
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
ヘリコプターに限らず、固定翼機でも、タービンエンジンでは停止した後で再始動するにはいくつか注意するポイントがあります。
その中でも最大なものが『ホットスタート』です。
タービンエンジンは、稼働している間、コンプレッサセクションから高圧タービンセクションまでの区間は高温になります。
とりわけ、燃焼セクション後部から高圧タービンまでの部分は非常に高温になります。
タービンエンジンはその状態がないと動作を維持できません。
エンジンを停止すると、燃料の供給は立たれ、その結果タービンを回す力は発生しなくなります。
では、このときタービンは惰性で回って外からの冷風を吹き込むでしょうか。
答えはNoです。
タービンの軸には燃料ポンプや油圧ポンプ、スタータージェネレーター(始動モーター兼発電機)が常時つながっています。
これらの機械的負荷は結構きつく、タービンシャフトを素手で回すには結構な力が要ります。
だから、燃料の供給を止めるとタービン軸(高圧タービン軸)は直ぐに止まってしまいます。
その結果、熱いセクションは直ぐには冷えないという状況に置かれます。
稼働中は、燃焼器の出口温度は1000℃以上、高圧タービンのあたりでさえ900℃を越える温度です。
エンジンの排気部には温度センサが設けられていますが、高温に耐えられるセンサと言えどもそう言った位置の温度には耐えられないので、高圧タービンの後方に付けられるのが普通です。
この位置でさえ、800~900℃になります。
そう簡単には冷えないことが容易に想像していただけるでしょうか。
この温度は、排気ガス温度(EGT)、あるいは、ターボファンやヘリのターボシャフトエンジンの場合は高圧タービンと低圧タービンの間の温度ということからタービン間温度(ITT)などと呼びます。
そのようなエンジンを再始動する場合、普通はその温度が600~700℃まで下がってからかけるようにします。
なぜかと言うと、エンジンの燃焼具合を制御するには燃焼室内の温度が大事なのですが、それを直接測ることができないため、EGTやITTのセンサで測った値で代用する時、燃焼器やタービンなどが熱いままだと燃焼室内の温度を正しく想定できないのです。
その結果どうなるかと言うと、センサは冷えてるから燃料をそれなりに吹き込むけど、燃焼室の壁が熱いままなので、予想以上の燃焼が起き、排気温度が急上昇し、燃焼室や高圧タービンのブレードを溶かしてしまうのです。
このため、時間をかけてエンジン内部を冷やすのです。
どうしてもすぐに冷やしたい場合は、ドライモータリングと言って、燃料は供給せずに、始動用のモーターを回してタービンを回し、燃焼室や高圧タービンを冷やします。
しかし、先述したようにタービン軸の機械的負荷は軽くありません。
そのため、それを回すモーターは非常に強力なものとなっています。
中型・小型のヘリやビジネスジェットのタービンエンジンの場合、1分間ぐらいの短時間定格で28V1000Aぐらいの直流ブラシモーターを使います。
このような電流に耐えるモーターはとても強いブラシの押圧とします。
つまり、寿命が短いのです。
他の構造にしろ機械部品にしろ、温度の上げ下げは熱衝撃と言ってとても大きなストレスとなり、寿命を縮めます。
そこまでして急いで冷やすより自然に冷やしたい、それが運用上の常識です。
No.3
- 回答日時:
No.2 です。
ホットスタートだけが問題ではありませんが、特にタービンエンジンはいろいろな事情から扱いに気を付けなければいけません。
そのおおもとは、高温や動作領域が狭いということです。
なので、別にドクターズヘリに限らず、タービンエンジン(ターボシャフトエンジン)のヘリ全般、そして固定翼のタービンエンジン機全般に、次のようなしきたりにしています。
・止めるならずっと止める
・すぐに稼働させるならエンジンは止めない
私はプロファイルにも記したような年寄で、タービン機のエンジンと機体の開発をしてきました。
日本では飛行機に触れる機会はなかなかありませんよね。
私も東北の山奥育ちなのでそうでした。
でも乗り物が好きでいつかアメリカでそんな仕事をしていました。
パイロットの免許はありませんが、指導教官の資格を持つ仲間と一緒によく飛びました。
『飛ぶ』とは自分で操縦桿を握って操縦することです。
アメリカではそういうことが許されています。
そういう経験なしに飛行機もそれに使うエンジンも作れないでしょ。
そういう世界に興味をもったら、この国は良いですよ。
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