こんにちは。
中・高の生物でお馴染みのメンデル遺伝ですが、遺伝子の働きが分かっている現代において、これを細かく教える意味はあるのでしょうか?
分離や独立の法則、優性や劣勢、致死遺伝子云々…など色々ありますが、要は遺伝子が正常に働いているかどうか、○か×かの話に過ぎないように思うのですが…。
・父方、母方の遺伝子のどちらかでも正常なら正常なタンパクが作られるため、発現形質は正常。どっちも異常なら発現形質も異常というだけ。優性や劣性というのは結果論的な用語で、時代錯誤では?
・致死遺伝子も、それ自体が能動的に(例えば有害なタンパクを作るなどして)個体を殺すわけではなく、生命維持に重要な遺伝子が父母方ともに異常な時に結果的に死ぬだけ。その遺伝子がたまたま毛色などにも関係しているものを取り上げているだけで、「劣性」ホモで死に至るような遺伝子は無数にあるのでは?
・・・このように理解しているのですが、間違いはないでしょうか?
確かに、毎度毎度遺伝子を調べるわけにもいきませんし、形質から親や子の遺伝情報を読み解くことは非常に重要かつ有用だとは思うのですが、
「丸だのシワだのという結果の話だけでなく、どのような遺伝子がどのような経緯を経た上で形質に現れるかを理解したほうが、現代的だし結果的に判りやすいのでは?」
と思います。
高校ではタンパク合成などの分子生物学も学びます。遺伝もそれに関連付けて教えればいいのに、未だに古臭いままの内容で孤立したような教え方をされているようなのが、気になります。
遺伝に対する誤解や理解不足等ございましたら是非ご指摘下さい。
よろしくお願いいたします。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
>分離や独立の法則、優性や劣勢、致死遺伝子云々…など色々ありますが
日本の教科書で教えている「メンデルの法則」は、「分離の法則」「独立の法則」「優性の法則」ですが、外国の教科書では「第一法則 分離の法則」「第二法則 独立の法則」だけのようです。
「優性の法則」は異なる対立遺伝子をヘテロ接合にした時に一方の対立遺伝子の表現型だけ現る優性という「現象」を示すことがあり、現れる方を優性、現れない方を劣性という定義だけで、法則としては扱われません。
「独立の法則」は異なる染色体に乗っている(連鎖していない)遺伝子間でしか当てはまらず、言っていることは「分離の法則」から自ずと導かれることなので、わざわざ法則に祭り上げる必要もないかもしれません。
しかし、「分離の法則」というのは、遺伝子が父方、母方から受け継いだものが対になっていて、両者が混じり合うことなく、次の世代にそれぞれ別個に、1/2の確率で受け渡される、遺伝の確率的考え方の基本となる法則ですから、はずすわけにはいかないでしょう。
>要は遺伝子が正常に働いているかどうか、○か×かの話に過ぎないように思うのですが…。
優性、劣性の二元論的な教え方は、対立遺伝子は2種類のみしかないという誤解を与える点で問題がないとは言えないです。複対立遺伝子が特別なことのように扱われていますし。実際は一つの遺伝子の対立遺伝子にも、全く機能を失っている物、いろいろな程度で機能が低下した物、機能が更新している物などがあり、それによって表現型にもいろいろ変わることが少なくない、あたりまえのことだけれど、そういう理解に至る人はあまりいないでしょう。
>・致死遺伝子も、それ自体が能動的に(例えば有害なタンパクを作るなどして)個体を殺すわけではなく、生命維持に重要な遺伝子が父母方ともに異常な時に結果的に死ぬだけ。その遺伝子がたまたま毛色などにも関係しているものを取り上げているだけで、「劣性」ホモで死に至るような遺伝子は無数にあるのでは?
確かにそうです。マウスの黄色毛と致死を特別な現象のよう必要はないです。現在では、この現象は、毛色の遺伝子と、生存に必要な遺伝子、隣り合った2つの遺伝子が同時に突然変異を起こしていることが分かっていますし(欠失によって生存に必要な遺伝子がつぶれ、その遺伝子のプロモータが毛色の遺伝子に融合して発現を亢進させている)、教科書の説明は現在分かっていることからすると、不正確である、または誤解を生じる可能性があります。
>未だに古臭いままの内容で孤立したような教え方をされているようなのが、気になります。
外国の遺伝学の教科書だと、古典遺伝学と分子遺伝学が有機的に結びつけられているものもあります。しかし、遺伝学として独立した教科ではなく、理科や生物の教科書であつかう単元のレベルでは難しいかもしれません。現代の遺伝学では重視されていない、あるいは使われていない概念まで、昔から踏襲して取り扱っているのを見直して(複対立遺伝子、中間雑種、同義遺伝子、互助遺伝子などなど、現代の遺伝学からすればなんら特別な現象ではなく、理解も容易)、現代的な遺伝学の理解を盛り込んでも良い時期ではないかとは思います。
回答ありがとうございます。
大変詳しい解説をいただき、非常に参考になりました。
>現代の遺伝学では重視されていない、あるいは使われていない概念まで、昔から踏襲して取り扱っているのを見直して(複対立遺伝子、中間雑種、同義遺伝子、互助遺伝子などなど、現代の遺伝学からすればなんら特別な現象ではなく、理解も容易)、現代的な遺伝学の理解を盛り込んでも良い時期ではないかとは思います。
同感です!とはいえ、授業数が限られた中で全てを教えるのは難しいのでしょうね…。
何を優先して教えたいのか、その根拠は何かをはっきりさせて、カリキュラムを組んでほしいですね。
No.6
- 回答日時:
個々の遺伝子座については、メンデル則がなりたつというのは自明で、複数の遺伝子座か量的にかかわる形質の発現度が、複数の遺伝子座がどれだけどちらのタイプになるかの確率に依存するということはある場合があります。
しかし、一卵性双生児の場合はすべての遺伝子座で全く同じ遺伝子型です。全く同じ遺伝子型でも100%同じ表現型を現すのではない、例えば70%の頻度でしか同じ表現型を現さないというのは、遺伝因子以外、つまり環境要因が30%程度働いているというということを意味します。全く同じ遺伝子型なのに70%だけ表現型が現れる場合、遺伝率70%と言います。遺伝要因が70%、環境要因が30%と言うことを意味します。
メンデル遺伝はある遺伝子座の対立遺伝子対が等しい確率で配偶子に振り分けられる自明の現象であり、環境要因が入る余地はありませんので、環境要因による表現型のふれは、遺伝子の挙動を扱うメンデル遺伝とは全く別の話です。
再度の回答ありがとうございました。
>メンデル遺伝はある遺伝子座の対立遺伝子対が等しい確率で配偶子に振り分けられる自明の現象であり、環境要因が入る余地はありませんので、環境要因による表現型のふれは、遺伝子の挙動を扱うメンデル遺伝とは全く別の話です
よく理解もしないままにメンデル遺伝という言葉を使ってしまいましたが、ようやく分かってきた気がします。非常に勉強になりました!
No.5
- 回答日時:
世の中には、複数遺伝子の作用によって発病するというタイプの病気が存在します。
人間を含む哺乳類の病気には、ひとつの遺伝子の優劣をもって簡単に切り分けることができるようなものではないケースが、多々あるのです。例えば、躁うつ病は、典型的な複数遺伝子の作用による病気です。一卵性双生児で調べてみると、メンデルの法則が厳密には当てはまらず、片方が躁うつ病になると、もう片方も躁うつ病になる確率は60~70くらいしかないことが知られています。
医者も無能ではありませんから、分子生物学くらい分かっています。しかし、生きたマウスの脳内物質の挙動を把握できる現行技術によっても、躁うつ病などメンタルヘルス系の病気が発生している時に、脳の中で何が起こっているのか、まだまだ分からないことが多いのです。
また、メンタルヘルスの病気は、実は脳内物質だけではなく、内分泌系の全体像を理解していないと治らないことがあります。例えば、甲状腺機能が低い患者に、甲状腺機能に影響するという副作用をもった薬を出すと、メンタルヘルスではなく、内科的な病気を引き起こしてしまいます。
というわけで、メンデルの法則は、話をやや単純化しすぎている面もありますが、議論の出発点としては、現在でも有効だと思います。
No.3
- 回答日時:
とんでもないですよ。
意義はあるすぎるくらいあります。それはニュートンの古典力学をすっ飛ばして、量子力学や相対論を教えろというのに似ています。相対論では、光にくらべて十分遅い慣性系では、古典力学に近似されるのです。>・父方、母方の遺伝子のどちらかでも正常なら正常なタンパクが作られるため、発現形質は正常。どっちも異常なら発現形質も異常というだけ。優性や劣性というのは結果論的な用語で、時代錯誤では?
たとえば、ここだけに関しても年齢によって、明らかに発現形質が違う表現型があり(年齢によって、病気が多発したり、しなかったりする)、そのメカニズムはよく解明されていません。このときの考え方としてはメンデル遺伝がどのように修飾される可能性があるかを考えるのが常道で、メンデル遺伝はとっても基本になる考え方になりやすいのです。
回答ありがとうございます。
>ニュートンの古典力学をすっ飛ばして、量子力学や相対論を教えろというのに似ています
そこまでは言いませんが、現在せっかく解明されている事実を差し置いてまで、あえて未解明な時代のレベルの話を事細かに説明する意義はあるのかな、と思いましたので…。
タイトルが大上段すぎましたね、すいません。
メンデル遺伝が遺伝の基本であることには全く異論はありません。
No.2
- 回答日時:
意味はあると思います。
たとえば血液型ですが、シンプルにメンデルの法則で考えるから、誰でもA型とA型が結婚したらA型だけでなくO型の子が生まれる可能性があるということが分かるわけで、これを遺伝子レベルで考えると、分からない人が多くなると思います。
>高校ではタンパク合成などの分子生物学も学びます。遺伝もそれに関連付けて教えればいいのに、未だに古臭いままの内容で孤立したような教え方をされているようなのが、気になります。
私が習った時に、どのように教わったかは忘れてしまいましたが、それは教え方の問題ではないでしょうか
回答ありがとうございます。
仰るとおり、ABO式血液型の遺伝などの理解には、シンプルなほうが分かりやすいし親しみやすいでしょうね。
ただ、複対立遺伝子や不完全優性など、典型的なメンデルの法則には合致しない要素が多いようにも思いますが…。
dipearl様の回答のおかげで、血液型について調べたので理解が深まりました。どうもありがとうございました!
No.1
- 回答日時:
一部共鳴する点はあります。
優性の法則や独立の法則など、「法則」の名に値するのかと思います。その辺は歴史的な価値しかないかもしれません。しかしながらメンデルの法則を知らずに生物学を語ることはできないと思います。実験結果から理論を導き出したメンデルの法則は、科学史上非常に重要です。実験の手法やデータの処理など、科学の方法論として学ぶべきことの多い単元だと思います。私はメンデルの法則を学んでから生物学が面白く感じられるようになりましたが、多くの同級生は暗記科目としていやいや取り組んでいたように記憶しています。
エンドウの種子の形の遺伝について、一遺伝子一酵素説とからめることもできますが、いかんせん分子生物学は生物IIで教えることになっています。
回答ありがとうございました。
>実験結果から理論を導き出したメンデルの法則は、科学史上非常に重要です。実験の手法やデータの処理など、科学の方法論として学ぶべきことの多い単元だと思います。
確かに、言われてみればその通りな気がします。
この実験のすごさをもっと詳しく教えるべきなのでしょうね。
>エンドウの種子の形の遺伝について、一遺伝子一酵素説とからめることもできますが、いかんせん分子生物学は生物IIで教えることになっています。
これも問題だと思います。文系に進んだ生徒では、遺伝子についてほとんど知らないまま卒業するわけですからね…。
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