No.7ベストアンサー
- 回答日時:
哲学の専門家ではありませんが、たまに読んだりもします。
以下、思いつくまま並べてみます。1) デリダ
デリダの本には、『有限責任会社』のように、わざと読者に負担をかけているものもありますが、デリダ自身によって書かれたデリダ入門書は、かなり明晰なものです。この『言葉にのって』も、言語をめぐるテーマについていくつか述べられただけのものですが、デリダの考え方について少し理解することができるようになります。たとえば、嘘はついてはならないが、現に嘘をつくこともあるということについて、「いかなる場合も嘘をついてはならない」のはどうしてか、カントを手がかりにしながら、あざやかに示しています。
デリダ『言葉にのって』
http://www.amazon.co.jp/dp/4480086137/
2) 生権力論
フーコーや、下に収録されているドゥルーズの「管理社会について」を発端として、生権力の研究が始まりましたが、これに連なる著作で読みやすいものがかなりあると思います。
ドゥルーズ『記号と事件』
http://www.amazon.co.jp/dp/430946288X/
檜垣立哉『生と権力の哲学』
http://www.amazon.co.jp/dp/448006303X/
酒井隆史『暴力の哲学』
http://www.amazon.co.jp/dp/4309243088/
萱野稔人『カネと暴力の系譜学』
http://www.amazon.co.jp/dp/4309243959/
生権力とは関係ありませんが、ドゥルーズの思想と深い関係のあるものとしては、下のものがあります。ポップなタイトルですが、ドゥルーズの潜在性というキーワードを考えるうえで参考になりそうでした。
廣瀬純『美味しい料理の哲学』
http://www.amazon.co.jp/dp/4309243533/
3) 現代イタリア哲学
なぜか最近イタリアの哲学者の翻訳が多いです。2) の生権力論の流れを引いているからでしょうか。
アガンベンの『開かれ』は、本格的に現代思想を研究している人にはそれほど評判がよいようではないのですが、入門者にとっては、生権力論のエッセンスがコンパクトにまとめられているので、非常に読みやすいです。
アガンベン『開かれ』
http://www.amazon.co.jp/dp/458270249X/
ヴィルノの『ポストフォーディズムの資本主義』は、フーコーとチョムスキーの言語観の社会科学的な調停が主軸となっています。まだ読んでいないのですが、言語の生得説を唱えるチョムスキーと、言語の社会的な側面を重視するフーコーなので、言語観の対極といってもいい両者の検討はおもしろそうです。
ヴィルノ『ポストフォーディズムの資本主義』
4) 心の哲学
「心の哲学」は、一般的な名詞ではなくて、哲学のなかのそういう分野名ですが、とくに最近注目を浴びている分野です。クオリアも茂木健一郎のおかげでかなり一般的な言葉になりましたが、本格的に哲学者がこれを扱うと、哲学的な問題としてあらためてかなりおもしろいことがわかります。ほかにも、志向性、外在主義、消去主義など、興味深いトピックの多いシリーズです。といっても私自身は第1巻しかもっていないのですが、ほかの巻の目次をみても、おもしろさは保証されていると思います。
信原幸弘 編『シリーズ・心の哲学』
http://www.amazon.co.jp/dp/4326199245/
http://www.amazon.co.jp/dp/4326199253/
http://www.amazon.co.jp/dp/4326199261/
サールは存命の哲学者のなかでもっとも有名だと思いますが、最近のサールの興味は心の哲学にあって、サールによる心の哲学のまとめが出されています。
サール『マインド』
http://www.amazon.co.jp/dp/4255003254/
下のうち私のもっているのは、ドレツキ『心を自然化する』と戸田山和久『知識の哲学』です。ドレツキの『心を自然化する』は、表象主義の立場から、クオリアや意識などのキーワードについて徹底的に論じたものですが、表象主義でこれだけのことがいえるのだという見本なのだと思いました。スティッチのは戸田山の本で紹介されていたのをみただけですが、おもしろそうでした。ドレツキやスティッチの本は、入門書ではないので、それほど前提とする知識はいらないものの、ちゃんと1歩ずつ押さえていかないと訳がわからなくなります。それでも、もったいぶった表現を使ったりはしないので、ゆっくり読めば確実に読解できるようになっています。
ドレツキ『行動を説明する』
http://www.amazon.co.jp/dp/4326199474/
ドレツキ『心を自然化する』
http://www.amazon.co.jp/dp/432619958X/
スティッチ『断片化する理性』
http://www.amazon.co.jp/dp/4326199504/
戸田山和久『知識の哲学』
http://www.amazon.co.jp/dp/4782802080/
5) 神経哲学
No.6の回答者さんもおっしゃっていますが、ますます神経科学が重要になってきます。ただ、まだ哲学界に伝播していないということはなくて、すでにチャーチランド夫妻らが神経哲学を研究しています。
パトリシア・スミス・チャーチランド『ブレインワイズ』
http://www.amazon.co.jp/dp/488158300X/
6) 言語起源論
哲学書ではありませんが、心理学や言語学において言語の起源について触れられることが多くなりました。だいたいチョムスキーの立場、ピンカーの立場、トマセロの立場に分かれます。
ハウザー、チョムスキー、フィッチ「言語能力:それは何か、誰が持つのか、どう進化したのか?」(抄訳)『科学』74(7)
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo200407.html
ピンカー『言語を生みだす本能』
http://www.amazon.co.jp/dp/4140017406/
http://www.amazon.co.jp/dp/4140017414/
トマセロ『心とことばの起源を探る』
http://www.amazon.co.jp/dp/4326199407/
ピンカーとトマセロとの対立点については、哲学者の菅野盾樹がまとめています。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%DE%A5%BB …
脳研究の立場からの言語起源論は、ディーコンのものがあります。パースの記号論についてもかなり言及されていますが、換骨奪胎された印象はあります。しかし、脳と言語との関係について、基本となる議論が詰めこまれているので、かなりおもしろいものでした。
ディーコン『ヒトはいかにして人となったか』
http://www.amazon.co.jp/dp/4788506718/
*) 蛇足
> 哲学に興味があるのですが、もうどこから手をつけりゃいいのかわかりません。一生懸命読んだ本が今じゃもう脱構築されてたり、あるいはハナから失笑を買うようなトンデモ本だったり、そもそも難解すぎて完読できなかったり、悪夢のようです。
気もちはわかります。ただ、たとえばデカルトなども、心身2元論を親の敵のように批判されたりと、古いイメージを抱いてしまうかもしれません。しかし、心身2元論について完全に解消されたわけでもないですし、基本的な問題点の詰めこまれたもともとのデカルトを読むのも大事だろうと思います。デカルトにかぎらず、数10年前の本にしてもそうだろうと思います。じっさいに、そのあたりの本で要約されている内容よりも、じっさいにデカルトやカントを読んだほうが、おもしろかったりします。デカルトなどの入門書を読んだら、そのままデカルト自身の書いた本を読んでみるというのも手かもしれません。
もし歴史的に立ち戻るとしたら、古代ギリシアまで戻る、中世哲学に戻る、デカルトあたりに戻る、ニーチェ、フロイト、マルクスあたりに戻るなどの選択肢があるのだと思います。中世哲学は、キリスト教の影響が強くてとっかかりが悪いかもしれませんが、類と個物との関係(普遍論争)といった典型的な哲学的議論がふくまれており、そこから始めてもおもしろいかもしれません。ロックなどを理解するのにも役だつだろうと思います。
読んだ本が否定なり脱構築なりされているというのは、別に悲観することではありません。何も新しい論点を発見していない、本当に価値のない本であれば、否定されるのではなく、無視されます。それを否定した本と併せて読むことで、元の本の理解が深まることはあっても、元の本を読んだことが無駄であったということはないと思いますよ。
お礼が遅れてしまって申し訳ありません。ものすごく丁寧なご回答、ありがとうございます!
紹介して頂いた本、どれも興味深いものばかりです。何年かかるかわかりませんがこつこつと読破したいなと思います。
また、古典を学ぶ価値は十分あるとの指摘、まったくその通りだなと反省しきりです。つい流行り物に飛びつきたくなってしまった自分がひたすら情けないです…。
No.5
- 回答日時:
今の流行りはポストコロニアリズム、カルチュアルスタディーズとかでしょうか。
ちょっと古いかな?911後の世界で帝国を考えるとかそういうのも流行りました。
これからは多分、中国ネタが流行ると思います。
あんま哲学本流ぽくないですけど、こんな感じでしょうか。
No.4
- 回答日時:
私の個人的なお薦めとしては、、、
「歴史哲学分野」をお薦めします。
なかでも、
『歴史の哲学―現代の思想的状況』 (講談社学術文庫)
渡辺 二郎 (著)
ISBN-13: 978-4061594067
『歴史の理論と歴史 』(岩波文庫)
クロォチェ (著), 羽仁 五郎 (翻訳)
ISBN-13: 978-4003341810
『歴史とは何ぞや』 (岩波書店)
ベルンハイム (著), 坂口 昂 (著), 小野 鉄二 (著)
ISBN-13: 978-4003341414
『歴史哲学 』(岩波書店)
三木 清 (著)
『歴史とは何か 』(岩波新書) (新書)
E.H. カー (著), E.H. Carr (原著), 清水 幾太郎 (翻訳)
ISBN-13: 978-4004130017
『史学概論』(有斐閣)
林 健太郎 (著)
あたりは、お薦めですね。
歴史哲学って、あんまり流行らないですけど、世界認識の為には重要な知識だと思います。
歴史というと、実証主義的立場に立ってやれ「証拠示せ、客観的に見ろ!」と叫ばれますけど、「本当にそれで良いのか?」や「本当に客観的になれるのか?」という問いは顧みられることがありません。
例えば、ヘーゲル・マルクス的な発展史観を批難するひとが、言ってる側からヘーゲル・マルクス史観に(無意識に)立っている教科書的な歴史を信じていたりします。
それに気付くのに丁度良いと、個人的に思う「歴史哲学選書」です。
おお、歴史哲学ですか。個人的な話で恐縮ですが僕は決定的な歴史音痴でして、いつか腰を据えて歴史(とそれに関わる諸分野)を学ばなけりゃいかんと思っていたところなのでこれはちょうどいい機会かもしれません。たくさんご紹介していただき、どうもありがとうございます!
No.2
- 回答日時:
若いのぉ。
わしも若い頃はアテネまで出向いて、流行の最先端だったソクラテスと対面したもんじゃわい。
じゃが、なんにも得たもんはなかったがの。いや、ギリシア語の難しいことよ。ふおっふぉっふぉっ。
さて、脱構築というのは構築物が先にあってこその脱構築です。
まあ原材料など知らなくともプリンは美味しけりゃいいっちゃあそれまでなんですが、こと哲学になるとそうはいかないもんです。
古典哲学と現代思想の分岐点こそが、一番の見晴し台だと思うんですよね。
その高い山に鎮座ましますのがニーチェ。
まあ哲学じゃなくて文学だなんてことも言われますが、それを言っちゃあデリダだって同じこと。
「真理なんてない、あるのは解釈だけです」とのたまう彼の本を、真理の書などと気張らずに、玉虫色の解釈を受け入れる占いの本のように読むのが吉と出ております。
ニーチェでわかんなければショーペンハウエルなんかを参照するといいでしょう。
分岐点にはもう一人変人が住んでます。フロイト。
ある程度フロイトの考え方を理解していないと、その先の展望についていくことが難しいんじゃないかと思いますよ。
そんなフロイトも電波っぽいところがあるんですが、その電波が現代思想を動かしたんだからそれを学ばないことには仕方ないわけで。
流行の最先端を求めたくなるのはわかるのじゃが、どんなものでも発見を与えてくれるならよい哲学だと思うがの。
哲学が目的なのか、哲学への興味が目的なのか。そのへんを見失わんようになされよ。
気をつけての。
(20代後半男)
ニーチェとフロイトですか。偶然ニーチェには興味をもちはじめていて入門書がいくつか手元にあるので、そこから攻めて行こうと思います。回答どうもありがとうございます!
No.1
- 回答日時:
同じく20代前半オトコですが、、、。
ポストモダンはファッションだ!なんて、流行を追う人を揶揄する言葉を今でも見かけますが…ご自身の興味持続のために、ファッションだと分かっていてカッチョいい哲学を求めるのは本末転倒です。
過去を知らずして現代思想は楽しめないものでしょう。ネットの批評や評論本の類を読むから「トンデモ本」だって思っているのでしょう。時代遅れだと揶揄されている哲学書を読んで「あなたがどう考えるか?」これが、そのまま現代思想になります。いったい何の「トンデモ本」を読んだのでしょうか?
デリダの本は読んだことありませんが、
デリダを読むから滅茶苦茶になっているのでは?
デリダの言うことが本当なのか?
これをあなたの問題にした時、
あらゆる哲学書に目を通す理由が生まれるじゃないですかw
ギリシャから現代まで哲学史を見直す旅に出ればいいのです。
過去の哲学者の本を読み込むほうがタメになると私は思います。
いやあ、耳が痛いです。
学問に王道なし、ということですか…。
デリダ、読んだんですけどもう何がなんだか。もう一回チャレンジしてみます!
どうもありがとうございました。
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