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「慇懃」と聞くと「慇懃無礼」を思い浮かべてしまうのですが、
本来の「丁寧」という意味で良い意味で使うのは一般的なのでしょうか?

A 回答 (8件)

 古来の漢文では「慇懃を通(つう)ず」(「漢書・司馬相如伝」)とあります。


これは、もともとは痛む時の苦しい音声ながら、それに懃(きん)という心から勤めるという意味と合わさることによって、男女が思い慕い情を通じ合うの意味となったのでしょう。和語の「根(ね)も凝(こ)ろ」=懇(ねんご)ろも、相手に対してまめやかで仲睦まじい様と重なるのでしょう。

 1800年代前半に上梓されたと目される「俚言集覧」には、「慇懃とはネンゴロなるかたにいへるを今は崇めうやまふ事にのみいへり」とあり、もはや男女の仲はもちろん、人間同士の親密な様や手厚い様から、神仏や畏(かしこ)どころに対する敬意や、敬うべき相手への礼儀に関わる意味が濃くなっていったようです。
 ですから、「慇懃尽(いんぎんずく)」というもっぱら丁寧な態度で接したり、そのような慇懃な礼を尽くす折に着用することから「裃(かみしも)」を「慇懃袋(いんぎんぶくろ)」と呼んだりもしたようです。

 そこから、相手の慇懃尽の態度に応じて、「ああ申し申し。某に向うて御慇懃な。お手を上げさせられい」(狂言・素袍落)となり、「これは、これは、ご慇懃に」といった、相手の丁重を謝し謙(へりくだ)るあいさつ語もあったようです。

 このような余りに謙りすぎた態度について、「卑下のあまりに過たるはかへつて慇懃尾篭になる也」(「細川幽斎聞書」)と、その余りに形式に走り過ぎた丁重さはむしろ武士としては思慮が浅く無作法であり見苦しいのだと喝破しているのでしょう。この「尾篭(びろう)」は「痴(おこ)」に音を充てて浅慮を意味する言葉なのでしょう。

 この辺が更に巷間においても、またそもそもそのような慇懃な態度そのものもまた、形式にこだわり過ぎたり、またあからさまに相手の謙りを望んだりする場合には、むしろ「慇懃無礼」として、その見かけだけの丁重さの裏にある尊大さを突く意味さえ生まれてきたのでしょう。

 以上から、慇懃を、男女の懇ろな関係に、またその後の慇懃尽の態度において、小説などではまだ表わされるかもしれませんが、少なくとも今日一般には、もはや「慇懃無礼」以外では使われることはないものと思われます。

この回答への補足

私が小説で見た「慇懃」という形容詞は、助教授の教授に対する態度や弁護士の証人候補に対する態度について使われており、男女関係に関するものではなかったのですが・・・
漢文や古文はまた違う意味だったのではないでしょうか。

補足日時:2005/07/02 21:48
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慇懃という語が瀕死の状態なのは、当用漢字とかいう理不尽な縛りのせい以外に何があるのでしょう。



あっ。一つあった。

この回答への補足

当用漢字でなくなった単語でも平仮名で使われ続けるものってありますよね。
例えば「改竄」とか。新聞や公的書類では「改ざん」として使い続けられていると思います。だってそれ以外に言葉がないから・・・
だから当用漢字云々は全く影響はないとは思いますが、直接の影響ではないような気がします。
そもそも「慇懃無礼」は今でも使われてますし。

補足日時:2005/07/02 13:45
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古い小説を読んだりすると「慇懃な態度で」「慇懃に」など、良い意味で出てきます。



たしかに日常会話では使わない言い回しですが、私は「慇懃」にはプラスのイメージを持ちます。

「慇懃無礼」と、「無礼」が付いて初めてマイナスイメージ。

いずれにしてもちょっと古風な感じはします。
でも、使ってもいいと思いますけど・・・。
ちょっと硬い感じなので、話し言葉としてより書き言葉としてのほうが合うのかな。

この回答への補足

そうなんです、「白い巨塔」を読んでいて「慇懃」という言葉が多用されていて、私最初は「いやみっぽく」ぐらいの意味でとっていたのですが、辻褄が合わなくなってきたので辞書を引いたら「丁寧」という意味だった(笑)

「慇懃」と言う言葉が廃れたのは、現代社会では慇懃な関係や慇懃さを良しとする価値観がなくなってきたからかもしれませんね。慇懃というのはビジネスライクな印象を持ちます。上司部下とも「さん」付けで呼んだり、親をファーストネームで呼んだり、一流ホテルでも主従的な礼儀より「アットホームなウェルカムホスピタリティ」が歓迎されたりする時代ですから。

そういう意味ではやはり「慇懃」は「慇懃」で他にそのままぴったりと取って代わる言葉はないのかなという気もします。
でも誤解されやすい言葉なんで、いずれにせよ話し言葉で使うつもりはないですが。

補足日時:2005/07/01 12:46
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「慇懃」という言葉が使われるのは現在では一般的ではないでしょうが,もし使われたら「丁寧」という意味だと思います。

(「召使が慇懃な態度で出迎えた」など・・・古語または死語ですねぇ)
「慇懃」が丁寧なことを意味するからこそ「慇懃無礼」が意味をなすのだと思います。丁寧なことは,一般的には(乱暴よりも)「良い」ことです。
が,かくいう私も「慇懃無礼」という言葉のほうを(「慇懃」単独よりも)先に聞き覚えたので質問者さんと同様に思い浮かべます。
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こんばんは


言葉から受け取るイメージは時代とともに変わるのだろうと思います。
わたしは50代ですが、慇懃という言葉を単独で使うことはありません。
なぜかというと、本来のイメージと離れ「慇懃無礼」の用法が頭に染み付いていますし、また、受け取る方もそうではないだろうかと考えてしまうからです。

よい意味で使いたいときには他の言葉があるわけですから、ことさら「慇懃」を用いる必要を感じませんし、一方で皮肉と誤解されるようなリスクを避けたいと思います。
そのようなわけで、良い意味で使うことは一般的ではないと思います。
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よく使うかと言えば、(世代にもよるが)Noでしょう。



某有名辞典編集部に別件で問い合わせたことがあるのですが、

「慇懃」は現在では専ら「慇懃無礼」などにしか見られなくなった言葉ですが……

という内容が返信にありました。

私自身の経験のおいて会話ではご年配の方に
「慇懃なご挨拶をいただき、ありがとうございます。」
という言葉を生まれて此の方ただ一度きり聞いただけです。自分の祖父母からも聞いたことがありません。

使うか使わないかは各世代、各個人によるでしょう。

>「慇懃」と聞くと「慇懃無礼」を思い浮かべてしまうのですが、
世代にもよるが、いたって自然な反応と言えます。
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はい

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一般的です。

良い意味、と言うよりはニュートラルな言葉だと思いますが。とにかく悪い意味はありません。
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