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「因果関係の錯誤」の論点についての質問です。
犯罪事実に「因果関係の経過」は含まれるのでしょうか?
犯罪事実とは、「特定の構成要件に該当する客観的事実」なのですから、「実行行為」、「構成要件的結果」、およびそれらの「因果関係」からなるはずです。そして、これらを認識(表象)することが「構成要件的故意」なはずです。
そうすると、因果の経路=因果関係の経過は、「犯罪事実」には含まれないはずです(因果関係は、含まれるが、因果の経路は含まれない)。
行為者の認識(表象)の対象は、あくまで「犯罪事実」ですから、因果関係の経過の錯誤=因果関係の錯誤は、問題にならないはずです。
そもそも、客観面であるところの犯罪事実に因果の経路は含まれてないわけですから。
しかし、因果関係の錯誤という論点が存在します。これはどういうことなのでしょうか。
A 回答 (6件)
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No.6
- 回答日時:
観念的競合については、刑法54条1項「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
」併合罪については、46条但書「死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。」
との規定がありますので、量刑の最も重い「殺人罪」を構成すれば、他の刑罰を科すことができなくなります。
未遂や過失致死の成立を検討(択一的、選択的訴因として)する意義は十分にありますが、最も重い刑罰の成立を検討する意味が、ここにあるのです。
また、#3において説示した3つの説は、他の説との違いを際立たせた『典型』なので、docbrownさんの解釈もありえると思います。
素人のアドバイスです、、、
視野狭窄にならないよう。。。
No.5
- 回答日時:
「因果関係の錯誤」は理論であり、そもそも因果関係の存否を論ずる概念で、構成要件である因果関係(客観的事実)を示すものではありません。
例として(「甲がAを絞殺しようと首を絞めた。ぐったりしたので発覚を恐れ、海岸の砂山へ放置。Aは砂を吸引、窒息し死亡した。」)の場合、
・殺人未遂と過失傷害致死の観念的競合
・殺人未遂と過失傷害致死の併合罪
・殺人未遂
・殺人
が考えることができ、ここでの論点は、その行為を1個と見るか、2つと見るかということです。
少なくとも、着手があれば殺人未遂が成立するのは確実なので、その行為と結果との間に因果関係が認められるかどうか、つまり結果と罰の均衡を図るわけですが、逆に”殺人罪が成立しない場合もありうる”ということになります。(刑事訴訟法256条5項では、訴因を択一的、予備的に記載できますので、『因果関係の錯誤』が必要なのではないでしょうか。)
判例では、docbrownさんお考えのとおり、概括的故意(ウエーバーによる)を認め、殺人罪が成立しています。
No.4
- 回答日時:
刑法の論点と、刑事訴訟法との論点が入り乱れているように思います。
>犯罪事実に「因果関係の経過」は含まれるのでしょうか?
とのことですが、刑事訴訟法においては、犯罪事実に該当する概念として、「公訴事実」というものがあり、それは、「訴因(適用条項)」とも関係します。
「訴因」は『狭義の公訴事実』とも表現されていて、刑法の「構成要件」に近いものです。狭義の公訴事実の内容は、適用条文に該当する事実のことです。
「構成要件」,「狭義の公訴事実」、いずれにせよ、『何がその罪を構成するものか』との判断になりますので、責任論ではなく、構成要件該当性の論点になるのです。
No.3
- 回答日時:
「甲がピストルを用いて、Aを射殺した。
」この場合は、甲の「行為」「故意」「因果関係」は明らかです。
・「Aと思ったら、Bだった」(客体の錯誤)
・「甲がピストルを発砲したがAに弾は当たらず、Bに当たり死亡した。」(方法の錯誤)
・「甲がAに対してピストルを発砲したが、弾はそれた。しかし、馬が暴れて落馬し、Aは死亡した。」(因果関係の錯誤)
殺人罪の構成要件として、「殺そう」との意思が必要です。ここで問題となるのが、具体的事実の錯誤(因果関係の錯誤)です。
『具体的符号説』によると、それぞれ殺人罪は成立しない。
『動機説』によると、因果関係の錯誤のみ成立する。
『法定的符号説』だと、全て成立することとなる。
通説・判例は法定的符号説の見解をとっており、方法の錯誤のように「直接の意思がなくとも」、「因果関係」を認めています。
この回答への補足
>『具体的符号説』によると、それぞれ殺人罪は成立しない。
これに対して、具体的符合説で処理した場合、わたしは次のように処理します。あなたはどう思いますか?
上記の「客体の錯誤」の場合、Bに対して殺人既遂罪(Bを含んだ「その人」の範囲で符合するので故意は阻却されない)、Aに対して殺人未遂または不能犯。
上記の「方法の錯誤」の場合、Aに対して殺人未遂罪(Aを含んだ「その人」に対する殺人の故意あり)または不能犯。Bに対しては過失致死。
上記の「因果関係の錯誤」の場合、Aに対して殺人既遂罪とわたしは考えます。
まず、「実行行為性」の検討。
「Aに対してピストル発砲」より、具体的危険説(通説)など学説によらず、甲の実行行為性は明らかです。
つぎに、構成要件的結果ですが、「Aの死亡」です。ここで、「落馬により」など因果の経路は考慮に入れません。あくまでも「構成要件に規定された法益侵害」に該当する事実を考えます。
そして、「因果関係」の有無を検討します。ここは、通説である折衷説でいいでしょう。
「行為後の介在事情」(ここでは落馬)があるけど折衷説では相当因果関係ありとなります。
実行行為と結果の間に条件関係があり、ピストル発砲→死亡は経験則上ありうる、異常ではない。よって、相当性ありとなります。
行為後の介在事情の処理は前田説が一番すぐれていますが、前田説でも相当性ありとなるでしょう。馬に責任を帰属させるのはおかしいような気がします。ただ、行為後の介在事情の処理には、まだ問題があるように思います。
最後に、構成要件的故意を検討します。
具体的符合説ではAを含んだ「その人」に対する殺人という点で符合するので、故意は阻却されません。
以上から、Aに対する殺人既遂罪が成立します。
>『法定的符号説』だと、全て成立することとなる。
そのとおりだと思います。
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No.2
- 回答日時:
>犯罪事実とは、「特定の構成要件に該当する客観的事実」なのですから、「実行行為」、「構成要件的結果」、およびそれらの「因果関係」からなるはずです。
そして、これらを認識(表象)することが「構成要件的故意」なはずです。であるとなぜ、
>そうすると、因果の経路=因果関係の経過は、「犯罪事実」には含まれないはずです(因果関係は、含まれるが、因果の経路は含まれない)。>
となるのでしょう?前段は、構成要件要素としての因果関係には「因果の経過」を含まないとする論理的な根拠にはまったくなりません。
元々因果関係の錯誤を論じるのは、「因果経過が因果関係の内容そのもの」だからです。ならば、「因果経過を因果関係でないとするのは、議論の前提が違うのだから結論が喰い違うのは当たり前」となるだけです。
因果関係が構成要件要素であるならば具体的な事例においてはそれに対応する具体的な犯罪構成事実があることになります。ではそれは何ですか?具体的な因果の経過に他ならないでしょう?
例えば、殺意をもって銃で人の頭を撃って殺したので殺人罪が成立した、として。
実行行為=銃で人の頭を撃つ。
構成要件的結果=人の死亡。
因果関係=人の頭を銃で撃つという行為により銃から発射された弾が人の頭に当たって死に至るだけの傷害を与えたこと。
故意の内容=銃で人の頭を撃てば銃から発射された弾が頭に当たって死に至る傷害を生ぜしめ人が死ぬ。
因果関係の具体的な内容は、因果の経過を含むと言いますか因果の経過そのものと言ってもいいです。後は、因果関係について認識がどの程度あれば故意があると言えるのかだけで、そこに錯誤論が出てくる素地があります。もっとも、認識自体は相当抽象的でも構わず、客観的な因果関係の相当性の問題として論じれば足りるから錯誤論により故意の有無を論じる必要はないと考えることも理論的には可能です。これはつまり、錯誤として故意を阻却するような因果経過はそもそも客観的に相当因果関係がないということです。
因果関係は、因果の経過=因果の流れそのものですね。やっとわかりました。
じつはこれに対して、反論を用意していたのですが、大塚先生の書物を読んで誤解に気づきました。
どうもありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
因果関係というのは,まずもって事実そのものですから,経過のない因果関係というものはあり得ないと言わざるを得ないと考えられます。
因果関係に事実として経過があるからこそ,また,それが認識の対象となっているからこそ,因果関係の錯誤という議論が成り立つわけですからね。
犯罪事実が,行為・因果関係・結果からなることは,そのとおりですが,ここに入り込んでくる「構成要件的故意」というものは,とらえ方の難しいものです。
構成要件的故意の主たる論者であった団藤博士が,どう考えておられたか,今ひとつ理解が難しいのですが,私としては,これは,犯罪を特定するためのものに過ぎず,極端に言えば,中身のない表面的なものにすぎないと理解しています。
いってみれば,殺人罪と傷害致死罪の区別をつけるためだけに使われる故意という程度のことです。
これに対して,因果関係の錯誤というのは,犯罪論の中では,責任論として議論されるものです。構成要件的故意と,因果関係の錯誤で論じられる故意とは,別個のものと考えた方が,理解はしやすいと思います。
このあたりを理解するには,原典である刑法綱要をきちんと読み込む必要があります。それでも分からなければ,団藤博士の論文にまで遡る必要があります。
残念ながら,私は構成要件的故意という考え方には違和感を覚えていますので,詳しいことは分かりません。このような,本来責任論で議論すべきものを,構成要件に持ち込んだことによって,概念の混乱を巻き起こしたのではないかと思っています。
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