気になっていることがあります。
ニーチェのルサンチマンは、キリスト教が弱者・被支配者が強者・支配者・権力者を「悪い」ものとし、自分たちをそれに対して「善い」ものという価値の転倒をした、というものですよね。
他方、親鸞の悪人正機も、悪人こそが救われる、といわばニーチェのいうキリスト教同様価値を転倒した、と解釈できるような気がしています。
この二つ、大変よく似ていると思うのですが、実際に意味しているところは同じなのでしょうか。また、どうズレているのでしょうか。私は哲学・宗教とも門外漢ですので、お詳しい方の見解が聞けたらと思います。
No.4
- 回答日時:
補足というか追加です。
ひっっ!駄目じゃん自分。
>親鸞の悪人正機も(中略)ニーチェのいうキリスト教同様…
ということは、質問は 悪人正機=ニーチェのいうところのキリスト教 ではないかということなのでしょうか?
だとしたら私の#3の答えはyesということになるわけですね。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
かなり哲学や宗教に造詣が深いとお見受けする質問者様に、「お詳しい方の見解」とのご注文があるにもかかわらず、私のような素人が口出しするのは失礼かと思いますが、私はルサンチマンと悪人正機について、質問者様や#2様と、正反対の見解をもっていたので、参考までにお聞きください。
仏教には(というか多くの宗教には)自力本願と、他力本願の考えがあります。
「救いを得る」という、大きな目標にむけて、修行などで努力し、精進すべきというのが前者で、絶対存在である神(この場合は阿弥陀仏)の力にすがるべし。むしろ努力や修行・つまり人間の力で救いを得ることができるというのは絶対者たる神に対する冒涜だと考えるのが後者。
そして、親鸞の浄土真宗は「他力本願」です。
「悪人正機」は、自力で功徳をつむことのできる善人より、「自己の罪業と無力さに深い自覚を持つ」悪人の方が、阿弥陀仏の救いに近い位置にいる。ということで「他力本願」のひとつの発展形だと思います。
これはむしろ、ルターの言うところの「人は信仰によってのみ義とされる」と同じで、個人的には「キリスト教と仏教の類似点(というか、ルターと親鸞の類似点)」として興味をもっていました。
だから、私の理解では「悪人正機」はニーチェに言わせればキリスト教同様「弱者道徳」として一蹴されると思います。そもそもニーチェの哲学では、人間が救いを求めて絶対者に縋ろうとするのは、人間の弱さであり悪だとされているので「絶対他力」の浄土真宗とは相容れないと思います。
更に「原始仏教」と「日本仏教」はかなり異なっていると私は考えています。そして「日本仏教」はかなりキリスト教的である(これは私個人の勝手な分析ですのでご注意を)そして、ニーチェが影響を受けたとされる「東洋思想」は原始仏教や、道教のような考えではなかったのでしょうか。
あくまで「こういった考えもあるよ」ということです。質問者様や#2様に、不愉快な思いをさせたようでしたら、申し訳ありません。
ありがとうございます。
追加のご指摘の通り、同様の思考と捉えることもできる、ということがわかってきました。
ルターに関しても、その宗教の原点に回帰するような活動で確かに親鸞の思想に似ています。般若心経はおどろくほど簡潔な原点回帰の文言です。中世以降に宗教ってそういう時期を迎えていたのかも知れませんね。
原始仏教・日本仏教ともに私はまったくわかりません。ニーチェがどのような東洋の書物を読み、影響を受けたか、ということもちょっとわかりかねます。ただ、単純に日本の親鸞に直接影響を受けたとはちょっと考えにくいですよね。#2様推薦の「自然の復権」がどのような文脈で書かれているか楽しみです。
お時間ございましたら原始仏教や道教のどういった思想がニーチェの思想のどの部分に影響しているかなどご意見ください。
No.2
- 回答日時:
ニーチェと仏教というか、このような疑問点を「門外漢」と自称される方がなぜ気づかれるのかが興味あるところですが、確かに、こうした研究は有名ですね。
ニーチェがインドからの思想を受容していたというのも、少し詳しいニーチェ入門書などにも書いてあったと思いますし。さて、ニーチェと親鸞については、大河内了義さんが『自然の復権』(毎日新聞社、昭和60年)でまさに詳しく書かれています。これはよく古本屋で見かける本です。
ニーチェも親鸞もその思想の根本にあるのが、自然のままであれ、ということだと解することができるようです。たとえ罪深い存在であっても、そのために何も偽善ぶることはない、ということですね。つまり、「自然」(じねん)というのは、字義どおりに、「無理のない状態」であり、偽善的に自らの存在を仮面で隠すのではなく、あるがままを受け入れることで本来の自分になるべきだということです。
人間の本性を自ら暴き知るという点で、親鸞はニーチェの大先輩だと大河内了義さんは指摘されています。仏教あるいはキリスト教の掟に縛られるのではなく、宇宙・自然の法というものを自覚するところに本来の価値があると考えたところに共通点が見られるのでしょう。
本のタイトルと副題は、下記のURLでも確認してみてください。著者はニーチェ研究者として有名なので、ニーチェ関連文献の方でも名前が出てくるはずです。
参考URL:http://www.urban.ne.jp/home/josame/shinran/suise …
ありがとうございます。
なるほど、ニーチェが東洋思想の影響を受けていたことを考えれば、通ずるところがあると解釈できるのは当然ですね。大河内了義さんが研究もなされているとは知らず、大変参考になりました。「自然の復権」をチェックしよう思います。
親鸞やニーチェによって宗教というものはある意味超越されてしまったようですね。実際ニーチェ以降、宗教は世界での存在意義が薄くなって下降線をたどっている気がします。
門外漢の私が興味をもったのは、まず、ルサンチマンという語を知ったとき、ふだん自分が世間に対して感じていることそのものだと思いました。しかし自分の周りの世間はキリスト教の文化ではないのに、と疑問を感じていました。その後親鸞の解説書で悪人正機において「善」を権力者と読み替えているものがあり、ルサンチマンは日本でも宗教的に存在するのかと今回の質問にあいなりました。こう書けばよかったかも・・・。
No.1
- 回答日時:
このふたつを善悪、で括るのはそもそもの思想においてズレるのではないかと思います。
キリスト教と仏教では、「善悪」の考え方が違うからです。>ルサンティマン
ルサンティマンはよく直訳すると「怨念・嫉妬」の意味を取ります。本質的には「虚栄」の心理的機構、そのものです。あっさり身も蓋もなく言うと「負け犬の遠吠え」かもしれません。
「奴隷や抑圧された者たちが(中略)自分たちに都合の良い価値判断を貫徹するためのひとつの力への意思」(遺稿より)というのがルサンティマンで、ニーチェはユダヤの思想にもこれを当てはめている部分があります。
「弱者が虚栄の意志を持ってやたらにする遠吠え」=ルサンティマン、であって、この定義づけ自体にはそれ以上も以下もありません。
>悪人正機
親鸞言うところの悪人正機に関しては、いろいろな考え方もできると思いますが、その意は
「人は誰しも完璧な『善』で有り得ず、ゆえに自分が善を為していると思っている無自覚な『善人』よりも、己の『悪』を自覚している『悪人』にこそ正しく御心に適う機会がある」…ということだと思います。
これは善悪の根本を転換したわけではなく、人の心の在りようへの警告、に近いのではないかと。業を真っ正面から見ずに善人でいることは容易く、己の悪とは向き合わなければならない、と。
ですからこのふたつは、考え方としては違う土俵に立っているのではないでしょうか。
ありがとうございます。
定義として、ルサンチマンは心理・意思であり、悪人正機は教えだということでしょうね。親鸞に関しては価値を転倒しようなどとは考えてないってことですね。自明のことでした。
悪人正機の「善人」を権力者の側のように書いている本があったので混乱していました。そういった文脈で読み取ることも確かに可能で、権力者=善人と言ってしまった場合、悪人正機説を唱えられた人の中では価値が転倒してしまうかも・・・というくらいのものでしょうか。むしろそういった文脈で捉えることのほうが少なそうですね。
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