No.5ベストアンサー
- 回答日時:
宇宙の膨張を加味して地平線までの距離を計算することはできます。
ロバートソン・ウォーカー計量ds^2 = -c^2 dt^2 + a^2(t)(dr^2/(1-kr^2) + dΩ^2 )
のもとではアインシュタイン方程式は
(da/dt)^2 +ka^2 = 8πGρ(t)a^2/3
になります(前の回答のτをtに変更しています)。標準モデルでは宇宙の初期では輻射のエネルギーで満たされており、かつ曲率は無視できるほど小さいことが知られています。これらの条件により上の方程式を解くと
a∝t^(1/2)
光はds=0となる経路に沿って進むので座標距離の線素をdχ(=√(dr^2/(1-kr^2) + dΩ^2))とすると
dχ = cdt/a(t)
これを積分して宇宙開闢の時刻から現在の時刻t0までに光が到達する距離を求めると
χ = c∫(0~t0)dt/a(t) = 2c(t0)^(1/2)
従って地平線までの距離は
d = a(t0)χ = 2c t0
となって宇宙の年齢t0に比例することになります。つまり地平線までの距離=光速×年齢というのはオーダー的には正しいが前の回答でも述べた様にχが発散すれば地平線がなくなるのでa(t)の振る舞いの議論をすべきです。
インフレーション宇宙論によれば宇宙は地平線を越えて一様であるとされています。すなわち地平線より先は「宇宙の外側」などではなく地平線のこちら側と同じような宇宙が続いていることになります。簡単な解説は
佐藤勝彦;宇宙の誕生とインフレーション、科学1985年10月号p.596(岩波書店)
一般相対論は空間の曲率が正、0、負のいずれの宇宙も許容します。数学的には3次元の定曲率空間は次の様に分類されます。
曲率 空間 個数 例
正 閉 無限個 3次元球面
0 開 8個 ユークリッド空間
0 閉 10個 トーラス
負 開 無限個 ロバチェフスキー空間
負 閉 無限個 レーベルモデル
一般相対論以前はもちろん空間は平坦であると考えられていました。したがって一般相対論は宇宙のトポロジーに何の制約も与えないというよりもトポロジーの可能性を18個から無限個に拡げたと言った方が適切かもしれません。もし宇宙が多重連結空間であるとすると、ある天体の向こうに同じ天体が見えることになります。そのような観測が最近行われ、宇宙背景輻射について同じパターンは見いだされなかったことからCornishらは宇宙は24Gpc(ギガパーセク)より大きいと結論しています。下のサイトはAIPなので信頼できるかと思います。
参考URL:http://www.aip.org/pnu/2004/split/685-1.html
ご回答ありがとうございます。
丁寧に説明していただいたことが伝わりますが、
私の能力が至らないばかりに理解することが大変なので、基礎から再度、しっかり学習しなおさなければならないと痛感させられました。
曲率0の定曲率空間で近似されることにより(No2の1.の)直径2c t0を導けるようにしたいと思います。
当面は、一般相対論から帰結されるビックバンについて理解するだけでも大変だと思いますが、インフレーション宇宙論まで考察することで更に理解が深まりそうに思えました。
一般相対論で受け入れることができるトポロジーが広範(任意の定曲率空間を真に含む)であることを理解しておきたいと思います。
また、No2の2の意味での宇宙の大きさも求めることができる可能性があることについての話題は面白かったです。
No.4
- 回答日時:
まず、我々が見ている太陽は約8分前の太陽だという事を理解する必要があります。
これは、太陽から発せられた光は約8分かかって地球まで届くからです。
この時、空間が膨張しているするとと、光を受けたときの「太陽と地球の距離」は、8光分よりも長くなっています。
ここまでのポイントは次の二つです。
1.遠くを見るということは昔を見るということ。
2.その距離は、光の通った経路の計量を計算していること。
ここまでは、理解がしやすいと思いますが、ここから一気に、スケール大きくします。
宇宙の果て、例えば100億光年先を見ると、そこは100億年前に起こった事が見えています。150億光年先までしか見えないとすると、それより昔は何も無かったということです。
その意味で、我々の見ている宇宙の半径は常に、「年齢×光年」であり、空間の膨張を加味していない事が分かると思います。
#これが、No3 のいう Particle Horizon ですね。
逆に宇宙が閉じた空間で、No3 さんの方がおっしゃるように実は太陽系のある場所を遠くに観測しているかもしれませんが、実際はかなり過去の太陽系であり、それが太陽系であると認識するのはかなり困難でもあるため、現在は宇宙の半径というと、観測している限界点という意味の宇宙の半径という意味で言われていると思います。
ご回答ありがとうございます。
この問題については、一般相対論の枠組みで解決を図りたいと考えています。
そこで、まず、問題の整理からしていこうと考えましたが、
(一般相対論の範囲であることから)時間と空間を独立に考えないようにすべきだと思っています。
ですから、本来この問題は、宇宙年齢と(No2の1.の)
宇宙の大きさを求めることを切り離して考えるものでなく、一緒に扱うべき問題とも考えています。
そこで、より普遍的なものとして光の経路を説明する計量を用いるものと考えています。光の経路が時空の構造と対応しているものと考えています。というより、(No2の1.の)
宇宙の時空的(=(等価原理より)幾何学的にもなる)構造は光の経路によって決めるべきとしているのが、相対論の光速不変の原理に当たるものと理解しています。光の経路を説明する計量については、No3より膨張を加味したロバートソン・ウォルカー計量というものがあることを知りました。
問題の最終段階に入ったときに近時を計算するために
時間と空間を独立に考える必要がでてきたときなど、
そのようなときに限り独立として考えたいと思っています。
とかなり偉そうなことを書いてしまいましたが、
私一人では、中々解決できそうにありません。
実際に、問題を定式化して、詳細に渡り計量を計算していくまで、まだ困難がありそうに思っています。
これからもご教授の程よろしくお願します。
No.3
- 回答日時:
宇宙が平坦、または負曲率の場合、幾何学的半径が無現大になると言うのは古い考え方です。
一般相対論は大局的なトポロジーには何の制約も与えず、曲率0または負の場合にも有限宇宙になる可能性が指摘されています。平坦な宇宙でも鏡に写っている鏡を見るような感じ(つまり自分の後ろ姿が見える)の有限な宇宙が可能です。また実際に有限であることも観測から示唆されています。(http://arxiv.org/abs/astro-ph/0412569 参照)平易な入門書としては前田恵一「宇宙のトポロジー」(岩波書店)
また総合報告として
J.Levin, Phys.Rep., 251(2002)365
光速が有限であるために観測できる範囲が決まってくることを'Particle Horizon'と呼んでいます。ビッグバン特異点までさかのぼれば宇宙半径は0まで縮むので現在どれほど空間的に離れている点からでも信号が来るように思われるかもしれません。しかし宇宙のスケール因子(宇宙の膨張を表わす)をa(τ)としたとき
t=∫1/a(τ)dτ
が発散しなければParticle Horizonが存在することが次の様にして示されます。平坦なロバートソン・ウォルカー計量
ds^2 = -c^2dτ^2 + a^2(τ)(dx^2 + dy^2 + dz^2)
をとりt→τという変数変換を行うと
ds^2 = a^2(τ)(-c^2dt^2 + dx^2 + dy^2 + dz^2)
という共形平坦な計量になるので、tがτ→0 で収束すればある範囲より外側はヌル曲線で結べません(ヌル曲線というのは光が重力の影響を受けることも考慮に入れた光の経路です)。アインシュタインの重力の方程式の解はダストにたいしa∝τ^(2/3)輻射にたいしa∝τ^(1/2)なのでtは収束しParticle Horizonが存在することになります。ご指摘の様に宇宙の半径が年齢×光速というのは議論が粗すぎ、本当はこのような議論をすべきです。
Particle Horizonについては
S.W.Hawking, G.F.R.Ellis, "The large scale structure of space-time" (Cambridge University Press)
R.Wald,"General Relativity" (Chicago U.P.)
などを御覧下さい。
ご回答ありがとうございます。
さすがに、私にとっては、理解するのに難しいご回答ですが、大筋の考え方だけでも触れることができたと思い大変有難く思っています。
> 一般相対論は大局的なトポロジーには何の制約も与えず
この部分の"大局的な"の意味は、No2様の2.の幾何学的構造の宇宙について言っておられると思いますが、
これは、(No2様の2.の意味の)宇宙のトポロジーの如何によらず、一般相対論を構築することが可能であるという意味なのか?それとも一般相対論から示される現象だけでは、
"大局的なトポロジー"を確認あるいは決定することができないという意味なのかが疑問に思いました。
(おそらくは、前者の意味だと思います。ご回答の後の部分(また実際・・・示唆されています)を読んでいてもそう思います。)
このような疑問をもった背景は、観測によって、(No2様の2.の意味の)宇宙の構造を調べることが可能か否かを疑問に思ったことにあります。
折をみて、参照URLや入門書なども用いて調べたいと思います。
スケール因子を用いて、ロバートソン・ウォルカー計量
(初めて聞く言葉ばかりです (^^;))を計算して・・・
Particle Horizonが存在することを示す考え方は、
まだ、正確に理解していませんが、数学的にきちんとした考え方に思えました。
そこで、一つ疑問に思いましたが、ロバートソン・ウォルカー計量を変数変換することで、
スケール因子×アインシュタイン計量になることから
(No2様の1.の意味の)観測可能な範囲の宇宙の半径を計算する際に、やはり宇宙年齢を予め求める必要があるのか、
それとも、宇宙年齢を知らなくても個別に計算できるかどうかが疑問に思いました。
No.2
- 回答日時:
>空間の膨張を加味しても成り立つことなのでしょうか?
ローカルには成り立ちますが、グローバルには成り立ちません。
http://homepage3.nifty.com/iromono/hardsf/warp.h …
宇宙半径には2つ意味があって、
1.我々と関係を持つことのできる範囲(観測可能な範囲)
2.幾何学的な半径
閉じた宇宙の場合、2は有限の値として意味を持ちますが、
平坦な・開いた宇宙の場合には、宇宙が生まれたときから
無限大の値をとり、理論的に意味がありません。
ご回答ありがとうございます。
> 宇宙半径には2つ意味があって、
> 1.我々と関係を持つことのできる範囲(観測可能な範囲)
> 2.幾何学的な半径
ここで問題にしたいことは、とりあえずは、
1.の観測可能な範囲だけにしておきたいと思います
グローバルに成り立たなかったら、やはり、もっと精密な
求め方が必要になってくると思いました。
回答の後の質問ばかりで申し訳ありませんが、
また、1.の意味での半径を求めることとは別に
宇宙が閉じている(曲率>0)か平坦(曲率=0)か開いている
(曲率<0)かは光の進み方を観測するなどの方法で
確認されているのでしょうか?
それとも、1.の意味で宇宙が膨張していることと
(2.の意味の)宇宙の曲率に因果関係はないとすると
光の進み方から2.の意味での曲率を調べることは不可能なのでしょうか?
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