ラボの他の人もうまくいっていません.正直に言うと2年前から安定した抽出はできていない状況です.ただ,同じプロトコールできれいに回収できる時もあるので何が悪いのかがいまいちはっきりしません.(ただ失敗の方がはるかに多く,成功する時も失敗する時も,実験の技術的な面に違いはほとんどないと考えています.)
勝手な思い込みかも知れませんが冬になると抽出できる可能性が上がる気がしています.もしかしたら,アル沈の温度がちょうど良くなっているのかも...などと思っています.
(4)について...
文献は探しているのですが,なかなか詳細なところまで書いているものが見つけられずにいます.過去の先輩がきれいに抽出できているデータもあるので,もう一度見比べたいと思います.
私も一度キットを使って抽出してみるのが一番近道だと思いますが,ラボの方針?的なものでキットを取り寄せるのは非常に困難です.
確かに電気泳動は雑物が多く見られるのですが,成功する時もこのぐらいはあるので大きな影響はないと考えています.分解についてはあまり懸念していなかったのですが,そういうことも考えたいと思います.
まずは指摘していただいた点に注意しながら実験をすすめたいと思います.
色々と教えていただきありがとうございました.
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