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供給曲線は限界費用が増加していくから右上がりということですが、それは規模の経済と矛盾してませんか?

A 回答 (1件)

いいえ、矛盾しません。

この問題を理解するカギは、「長期と短期」の違い、そして規模に関する収穫逓増(規模の経済)とは何かを理解することです。
通常の供給曲線は「短期」の供給曲線です。生産要素はその投入量が自由に選択できるとき「可変要素」といい、その投入量が固定していて、自由に選択できないとき「固定要素」という。「短期」とはすべての生産要素が「可変」ではなく、一部の生産要素が「固定」している状況をいう。逆に、生産者(企業)がすべての生産要素の投入水準を自由に選択できる状況は、「長期」です。たとえば、土地、労働、肥料等を用いて野菜を作って、収穫し、それを市場に出荷している農家(あるいは農業法人)を考えると、一定の広さの土地(用地)を地主から10年の長期契約でレンタルして野菜栽培をはじめたとすると、労働力(家族労働)や肥料は「可変」要素だが、用地は契約してしまえば、契約期間の10年間は広げることも、縮小することもできないので、「固定要素」だ。野菜への需要が増えたらどうするか?土地は「短期」的には増やせないので、肥料を増やしたり、家族労働の労働時間を増やしたり、場合によっては外部から労働者を雇い入れたりして、一定の土地を集約的に使うことで野菜収穫量を増やすしかない。これが「短期」で、野菜生産の増加とともに野菜生産の限界生産力は逓減し、限界費用は増大する。需要の増大が続くようなら、「長期」的には、さらに野菜用地を拡張し、野菜生産の「規模」を大きくすればよい。経済学的には、すべての生産要素(労働、肥料等だけでなく土地も)を2倍(3倍,...)にしたとき、生産量が2倍(3倍,...)以上になれば、規模についての収穫逓増、以下なら収穫逓減という。規模についての収穫逓増が起こるとき、規模の経済がはたらくという。そのばあいには、長期的には限界費用は低減する。

よりフォーマルには生産物の量をYとし、労働等の可変要素をLで、土地とか資本設備等の固定要素をKであらわし、生産関数をF(L,K)で表すと
Y = F(L,K)
となる。わかりやすくするため生産関数がコブ=ダグラス型だったとすると
Y=F(L,K)=L^aK^b
と書ける。aとbは1以下の正の定数。短期的にはKは一定なので、Lの限界生産性は

∂Y/∂L=aK^b/(L^(1-a))

Lの増加とともに減少することがわかるでしょう。したがって、Y生産の限界費用も生産増加とともに増加するのです。しかし、長期的にはLもKも増加できるのでそのときはどうなるか?いま、LもKも2倍に、つまり2L,2Kにしてみましょう。すると

F(2L,2K)=(2L)^a(2K)^b=2^(a+b)L^aK^b=2^(a+b)・F(L,K)

となる。生産物Yも2^(a+b)倍、つまりa+b>1ならば、2倍以上に増えるし、a+b<1ならば、2倍以下にしかならない。よってコブ=ダグラス型の生産関数がa+b>1を満たすならば、収穫逓増で、規模の経済を示すことになる。
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