【お題】引っかけ問題(締め切り10月27日(日)23時)

いつもお世話になってます。毎度の質問で恐縮なのですが、スクリャービンの「8つのエチュード」Op.42の5番、8番のアナリーゼについてご助力いただけないでしょうか。
引用譜:http://www.fastpic.jp/viewer.php?file=9728246738 …

質問1
Op.42の5番の半音階和声の分析なのですが、出だしからつまづいてます。1小節目と5小節目の和声は、息の長い半音階的偶成和音と捉えれば済むのか、あるいは機能をしっかり意識すべきかアドバイスいただけないでしょうか。
質問2
Op.42-5の3小節目の和音は図中の通り3度のVで、4小節目頭の和音が主調のVの和音だと思うのですが、これは機能和声を意識した進行なのしょうか? 3度のV からVへの進行はS-Dと考えられるのでしょうか。

A 回答 (2件)

和声の各声部が半音階的進行をして偶成的な和音が生じるとき、その意味は多義的になるので、分析の方法を一つに絞ることは困難です。

また、多義的な場合は、その両方を踏まえた上で、逆にその多義性を利用し、読み替えを行って転調のきっかけにするというのはごく伝統的な書法でもあります。

副Vの和音の詳細な分析と表記のなさり方を拝見すると、いわゆる「芸大和声」、もしくはそれとメソードを同じにする和声分析の書物などをかなり学ばれていると推測します。私も昔、芸大和声の第3巻までみっちりやりましたが、実作を書くようになるとこれらの本は読まなくなります。こういう教科書の主眼は、分析よりもむしろ課題の実習によって実際の音としての書法を身につけることで、分析はその一助にすぎないので、最終的には分析はほとんどしなくなります。
この日本式の分析方法によると、和音の表記法と機能の分類のしかたがかなり細かくなるのですが、偶成的な和音を一つずつ独立した和音にとらえてしまうと、全体の機能の流れを見失います。芸大和声第3巻のある個所には、副Vをドミナントとして分類せず、その副Vの根音が主調の音階上の何度音であるかによって機能分類をしている例がありますが、これははっきり言ってあまり意味がなく、すぐその下に、偶成和音と見なしたより簡潔な機能分析が示されています。この方法の場合、一応各偶成和音を主調内で定義はしても、経過的に表れたものにすぎないということで機能分析からは除外します。

スクリャービンのこの例の場合、1小節目第3拍は一応ドリアのIV7と取ってよいと思いますし、その前は経過的な偶成和音と見なした方が機能の流れが見通せます。
アウフタクトの和音からして見方は一つに絞れません。冒頭の和音なので、独立した和音ととらえてVI7とするのが無難かもしれませんが、この和音の中のA音自体をドリアのIV7のA#に対する倚音と考え、経過的な偶成和音として仮にI+6として表記しておく方法も不可能ではありません。アウフタクトの小節から2小節目までの機能的な流れとしては、

T|T - S T|T - S T|

ということになります。
個々の和音の分析ですが、アウフタクトの小節に関しては、先述のように、A音をどう解釈するかによってVI7の1転とI+6のどちらも可能です。1小節目前半の和音中のG音は、前の和音のG#がF#へ向かって半音下行していく経過音と取ってしまう方法もありますが、鳴っている時間が長いことと、その次のドリアのIV7との関係を考えると、Aを根音とするV7の形の和音ととらえた方がよいでしょう。そしてドリアのIV7も、和音の構成としてはF#を根音とするV7の形と同一ですが、このように、根音が3度の音程関係にあるV7同志が半音進行で連結されるパターンはよく見られ、特にチャイコフスキーに多かったと思います。3小節目の4拍目から4小節目への進行もこれと似たパターンで、Hを根音とするV7から3度下のG#を根音とするVに進行しています。こういう場合、3度転調と見なすこともできますし、前のV7を後続のV7の倚和音と解釈することもできます。1小節目前半の和音を偶成和音として、しかし一応主調の範囲内で定義するなら、ナポリのII度上のV7ということになります。GをFのダブルシャープに読み替えれば、V度上のV9(根音省略、5度音下方変位)と解釈する余地も出てきますが、とりあえず全体の流れから、ナポリのII度上のV7としておきましょう。
3小節目は、平行調のE-durに一時的に転調しているとみなした方が分析が楽で、機能もわかりやすくなります。2小節目4拍目のCis-mollのVI7をE-durのIV7と読み替えて、そこから転調が始まっていると考えれば、3小節目は同主調E-mollのIV7の借用から普通のV7への進行と見なすことができます。なお、このV7中のE#は倚音にすぎないので、下方変位とする必要はありません(左手の伴奏には第5音F#が鳴っています)。このように、一時的なE-durへの転調と考えると、この部分の機能はS → D となります。
4小節目は主調Cis-mollに戻ってVになります。ここまでの全体を見ると、Cis-mollのT → S → Dという半終止のフレーズの途中にE-durのS → Dが挟まれているような形になっています。
5小節目も、ここから下属調のFis-mollに転調しているとみなして、この小節全体がVの和音の変形と考えた方が簡単です。問題は、小節全体に保持されているA音と前半のD#音をどう解釈するかです。D#は、その前の小節の和音のD#が繋留されてD♮に半音階的に解決すると考えておく方がよいでしょう。ここだけまた別の和音と解釈しようとするとややこしくなります。E#はFis-mollのIへの導音になっていますので、これをFに読み替えてIII度のV7下方変位とするのは考え過ぎだと思います。A音は、Gのダブルシャープと読み替えればVの下方変位ということになりますが、旋律の流れから考えると、むしろ普通の5度音G#に対する倚音Aの解決が先延ばしになっているとみなすことができます。
これはさすがに言葉だけではややこしいので図解します。
「スクリャービンの半音階和声:Op.42の」の回答画像1
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この回答へのお礼

解答ありがとうございます! 道筋が見えてきました!!

>>「芸大和声」
はい、もう10年近く前になるのですが、とあるピアノ教室で芸大和声にそったアナリーゼをやったことがあります。(そのわりには質問が未熟ですいません)

・1小節目の大一拍の和音
なるほど、ナポリ調のV は思いつきませんでした。それと、「根音が3度の音程関係にあるV7同志が半音進行で連結されるパターンはよく見られ、特にチャイコフスキーに多かったと思います。3小節目の4拍目から4小節目への進行もこれと似たパターンで、Hを根音とするV7から3度下のG#を根音とするVに進行しています。」
 この視点では考えていませんでした! たしかに、スクリャービンも後期のソナタなどで3度関係で(副)V を連結さる手法をよく用いていますね。いやぁ、うっかりしていました。

すいません、1点ほど質問よろしいでしょうか。

添付画像を拝見すると、同画像中6小節目の1・2拍めの和音は (fis-mollの)主和音F#の1転という扱いになっていますが、これは(fis-mollの) 属和音ではないのですか? もっとも、属和音としたばあい、最低音がA音になっているのが気になるところではありますが・・・。
お手すきの時にでも解答いただければ幸いです。よろしくお願いします。

お礼日時:2016/05/30 18:59

>添付画像を拝見すると、同画像中6小節目の1・2拍めの和音は (fis-mollの)主和音F#の1転という扱いになっていますが、これは(fis-mollの) 属和音ではないのですか?



この場合、A音がもっと前から保続されているならば、保続音上のVという考え方も当然あります。ただこの場合、前の小節が明らかにV9で、そのバスのH音がこの小節でA音に解決するので、そこで初めて鳴るA音が和声音としてかなり強く作用します。しかも、前の小節のV9の第9度音Dもこの小節でC#に解決します。そのため和声音としては、この瞬間に新たに鳴るAとC#の結びつきが強いです。E#音は前の小節で既に鳴っているものが残っている形なので、新しい音として目立つわけではありません。また旋律線を見ると、前の小節はA → E#という減4度の下行ですが、こういう場合、倚音G#を通ってF#への解決というのが一つの典型的な旋律法です。実際の旋律線上では、G#がC#に跳躍下行し、解決音F#が出てくるのは少し先延ばしされますが、バスのA音上で鳴るG#は倚音の印象が強くなります。全体の流れと、耳で聞くときの印象に沿って分析するなら、ここはE#とG#を非和声音とする偶成和音とする方がよいという判断でした。なお、先の回答では、和声を要約し骨組みだけにして共通音を結んだので、E#を繋留音と表示しましたが、実際にはE#は打鍵され直すので、E#とG#を二重の倚音とするのがより現実的な分析と思います。もちろん、分析の方法は一つではないので、上三声がVの和音を形成しているということで、A音上のVという見方も一応あります。しかし、ここでA音が解決音として新たにバスに出てくるのがかなり決定的な効果になるので、少なくとも機能をドミナントとするのにはちょっと無理があります。
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この回答へのお礼

>>A音がもっと前から保続されているならば、保続音上のVという考え方も当然あります。ただこの場合、前の小節が明らかにV9で、そのバスのH音がこの小節でA音に解決するので、そこで初めて鳴るA音が和声音としてかなり強く作用します。しかも、前の小節のV9の第9度音Dもこの小節でC#に解決します。そのため和声音としては、この瞬間に新たに鳴るAとC#の結びつきが強いです。

なるほど!!前の小節の和音からの解決という視点すごく勉強になります!

お礼日時:2016/05/30 22:09

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