No.4
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王国と帝国の違いは2種類あります。
①王と帝による違い
その国の支配者が「王様」なのか「皇帝」なのかによって、王国と呼ぶか帝国と呼ぶかが変わってきます。
このとき王様と帝王には以下の違いがあります。
・王様は国家の支配権(軍事指揮権・行政統制権)を持つが祭祀宗教権は持たない
・帝王は祭祀宗教権も含めてすべての国歌支配権を持つ
ヨーロッパにおいて「皇帝」の始まりはローマ皇帝ですが、ローマは元々民主主義(元老院政)で一人の個人に権力を集中させるために「行政統制権・軍事指揮権」を一人に集める必要が生じました。ただ、この状態だと「王」にしかならず、ローマは以前いた「王」を追い出した「王様嫌いの国」だったので、自分の身分を保証するために当時終身役職だった「宗教祭祀権者」の身分も合わせて持つようにしました。
当時のローマでは、多神教で宗教祭祀も「選挙で選ばれた個人が死ぬまでその役に付く」というものだったからです。
これにより、ローマでは「軍事・行政・宗教」の3つを一人で持つ支配者を「皇帝」と呼ぶようになり、ローマ崩壊後宗教祭祀権がローマ皇帝に移ると、多くの小国が「王として認めてほしい」とローマ教皇に申し出るようになり、各国の王は「軍事指揮権・行政統制権」を「神(ローマ教皇)に認めてもらったから自分がこの国の支配者」と言うようになったのです。
中国では秦の始皇帝が、それまで儒学者が行っていた先祖祭礼を「自分で行う」ようにしました。それまでは中国には王国がたくさんありましたが、どこの国でも王の権限は「軍事・行政」だけで宗教権は儒学者が握っていたのです。
「儒学者が国家に2重権力を作りだして、国家の安定を損ねる」と考えた始皇帝によって、儒学者から自分に宗教祭祀権(先祖祭祀)を移して軍事・行政・宗教の三権を始めて一人で握ったから「始皇帝」とよばれるのです。
ローマの皇帝と中国皇帝は政治のメカニズムがちがいますが、どちらも「軍事・行政・宗教」の3権を一人で握っていることは同じなので、エンペラー=皇帝と翻訳されるようになりました。
現在、日本の天皇だけがエンペラーと訳されるのは、天皇が日本の宗教祭祀権をもっていて(大嘗祭などを執り行うのは天皇)、軍事と行政は立憲君主制で民主主義に委託しているだけだからです。日本は民主主義ですが、法律などは「天皇御璽」がないと発効できないため、理論上も「天皇は国のオーナー」であるといえます。
②帝国主義国家と王国の違い
現在の日本の天皇は「エンペラー」ではありますが「日本帝国」とはいいません。これは日本が敗戦したからでもありますが、それ以上に「植民地主義=帝国主義」という考え方があるからです。
これも起源はローマにあり、ローマは元々のイタリア半島から出て、ヨーロッパのほぼ全部と北アフリカを支配したのですが、この時に本国・ローマの属州・皇帝領に分けて統治したやり方がのちのイギリス帝国などによる植民地支配の基礎になっています。
西洋の植民地主義時代に「植民地を持つ国家」が『帝国』とよばれたので、当時、朝鮮や台湾さらに一次大戦後には南洋州も委託統治していた日本も「帝国」と呼ばれたのです。
①と②は基本的に「ローマの統治の方式」から出来た言葉ですが、①と②は関連性がないので、ごちゃまぜに理解されていて、だから「日本は敗戦後植民地などを持たないから、天皇がエンペラーなのはおかしい」という論調が出ることがあります。
帝国主義的な国家と、その国のオーナーである人物の統治権が宗教祭祀権を含むかどうかは別の話なので、イギリスは帝国と今でもいえる(カナダやオーストラリアなどはいまだにイギリス国王を元首としている)のに、イギリス王(現女王)はエンペラーとは呼ばれません。
なぜならイギリスでは宗教祭祀権をイギリス国教会が持っていて、国王が王位に就く時には「祭祀長によって戴冠される(神によって許可される)」儀式が必要だからです。
日本の天皇は、大嘗祭を自分で取り仕切ることによって、先祖神からの許可を自分でもらって天皇に践祚されるので、エンペラーなのですが、現在の日本は植民地などを持たないので帝国ではない、ということになります。
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