なぜ、村上春樹さんの小説は世界的にヒットするのでしょうか?
例えば、『世界の中心で愛をさけぶ』と『ノルウェイの森』。この二つの作品はどちらも喪失と純愛をテーマに描かれています。ですが前者は国内においては爆発的なヒットをしたのに対して、後者は国外でも翻訳されました。文学について素人の私が読んでも、やはり両者にはテーマの深みや表現、抽象性等、どれをとっても一線を画している何かがあると思います。
そこで、村上春樹さんの作品は、国内だけで売れる文学作品とどこがどのように異なるのか、ということに興味を持ち、感覚ではなく理論的に分析してみたいと思いました。
その点について分析してある良書等ありましたら、是非教えてください。よろしくお願いします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
図書の推薦はできませんが、図書館へ行けば村上春樹に関する研究書は沢山並んでいると思いますので、まず足を運んでみて、何冊か目を通してみてください。
以下に私の解釈を述べさせていただきますね。
私は、例示の両作品については、主題が異なると思います。
『世界の・・・』を出版当初に読みましたが、確かに喪失と純愛がテーマですね。
『冬のソナタ』(見たことはないのですが)をはじめとする韓流ブームのテーマと重なっています。
それらは予定調和的に「泣ける」作品であり、悲劇の主人公として読者や観客の気持ちを取り込むのではないでしょうか。
生身の人間同士のつながりと、その喪失を描いています。
一方の村上作品は、混沌とした世界で「さがし求める」ということがテーマになっていると、私は解釈しています。
野井戸や壁抜けなどは、現実世界と精神世界、日常と非日常、他人と自分の境界を暗示しているものであり、そこを行き来しながら、空虚感の中で何かをさがし求めているのが村上春樹の作品だと思うのです。
主人公が恋人や奥さんを取り戻す過程で見つめているのは、境界を取り払われた精神世界です。
近い作家としてよしもとばなながよく並べて論じられますが、彼女の作品が基本的に優しさに包まれたハッピーエンドなのに対して、村上春樹ははっきりとした終りの無い「探し続ける」作品です。
詳しいことを覚えていないのですが、以前朝日新聞の記事で(書評かもしれません)、近年中国でも村上作品が翻訳され、好まれるようになってきたと書かれていました。
経済成長による都市的な生活によって従来の家族的なつながりが希薄になり、喪失感を感じるようになった人々が、村上の作品を受け入れるようになってきたのだとの記事でした。
私は『ノルウェイの森』を初めて読んだとき高校生でしたが、あまり好きではありませんでした。
それなのに数年後に読み直してからは愛読書になってしまい、何度も何度も読み直しています。
村上春樹のほかの本も同様です。
新聞記事の「都市的な生活・・・云々」というのは確かにそうかもしれないと思っています。
最近海辺のカフカを読み返してみて、kurano-sukeさんのおっしゃる「探し求める」がテーマだというのがよくわかりました。人間存在の根源は空白であり、人はその空白を埋めるために他者を求めるのだと、そう解釈しました。人間は繋がりを求めるものなんだなって思いました。
だとしたら、朝日新聞の記事の都市的生活による弊害によって、村上作品が読まれるというのは頷けますね。
回答どうもありがとうございました!とても参考になりました!!
No.1
- 回答日時:
私は両者とも初版出版時に読みましたが、文学的に「深み」があるとは思いませんでした。
ですから、両者が「爆発的に」ヒットした理由がよく分かりませんでした。(今も分かりません)>その点について分析してある良書
であるかどうか分かりませんが、
文學界(文藝春秋社刊) 2006年6月号
に、『ワークショップ 世界は村上春樹をどう読むか』という特集がありますから、参考になると思いますよ。大抵の図書館にはあるのではないでしょうか。
そうですか。小説は個人の感性の問題ですからnever-nessさんがそのように感じるのも正しいのかもしれないですね。
文學界読ませていただきました。大変参考になりました。
回答どうもありがとうございました!
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