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音楽の和声について質問します。
ロマン派の音楽を特徴づけるものとして「半音階的和声」は良く挙げられます。
しかし、これが解ったようで、全く解りません。
これについて、的を得た具体的な解説をしている資料も、
実は、全くというほど見当たりません。
そこで、質問ですが、ロマン派の音楽の特徴として挙げられる場合の
「半音階的和声」とは、どのようなものでしょうか?
出来れば、典拠も含めて、
「何が、どのように、半音階的」なのか、をお伺いしたいです。
ちなみに、「半音階的半音」、「全音階的半音」、
和声での「変位音」、ドイツ6、フランス6等の和音は理解しています。
よろしくお願い申し上げます。
A 回答 (5件)
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No.5
- 回答日時:
答えということではないのですが,興味深い質問だと思いましたので,書かせていただきます。
まず,「半音階的和声」というのが,和声の正式用語として確立されているのか,
という疑問があります。
むしろ,ロマン派音楽の特徴を説明するとき,便宜的に,
つまり誰かが言ったあだ名がそのまま一般的に用いられるようになった,
というのが実際ではないかという気がします。(もちろんこれを証明する出典はありません。)
答えではありませんが,その背景を歴史的に推測してみることは可能かと思います。
ご存じのとおり,調性の確立と近親調への転調とその手法が,
バッハの時代以降,古典派の時代あたりまでに明瞭化され,学術化されました。
また,さらに楽器の平均律化が進むことにより,徐々に遠隔調への転調が可能になり,
時代はロマン派となります。
バッハ,そしてベートーベンの時代でさえ,まだ遠隔調への転調(あるいは遠隔調の借用和音)は
ここぞ,というときぐらいしか用いられませんでしたが,ロマン派になって(特に後期になると),
それがほとんど頭からしっぽに至るまで,遠隔転調だらけ(あるいは借用和音だらけ)になり,
その様子を総称して,半音階的と呼んでいるのではないでしょうか。(出典はありません。)
二つの和音を結ぶに当たって,確率論的にいえば,何も半音階にする必要はないはずですが,
あえて半音階的に結ぶのは,和声学的な手法のためであり,
たぶん,それ以上の理由はないと思われます。
つまり,なるべくなめらかにつながなければならない,というのと
カデンツ的な進行に忠実に,という理由です。
その手法を説明する和声法の教科書はたくさんあると思いますが,
それを半音階的和声と呼んでいるものを未だ見たことがありません。
そういうわけで,結論は,「半音階的和声」というのは,
正式名称ではなく,単なるあだ名である可能性が高い。
つまり,楽譜の見た目の問題であって,確たる学術的な定義は存在しない,
というのが私の推論の結果です。
No.3
- 回答日時:
なるほど。
19世紀から20世紀初頭は専門なので、もしかすると別の観点からお役に立てることがあるかもしれません。おっしゃるような本質に近付くヒントとして何がしかになればよいのですが。ご存じかもしれませんが、「リヒャルト・ワグナーとタンホイザーのパリ公演」(1861)を書いたボードレールは、ロマン派の芸術家たちが批評精神を持つことについてみずから批評をもって体現した人物でした。同時代のとりわけ、ポー、ドラクロワ、マネ、ギースなどに注目しましたが、音楽ではワグナーだけを取り上げました。
第二帝政期のフランスというのは、オッフェンバッハが"シャンゼリゼのモーツァルト"の異名をとっているような状況です。そこに現れた新しい芸術というのは、大芸術(grand art)に対抗するものでした。大芸術が、歴史の正当性・時間の構築性・民俗の偉大さをよく表したのにひきかえ、ロマン主義の申し子たちは、瞬時性・非時間的表現・個人性を押し出し、短い間にモダニズムへ向かっていくことになります。これは非常に緊張感を持つ表現です。画家のクールベは瞬時性を堅固なものとして掴みとるタッチを生み出しています。
現実に、社会は国王を葬り、歴史を断絶し、古い都市を改造し、建材と技術によって新しい建築が増え、消費経済と群衆が生まれ、個人宅に新聞や雑誌が届き、世界の広さや集団的な意識を自分という個人で引き受けなければならない時代になっていました。ワグナーがゲルマン魂を登場人物1人に負わせて救済する構図は時代の必然ともいえます。
多様性に囲まれ、不安定な世界に繋がれ、古いものを解体されていく社会で、芸術家は、自然を賛美するように新しい時代の人間を賛美するわけにはいきませんでした。ルソーの性善説的なロマン主義が打ち消され、原罪や悪魔といった二元的価値観が重みを増しました。人工的な文化のなかで受動的な人間の葛藤というものが芸術の動機のひとつになるわけです。
また、群衆を目にし始めた小説家はホフマンのように人工的な色彩があふれる様子を著し、画家のドラクロワは人工的な色彩を思うままに使い、瞬間的で粗い表現で人を驚かせます。そこでは、大芸術を見慣れた人々の目には、主題よりも色彩と描く行為そのものとが目立っていました。近代芸術の自律性といわれる事項はこのあたりから発しています。ボードレールはそこに想像力の優位性も見て取っていました。五感によって個々の人々が同じように喚起されるという出来事のほうが、もはや、長大な主題を人々が共有することよりも重要というわけです。
王権神授たる国王が中心になってきた文化のさまざまな主題が崩壊することと、個人の自律とのせめぎ合いが、ロマン派の特徴なのですが、まさに主題を読み解くべき鍵としてのcodeが無く、瞬間的に自律してしまうワグナーの半音階は、色彩の洪水としてボードレールに受け入れられました。大芸術が廃れていくときのゲルマン魂を引き受け、歴史と個人や、過去と現在、悪と善、といった二元の緊張関係に割かれた近代人であることの、崩壊的な、刹那的な、複雑な感情を、主題でなくただその刺激によって喚起できるのが、ワグナーの音楽だったのです。
こうしたことをふまえて、また音楽が専門の方からのご意見があると面白いのではないかと思います。楽しみにしています。
No.2
- 回答日時:
すみません、意図がわかりづらいので補足をいただけますか?
(1)属七和音
(2)トニックに解決
(3)短三度
(4)短三度音が属七度音となる第一度音を取り、属七和音
(5)トニツクに解決
・
・
上記の(3)と(4)のあいだに緩衝的に半音を挟む、
というのが客観的で本質的な定義でないとお考えになる理由がいまひとつわかりませんので伺いたいです。和音を転回することはご承知置きですよね?
実はわたしはジャズコードのほうが馴染みがあり、上記のような解析よりもこのように表記するほうが性に合う者です。記号は文字化けするかもしれないので書きませんが、仮にC音で始めると、
(1) C7
(2) F/C
(3) Fm/C
(3)' Fdim/B(natural)
(4) B(flat)7
(5) E(flat)/B(flat)
(6) E(flat)m/B(flat)
(6)' E(flat)dim/A
(7) A7
こういう記述方式なので、進行はこれで明解なんです。半音階のパスを可能にするコード進行とはこういうことなんです。
かつて楽理の方の講演会を聞いた後にクラシックの解析は不便でないですかと質問したことがあります。
非常に不便だし不完全だとお答えでした。余談ですが。
でも、上述のクラシック解析でもこの場合の和音解決と進行の仕組みはわかりやすいと思います。
何が腑に落ちずにいらっしゃるのですか?
更なるご回答、まずは有り難う御座います。今回の質問の目的は、
ロマン派的な半音階的和声を客観的で簡潔に」定義したいためのものです。
そして、その際、質問の最初にもある通り、できれば客観的に納得できる典拠が欲しいのです。
(ちなみに、典拠はWebページ上の匿名氏やWikipedia等ではなく)
amaguappaさんから求められた補足にお答えします。
ロマン派的な半音階的和声を、客観的で本質的に定義するうえで
なぜ、下の記述では不充分なのかということでした。
>1)属七和音
>(2)トニックに解決
>(3)短三度
>(4)短三度音が属七度音となる第一度音を取り、属七和音
>(5)トニツクに解決
> ・
> ・
>上記の(3)と(4)のあいだに緩衝的に半音を挟む、というのが
>客観的で本質的な定義でないとお考えになる理由がいまひとつわかりません
上のご指摘の進行、それ自体については、実際にどのように音符を動かして、
どのような響きを得たいかは、よく理解できます。
そしてまた、これをもって「半音階的和声」とする「感覚」も、実は私も理解できますし、
多分、多くの人もそうでしょう。
ただし、今回の質問の目的を得るための回答となると、「現在のところは」不充分のように思えます。
それは、何をおいても、まず、
この進行をもって「ロマン派的な半音階的和声」であるとする「根拠」(典拠)が確認できないためです。
そのため、客観的とは言えないのです。
さらに、もし仮に、根拠が得られていると仮定しても、本質が見えにくいのです。
というのは、ご指摘の上の和声進行には、色んな種類の進行が内在しています。
例えば、C-durを主調とすると、
1)→2) IV度調への副属和音第三転回形から、バスが半音音程で進行し、IVの第一転回形へ解決
2)→3) IVの第一転回形のバスが半音音程で進行し、準固有和音へ ( 主調を c-mollと読み替え)
3)→4) バス音の共通音保留で、c-mollの属9和音の根音省略形の第4転回形へ。
4) 主調の属和音基本形へ
上の和声進行のうち、ロマン派的な「半音階的和声」の本質はどこにあるのでしょうか。
そしてまた、上の進行の中には、「トリスタン和声」の要素がなくなりました。
ロマン派的な「半音階的和声」の本質を語る上で、それは必要ないのでしょうか。
私はこのように思い、本質的な定義としては不充分に思いました。
いうまでもなく、「本質」とは「あるものをそのものとして成り立たせているそれ独自の性質」(広辞苑)
であり、これによれば、今回の質問に置き換えると、
『「ロマン派的な半音階的和声」を成り立たせている、「ロマン派的な半音階的和声」独自の性質』となります。
もうお察し頂けるかとおもいますが、このうち、今回は、特に「独自」とする部分にこだわりたいのです。
和声表記や解釈の方法論として、和声学が良いか、Jazz的な文脈が良いかについては、
別の機会で議論したいと思います。
引き続き、皆さんからのご意見をお待ちしています。
No.1
- 回答日時:
専門にやっているわけではありませんが、不協和音、実質は属七和音の解決にかかわる進行ですよね。
ショパンやワグナーを思い浮かべれば、半音階的な進行は多くの場合、下降を辿る反復の旋律です。
例) ドミソシflat→ドファラ→ドファラflat→シレファラflat→シflatレファラflat→
シflatミflatソ→シflatミflatソflat→ラドミflatソflat→ラflatドミflatソflat
(ドの属七→ファのトニック解決→ファの短三度→シflatの属七に転用→ミflatのトニツク解決→ミflatの短三度→ラflatの属七に転用)
例のように半音階で下降するバスによって導き、ここに同形反復で半音ずつ下降する旋律がついたりして、めくるめく感じで移調していくわけです。
「ワグナー 半音階 トリスタン和音」を検索にかけると、かなり見つかりました。
たとえばこの説明ではいけませんか?
http://061028.netfirms.com/Mazurka/mazurka2.html
この回答への補足
すみません、念のため、訂正しておきます。
下が正しいものです。
・ちなみに、今回の質問の目的は、ロマン派的な半音階的和声を
「客観的で簡潔に」定義できないものか?ということにあります。
・譜例34の2~5小節目における、すべての1拍目から2拍目の動きです。
ご回答ありがとうございます。
ちなみに、今回の質問の目的は、ロマン派的な半音階的和声を
「客観的で簡潔な定義」できないものか?ということにあります。
そして、私は「半音階的和声」のようなものを、感覚的には
理解しています。なので、その意味で、amaguappaさんが仰る
「めくるめく感じで移調」とされる表現を聞くと、これはもう
とても理解できて共感でき、嬉しくすらなります。
ただし、今回は、この感覚を、客観的で簡潔に言葉で表現できないものかと考えています。
そしてまた、憶測ですが、一般に思われている通り、
私も、結局「トリスタン和声=半音階的和声」なのだろうなぁとも思います。
しかし、そうと言える根拠は、どこにあるのでしょうか?
---------
さて、示して頂いたページを見ると、
確かに、トリスタン和声と似たような進行が見られます。
譜例34の2~5小節目における、すべての2小節目1拍目から2拍目の動きです。
一方で、このページから解ることは、
「ショパンがワーグナーと同じような和声を使っていたこと」だと思います。
仮に「トリスタン和声=半音階的和声」であることを前提としますと、
この質問の目的をかなえるためには、
結局、それらを結びつけることができる根拠があり、そして、
トリスタン和声自体を「本質的に」定義することができれば良いと思われます。
そこで、ここで問題を整理したいのですが、下のようになると思います。
A.「トリスタン和声=半音階的和声」といえる根拠はあるのか?
(率直にいえば、過去の音楽学者が、そのように言ったことがあるのか?)
B.「トリスタン和声」とは何か?
ちなみに、B.の点でいえば、私は、旋律の同形反復は、
音楽的な要求からのものであり、トリスタン和声の定義という意味では、
2次的なものと思います。
ひきつづき、皆さんの意見をお待ちしています。
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