▲ (カント:その例証) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1. おそらくはじめは 7+5=12 という命題(判断)はまったく分析的
命題であり この命題は七と五の和という概念から矛盾律にしたがって生じる
と考えられるかも知れない。
2. しかし さらに立ち入って考察すると 七と五の和の概念が含んでいる
のは二つの数を或る一つの数へ結合するということだけで 両方の数を総括す
るこの一つの数が何であるかは その結合によってはまったく考えられていな
いことがわかる。
3. 十二という概念は 私が七と五を結合することを考えるだけですでに考
えられているのではけっしてない。だから そういう可能な和の概念を私がど
んなに分解してみても 私はその中に十二を見つけ出しはしないだろう。
4. 両方の数の一方に対応する直観 たとえば五本の指とか〔・・・〕五つ
の点といったものを助けにして この直観に与えられた五つの単位をつぎつぎ
に七という概念に付け加えることによって われわれはこれらの概念のそとに
出て行かねばならないのである。
5. したがって われわれはこの 7+5=12 という命題によって自分の
概念を現実に拡張し はじめの概念に この概念においてはまったく考えられ
ていなかった一つの新しい概念を付け加えるのである。
・・・
( I. カント:『プロレゴーメナ』§ 2 (c) 土岐邦夫・観山雪陽訳(1972))
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
6. けれども 五も七も十二も それぞれ《単位数――つまり (4)で
〈五つの単位〉と言っているそ――の 一(いち)》の積み重ねである。
7. つまりわれわれは 7+5=12 という命題によって はじめの五や七
という概念ではまったく考えられていなかった新しい十二という概念をつけ加
えたのではなく そうではなくて 単位数の扱い方を拡張しただけである。
8. そのように――単位数《一》の五つ目は五であり 七つ目は七であり 七
の五つあとは 十二だというふうに―― 取り決めただけのことである。数の
名前を決めただけである。
9. ――のではないのだろうか?
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