よく考え込んでいるのは、痛さ(主に肉体的な苦痛)は上限がありますか。
現実には、ある人に相当な痛さを与えると、その人が気絶になります。また、どんな手段(物理的、化学的など)を利用しても、実際に発生できる痛さも上限があります。
仮にある生物はどんな痛さを受けても気絶たりしません。また、科学の進展で新しい方法(?)で肉体にはより痛いことが与えられます。では、与える痛さはどんどん強くなり、限界がありますか。
例えば寒さならば、いくら寒くなっても、限界がありますね。絶対零度より寒い温度は存在しません。
では痛さはそのような限界がありますか。それとも、無限な痛さ(論理的に)が存在しますか。
そもそも、痛さの本質は何でしょうか。神経に流している電流の強さ?
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
#3です。
回答をお読み頂き、ありがとうございます。
>私の仕事はコンピュータ関連で、癖として「限界」のことをよく考え込んでいます。しかし生物分野にはまったく知識がないので、質問がややこしいかもしれませんがすみません。
はい、承知致しました。
なるほど、コンピュータがご専門なんですか。それで、強靭な処理能力を持ち、ストレスにビクともしないスーパー中枢系もありということなんですね。
ですが、ご質問を整理致しますと、やはり基本的には、我々は「無限という現象」を認識することはできないということになるのではないかと思います。何故ならば、如何なるシステムであろうとも無限という現象を処理し、それに判断を下すことはできないからです。従いまして、「無限の痛み」に対応して反応をしたり、それを認知したりすることは、原理的にできないということになります。
>仮にある生物の神経伝達能力た異常に高い(この生物の神経物質は特別のものかも)、一秒間により多くの進行信号(さらに無限の信号)を伝達できるなら。
ですから、これはスーパー・コンピュータでもウルトラ・コンピュータでも不可能ですよね。
無限の情報を処理するためには、CPUは無限の発振数を獲得しなければなりません。無限の信号を伝達するためには、無限の伝達速度でなければなりませんが、現時点で情報伝達速度の上限は秒速30万kmと聞いています。伝達速度に限界があるのですから、無限の信号を送るためには無限の並列処理が必要ということになります。
従いまして、如何なるモデルを用いましても、情報処理そのものに限界というものがある限り、基本的にはそこが「痛みの上限」ということになると思います。
さて、感覚情報の入り口であります大脳皮質「感覚知覚野」では、入力情報に対する「知覚作業」が行われます。「知覚作業」といいますのは、バラバラに送られてきた情報を一塊の対象に区切ってそれを「記号化」するということです。そして、「感覚連合野」では、このようにして一塊に対象化された情報に対して「認知処理」を行います。認知が成されることによって、我々は初めて「一塊の痛み」を「ひとつの苦痛」として認識することが可能になります。
ここで申し上げたいことは、情報といいますのは知覚処理によって一塊に対象化されなければ認知することはできないということです。つまり、如何に高速で大量の情報伝達が可能であったとしましても、何処かでそれを「一区切り」しない限り何ひとつの判断も下すことができないということですね。
逆に言いますならば、何らかの判断が下された時点でそこが一区切りということにもなります。これがどういうことかと申しますと、反射系の方ではその処理判断が極めて単純明快でありまして、中継中枢に入力された情報が生得的に定められた閾値を超えるならば決められた通りの反応が発生します。ですから、それ以下では何も起こりませんし、仮にどんなに強い刺激であろうともそれ以上の反応が発生することはありません。つまり、判断を下し、反応を発生させるために、情報は一定のところで全く無条件に区切られてしまうということですね。
>よく理解できないのは、痛みの強さは結局一秒間に信号の発生する回数に決まられるんですね。
そうですね。
ただいまご説明致しました通り、直列信号という最も単純なモデルを用いますならば、情報の対象化は単位時間内で行われるということになります。但し、実際の神経伝達における「単位時間」といいますのは、実はたいへん複雑な解釈が必要でありまして、私も勉強不足できちんと説明することもできませんので、ここはあまり突っ込まないで下さい。何れにしましても、これで情報は区切られ、対象化されます。
>一秒間3回発信するなら、この生物は3単位の痛みを感じるとしたら、じゃ一秒間5回発信なら5単位の痛み、
はい、その通りです。
>10回発信なら10単位の痛み
ではここで、入力情報を「5回発信」で一度区切ったらどうなるでしょうか。その場合は10の痛みを感じたのではなく、5の痛みを二度受け取ったということになります。情報を区切らなければならないのは、判断を下し、結論を出すためです。
>連続で一秒間で無限数に発信したらどうなるんですか。それは「無限の痛み」ですか。
ですから、そうはなりませんよね。
無限の痛みに対して判断を下すということは絶対にできません。何故ならば、無限の情報が送られてくるのであるならば、そのプログラムは無限の入力待ち状態になってしまうからです。結論を出すことは永遠にできません。
最初に申し上げました通り、如何なるシステムであろうとも、無限という現象を処理することはできません。従いまして、我々は無限の痛みを認知することはできないということになります。
このように、痛みを苦痛として認知するためには、例え無限の情報であろうとも、それは何処かで区切られなければなりません。ですから、無限の痛みというものはどうしても実現し得ないわけなのですが、ですが、もし仮に無限の情報というものが送られてくるとしますならば、我々はそれに対して永遠に反応を繰り返すことになります。
どうしてでしょうか。
「三回ぶたれたのだから、ボクは30の痛みを味わった」
子供の喧嘩でしたらこのような主張も通るかも知れません。ですが、飽くまで生物に関しましては、このような上限なしの積算はというものは存在しません。
先ほど挙げました「閾値」といいますのは、反射系だけに限らず、神経系全体を始め、内分泌ホルモン、遺伝情報、免疫系など、生体における全ての情報伝達に適応される概念なんです。この閾値があるために、単なる「無限積算」ではなく、生物には「脈動」というものが実現します。脈動がないということは、例えば息を吸うならば永遠に吸い続け、吐くことはないということです。ですから、脈動がなければ呼吸も心拍もありません。「一区切りにされて繰り返される現象」、この脈動こそが生命現象の全てです。ですから、生傷が増えるなどの物理的なダメージは別ですが、脳内で痛みが無限に積算されてゆくということは決してないというわけなんです。
ちょっと余計なことまで書いてしまいましたが、このように、無限の痛みというものはありませんが、無限の情報に対しましては永遠の脈動が繰り返されるわけです。ですから、そのシステムが決して破壊されることなく、絶対に死なないということでありますならば、「永遠の苦痛」というのは、もしかしたらあり得るのではないかと思います。
気絶できない、死ぬことも許されない、ちょっととんでもない話ですよね。
返事が遅れて申し訳ございません。
大変詳しくご説明、本当にありがとうございます。「限界」のことに突っ込むと、面白いが難しいですね。
しかしコンピュータのことで説明してくださって、私はよく理解しました。そういえば、コンピュータだって、無限な処理もできないわけだ。この点はなぜ最初は気づきなかっただろう(笑)
無限なら、結局現実では「何処かで区切られなければなりません。」とおっしゃいました。本当にそうですね。とても分かりやすい説明です。
>気絶できない、死ぬことも許されない、ちょっととんでもない話ですよね。
「幽遊白書」に飛影は駆のにあげたある「プレゼント」のことを思い出しました。
さいわい私たちの現実社会にもこんなものはないね~
いろいろ教えていただき、ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
こんにちは。
「痛み」といいますのは、主に痛覚系から入力を受けることにより、如何なる動物においても「嫌悪刺激」と判定される、生得的に定められた「無条件刺激」です。
遺伝子の中にプログラムされた生得的な処理判断ですので、抹消神経からこのような強い信号の入力を受けますと、中継中枢は大脳皮質での「知覚、・認知処理」の結果を待たずに、即座に運動神経系に対して回避行動の命令を下します。このような反応を「反射」といい、ほとんどのものが「脊髄反射」に属します。
このように、「痛み」といいますのは動物が危険を回避するために必ずや嫌悪刺激、つまり不利益と判定されなければならない強い刺激をいいます。ですが、本来「痛み」とはこのように定義されるものなのですが、日常的には、このような反応が大脳皮質で知覚され、認知されることによって意識に上ったものを我々は「痛み」と呼んでいます。このため、生得的に定められた基準に従って無条件に処理されなければならない刺激であるにも拘わらず、そのときの状況や個人差といったものによって認知処理の結果にばらつきが現れます。これが、痛みに対する「感じ方の違い」ですね。ですから、このようなものに対して上限を決めるというのはあまり意味のあることではありません。では、「痛みの上限」というのはいったいどのようにして決まるのでしょうか。
「痛み」というのは与えられた刺激に基づく神経系の情報処理です。ですから、「痛みの上限」というのは神経系における「情報処理能力の限界」ということになります。そして、これには抹消神経系の「情報伝達能力の限界」と中枢神経系の「情報処理能力の限界」、このふたつが考えられます。
感覚神経が痛みという刺激を伝達する場合、情報は「痛みの場所」と「痛みの大きさ」に分けられます。
「痛みの場所」といいますのは、身体のどの部分の痛覚がそれを受容したかという情報ですよね。これに対しまして、「痛みの大きさ」というのは伝達する神経細胞の「発火頻度」によって表されます。神経伝達といいますのは「神経インパルス」と呼ばれる「0,1信号」によって行われるわけですから、刺激が強ければ強いほど信号の発生する回数が多いということですね。ですから、一秒間に幾つの信号を送れるかというのが神経伝達能力の限界でありますから、どんなに強い刺激を与えたとしましても、それを超える情報を送ることはできないということになります。
同様に、中枢神経系にも処理能力に限界があります。中枢系では入力に対する大脳皮質の知覚・認知処理だけではなく、神経伝達物質の放出、自律神経系の活性化、ホルモンの分泌など、緊急事態に迅速な対処を行うために大脳辺縁系や生命中枢などがいっせいに働かなければなりません。このような防護措置を「ストレス反応」といいます。
短期間のうちに極めて強い信号が入力されることによってこのような情報処理が限界に達しますと、中枢神経は自らを保護するために、やむを得ず入力の遮断を行います。そして、最も手っ取り早く最終的な遮断の手段が「気絶」ということですね。
ですから、例えこの世のものとは思えないほどの強い刺激を作って与えたとしましても、結局、神経系には処理能力に限界というものがありますし、仮にその動物から気絶という防御機構を取り上げたところで神経系がオーバー・フロウの状態を迎えてしまうのでは、結果的にはたいした違いは起こらないのではないかと思います。
因みにオーバー・フロウといいますのは、神経細胞の活動に必要なエネルギーや伝達化学物質、イオンなどが底を付いてしまったり、逆に暴走をしてしまったり、あるいは疲労物質や発熱によって細胞体が破壊されるなどして、神経系が機能しなくなってしまう状態を指します。ですから、気絶した方が安全なんですね。
この回答への補足
とても論理的なご回答、本質に迫り、本当に大変参考になりました。
ご回答によって、苦痛は実は不利益判定、とこの判定にたいする知覚という二つの「層」からなるものと気づきました。
不利益の判定上の痛みの強さは、ある時間内の「信号の発生する回数」ですね。
「一秒間に幾つの信号を送れるかというのが神経伝達能力の限界でありますから、どんなに強い刺激を与えたとしましても、それを超える情報を送ることはできないということになります。
」とおっしゃいました。
恐れ入りますが、強いて考えてみますと、仮にある生物の神経伝達能力た異常に高い(この生物の神経物質は特別のものかも)、一秒間により多くの進行信号(さらに無限の信号)を伝達できるなら。。。。。。
一方で、「オーバー・フロウといいますのは。。。細胞体が破壊されるなどして。。。」とおっしゃいました。
では、かりにこの生物の細胞体も異常に頑丈で、より強い苦痛を受けても破壊されません。
つまり論理上に特殊な肉体であるために
(1)神経伝達能力がより高く、一秒により多くの信号を伝達できる
(2)細胞体が絶対破壊されない
という二つの前提をすると、結局この生物は無限に近い痛みが感じられるでしょうか。
よく理解できないのは、痛みの強さは結局一秒間に信号の発生する回数に決まられるんですね。一秒間3回発信するなら、この生物は3単位の痛みを感じるとしたら、じゃ一秒間5回発信なら5単位の痛み、10回発信なら10単位の痛み......連続で一秒間で無限数に発信したらどうなるんですか。それは「無限の痛み」ですか。(現実の生物の神経細胞はできるかどうかをさて置いて、論理上ある特殊な物質からなる神経細胞を前提とする)
私の仕事はコンピュータ関連で、癖として「限界」のことをよく考え込んでいます。しかし生物分野にはまったく知識がないので、質問がややこしいかもしれませんがすみません。
No.2
- 回答日時:
「痛み」っていうのは主観的な感覚であり、客観化は難しいのではないでしょうか?
例に挙げられている「寒さ」も実のところ「寒がり」「暑がり」の人がいるように主観的には個人差があります
ただし「寒さ」の場合は客観的に「温度」というモノサシで計ることが出来ます。
「痛さ」の場合もどのような刺激に対してどの程度の感覚の強さを発揮するか、言ってみれば殴られたときにどのくらいの痛さをして認識するかは個人差があります。
その「痛さ」を客観的に計るモノサシは存在していません
ですのでご質問の痛さの限界は、人間(生き物)がどこまで「痛さ」を感じる事が出来るか、という感覚の認識という問題になろうかと思います
ご意見ありがとうございます。
私は生物専攻ではないのでこの分野に自信を持っていませんが、いくら主観的な認識でも、結局脳の中の何かの化学的な反応という客観的なことだと漠然と思っております。
外から見ると、ある人の痛さは計ることは不可能かもしれませんが、脳の中身を追求すれば、なんとか計算できるのではないかと考えています。
もちろん脳は極めて複雑で、その「計算」方法は現在の科学レベルではさすがに無理ですね。
No.1
- 回答日時:
カール・ヒルティの本だったと思いますが、
「どんな苦痛でも、少しも罪がともなっていなければ耐えられるものである。」 と書いてありました。
・・・わたしは、「本当かな?」と疑問に思いましたけれど。
日本プロ野球の連続出場記録をつくった、鉄人の衣笠祥雄選手が、
「怪我があるとき、痛いのは自分には少しも関係ない。どんな痛みでもがまんしてプレーできるから。その怪我をした部分が動くかどうかだけが問題だ。」
と言っていたのを覚えています。
ありがとうございます。
痛みと罪の関係や私も個人的にも認めません。
ちなみに衣笠祥雄選手の言葉「その怪我をした部分が動くかどうかだけが問題だ。」はなんかかっこいい
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