プロが教える店舗&オフィスのセキュリティ対策術

お世話になります。
お手すきの時に回答いただければ幸いです。

引換給付判決の既判力は、引換給付部分には及ばず、訴訟物にしか及ばないと思うのですが、
仮に前訴で引換給付判決が言い渡されて確定した場合に、無条件の勝訴判決を望む原告が
後訴提起した時に、前訴基準時後に新たな事由の変動が無い場合、
裁判所は、(民事訴訟という学問の理論からは)どのような判決を下すべきなのでしょうか?

例えば前訴の訴訟物が建物明渡請求権で、立退料支払(引換給付)を条件に認容された場合で、
後訴において再度、同一原告が同一被告に建物明渡請求権を提起した場合の、
後訴の裁判所の判決内容について、どうすべきかご教示ください。

宜しくお願い致します。

A 回答 (2件)

 話はちょっとややこしいですが、引換給付判決を受けることによって確定される権利は、例えば売買代金債権では、当該債権が同時履行抗弁の付着した債権であること、建物の明渡請求権であれば、それが立退料の提供を受けることによって発生する条件付き権利(正確に言えば、立退料を提供することによって初めて有効になる解除の意思表示をすることによって生じる建物明渡請求権)であることです。

既判力の内容は、このようなものとして生じるわけです。

 ですから、質問の場合において、後訴において建物明渡請求権の発生原因として前訴と日時態様において同じ解除の意思表示を主張するのであれば、後訴(仮にそれに訴えの利益があるとされた場合)においても、証拠調べの必要のある場合であっても、前訴の判決書のみを取り調べて、当然引換給付判決がなされます。これが、前訴の判決による既判力の意味するところです。

 しかし、前訴の既判力の基準時以後において新たに発生した解除原因によって生じた建物明渡請求権を主張して後訴を提起した場合には、訴訟物が異なりますので、改めて審理がされることになります。

 既判力を論じる場合に、しばしば抽象的な権利の名前をもって論じることがありますが、それは正確ではありません。既判力の生じる権利とは、具体的な事実関係に基づいて発生する個別具体の権利関係だということになります。

 既判力と、特に旧訴訟物理論においては、それと表裏一体をなす訴訟物とは、個別具体の訴訟において、一体その訴訟の訴訟物は何なのか、既判力の範囲はどこまでなのか、を見極めることは、通常はそれほど意識されませんが、実は、そんなに容易ではない場合があるのです。
    • good
    • 2
この回答へのお礼

ありがとうございました。
非常に分かり易かったです。

お礼日時:2015/01/10 21:29

なぜ既判力は引換給付の部分には及ばないと思うのですか?理論上、いくつかの考え方がありますが、引換給付判決の引換給付の部分には「当然に」既判力が及ばないなどという話は聞いたことがありませんが。



時間がないので以下は、理論的な回答ではなくて単純に判例に従った回答です。

判例に従えば、既判力に準ずる効力があると解するべきです。
恐らく質問に対するほぼ直球の回答となるのは、最判昭和49年4月26日でしょう。これは最高裁の判例検索で見つかります。事件番号昭和46(オ)411です。
この事例では、引換給付ではなくて限定承認による相続財産の限度内での弁済義務という内容ではありますが、留保付き判決の主文に掲げられた留保部分にも「既判力に準ずる効力がある」としています。
そして、
「右のように相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確定した後において、債権者が、右訴訟の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法九二一条の法定単純承認の事実)を主張して、右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起することは許されないものと解すべきである」
と述べています。
つまり、留保付き判決に対して、基準時以「前」の事実を理由として無留保判決を求める後訴は認められないと明言しています。

よって、これに反する後訴は訴えの利益を欠くものとして訴え却下になるはずです。もちろん例外的に前訴と同じ内容の判決が出るということはあり得ますが。


以下は私見。
元々既判力がなぜ認められるかということとそれが明文の規定で主文にしか認められないこととを併せて考えると、判決において引換給付部分を「わざわざ」主文に書くのは既判力または既判力に準ずる効力を及ぼすためだと思います。
つまり、給付判決に付した条件等に対して既判力(あるいは既判力に準ずる効力を及ぼすべきであるならば主文に書いてしまえば良いし書かなければならないと裁判所は考えているのだろうということです。
これは極めて合理的かつ直截的で巧い方法だと思います。

なお、参考として最判平成5年11月11日(平成2(オ)170)では、「不執行の合意」という訴訟物でない法律関係についても「訴訟物に準ずるものとして審判の対象になるというべきで」「主文に書くべき」だとしています。
この理由は一応、「執行段階における当事者間の紛争を未然に防止するため」となっており、既判力の問題とは一見して関係はありません。
しかし、この背景にある裁判所の考え方は、既判力(あるいは既判力に準ずる効力)を及ぼす必要がある、ひいては紛争解決の実効性を高めるために必要有益な内容は主文に書き、そうでないものは手続き保障及び訴訟経済上の要請から主文に書かないという発想ではないかと推測します。

以上
    • good
    • 1
この回答へのお礼

詳細丁寧に解説してくださいまして、
ありがとうございました。非常に勉強になりました。

特に参考としてシェアして頂きました判例について、私の理解促進に役立ちまして、非常に助かりました。

ありがとうございました。

お礼日時:2015/01/10 21:28

お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!