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お世話様です。オットークレンペラーが、エグモント序曲のリハで、指揮台を叩いて激高しています。
何と言って怒っているのかお分かりになる方、ご教示下さい。

A 回答 (1件)

残念ながら録音が悪くて言葉はよく聞き取れませんが、もう少し長い動画がYoutubeに出ており、理由ははっきりしています。

クレンペラーはここで、1拍目と2拍目の音を両方ともダウンボウ(下げ弓、弓の根元から弾き始めて下方へ動かす弓)で弾くことを要求しています(クレンペラーでなくても、この箇所は普通そのようになると思います)。連続する2音をダウンボウで弾こうとすると、1音目を弾いた後に弓を浮かせて、また弓を根元の位置へ戻して弾き直さなければいけませんが、注意しないと2音目が弱くなりがちです。また、3拍子の場合、1拍目が強拍で、2、3拍目が弱拍なので、その原則通りなら2拍目の音が1拍目の音より弱くなるという考え方もあり、自然とそういう弾き方になってしまう傾向もあります。しかし、ベートーヴェンはここで、1拍目、2拍目の両方の音にスタッカート記号を書いています。スタッカートというのは、一般に「音を短く切る」という意味ですが、ベートーヴェンの場合のスタッカート記号にはしばしばアクセントの意味が含まれます。この曲の冒頭部分には、スタッカート記号と一緒にmarcato(マルカート=強く、一つ一つをはっきりと)という標語が書き加えられているので、そういう意味で使われていることが明白です。そのため、ここでは1拍目と2拍目の音は同じ強さを保たなければいけないと解釈になり、クレンペラーはそれを要求しているのですが、やはり弱くなってしまっています。オーケストラの楽員は、なかなかそこまでは自分で考えて弾かないので、厳しい指揮者の場合はいらだつことがしばしばあります。注意して動画を見るとわかりますが、2拍目の音を弾くときだけ、クレンペラーは左手も動かして、特に2拍目の強さを保つことを強調しています。Youtubeに出ているもう一つの動画では、この中断のあと、「パン、パン、 パ、パン、パーン」と言って、2拍目を充分重く、強く弾くよう確認しています。

下の動画の4分24秒の個所から。確認の指示はその中断のあとの4分45秒の個所です。


余談になりますが、この解釈は、指揮者によって分かれます。2拍目を1拍目より弱く演奏させている指揮者もいます。特に最近は、作曲家の時代の演奏様式を復活させようというピリオド奏法の影響があるので、1拍目をより強くという解釈は多くなっていると推測します。Youtubeで少し比較してみましたが、クルト・マズアやカラヤンはクレンペラーと同様、2音を同じ強さで演奏させており、アバドやティーレマンは2拍目を少し弱くしています。また、この音型は2回繰り返されますが、1回目では2音を同じ強さで演奏し、2回目には2音目をやや弱くしてフレーズの終わりを示す、という解釈も見られます。クレンペラーは、最後の音まで力強く、ということにこだわったわけです。

楽譜も添付します。
「激高の理由は?」の回答画像1
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この回答へのお礼

詳細で、ご丁寧な回答ありがとうございました。やっと意味がわかりました。恐縮です。

お礼日時:2015/09/25 20:30

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