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No.4ベストアンサー
- 回答日時:
Jagar39再びです。
今自分が書いた回答を読み返していて、ちょっと誤解を招くかも知れない表現があったので補足しておきます。
>エイズの場合、ワクチンさえできれば、会社や学校の健康診断でHIV抗体検査を義務づけるとか、中学生までにワクチン接種を義務づけるくらいのことをやれれば、撲滅の可能性も見えてくると思いますが。
上記文章ですが、これはそもそも「ワクチンを開発するのが困難」という前提での一文です。
それでも抗体検査の義務化をやれば、それでそのまま撲滅が可能というわけではありませんが(抗体検査にもかからないサイレントな時期が1~3ヶ月と長いため)、とりあえず大きな前進にはなるはずです。
ただし、抗体陽性の人に対して、さらに感染を拡大させる行動を「阻止」できるか、という点には疑問を感じますが。結局個人の良識に委ねられてしまう問題になってしまいますから、生物学的には「効果的なサーベイランス」が撲滅のための第一歩であることは間違いないにしても、社会的にはどれだけ効果を持てるだろう・・・ということは感じます。特にエイズでは。
抗体検査の義務化も、生物学的には今すぐにでも可能でしょうが、社会的に難しいでしょうし。
で、そもそもこの話の前提である「ワクチンさえできれば」の問題に立ち返りますが、そもそもエイズはワクチン開発が非常に困難なウイルスです。
それは抗原変異が激しいという、他のウイルス(インフルエンザ等)にも共通している理由の他に、HIVに特有の理由もあります。
HIVはレトロウイルスであり、感染すると白血球(リンパ球)の染色体のDNAに、ウイルスのDNAを組み込んでしまう特殊なウイルスです。
正確にはレトロウイルスの遺伝子はRNAなのですが、これをわざわざDNAに「逆転写」した上で宿主細胞のゲノムに組み込むといった手の込んだことをしています。「逆転写」するので「レトロ」ウイルスと命名された、というのはどうでも良いトリビアですが。
つまり、普通の手法で弱毒生ワクチンを開発することがほぼ不可能、というわけです。接種したヒトのDNAを書き換えてしまう代物ですから、安全性の確認が一筋縄ではいかないでしょうし、「安全性が確認された」と仮に太鼓判が押されても、そんなもの誰が接種したがるか、ということで。私だってちょっと嫌かも。
組み替え生ワクチンという手もあります。バキュロウイルスとかワクシニアウイルス等の遺伝子を組み換えてHIVの抗原を発現させ、そのウイルスを生で接種する、という方法です。
これも盛んに研究はされているのですが、遺伝子組み換えに抵抗が強い日本で認可されるかどうか・・・私は獣医師なのでヒトのワクチン事情にはそれほど詳しくはないのですが、日本で認可されている組み替え生ワクチンなんて存在したっけ?
普通の生はダメ、組み替えも無理っぽい、ということになれば、残る派不活化ワクチンしかないのですが、これは不活化という性質上、免疫の持続期間があまり期待できず、定期的に接種しないと効果は持続できないでしょうから、やはりワクチンが開発できたところでどこまで役に立つかは疑問が残ります。
さらにそもそも「抗原性が不安定」という最大の難点があるので、エイズのワクチン開発は困難を極めているのだろうと。普通に考えれば「不可能じゃないか」とすら思えます。研究者達はそれでも諦めずに努力しているのでしょうけど。
No.3
- 回答日時:
獣医師でウイルスに専門知識を有する者です。
「撲滅が可能な伝染病の条件」についての考察は、大学の伝染病学の講義でもありましたし、伝染病学等の教科書(専門書)にも項目が割かれている場合が多いです。
根絶を可能にする(あるいは容易にする)疾病の生物学的な条件とは、要約すると以下のとおりになります。
1.その病原体が特定の宿主のみを持つこと
2.持続感染がないこと
3.血清型が単一あるいは少なく、抗原性が安定していること
4.有用なワクチンが開発可能であること
5.無症状感染がないこと
6.前駆期患者(患畜)に感染性がないこと
以下、これらの項目について詳しく補足します。
1については、ヒトの感染症ならヒト以外の動物が感染して"感染源"になるような疾病は、ヒト対策だけでは撲滅が不可能なのはお判りかと思います。
例えば狂犬病が全温血動物に感染するので、この条件に引っかかります。外国では野生動物にキャリアがいるので撲滅が困難となっています。
ただし、野生動物から直接ヒトに感染した事例は非常に希で、ヒトに対する直接の感染源はほとんどが犬です。つまり野生動物→犬→ヒトという感染ルートを辿っているわけです。
逆に野生動物が汚染されていなかった日本は、犬に対する対策を徹底することで撲滅が達成できたわけです。
2と5と6は関連項目といって良いでしょう。
つまり平たく言えば、「感染すれば必ず発症する疾病は撲滅しやすい」ということです。感染しても無症状で病原体を排泄するような疾病は、感染源の摘発と隔離が困難ですから、撲滅も難しい、ということになります。
エイズがモロにこの条件に触れます。感染しても10年近くは症状を示さず、本人も感染したことに気づかないままウイルスをまき散らしていくわけですから、撲滅が難しいのも当然です。
ちなみに2の「持続感染」とは、通常は感染後に産生される抗体等の免疫系の働きによって病原体が駆除されるわけですが、何らかの機構によって永続的な感染が成立することを言います。エイズは感染した白血球のゲノムにウイルス遺伝子を組み込むことによって持続感染しますし、ヘルペスは免疫系の攻撃が届かない神経節に潜むことによって持続感染します。
持続感染する疾病は、必ず「無症状感染」もあるわけなのですが、その他にもインフルエンザやノロ等の多くの感染症が無症状あるいは極めて軽度の発症で済むことがあります。この場合も患者の摘発が困難になるので、やはり撲滅が難しくなる、というわけです。
また、6は潜伏期間中に病原体を排泄するような疾病がこの条件に触れます。やはりエイズやヘルペスなどの持続感染型の疾病はこれに該当します。潜伏期間が長い狂犬病や結核なども該当するでしょうか。
3と4も関連項目です。
血清型、つまり抗原型が少なくてあまり変異しない病原体はワクチン開発が容易ですから、撲滅がしやすくなるのは当然ですよね。
その他にも抗体検査によるサーベイランスが容易なため、感染の状況を把握しやすいという利点もあります。
とりあえず3の条件に触れるため撲滅が困難な疾病の代表がインフルエンザでしょう。血清型(HA亜型)はヒトで流行しているインフルエンザは3種に過ぎないのですが(BとCは省略して)、同一亜型の中での抗原変異が激しいため、有効なワクチンの開発が困難です。
エイズもウイルス抗原の変異が激しいため、ワクチン開発が難しい疾病です。
また、4の条件のワクチン開発の容易さですが、必ずしも抗原性の安定性だけに依存しているものではありません。病原体の感染~発病様式によっては血清型が安定していてもワクチンによる防除が困難なものもあります。
インフルエンザもそのひとつですが、呼吸器病と腸管感染性のウイルスはたいていワクチンがあまり効きません。それは呼吸器や腸管の免疫は粘膜免疫の誘導が重要なのですが、ワクチンでそれを誘導するのがそもそも難しい、ということがあります。細かい話をすればきりがないのですが、一般論としてはそうだという程度に覚えておいてください。
というわけで、天然痘は1-6までの「撲滅を可能にする条件」の全てを満たしていたわけです。だからこそ未だに全世界規模で根絶が達成できた唯一の感染症となっているわけです。
逆にエイズについては、満たしているのは1の条件だけで、他の全ての条件に触れてしまっています。(元々サルのウイルスという話はありますが、現在のエイズがサルと共通宿主を持っているわけではないので、1は満たしています)
しかも、仮に有効なワクチンが開発できたとしても、2と5、6に最悪といって良いくらい反していますから、やはり撲滅が極めて困難なことには変わりないでしょう。
ま、あとは生物学的な条件以外に社会的・行政的な条件もありますから、要するに「どこまでやるか」ということです。
エイズの場合、ワクチンさえできれば、会社や学校の健康診断でHIV抗体検査を義務づけるとか、中学生までにワクチン接種を義務づけるくらいのことをやれれば、撲滅の可能性も見えてくると思いますが。
逆に狂犬病は、5や6にも反していますがそれらはさほど大きな問題ともいえず(そもそもヒト→ヒト感染なんてほとんどないから)、とにもかくにも1が最大の障壁となっているわけです。
このように、全てを満たしている疾病は「社会がその気になりさえすれば」撲滅は容易なことは間違いありませんが(まあ天然痘以外にそんな都合の良い疾病なんてない、という話もありますが)、どれか1つ欠ければもう不可能、というわけではなく、その病原体の持つ性質によって何が最も足を引っ張っているかは異なります。
No.2
- 回答日時:
天然痘ウイルスはヒトしか宿主としません。
ですからヒトだけにワクチン接種し感染を防げば天然痘ウイルスは撲滅できます。ワクチンがあっても他のウイルスの撲滅が困難な理由がここにあります。No.1
- 回答日時:
なぜエイズのワクチンができなくて、天然痘のワクチンは作れたか、ということですか?
それともなぜ天然痘は撲滅できたか、ということですか?
前者はよくわかりませんが、後者なら
天然痘
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%84%B6% …
7~16日の潜伏期間を経て発症する。
感染後でも4日以内であればワクチン接種は有効であるとされている。
一方エイズは
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%A4% …
多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、だいたい5~10年は無症状で過ごす。
両者の違いは潜伏期間が天然痘は短いことです
つまり感染してる人が早い段階でわかり、発症までに接触した人に対し処置が容易であるということです。
極論ですが、それらの人をすべて隔離してしまえばそれ以上感染は、広がりません。
しかしエイズは潜伏期間が長く、多くの人は自分がエイズだということに気づいておわず、また回りの人もわかってません。
そのため感染者の特定が難しく知らないうちに多くの人に広まっていってしまうため撲滅は困難です。
余談ですが、アフリカのある地方ではエイズに対する抗体を持った人がいるそうです。
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